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第七話「計略~勇者軍side②~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

今回で序章は終わりです。次回からは第一章に入ります。


ブックマークの登録をしていただき、本当にありがとうございます!!

これを励みにして、これからも頑張ります。

 斗真たちがアイリスの封印を解いた同じ頃・・・。


 クロス城の玉座の間では、5人の王宮魔導士たちがイグナーツ王の面前で青白い顔をして、震えて俯いていた。そして、彼らの前には魔の勇者であり、王宮魔導士筆頭のセルマ・ティアマットが深々と頭を下げていた。


 そんな彼らをまるで虫けらでも見るかのような冷たい瞳で睨みつけて、眉間に深いしわを刻みつけているイグナーツ王が静かに口を開いた。


 「セルマよ、その報告は間違いないのだな?」


 「はい、間違いございません。これは、筆頭魔導士であるわたくしの管理責任が行き届いていなかった不手際でございます。国王陛下には何とお詫びの言葉を申し上げればよろしいかと・・・この度の不祥事、誠に申し訳ございません!!」


 「・・・いや、お主には責はないだろう。なぜなら、今回の不手際はお前の後ろにいる無能極まりない、魔導士を名乗ることさえもおこがましい有象無象のクズどもが、分を弁えずにお主や我にも確かめもせずに虚偽の報告をしたことによって引き起こされたものだ。これが我が神聖なるクロス王国の王宮魔導士などとよくぞ名乗れたものだな・・・この大バカ者どもが!!」


 イグナーツ王が口汚く激昂し、王宮魔導士たちは悲鳴のような声を上げて頭を地べたにこすりつける。


 「も、申し訳ございません!!国王陛下!!何卒どうかお許しを!!」


 「ならぬ!!事もあろうに、かの伝説のスキル【魔法裁縫師】をただの【裁縫師】と勘違いしたばかりか、そのスキルの所有者を異世界人たちに対する見せしめとして追放するばかりか、命を奪うような行為を勇者たちに進言するとはどういうつもりだ!!貴様たちの知識の無さと軽薄な行動によって、我々は6人目の勇者ともいえる逸材を手放したばかりか、この国に対して恨みを抱いている最凶最悪の傭兵団【七人の獣騎士(プレイアデス)】に抱き込まれたのだぞ!?」


 「ひっ、ひぃぃっ!!」


 怒鳴りつけられた王宮魔導士たちの顔色から血の気がさらに引いて、もはや真っ白になっていき、弱々しく震えるばかりであった。


 「もしこれで彼奴らが我が国に攻め込んできたら、どれほどの被害が出るものか・・・想像するだに恐ろしいことになるのだぞ!?それがどういうことか、分かっておるのか!!」


 結論から言うと、斗真を追放、もしくは命を奪って魔王軍討伐に非協力的な異世界人たちに見せしめにして、クロス王国の命令に従順に従う手駒になるように調教を施そうと考え付いたのは上流貴族出身の王宮魔導士たち、つまり現在イグナーツ王から叱責を受けている彼らだった。


 「わ、わたくしたちはセルマ様のお手を煩わせないようにと思って・・・!!」


 「わたくしに媚びを売って、気に入られれば国王陛下直属の魔導師として認められると思って、貴方がたが勝手に勇み足を踏んだ結果がこのような事態を引き起こしたのですよ?何がわたくしのために、ですか。お前たちがわたくしのことを女のくせに王宮魔導士の頂点に立っていることを不満に思っていることや、隣国の貴族たちに媚びを売って、クロスよりも条件がいい相手が見つかったら乗り換えようと裏で画策をしていたこと、王宮魔導士であることを鼻にかけて平民たちに嫌がらせをしたり、重税を課して財産を搾り取り、水増しして余った分を懐に仕舞い込んでいたことももはや明白ですわよ?」


 セルマが立ち上がると、彼女のお付きの従者が分厚い紙の束を青い顔をして座り込んでいる魔導師たちに投げつける。それは脱税や横領、平民に対する嫌がらせや徴収した税金の水増し請求が書かれている書類といった不正の証拠だった。もはや彼らは言い逃れが出来ないことを悟り、呆然とする。


 「挙句の果てに魔王討伐の任を受けた勇者たちを利用して、勘違いしてレアスキルの所有者を襲わせた挙句に、あの【七人の獣騎士(プレイアデス)】に抱き込まれる機会を与えてしまうなど、もはや貴方たちには失望しました。今、この場において王宮魔導士の資格並びに貴族の階級や領地、財産の全てをはく奪いたします!国王陛下、いかなる処罰でもお申し付けください。わたくしも覚悟は出来ております」


 「うむ、それではセルマ・ティアマットには筆頭王宮魔導士としての全ての任務を解く。その間、勇者軍の最高司令官として任命しよう。そして、逃亡した【魔法裁縫師】のカジ・トウマを必ず連れ戻せ。【七人の獣騎士(プレイアデス)】はかつて世界を支配しようと目論んだ伝説の大罪人、必ずや全員を仕留めろ。そして、カジ・トウマを引き込んで改めて勇者軍を立て直し、魔王討伐の使命を果たすのだ!!」


 筆頭の王宮魔導士の任務を解くとは言っているが、実質、これは魔王討伐の王命における最高責任者に任命されただけである。不正を行っていたアホで無能な王宮魔導士たちがいなくなっても何ら問題はない。元々このクロスに仕えている王宮魔導士たちの実力は世界有数の高い能力を持っているのだ。任務を解かれたとはいえ、セルマは国中の王宮魔導士たちから心酔されて、高い信頼を得ている。万が一の事態が起きた時、セルマにあくまでも相談という形で報告をして、その都度にセルマが助言という形で国政に意見をしたり、騎士団を動かして治安を維持させることは可能なのだ。


 つまり、セルマは事実上何一つ責任を問われないということである。


 「かしこまりました。国王陛下のご配慮に心から感謝いたします。そして、必ずや陛下のご期待にお答えできるように全力を尽くしますわ」


 「うむ、それでは下がってもよい。さて、国に仇なすこの愚か者たちと、その一族郎党は全て捕らえよ!!お前たちの地位も階級も財産も、そして領地も全て没収する!!そして、お主たちは反逆者として1週間後に広場にて全員市中引き回しの上に斬首の刑とする!!」


 「そ、そんな!お許しを!!」


 イグナーツ王の容赦ない宣告と、それを受けて絶望に満ちた命乞いの声を背に受けながら、セルマは玉座の間を後にした。


 「・・・ふふふっ、これで邪魔な貴族上がりの無能な連中が消えてくれましたね」


 セルマはニヤリと唇の端を釣り上げて、冷たく恐ろしい笑みを浮かべていた。


 「アンタも随分と上手くやったよね。魔王討伐に関していちいち口うるさい邪魔者をまとめて始末するなんてさ。これで、魔王討伐においては国王直々に貴方が最高責任者として認められたわけだから、誰にも余計なことを言われずに済むね」


 廊下で壁にもたれて、腕を組みながら立っていた幕ノ内桜が気だるそうに爪をいじりながら話しかける。


 「・・・サクラ。そこにいたのですか」


 「まあね。それで、どうだった?これで貴方に余計なことを言ってくるバカはいなくなったってことだよね」


 「貴方は本当に悪知恵が働くようですね。まさか彼らの不正の証拠を見つけ出したうえに、わたくし自身の立場も危うくなるような今回の一件を逆に利用して、無能で邪魔な王宮魔導士や彼らの実家の貴族たちをまとめて消そうなどと持ちかけてくるなんて」


 「あたしの魔法能力って風を自由に操る能力なんだけどさ。どうやら風を使って遠くに離れているものを見たり、聞いたりすることが出来るみたいなんだ。それで、貴族たちの不正や悪事の証拠を掴んでおけば、万が一ヤバいことになってもそう簡単にあたしを切り捨てることは出来ないっしょ?」


 「・・・魔の勇者であるわたくしに貸しを作るとは、貴方も相当ですね」


 「雁野が勝手に飛び出しちゃって、結構迷惑かけたりしたじゃん?それに、魔の勇者とまで呼ばれるほどのアンタなら、王様だってそう簡単に手放せないでしょう?」


 桜は抜け駆けして、桐人たちよりもいち早く有利な立場を確保しようと動いていたのだ。


 見た目や言動は軽い現代っ子だが、5人の中では一番狡猾で頭が良く、自分が有利な立場になって物事のイニシアチブを握ることを快感としている人物だった。そして、今回、王宮魔導士たちの勘違いで斗真を追放してしまったことに動揺していたセルマに、彼女はそれを利用して今後邪魔になりそうな王宮魔導士や貴族たちを一掃する提案を思いついたのだ。


 「ああ、それとさ。さっき、この辺りを風を使って調べていたら、雁野の行き先が分かったよ。何でだか分からないけど、南の方に向かっているみたい」


 「南の方角・・・というと、藍の大陸マリブでしょうか。しかし、なぜミヅキはそこに?」


 「分からない。でも、アイツ梶っちにものすごくご執心だからさぁ・・・。ヤンデレの直感ってヤツじゃない?あんまりカンとかそういうのはあてにしないけど、アイツのカンって実はかなり当たるからなぁ・・・。まあ、もしかしたら本能で梶っちのいる場所を見つけ出すかもしれないねえ」


 「・・・ヤンデレ、ですか?良く分かりませんが、それは女のカンというものでしょうか?」


 そういって、桜は肩をすくめる。


 




 その会話を、壁に隠れながら聞き耳を立てていた桐人がいることには気づかなかった。






 「・・・なるほどな、つまり、梶はマリブっていうところにいるんだな?俺が一番最初に見つけ出してアイツをとっ捕まえれば、もう雨野にもデカい顏はさせねえし、一気に勝ち組だぜ!!こんなところでいつまでも大人しく引きこもってられるかよ!!こういうのは、えっと、千点大将だぜ!!」


 自分を弱者と小馬鹿にしていた柳太郎を見返し、斗真を無理矢理でも連れ戻せば自分が勇者軍のリーダーになれると確信した桐人は自信満々な笑みを浮かべて、その場から素早く立ち去った。


 おそらく彼は「先手必勝」と言いたかったのであろう。


 そして1時間後。


 桐人がクラスメートの数人を率いて小隊を結成した後、クロス城を飛び出し、マリブに向かったことを知らされたセルマは驚愕し、桜は「・・・あのバカ」と呆れるのであった。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 そのころ、藍の大陸マリブではある一つのうわさ話が流れていた。


 『夜な夜な海全体が不気味な霧で覆われて、霧の海から嵐に遭遇して行方不明になったと噂されている海賊船が現れる』と。


 そして、その幽霊船を興味本位で見にいったものは、そのまま二度と帰ってこなかったという。

 


 

次回より、第一章【マリブの幽霊船編】に入ります!


ここまで読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございます!!

もし気に入ってくださったら、ブックマークの登録のほどよろしくお願いいたします!!


ご感想、ご意見、お待ちしております!!


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[気になる点] 大きなお世話かもしれませんが、日本語が気になってブラウザバックしてる人結構いるんじゃないかな? 句点の位置を見直したり、適度に読点で区切ったり、一文の中で同じ言い回しを多用しないよう…
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