第三章 11 〇実力
戦いとは何をもって戦いというのか。相手にされずとも、これは戦いだった。ヴァーヴェルグの目的は巨竜を殺すこと。たいして風月の目的はそれの阻止だ。
ゆえに、この戦いはある意味一方的だった。
風月の攻撃を避けもしなければ守りもしない。拳一つで巨竜の甲殻を砕いていく。朱色の剣気を纏ったヴァーヴェルグはもはやダメージを与えることすらできない。むしろ驚いたのは加勢が期待できないことだった。
それこそ加勢しようとしたリナの前に立ちふさがったのは茜だった。
「なんのつもり?」
「むしろなぜ止めないと思ったのかの?」
「……」
「どうせ何も考えずに風月凪沙の側につこうとしたんじゃろ? わっかりやすいのう。世ア^駆考えろ、この巨竜はいつ死ぬ? 移動するだけで莫大な利益を生む存在じゃ。それを考えたら他国に落とすわけにはいかない。今この場で、この国で落とすべきじゃ」
頭では茜の言わんとすることを理解している。でも、理屈抜きで風月に手を貸したい自分自身がいることをリナは理解していた。
「王命は、ないってわけよ」
「聞けばわかることじゃ」
茜は魔術で霊装を取り出そうとした次の瞬間、別空間から呼び出された霊装を同じく別空間から召還した処刑斧で一閃に振りぬいて破壊するリナ。降りぬいた瞬間はすべてを重力にゆだねていたが、降りぬいた処刑斧は巨竜の甲殻に刺さり、再び自らを支えた。
「器用じゃな。じゃが、わしと張り合うつもりか?」
「もちろん。難しいことはわからないけど、あんな不甲斐なさ悔しさをもう味わいたくないってわけよ」
護衛を達成できず処刑まで行きかけ、その後ヴァーヴェルグに破れた。その気持ちは間違いなく本物で、風月に対して恋慕以外にも感情があることはリナも理解している。
ゆえに、その気持ちと決着をつけなくてはならない。
リナはポケットからスクロールを一枚取り出す。それはリナが破壊した霊装を呼び出すものだ。魔術が使えても処刑斧以外をすぐに取り出せないリナはこういった小物類はすぐに取り出せるようにスクロールをいくつか所持していた。
「これで王命をもらえばいいってわけよ。私を倒してからね」
「ほう……。リナよ、おぬしのそういうところは嫌いではないの。じゃが……」
茜が巨竜につかまっていた手を放す。そのまま落下するかと思いきや、足を中心に体が重力に引っ張られていくが、巨竜と垂直になった時点でその動きが止まる。髪の毛や服は重力に引っ張られているのに、唯一その足だけは巨竜を地面としてしっかりと足をつけていた。それこそ、壁に立っているかのようだった。この普通ならあり得ない足場でピンと天に伸びる一本の木のように凛々しく立ちはだかっていた。
「魔術の扱いに長けておらんおぬしが、この足場でこのわしに勝てると?」
「やれるってところ、見せてやるってわけよ!」
刺さった処刑斧を遠心力で、巨竜の甲殻のごく表面を砕きながらさらに一回転。その破壊力は目を見張るものがある。だが、支えのない状態での一連の攻防はある意味隙だらけだった。早い話、処刑斧を巨竜に突き立てていなければ体を支えられない。つまり弾き落してしまえばいい。
神域の騎士同士の戦いはそうそう見れるものではない。ゆえに、その戦い方は極端に二極化する。例えば、ミラタリオとアルトは互いに技術力がありながら一撃の威力に重きを置いていない。ゆえに、徹底的な流血を強い続ける持久戦が得意になる。
逆に、リナはその一撃に最大の自信を持つ。ゆえにリナのような怪力タイプ同士がぶつかればわずかな時間で決着がつくことが多い。今回はその異なる二つのタイプがぶつかり合う一戦。より練度の高いほうが、戦いの流れを支配する。
そして初撃。
小惑星の衝突のような一撃を、茜は取り出した薙刀で愚かにも受けた。それは単純に力が入らないと高をくくっていたのだ。薙刀自体はリナの処刑斧と同じ王から下賜され代々受け継がれてきた。この程度で砕けることはないが、岸壁のような巨竜の体表にたたきつけられる茜。それでも止まらず巨竜の甲殻を砕き埋まってようやく動きが止まる。
「――っ、この馬鹿力め」
剣気を纏っていなければミンチだった。
「だが、これで――」
リナは落ちていく。
はずだった。
手には鋼線。直径2センチものでスクロールで取り出したようだった。ちょっとやそっとでは切れないものに剣気がまとわりついている。それを見て茜は驚愕した。神域の騎士まで上り詰めればそれに込められた剣気がどれほどのものかくらいすぐにわかる。
唯の鋼線に込められた剣気は明らかに尋常ではない。それこそ、本来なら剣気に当てられて粉々になって然るべきだ。にもかかわらずその形状を保っているということは、剣気を纏わせている。
(一日二日でできることではないっ。わしが知る限り間違いなくリナはそんな器用なことはできなかったはずじゃ。それを成したのは……)
茜はチラリと風月を見る。
「過去の敗北か」
リナの剣気が込められた鋼線は、いくら神域の騎士といえど容易く引きちぎれるものではない。相応の剣気が込められた、鋼線以上の武器でたたき切るのみ。
商業を司る九席に決まった武器はない。あったのは盾。それを融かして再度鍛えたものが茜の持つ薙刀。銘を考えたことはないにしろ、長く愛用している逸品だ。
斬!
一気に振り下ろされた薙刀は鋼線に届くその瞬間に、リナはどこかにつながれた鋼線を引っ張っていた。どこにつながれているかを見ている余裕がなかったために切断する選択をしたが、それは失敗だった。切断が間に合わずリナの体が茜と同じ高さまで言った上に、鋼線がつながれていた先が最悪だった。
「くび!?」
それもヴァーヴェルグの首。
剣気を纏わせたのは着られない対策でも何でもない。剣気をあらかじめ纏ったヴァーヴェルグの首に巻きつけられるようにするためだ。そして処刑斧の重さを合わせて数百キロにもなる重りをつけられてはさすがのヴァーヴェルグでものけぞった。そこへ茜の一撃が振り下ろされる。
リナの力押しの戦いではない。
ありったけの技巧と小技を駆使した一連の攻防はリナの成長そのものであり、茜は驚愕せざるを得なかった。
そして、たたきつけられた薙刀はヴァーヴェルグの首に薄い傷をつけた。剣気を纏った状態では風月をもろともしなかったが、これには反応した。眼だけをぎょろりと動かして茜を視認する。
だが、そこまでだった。
茜の一撃でヴァーヴェルグは巨竜から引きはがされ、重力に身をゆだねるのみになった。
「まずいっ」
鋼線に術に科姉の剣気はなかった。壁にありつき、手から離れていたからだ。だから茜はそれをちゅうちょなく掴み、剣気を流し込んだ。茜もほかの神域の騎士の例にもれず纏わせることが得意ではない。そして、リナのように調整ができないほど未熟でもない。鋼線が自壊しないラインを見極めて剣気を纏わせ、落下するヴァーヴェルグに巻き付いた鋼線をつかむ。
ヴァーヴェルグに歯何としても早い段階で巨竜を落としてもらわないとならなかった。国境ぎりぎりで落とされては、他国が戦争を仕掛けて骸を奪いに来る恐れがあるからだ。
それだけ莫大な利益のためにヴァーヴェルグを落下させなかったのは判断ミスだった。
それを茜が理解するのは処刑斧を振りかぶったリナを目にした瞬間だ。
そう、地面に対して平行に、巨竜に対して垂直に立ったリナを。
もはやワイヤーにかまっていられなかった。
最初の一撃を思えば、片手間に迎撃など考えられない。
薙刀を両手で構えなおして処刑斧と打ちわせる。それだけ巨竜の甲殻が爆ぜ、剥がれ落ちる。
「とんだたぬきじゃなっ」
「もう、いやなの。悔しいのは」
「むふふ、惚れたか?」
「ぶばっ、ほ、惚れてなんて――」
「青い青い」
ふわりと体が浮いた。魔力の制御を誤って巨竜に張り付いていられなくなったリナは目をまんまるにする。
「あああああ!?」
次の瞬間だった。
「ちょっと手伝って」
「うぇ!?」
リナは風月に抱きしめられる。風月は落ちていくヴァーヴェルグをそのまま見逃すつもりなどない。跳躍一つで追いついてくる化け物だ。このまま巨竜を放っておくはずがない。だから、追撃のためにリナをつかんだ。
処刑斧を持ったリナは持ち上げることはできなくても落下位置を修正することはできる。
「そういうことね!」
ゆえに、落下速度と重量と剣気を合わせた一撃がヴァーヴェルグへと降り注ぐ。
轟!
空気を切り裂いて、ヴァーヴェルグは地面に衝突する。リナのふるう処刑斧に挟まれて。風月やリナにもはや音を認識することはできなかった。それはヴァーヴェルグとて同じことだった。
魔の山のごく一部だが、それでも地表を削り大量の土砂を巻き上げ、クレータを作るには十分な威力だった。衝突の威力で風月もリナも弾かれ、あたりに転がっていた。
「――ぐっ」
痛みで悶えながら顔を上げると、土煙の中、赤い光が闇の中ですらまばゆいほど輝いていた。それはヴァーヴェルグの眼光であり、土煙のカーテンを肩で切り裂きながらその姿を現した。
「さすがに無傷とはいかんか」
ヴァーヴェルグの右肩。砕けた白い甲殻とつぶれた肉。その間からどす黒い血液が滴っていた。だが、それもわずか数秒。流血は止まり、肉は盛り上がって、見えた筋肉の間をパテで埋めるように白い甲殻が浮かび上がってくる。
「だが、まだまだだ」
それでもヴァーヴェルグの命には届かない。
結局、ヴァーヴェルグは風月を一瞥すると、再び空を見上げた。それは風月のことが眼中にないということでもあり、今は巨竜を殺すこと以外に拘泥するつもりはないという意思表示だった。
「ちく、しょう……」
立てない、動けない。脳震盪とからでぇのダメージでまともに動ける状態ではなかった。
それでもヴァーヴェルグに追いすがろうと、震える足を地面に突き立てて体を起こすが、すぐに地面に転がった。
そうしているうちに悪竜は朱色の剣気を足に集中させて巨竜へと乗り移る準備を始めていた。
「ワイヤー……」
風月は戦っている最中にみた鋼線をしっかりと覚えていた。それはいまだにヴァーヴェルグの首に巻き付いている。
風月は這っていき、地面にまで帯びたそれをつかみに行く。事実、つかむことは間に合った。だが、ヴァーヴェルグの跳躍力は風月の手から鋼線をもぎ取り、風月お手のひらの皮がずるりと剥けて出血した。
「――っ」
「まだ!」
リナが一気に走り、風月を抱えて寸でのところで鋼線をつかみ、何とかヴァーヴェルグにとりつく。瞬く間に地面が離れ、同時に近づいてくる巨竜。
「……っ」
「リナ?」
苦虫をかみつぶしたような、行ってしまえばリナにふさわしくない表情で巨竜をにらみつけていた。その理由に思い当たることがあった。
「見えてないのかっ」
眼を開けるのも厳しい速度の中で、必死にリナに抱き着き、手を伸ばした。リナの視界に指を三本立てて見せる。
見えないのなら、見えるようにするしかなかった。
「……?」
最初はその意図に気づかなかったリナだが、指を二本に減らした瞬間に悟った。そして指が一本になり、ゼロ本になる。同時にリナは着地の衝撃を膝と腰で殺し切り、風月の命をつないでくれた。
リナが風月を信頼していなければ、確実に風月は死んでいた。
「リナ、ありがとう」
「まだっ」
巨竜につかまろうとしていた風月をリナがもう一度抱えなおすと、再度体が引っ張られた。それは鋼線を首に引っ掛けられたヴァーヴェルグが走り出しことに起因する。
ヴァーヴェルグに引きずられテイク。どこで何をするつもりなのか、それはすぐに分かった。
なぜなら、目を焼くほどの光に包まれたからだ。
巨竜の背。広大な大地であり、新たな生態系を築いた別世界へと足を踏み入れたのだった。だが、それは風月にとって灼熱の痛みを伴う地獄だった。
吸血鬼の力が体内にある時、太陽の光はそのまま毒になる。
リナから見ればその光景は異様だった。一緒に巨竜の背へ転がったかと思えば苦しみだし、数秒後には火の粉を吹き上げた。
「あああああああああああああああああああああああっ!?」
紙が焼けるように一気に火は広がり、その下には何もなかったかのように正常な皮膚が露出していた。
その光景にはさすがのヴァーヴェルグも興味を惹かれたようだった。
風月は体内を直接灼かれる痛みにのたうち、火の粉が消えてようやく痛みが引いた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「それが代償か」
吸血鬼の力。それは強力だが、結局ヴァーヴェルグの命に届くことはなく、その力もいま失った。
「何の騒ぎだ?」
真っ白な髪を風に靡かせた男がそこにいた。
「お前は確か、レギオン」
「ヴァーヴェルグ、なぜここにいる?」
「それは知らんのう」
数秒遅れて巨竜の背へ乗ってきたのは茜だ。
風月はレギオンを見てもいないが、大体どんな人間かはわかる。神域の騎士だ。右手のガントレットがそれを物語っている。
「茜はともかく、リナは何の用だ?」
レギオンが言っているのは巨竜迎撃の順番の話だ。リナはもともと巨竜を迎撃する役回りではなかった。つまりは王から連絡が言っていない。これはリナにとっては有利で、茜にとっては不利だった。
特にレギオンは王命に違反したばかりで王侯貴族とオレウスからにらまれ、翁にはこっぴどく怒られている。王の命令がない以上変なことはしたくないという気持ちが強いのは間違いない。
「何がどうなっている?」
「……」
「……」
茜とリナが互いに顔を見合わせる。
お互いにどっちが正しいということはない。完全に個人の思想で動いているのだ。つまり、どうなっているかを説明することでどう転ぶかわからないのが現状だった。
「今なら殴り放題!」
「あ?」
バッ、とリナが指さしたのはヴァーヴェルグ。
「よろしい、承ろう!」
「リナたちを止めろ。そしたらわしが後で召還に連れて行ってやるから」
「どちらも請け負おう!」
風月は目の前のレギオンがどういう男なのかよくわかった。おおよそ、アルトと堅物と評されるアルトとは魔反対の軟派者で職務より個人の主義を優先するタイプだ。こういう輩は後々痛い目を見ることが多いことを知っている。
同時に、リナと茜にも共通の認識が生まれた。
騎士としての理想像や役職の成すべきことにレギオンは明確なヴィジョンを持たない。それは何を担うではなく、実力から選ばれる四席までの役職に座していることが関係している。そしてプライドはあってないようなものといっても過言ではないくらい人間性が軽い。
つまり、どっちに転ぶかわからない不確定要素だ。二人は結託してこのレギオンの意識を刈り取るほうが早いとすら思った。だが、そんな折でもすべての流れを無視してしまうほどの存在もいる。
「退け、邪魔だ」
レギオンはヴァーヴェルグにいい思い入れがない。やりあって勝てるとも思えない。むしろかかわらないのなら万々歳だった。ゆえに目的を探るレギオン。
「何しに来た?」
「巨竜を終わらせに」
「……?」
何を言っている?
そう尋ねるようにリナたちに視線をやるレギオン。だが、返事はなく二人して目を伏せた。神域の騎士ですらできないことを平然とやってのけるのがこの悪竜だ。常識では理解できないことを押し通してしまう。それが比喩でも何でもないところが恐ろしかった。
「もういい。終わらせるっていうのは巨竜を殺すってことか?」
「それ以外にどうとれる?」
「……わかった」
レギオンは通信霊装を取り出した。
「王に支持を仰ぐ」
斬!
それは霊装を破壊するために動き出したリナを足止めsるるために茜が薙刀をふるった音だ。
「させぬぞ、リナ」
「……茜っ」
そうしている間にレギオンは王に霊装を通じて話しかけ、ヴァーヴェルグはあたりを見回してあるものを見つけた。
それは巨大な亀裂。谷と呼んでも差し支えないほどの傷だ。かつての第四席と第七席が調子に乗った結果、やりすぎてできた傷跡だ。
「痛みは与えん」
風月はそんな状況でも何ができるのかを考えた。吸血鬼の力はなく、ほかにどうにかできる手立てもない。
悔しくて歯を食いしばる。それでもあきらめない風月を見てヴァーヴェルグは口を開いた。
「いつか終わる命。殺してくれと苦しむくらいならいっその事、断ってやるほうがいい。それが許せないというのなら、止めはしない。だが、どうあがいても貴様では勝てないぞ」
「勝てない?」
握りこんだ拳が自壊したかと錯覚するほど力がこもった。
「そんなことは……っ、端から知ってんだよ!」
風月はあきらめられなかった。
反射的に叫び返す。どんな状況でも足掻くことしか知らない。
「勝てないからどうしたんだよ!?」
レギオンも、リナも、茜も。
全員が風月凪沙を見た。
神域の騎士に限らず、騎士たちはみな、勝てない勝負はしない。勝てない勝負をしていい時は国を守る時。すなわち、国家を存続させるために死ぬときのみ。それは騎士全員が知る不文律だ。
ゆえに、騎士たちには理解できなかった。この場であっさりと死ぬかもしれない風月がすべきことは命大事に逃げることなのだ。
「死んだって言い。俺は、俺の旅を見せるためにここにいる! 俺が納得できる終わりを迎えられるのなら今終わったっていいんだよ!」
「つまり、貴様の自己満足のために苦しみ、生きることに絶望している奴の願いを潰えさせるつもりか?」
「知るかよ、そんなもん」
ふと、ヴァーヴェルグの瞳に失望の色が浮かぶ。
だが、その認識は改めさせられることとなる。
「それでもよ、俺はあの時の応えた姿を知ってんだ!」
魔の山で見た。
あふれた光に咆哮を返したあの雄大な姿を。
到来したことを祝福し、恩恵を授けるあの偉大さを。
この世界に来てわずか二週間の風月が知っている。
「どんだけ長い時を旅してきたか……。1000年か万年か。俺には理解できないほど長くこの世界を巡ってきたはずだ。なんて言ってるかなんて俺にはわからないけど、旅を終わらせるのはいつだって自分自身だ。まだ巨竜の足は止まってない」
「ならこの叫びはなんだ?」
「長い旅の一時の弱音」
風月にもそういった心当たりはある。辛い時に辛いと言ってそれでも足を止めなかった。口でそうはいっていても旅を終わらせなかった。
いつでも終わらせようと思えば終わらせられたのに。
「そんなもん拾って他人の旅にずけずけと踏み込んでんじゃねえ!」
「――なるほど。貴様の言いたいこともわからなくはない。だが、圧倒的に足りないな」
「何が?」
「実力」
次の瞬間、風月が見たものは肉薄する拳。
「寝ていろ、風月凪沙」
その言葉と同時に意識を刈り取られた。




