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異世界に飛ばされた俺は旅をした(*リメイクします)  作者: 糸月名
第一章 異世界へと
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第一章 5 〇神域の騎士


奴隷商が営む闇市の店で五百円玉を大金の三〇エルズと交換した。一エルを一円換算すると手元には三〇〇万円ほどだ。しかも物価は日本の十分の一ほど。それを込みで換算すると三〇〇〇万という大金を手にしたことになる。

五百円が化けたものだと感心した。

おかげでエナメルバックは膨らんでいてずっしりとした重さを肩に伝えてくる。

奴隷の首輪用のカギはネックレスのようにして服の内側へしまう。

奴隷商の店は、見た目は古臭いにもかかわらず意外と内装には凝っていて儲かってはいるようだ。並べられた奴隷には値札と共にできることなどが詳細に書かれていた。そして老若男女の様々な種族が首輪に繋がれていて、なんでも器用にこなせる人間には高値がついていた。


「胸糞悪い店だったな」


俺は思い出しつつ呟いた。


「う、むなくそ?」

「ああ、いや、なんでもない。そんな言葉を覚えないでね?」


くまのぬいぐるみを抱く幼女が復唱し言葉を覚えかけたのですぐさま止める。奴隷の主人になって一番に覚えさせたものが〝胸糞〟なんて言葉だったりしたらいくらなんでも自身の正気を後で疑い始めてしまうに違いない。そして、幼女が育った時にどんな大人になるのか想像するのも怖くなった。


「なんだかなぁ、微妙に父性の眼ざめを感じるぞ」

「う?」


こちらを見上げる幼女の頭をぐしぐしと撫でつけた。

この状況にどこか落ち着きを覚えるのはやはり、父親染みた部分が出てきているからだろうか。もっとも父親がいた記憶はない。代わりと言えば、育ててくれたあの男だけだ。


「にしても、奴隷制度か」


脳裏に浮かぶのは生気を失くした目でこちらをぼっと眺めている少女や、助けを請う青年。諦めた女性に、死にかけた老人。奴隷商の店で見た商品達だ。


「奴隷解放運動がこの国で起こらない理由はやっぱり、奴隷の待遇か。より高値で売られた方が待遇がいい、か」


それは奴隷商に聞いた話だった。

奴隷の価値を見出してつけた値段によってその後の人生が分かたれると言っても過言ではない。より高値で売られれば貴族などに買われてメイドや執事などに。安値ならば性処理や重労働によって死ぬまで使い潰される人生が待っている。


「全く、この世界は俺んところと違う意味で腐ってんなぁ」


そういう俺にとって奴隷はまさしく他人事だった。買い取ったのはただただ後味が悪いから。あの状況で見捨てれば、その幼女のたどる最悪の未来を夢に見そうだったからだ。

そして、足掻いていたから。

実際、あの奴隷商の店で奴隷を見ても驚くほど何も感じなかった。つまるところ、俺にとっては奴隷など違う文化でしかない。奴隷にショックを受けても、かわいそうだから奴隷を解放しようとはならない。有体に言えば、諦めているのだ。そして、足掻いてもいない者を助ける気にもならなかった。

ふわふわとした幼女の手を繋いで、ある場所へ向かっていた。


「あれ? この道はさっき通った気がする。む? あっちだっけか?」


気付けば右を見ては首を傾げ、左を見れば肩を竦めていた。

先ほど通った気もするが店が微妙に違ったり、文字が読めないから目印を見つけるのも一苦労。

つまり俺は旅行先の異世界で完全無欠の迷子である。


「うん、行くあてもない異世界で人生の迷子になった……」


考え事をしながらふらふらと歩いているせいである。通いなれた学校の通学路なら歩きスマホどころか目隠し状態でもたどり着ける自信はある。しかし、ここは地球の人間が前人未到の異世界。どこを見ても似たような通路や町並みが広がっていて、迷路のように感じてしまう。


「迷子の迷子の子猫ちゃん~♪」

「う~♪」

「あなたのおうちはどこですか~♪」

「あ~♪」


気付けば死んだ魚のような顔で乾いた笑みを浮かべてやけくそ気味に歌いながら歩いていた。幼女の方はどういう状況か全くもってわかっていないのは明白だった。


「あ~、あの貴金属店の場所がああああ! いろいろ聞きたいこともあったのにっ」


いい加減歩き始めてから長い。飽きを誤魔化すように叫んでみるも、入り組んだ道を右へ左へ、すでにどこの道からここに入ってきたのかもわからない。周りに道を聞けるような人もほとんどいない。

歌っていてもただただ虚しいだけだった。


「マイナーな裏路地に入り込んだかな。早いところ、この裏路地抜けないとなぁ」


頭を抱えるほどの迷路染みた町並みに、人が入り込んでいない理由がうかがえる。影で太陽光も差し込まず、狭くてじめじめしていたが、それでも町並みはこぎれいに見える。


「う、抜けたいの?」

「ああ、そうだよ。とっとと裏路地出たいわ。なんかムシムシしてきたし、不快度指数は地味に上昇してんだよ」


幼女の声に頷く。


「……こっち」

「え? なに、知ってんの!?」


手を引っ張られ前かがみになりながら道を走り行き着いた先は大きなパレードの通り。そして頂上に光る城の方へ視線を向ける途中で先ほどの貴金属店がある通りを見つける。


「あそこ」

「おお、おおお! なんだ、分かっていたなら教えてくれればよかったのに」

「どやぁ」


胸を張ってドヤ顔を披露する幼女を抱き上げて喜ぶ風月。


「こんなことなら早めに聞いておけばよかったな」


人込みで逸れてそのまま迷子になってしまいそうな幼女をそのまま脇に抱えて風月は貴金属店へと向かう。

街中は騒がしく、活気づいていた。しかも騒がしさの八割は値切りの声というのだから驚きだ。


「おいおい。冷やかしならやめてもらえないかね・・・・・・」


トカゲ顔の店主が言った。彼は先ほど鑑定を行ってくれたトカゲで間違いないのだが、風月には声以外で見分ける手段を持ち合わせていなかった。街を歩くトカゲ男が全部この店主に見えてしまうのは最初にあった御仁だからだろうか。


「そんなに金持ってんならここよりもいい店で買えるだろうに。それに、あんなものを持ってきたからな、さぞ目は肥えているのでは?」

「客を冷やかし扱いすんなって。無一文だったのはさっきまでだぜ?」

「知ってるよ。で、何を買ってくれるんだい?」

「うーん」


目は肥えていると言っても、この世界で見れば、だ。実際にどれがどんな価値なのかも理解できないし、金額も分からない。文字が読めないのが致命的で、説明らしきものが書いてあるのに吟味もできない。


「すまんダメだ、買いたいもんねぇや」

「帰れ冷やかし!」


鼻息を荒げる店主に俺は肩を竦めつつ幼女を前に押し出した。


「なら彼女に一番似合う逸品を」

「おいおい、正気か?」


俺の一言に表情の変化が分かりにくいトカゲ男の顔が不自然に歪んだのをしっかりと感じ取った。声には困惑ではなく、侮蔑の感情が込められていた。


「奴隷だぞ……。奴隷に貴金属を与えるのか?」


――カチンと来ちまったぞ、おい。

店主の一言に俺は怒りで頭がいっぱいになった。

なるべく友好的でいかったのにもかかわらず、ついいつもの癖で前髪を止めている髪留めを外し、強い言葉を毒の強い笑みで吐き捨てていた。


「安心しろ、俺にってはすべて卑金属だ。高々数万程度で貴金属なんて御大層なものを名のんじゃねぇ。ド三流の商売の店がつぶせねぇとでも思ったのか?」


売り言葉に買い言葉。今度は口元を怒りに歪ませたトカゲの店主が言い返した。


「どの口が言いやがる! 貴金属に見えねぇってならテメェの目は節穴だ!」


キン、指から弾かれたコインがそこで言葉を遮った。


「『それに、あんなものを持ってきたからな、さぞ目は肥えているのでは?』だったか?」


手には五百円玉が握られていた。


「な、なんでそいつを・・・・・・ッ!?」

「こちとら一つだけのものは大切にするタチでな。二枚あるから売ったんだ」


トカゲの店主はさすがに黙った。


「奴隷が不服ならこれでいいか?」


奴隷の首輪のカギを首から見せた。そして、それを一切の躊躇いなく目の前で折る。


「え、あ?」


奴隷の少女の顔が恐怖に歪んだ。

そのまま幼女の首に手を伸ばす。逃げようとする足は震えて動かない。カギの破棄が何を意味するのかよく理解しているのだ。

もう、解放はない。


「……うあッ!」


くまのぬいぐるみを地面に落とし頭を抱え、その場でしゃがみこむ幼女。その様は純粋な恐怖に怯えていることをダイレクトに伝えてくる。

すぐさま、ガチャリと音が聞こえた。


「お、おい」

「う?」


困惑。それがすべてにじみ出ていた。


「コイツで奴隷の証は無くなった。さあ、このお嬢様に見合う逸品を見繕ってもらおうか」


風月の手には真っ赤な首輪が握られていた。それを地面に落としてから踏みにじる。

段々と表情の晴れていく幼女。その一方で変温動物よろしく体温が低くなり顔が青ざめていくトカゲ店主。


「あ、あんた、奴隷解放は重罪だぞ? どうあがいても死刑は免れない」

「俺はこの国の人間じゃないさ。治外法権ってやつ? いや、違うか。まあ、知らなかったものは仕方がない、一度目は大目に見てもらうさ? それに、奴隷をどうしようが買い取った俺の自由だろ」


とうとうトカゲ店主が折れた。肩を落としてため息をつく。


「分かった、見繕おう」


そう言って店の奥に引っ込み数分、戻ってきた店主の手にはこの店に並べられている装飾や彫金のレベルをはるかに超えたティアラがあった。


「俺が扱ってきた中で二番目に高価な品だ」

「へぇ~、なかなかだな、一番高価なものは?」

「かみさんに挙げた指輪」

「ひゅ~、男前」


トカゲの店主は恭しい態度で幼女の頭にティアラを乗せた。


「ついでにこれをくれ」


風月はショーケースの中にあった腕輪を指さした。

トカゲの店主は部屋の時計を確認してから、腕輪を取り出した。


「全部で一エルズといったところか」

「おいおい、そりゃないだろ」

「売らなくってもいいんだぞ?」


煽りに口をとがらせて反論する。少しととげのあるいい口になっているのは、先ほど一悶着あったせいだろう。


「俺はあんたと友好的な関係で居たいんだ」


そう言って店主に何かを投げる。受け取った店主はそれを見て驚いた。


「これはっ。二エルズ、言い値の二倍だぞ?」

「鑑定の礼と奴隷解放の口封じと友好的な関係。それが二エルズで買えるなら安いもんだ」

そこで、トカゲの店主は気持ち悪いような顔をする。吐き気を催すというよりは罪悪感に苛まれているような印象を受ける。

「ふん、貰っておくよ。さっさと出ていけ、速く行っちまえ! 二度と来るんじゃねぇ冷やかしめ・・・・・・っ」


忌々しそうに時計を見ながら店主は俺たちを追いだしたのだった。

その時は少し気にかかる程度だったが、店の外に出て物々しい雰囲気からすぐに悟った。

衛兵が一人、こちらの行方をふさぐように立っていた。

チィッ、最悪だな。あのクソ蜥蜴、店の奥に引っ込んだ時に通報したか?


「行くぞ」


幼女の手を引いて歩き出そうとしたとき、やはりというべきか、予想通りというべきか、鎧を着た軽装の衛兵が立ちふさがった。


「要件は、分かっているな?」

「やっぱりか、あの蜥蜴野郎っ!」


蜥蜴の店主を睨み付けるが、申し訳なさそうな顔をして目を伏せるだけだった。

俺を売ったが、売ったはずの俺から金を渡されバツが悪くなり、地味な罪悪感に駆られていたのは想像に難くない。


「いくらで、見逃してくれる?」


俺は笑いながら気さくに声を掛けるが、冷や汗が頬に伝っていた。幼女もようやくその雰囲気を感じ取り不安の色に顔を染める。


「全額だ」


考える間もなく衛兵は即答した。ニヤニヤと泥のような笑みを浮かべている。

どの世界も腐っている奴らは溜まるな。だが、背に腹は代えられねぇ……。ここはやるしかないか。

ゆっくりとバックを下ろし、金貨袋を渡そうとする。

次の瞬間。

重量五キロはありそうな金貨のたっぷり詰まったエナメルバックをぶん回し、甲冑を着た衛兵の側頭部へと叩きつけた。

衛兵は大きな衝撃を受けて、気づけば倒れていたのだ。耳鳴りが止まず、側頭部は鋭く熱い痛みを発していることだろう。しばらくは立つことすらままならないはずだ。

ブラックジャックと呼ばれるその武器は速さと重さによって破壊力を叩きだす。現役高校生の発達途中といえど、ほぼ完成した肉体と五キロ以上の重り。それらによってもたらされる破壊力は甲冑越しですら衛兵を殺害しかねない威力を秘めていた。生きていたのはある意味幸運だろう。

そのまま幼女手を引き、倒れている衛兵の横を駆け抜けようとするとき、俺は見た。

腰に剣を携えた青髪の優男が、今まさに抜刀せんと柄に手を掛けているのを。真っ赤なマントを風に靡かせ、銀色の籠手が太陽の光を反射し、優男の手がぶれた。

残像が網膜に焼き付き、次の瞬間には剣は鞘に納められていた。刹那、一迅の風が吹き荒れて風月の髪を激しく揺すっていく。


「……そんな馬鹿な」


思わずつぶやいたのは優男。

もはや、まともな尺度で測るのがバカバカしくなるほどの光景を前にして優男は唖然としていた。

周囲の建物が一刀両断されているこの光景にではない。比喩でもなんでもなく、熱したナイフでバターを切り裂くように滑らかな切断面をしてもなお、優男にとってはどうでもよかった。

しかも剣を振るった男は風月と同等の細身である。どれだけの技巧を凝らしても生身の人間には不可能な芸当をやってのけた。

にもかかわず。

粉塵が舞い、視界の確保も難しい中、ただ一人現実を認識し驚愕するしかなかった。


「加護で強化されたこの一撃を、避けただと・・・・・・っ!?」


優男は確かに斬ったつもりだった。人間という枠を超えた一撃をもってして確実に風月の首を刎ねるつもりだった。事実、刃の軌道は風月の首をかっさらっていくはずだったのだ。


「な、なんだよ。いきなり」


顔を上げると馬鹿でかい斬撃痕が残る壁。その断面はなめらかで大理石のように薄らと光を反射していた。

粉塵が収まり始めてようやく優男は風月に避けられた意味を理解した。


「こいつ、俺が剣を引き抜く前から動いていたのか。しかも、避けるためじゃない」


風月は地面にうずくまるように倒れていた。そして彼の腕の中には銀髪の幼女の姿が。


「庇って守り切れる威力ではない。なのにコイツは守るために?」


無論、風月は優男の斬撃がここまで危険なことを知らない。そしてなぜ庇ったのかすら風月自身にも理解できていなかった。それ以前に、風月に庇った記憶など、一切ないのだ。

斬撃の跡をみて全身から嫌な汗が噴き出すのを感じる。動悸もあり、もし当たっていたらと思うと吐き気すら催した。

そう思う一方で、風月は頭の中が真っ白になっていた。


(本当に、何が起きた? なんで俺はこの幼女を庇ってんだ!?)


何も理解できなかったのだ。


「いったい、何が・・・・・・っ」

「そこの奇怪な格好をした貴様。何者だ?」


赤いマントを靡かせ、金色の髪を掻き上げた男。右手の白銀の籠手には大凡この近辺で見てきた装飾の技術を二回りから三回りほどは優に凌駕していた。

それは剣にも表れていて、鞘からして売れば数エルズにはなりそうな明らかに儀礼用のそれは、おそらくこの国で最高峰の彫金技師が手掛けたものだろう。似てはいるが、違う匠の手によって手掛けられた剣がもう一本腰に刺さっていた。

抜刀されている剣にしてもそうだ。氷のように細く薄い剣は見る者を魅了する。風景を忠実に照らし出すそれは並々ならぬ刀匠が命を削って作り上げたかのような魔性を秘めていた。

だがそれ以上に目に留まったのはマントだ。


「誰もが綿の服を着ている中、一人だけ絹かよ」

「・・・・・・この状況でもヘラヘラ笑っていられるとは余裕だな。何者だ貴様?」


首にレイピアのような剣の切っ先を突きつけられても風月は笑みをはがさない。


「悪かったな、余裕に見えるのはクセでね」


ついた砂を叩きながら立ち上がり、幼女も立ち上がらせる。


「俺の名前は風月凪紗、ただの観光客だよ」

「・・・・・・通報があった。重罪を犯した人間がいるとな」

「ほう、たとえば?」


さらに強く首に刃を突きつけられてさすがに口を閉じる。

脅迫されるとやりにくいんだよな。ああ、こんなことがない日本が早くも懐かしいぜ。

散々に脅迫されてきた風月はこの状況でも余裕だった。それ以上に、破壊されつくした光景を前に感覚が麻痺していたのだ。


「分かっているだろう、ほかでもない貴様が」

「証拠はどこだ?」

「目撃談があれば貴様を無条件でしょっ引けるぞ?」


優男が風月の出てきた貴金属店を睨み付ける。すると怯えた形相でしぶしぶトカゲの店主が出てきた。


「通報したのは貴殿だろう?こいつの罪状を言え」

「奴隷の解放でございます」


かしこまった態度で言った。目の前の優男がかなり高位の人物であることがうかがえる。


「ほう、ならば断罪の対象だな」


優男は軽く剣を振りかぶる、それだけの動作で周りの人間が畏れ慄いた。


「おいおい、そいつは状況証拠だろうがっ。そいつが嘘を言って俺をハメた可能性もある」


たった一人の目撃情報、しかも通報者のものだけで切っ先を向けた優男に必死で食い下がる。


「……それもそうか」今度は二本目の剣を抜き、切っ先をトカゲの店主に向ける。「貴殿の言葉にウソ偽りはないな?」

「はい、当然ながら」

「なら、この断罪の剣に裁かれるはずがない」


優男は天高く剣を振りかぶった。鈍く輝く刃は偽物でないことをひしひしと伝えてくる。


「おいおい、ウソだろ? そいつを振り下ろすのかよ!? 魔女狩りでもやってるつもりかよ!?」

「我が名、アルト・ウルベルク・ベイルサードのもとに決断を下す」


驚く風月を歯牙にもかけず、一切の躊躇いなく、呵責もなく、冷酷無比にその一刀が実現された。

トカゲの店主の首を切り落とす軌道で剣は文字通りすり抜ける。切れ味がとてつもないとかそういう意味ではない。文字通り、すり抜けたのだ。


「嘘はないな」

「な、なんだよそりゃ!? ウソ発見器なんてチートもいいところだ!」


目を丸くして叫ぶ俺をあっさりと組み伏せて、断罪の剣を向ける。


「貴様の言い分も聞いてやろう。ウソを言えば即刻裁つ。理解したな?」


思わず歯噛みした。

チクショウっ、こんなものがあるのかよ。どうやって切り抜ける!? 街中で石材を切断するような一撃をぶっ放す奴に人質なんて使えないッ!

迂闊な答えは死を意味する。

嘘は短命、真実を語れど数分の命。

答えは二つに一つだった。

やってやる、やってやるよ。勝つために、見せてやる。俺の実力をっ!


「俺を、恨むなよ。トカゲ野郎っ」


組み伏せられたまま睨み付ける俺の視線を受けて店主は間が悪そうに目をそらした。


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