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異世界に飛ばされた俺は旅をした(*リメイクします)  作者: 糸月名
第四章 その嘶きは雷鳴に、打ち鳴らす蹄は雷轟に。
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第四章 18 〇見えない敵


風月とレルキュリアは質屋に案内されるまま獣人の里に来ていた。不可視の砦からおよそ半日。風月もこの国においてはそこそこ目立つ容姿だが、それ以上にハイトラが目立っていた。自分の巣を新しい場所に造るための下見も兼ねてチビ助と一緒に散策に来ていた。来ているというのも少し違って正確にはハイトラに首根っこを咥えられて運ばれていた。その様子を見るとチビ助が本当に子猫のように見える。

この親子はあとで離脱するのだが、途中までは一緒の道のりだ。今回はハイトラのお披露目も兼ねての散策らしい。


「このあたりが獣人たちの本拠地だ。僕の店の三号店もここにある」

「よく両方に出店しているな。つながっているのなら襲われてもおかしくないと思うんだがな」

「僕は二つの種族のかけ橋だから。戦争の前段階にも交渉は必要だからね。その仲裁を僕がやっている」

「顔役がいるなら私がこんなものをつけなくてもいいだろ」


右手の声を見るレルキュリア。それは神域の騎士の証であり、レルキュリアは普段使わないものだ。そしてマントも。ここで襲われないためには必須のアイテムだといわれていたが質屋の立場が高いのならこれはいらないものだ。

普段付けないだけあって違和感を覚えるレルキュリアは正装を堅苦しく思うタイプだ。


「運必要だと思っていたんだよね……。でもこうなるともはや僕じゃなくても誰も襲わない」


と言って視線をやるのは風月だ。ぐったりとしているのは出血多量の所為だ。何があったかというとそんなに深い理由はなく、チビ助とハイトラにじゃれつかれて右腕をあまがみされたことによる出血でハイトラの背中に引っ掛けられていた。


「魔獣はこの森では最上位の捕食者だからね。あまりにも強すぎて不可侵の約束がされた」

「破られてなかったかそれ」

「そうだ。みんなうすうす気づいている。だから顔見せが必要なんだ。不可侵を破ったのならこちらも移動するぞ、ってね。エルフのほうも一緒に行くからそのつもりで」

「おい、ガン無視されてるぞ」

「親密度が足りなかったかな?」

「風月が言わないとやっぱダメじゃないか?」


レルキュリアが言っているのはハイトラが最も信頼しているのは風月で、何なら人の言葉が分かるほどの知能があるだけにじゃれついただけで傷ついた風月に負い目を感じているということもある。


「風月、起きてるならお前から言ってくれ」

「……」


風月はぐったりしているが目は空いている。それでも口を開かないのは単純に元気がないからだ。顔色も悪くハイトラの上で布団のように干されながらじっと景色を眺めていた。

周りの獣人たちは様々な種類がいた。馬っぽいのから犬みたいなのまで。風月はそこまで詳しくないが、何となく違う種類であることは理解できた。ほかにも人の要素が濃い者から薄いものまで多種多様だ。むしろ耳と尻尾しかない茜のようなタイプは少ないように見える。

ただし、気になることが一つ。


「怯えてる……」

「あ? ああ、まあそうだな。私も思った」


風月は頼まれたことを無視して考え続ける。風月にとって考えることは旅をすることに等しい。その場で感じたことを考え続けて思い出にとどまらず自らの糧にしようと貪欲に生きている。


「……居心地が悪いな」

「昔はそうじゃなかったんだよ。今だけさ・。すぐに前みたいになる」


弱った風月の蚊の鳴くような声に反応する質屋。過去を懐かしむ顔には、哀しさのようなものがある気がした。

風月だけが旅情に浸り、ほかは比較的物々しい雰囲気にあったまま質屋の店へとついた。質屋と呼ばれているのなら当然質屋を経営していて、古めかしい木で作られた看板だけがその店であることを主張していた。エルフの家は枯れた木をくりぬいたり建材にすることが多いらしいが、獣人たちは粘土を焼き固めた煉瓦のような石材で家を建てていた。ような、という説明に語弊はなく、それぞれの大きさや形が微妙に違っていてそれで意図的に模様を作り出していた。その点だけが風月の知る煉瓦とは大きく異なる。


「此処が僕の店だ」

「……繁盛してなさそうだな」

「やっぱり王都の貴族は店構えしか見ないか」


率直な感想に皮肉を返されカチンとくるレルキュリア。


「店に求められているのは品揃えだよ。うちは質屋として商品を担保にお金を出すだけじゃない、これまでに作った人脈からいろいろなものを仕入れているんだ。今はそんなことないけどね」

「こんな店構えで人が来るのかよ。いい腕の職人がいて、いい商品がそろっていても火tが入らなきゃ腕は見せられないんだぞ」

「そこは、ほら口コミで十分なんだよ。僕は有名だから」


この国で最も名の知れた鍛冶師に向かってどの口を聞いているのか不思議でならないレルキュリアは、それ以上何も言わなかった。おそらく質屋は分かっていながら挑発しているのだ。遠回しに寂れたと言ったことがよほど頭に来たようだ。


「ハイトラ、風月を渡せ」


チビ助を咥えたまま体を左右に振って風月を落とすが、あろうことかレルキュリアと反対側にべちゃりと落ちて風月は地面に転がった。レルキュリアも反応できずに少し憐れみを含んだ視線を送ってくる。居たたまれない気持ちになったのは何も風月だけでなくハイトラも同じで、チビ助だけが無邪気に「みゃあ」と鳴いていた。

未だ自力で立ち上がることも難しい重傷人の風月だが、レルキュリアに米俵のように拾われてもほとんど無反応なのは見ていて心配になる。


「この後でエルフのほうにも回るからハイトラ君はここにいてくれ」

「ハイトラ、行っていいぞ。ここは居心地が悪い」


質屋の言葉を遮りハイトラを追い払う風月。それに不満そうな顔をする質屋だが、風月にとってはどうでもいいことだ。布団のように干されながら観察していたのは何も獣人たちの村だけではない。ハイトラはいチビ助を咥えていることも相まって首をせわしく左右に振って周りの警戒に勤めていた。

曲がりなりにも住処を追い詰め、チビ助を間接的に殺しかけた一派だ。不可視の砦の連中のように助けてくれたわけでも、風月のように本気でぶつかり合ったわけでもない。一方的に約束を破った『敵』なのだ。こんな場所にいたくないという気持ちは嫌というほど風月に伝わった。ここで待機させておくくらいなら特に行った方がマシだと風月は考えた。

ハイトラはチビ助を咥えたままどこかへと走り去っていき、その背中を見送ると今度は質屋が向き直って話しかけてくる。


「君、話を聞いていたのかい?」

「聞いていた。でもどうでもいいだろ。あいつらには関係ない。全部お前らの都合だ」

「此処に残すことにはそれなりに意味がある。言ってないけど、エルフに治癒してもらったとはいえ、いまだに自分で立てないほど弱っている君が戦力を失うのはまずい」

「戦力?」

「そうだ。君は誰も成し遂げられなかったことをやろうとしている。反対派はつきものだ。いくら神域の騎士が強かろうと、数が多ければ守り切れないんだよ」

「だから?」


風月にはそれがハイトラを残すことに結びつかない。


「それも俺たちの都合だろうが。ただ生きていただけのあいつらに何の関係がある?」

「だが君には恩がある。魔獣だってそのくらい理解しているさ」

「その恩ってもしかしてチビ助を助けたこと言ってんのか?」


そうだ、そう言いかけた質屋を黙らせるにように「だとしたら」と風月が声を重ねた。


「お前は俺が思っているよりも最低な奴だ」


あまりにも喧嘩腰で吐き捨てられた言葉にレルキュリアのほうが驚いた。


「テメェらの都合で住処を追いやったせいでチビ助は死にかけた。それを助けようとしていたのはハイトラで、たまたま助けられたにすぎない。ハイトラから見ればここの奴らも俺も同じ人間で、ただマッチポンプじゃないか。俺はハイトラの人を憎んだ眼も、チビ助の絶望した瞳も忘れねえ」


同時に風月にとって第三陣営もほかの二つの種族も同じだった。こんなになるまで魔獣を追いやっている。そうした被害者を目の当たりにすると、言いようのない怒りに包まれる。それを口にしたことはなかったが、質屋の態度を目の前にしてその封が解かれた。


「今、どうしてお前を嫌いなのかよく理解した。見てないだろ、周りの事を。自分中心に何かを隠すことに躍起になってほかの物事を俯瞰して見ている。直視してないんだ」

「……」


風月の言葉に心当たりがありすぎる質屋は黙った。代わりに顎で入室を促す。これ以上風月と言い合いを続ける気はないようだった。

レルキュリアに担がれた風月も有無を言わさず質屋の中へと引きずりこまれた。部屋の中に入ると真っ先に顔をしかめたのはほかならぬ質屋で、あまりの埃っぽさに窓を開け放ち換気を始める。外からの日差しが細かい誇りを照らしてその夥しい量の埃が浮き彫りになり今度は風月が顔をしかめ、心なしか呼吸を苦しくとも浅くゆっくりとしたものへと変える。


「本当に繁盛しているのか?」

「最近の流行は移動販売なんだ……」


無人の中の品物が盗まれていないだけ治安は良いほうだといい方向に解釈することにした風月。


「その辺に適当に腰かけてくれて構わないよ」


レルキュリアがその言葉を言い切る前にその辺にある椅子を引いて風月を下ろす。この部屋にある品がすべて値打ちものだと言われても何も疑わないだろう。そう思えるくらいのも尾がそろっていた。風月が卸された椅子一つをとっても丁寧な職人仕事が光る。非常に細かい意匠がその技術を物語っていた。貴族に治められるような装丁の椅子は座りごこと伊賀抜群だった。柔らかすぎて落ち着かなさは少しあった。

質屋はそこら辺に転がっていた本を取り出すと、いきなり魔方陣が広がりだす。5秒も歩かずに端まで到達できる客間にしては少し広い部屋を埋め尽くすほど大きな魔方陣だ。風月が火の粉を出すのは手のひら程度と言えば、その魔術の規模に気づくはずだ。

魔方陣は基本的に発動する魔術の複雑さによってその大きさが変化する。小さな電子回路の設計図が大きくなるのは細かな線を全て描き切るためだ。同じ理由で魔方陣は大きくなる。紫色の光を放つ魔方陣は部屋に広がって幾重にも折り合わされやがてちょうど風月が入れるくらいの長方形のいたが浮かび上がる。その長方形の部分だけ魔方陣が消えたかと思えば、窓になった。


「これだけの規模でも映像を届けるだけだがね。まあ、秘密の開銀はもってこいかな」


その窓の向こうにいたのは金色の髪をもつエルフ。木と一体化した族長と呼ばれる存在だ。それがいつものように目を瞑ったまま――動く何かを食べていた。それはブレラルという果ての森に多く自生する黒い樹木なのだが、族長の口からはみ出たそれがあまりにも激しい主張を行うようにビタンビタンと跳ねまわっていた。

枯れ木が割れるような子気味の飯尾と共に勢いよくその眼が見開かれ夜空をそのまま瞳にしたかのような瞳が風月を射抜く。あまりの事態に風月の肩が思わず跳ねる。


「……」

「……」

「……」

「……」


誰もが沈黙した。そのまま咀嚼されていき、ブレラルの姿が見えなくなる。

族長は何事もなかったかのように小さな口を右手で抑えるとゆっくりと瞳を閉じた。


「あら、やだ。女性の食事は見てはいけませんよ。秘密がいっぱいですので」


知りたくもない秘密だった。

それでも族長の可愛らしい頬を気持ち悪く内側から押し上げて形を変えていく。中でブレラルが暴れていることは想像に難くない。もう嫌悪感とかそういうものではなく一種の恐怖を覚える。

蛸の踊り食いよりも度胸のいる食べ物だと風月は思った。


「それでは、今後の話をしましょう。風月凪沙。あなたは私と質屋の秘密の気づいたのですね?」

「アリアが来れない場所で話をしたのはそれが理由か。答えはイエスだ。どういう訳かお前らはヴァーヴェルグの名前を知っている。質屋に入ったが、中から情報を漏れないようにするということイコール外から情報を持ち込ませないことにもつながる。それに盗賊をしていたアリアが知らないくらいだ。情報統制があって然るべきだと思った。お前ら二人、外とつながっているだろ?」

「……聡いですね。いや目聡いと言った方ができかくでしょうか。その通りです。私たちは外と繋がっています」

「なんで黙っていた?」

「サンクチュアリには知らない子が多すぎますので、あの場では言えませんでした」

「そっちじゃねえよ」


風月は族長の言葉をぶった切る。


「武器の話だ」

「消えたはずの素材が使われた武器に刻まれた銘が、かつての神域の騎士だった。それがこの地に来たタイミングで立て続けに十席、六席と神域の騎士が訪れたのです。警戒して然るべきとは思いませんか?」


いずれはばれると分かっていました、と付け加える。

続いて口を開いたのは質屋だ。


「今度は僕たちが質問をする番だ。君には探りを入れても無駄だと思うから、単刀直入に聞こう。なんで麒麟がヴァーヴェルグ討伐に手を貸すと思ったんだい?」

「森神がそうだったから」

「……っ」


露骨に態度が変わった質屋。そこへ畳みかけるように風月が言葉を紡いでいく。森神の話を。


「森神はヴァーヴェルグを討伐することが使命だと言っていた。そしてヴァーヴェルグは死を望んでいる。この世界を破壊しつくし自分ですら生きていられないような状況にして死のうとしている。森神にヴァーヴェルグから与えられた使命がそうであるのなら、かつてヴァーヴェルグに仕えていた四獣もそういう指名なんじゃないかと思っただけだ。違っても温厚な性格らしいし、戦うことにはならないと思ってる」

「なるほどね。うん、その通りだよ。ただ訂正するところが一つある。四獣はヴァーヴェルグに仕えていた存在ではない。ヴァーヴェルグによって生み出された存在だ」


意外な情報がもたらされて眼を見開く風月。別段、現状がどう変わるというわけではないが、ヴァーヴェルグの実力を測る情報ではあった。


「確かに麒麟は手を貸すだろう。他の四獣もね。でも、いまは姿を隠している理由は単純明快、この地の内戦だ」

「治めれば姿を現すと?」

「その可能性が高い。なぜなら麒麟は恐れているからだ。この地にもたらされた武器を」


それはむしろ風月にとって納得がいかなかった。ヴァーヴェルグに生み出された存在。ヴァーヴェルグによって課せられた使命が、ヴァーヴェルグを殺すことならばその命に届きうる力を持ってなければいけない。この世界を破壊する怪物、それに近い実力を持つのならば容易く治められるはずだ。

しかしその疑問を口にする前に族長が口を開く。


「この地で命が失われることを何よりも恐れています。武器を消し去るくらい容易いでしょう。ですが、同時に果ての森の多くの命を奪うことになる。だから、麒麟は姿を隠しました。そう言われたのです」


風月は少しだけ考える。

それはわずかな引っかかりだった。

武器は恐らくはるか以前に用意されたもので、このタイミングでこの地にもたらされたことにはおそらく意味がある。


「くそが」


思わず怒気を孕んだ声が漏れる。

誰もが風月を見た。


「この地に齎された規格外の武器は麒麟を殺すためのものだったんだ」


誰かが今の世界をよく思っていない。無政府主義者か犯罪者かわからないが、混乱をもたらそうとしている。

そんな思考が出てきた。そして、その解に至った原因はヴァーヴェルグだ。唐突に表れ混乱を振りまいた。そんな光景を見たからこそ、風月だけが気づいた。この地を滅茶苦茶にしようとしている奴がいる。


「何に気づいた?」


これまで護衛に徹して席にもつかなかったレルキュリアが口を開く。


「この国をよく思ってない奴がいる。この地の問題を逆手にとって、混乱を作るつもりだ」

「……あり得るな。他国、犯罪者、どっかの地方貴族。やりそうなやつが多い」


それは神域の騎士だからこその視点。


「エルフも獣人も引きこもってばっかりでかなり嫌われているからな、この地に混乱をもたらしたいというのならいくらでも敵は思いつく」

「タイミングが意図的過ぎではありませんか? ヴァーヴェルグが目覚めてた直後ですから」

「むしろ意図的だったんだよ」


風月が族長の言葉に答える。


「ヴァーヴェルグとの戦いはここに来るまででほとんど聞かなかった。利に聡いドラクル領ですら、平民たちの間では近々戦いがあるなんて程度だ。だが、その情報で十分だったんだ。ドラクル領はクレイグルと戦い、その直後にまた戦いの噂が広がる。そこへ畳みかけるように果ての森で騒ぎを起こせば、少なからず疲弊する」


風月が悪態をついた理由はこの後だ。


「俺がもし、こんなにも下準備をして戦うのなら、狙うのは国家転覆だ」

「……っ!?」


レルキュリアが眼を見開き、質屋が不愉快そうに眉を顰め、族長は興味深そうに眼を開いた。三者三様の眼が風月へと突き刺さる。


「あれだけの武器を用意したのも神域の騎士を呼び寄せて王都の守りを薄くするためだ。クライシスもそいつらの仕業だと考えた方が良い」

「おい、もう救援呼んだぞ。どうするんだ!?」

「……」


風月は口をつぐんで考える。

相手が下準備をしている時間が長ければ長いほどこの状況は詰んでいる。必死に脳みそを回転させていると、この地に根付いた者たちが口を開いた。


「僕は今すぐこの情報を知らせるべきだと思う。戦いが起こらなければそんなことにはならない。何より、気に食わないっ。この地に住む命をなんだと思っているんだ」

「無理ですね。彼らはやる気です」


声に怒気が混じり、その顔に陰が差す。たいして、涼しい顔のまま反論したのは族長だ。


「なぜだ!? そんな風に利用されていいのかい?」

「だめに決まっています。ですが、エルフのトップである女王にも、獣人のトップである戦人にも、止めるつもりはありません。もとより、それが分かっていたからの第三陣営です。麒麟さえいれば……」


この場にいない存在に頼らなければならないことに悔しがる質屋。

だが、風月だけは違った。


「麒麟が戻ってくることだけはだめだ」


再び風月へと視線が集まる。


「麒麟がいて何百年も平和だった。世代だってまたいだはずだ。その間、知りもしない悪意を帯び続けられると俺は思わない。麒麟が消えて対立が表面化したなんてそんなことを信じたつもりはない。むしろ、癒えた傷をほじくり返して対立をあおったやつがいるはずだ。二つの陣営に内通者がいる。麒麟が戻れば、二つの陣営は麒麟に敵対することになるかもしれない」


普通に考えれば内通者はトップの側にいる。一番上がその判断をしてしまえば、周りは引きずられるだけだ。かつてのナチスドイツのように。

不気味なのは敵の姿が見えないことだ。

これだけの異常が各所に散らばっておきながら、その輪郭は不明瞭で、存在がつかめない。


「……いい方法があります」

「君が表に出るのはだめだぞ」

「質屋、私もそう安易ではありません。もとよりこの大樹から離れれば生きていけぬ身です。だからそれはありません」


質屋は胸を撫でおろす。その意味は分かりかねたが、重要なのはそこではない。


「どうやら獣人のトップである戦人とエルフの女王が話し合いの場を設けるそうです」


族長はこの森に根を張って情報を受取っている。その情報もやはり手に入ってきたものだろう。


「今からそこに向かってください。戦いが起こらなければ敵は動き出すはずです。敵の姿を浮き彫りにしていきましょう。ここから反撃です」


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