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孤児


昼間、孤児についての問題と報告書がラゼルの手元に届いた。そして深夜、ラゼルはその事細かに書かれたリストを手に考える。

 以前、法務部の児童課から派遣を要請した調査員は、どの子どもがどういった性格で、どういった健康状態で、更に孤児になった理由等、色々と調査してくれたようだ。

 矢張り以前より、孤児の数が増えている。しかもここ最近だ。

 その人数の増加が今まで保ってきた孤児院の地盤を揺るがし、食料が以前より質素なものになってしまっている。国で買い上げた物資で一時的に補っているものの、根本的な問題解決にはなっていない。

 税金の振り分けによって、慎重に財務部と審議した末に分配したのだ。孤児院に振り分けた額が足りない訳ではない。


 なぜ、孤児が急激に増えたのか。


 考えてラゼルが手元の資料に目を通そうとしたところで、ノックする音が聞こえた。この時間に訪問するのは二人くらいだ。そしておそらく、こんな穏やかな晩にやってくるのは一人しかない。険しかった瞳が緩む。


「ルカか」

「バレましたか」


 扉を開けて入ってきたのはルカだった。


「如何した?」

「ラゼルがちゃんと寝るか確認しに来た」

「今日はもう少し考えたいことがある」

「そっか。それなら仕方ない……って、これ。孤児院のこと?」

「ああ、そうだが。何かあるのか?」

「何かあるというか、学院時代、孤児院から編入してきたシズって女の子がいて。よくランチしたり遊んだんだ。学院を卒業した今は大手新聞社の敏腕編集長になっちゃったみたいだけど、凄いよねぇ。今でも連絡取る仲だけど……で、何か孤児院に問題があるの?」

 

 不思議そうにラゼルの手元の資料を覗き込んでくるルカに、ラゼルは溜息と共に頷く。


「ああ。ここ数ヶ月で急激に孤児が増えている」

「それっておかしくない? 災害が起きたわけでもないのに。孤児院にいる子って、両親を亡くした子か捨て子が殆どだって、前にシズから聞いたけど、そんな急激に増えるものじゃないよね」

「そこが問題だ」


 ラゼルは机に置いた資料を、とんとんと指で叩く。その叩いた先に問題はあった。そこを見たルカが怪訝そうに眉をひそめる。


「これって孤児になった理由の割合……」

「そうだ。病死や不慮の事故等の親類の死による孤児が21%、両親も分からない捨て子が59%、残りの20%がこれだ」

「……記憶喪失による孤児……?」

「ああ。何か原因があって全ての記憶を失った孤児だ。捨てられたのかも、両親が死んだのかも、探しているのかも分からない孤児だ。自分の名前さえも分からない。そしてこの孤児たちは皆、虚脱状態になっている。声をかけても何をしても殆ど反応がない」

「明らかに変だよね……記憶を取り戻す方法は?」

「催眠療法は駄目だった。だが……あるには、ある」


 ラゼルが苦々しい表情を浮かべれば、それに気付いたようにルカが重々しく口を開く。


「……そっか。魔術なら記憶を取り戻せる、と」

「そうだ。回想の魔術を使えば、問題の孤児たちは記憶を取り戻すことができる。ただ……」

「思い出さない方が良い、と思っている?」

「そうだな。思い出すことで更に精神的に負荷がかかるかもしれない。だが……この記憶喪失の孤児をこれ以上増やすことはできない。院長からもう許可は出ているから、明日にでも孤児院に行く予定だ」


 そう告げると、ルカが何か言いたげにしていた。


「どうした?」

「ダメ元で言うんだけどさ、それ……私も行ってもいい?」

「……何故だ」

 

 ルカの予想外の言葉にラゼルが疑問を投げかければ、ルカが真剣な眼差しで言う。


「ほら、さっき言ったじゃん。敏腕編集長になったシズのこと。シズがね、孤児院での暮らしは楽しかったって言ってたの。孤児院の院長にも感謝していたし、孤児院を支援してくれた国王陛下にも感謝してた。そんな子が育った孤児院が今、悪い状況に進んでいると知ったら、じっとしていられないと思った。それに私は将来、ラゼルと一緒にアクアフィールを守らなくちゃならない。それなら、今からちゃんとこの目で見ておかないといけない。現実を」


 ルカのそんな強い眼差しにラゼルは黙考の末、口を開く。


「正直言ってお前を連れていきたくない」


 だが、とラゼルは続ける。


「お前は頑固だからな。頑固で、お節介だ。足手まといとお前自身分かっている癖に、それでも傍観することなんてできない。だからここで俺が止めたとしても、お前のことだ。一人でも訪問するんだろう」

「容赦ない言葉だけど的を射ているなぁ。流石ラゼル。それじゃあやっぱり駄目?」


 困ったように首を傾げるルカに、ラゼルは呆れ気味に答えた。


「……駄目だと言ったらお前が一人で行く。それなら俺が連れていったほうがいい。……言っておくが視察だけだ」

「! 分かった、ありがとう。邪魔にならないように気を付けるよ」


 そう言って笑うルカに、ラゼルはやれやれというように溜息を吐く。


「お前は変わった奴だな。普通王子の婚約者なら、宮廷で大人しく刺繍なりお茶会でもして過ごすものじゃないか?」

「残念ながら刺繍は好きじゃなくてね。それに、そんな私が好きなラゼルは相当な変わり者だけどね」


 にやにやと笑うルカに、ラゼルは頬をつまむ。痛いよ、とルカは文句ありげに言う姿を見て、少しだけ溜飲が下がる。つねった頬を痛そうに撫でるルカに、ラゼルは時計を見て「そろそろ寝ろ」と言う。けれどルカは大人しく従う気が無いらしい。腕組みして口を開く。


「ラゼルがちゃんと寝るか確認しに来たって言ったでしょう?」

「……もう少し時間がかかると言ったが」

「それならラゼルが寝るまで、私も色々孤児院の状況とか知っておく」


 そう言うとルカはラゼルの対面に座って、ラゼルが読み終わった書類に目を通していく。その真剣な姿にラゼルは本当に変わった奴だと思いながら、資料を読み進めていく。

 それから暫くお互い無言で、各々書類を目を通していると、そういえば、とルカが口を開く。


「孤児院では文部科学学院の生徒が、教育実習で交代制で勉強を教えに来てくれたって前に聞いたけど、学院への編入試験が通らなかったらどうなっているの?」


 それも孤児に関する問題のひとつだった。丁度その資料を見ていたラゼルは答える。


「確かに学力をつけ、学院の編入試験に通れば助成金が出て、その後の就職も安定する。だがお前の言うように試験に落ちた者は行き場がない状態が続いている。日雇いの労働ばかりだ。若い内はいいが歳を重ねていくにつれ、その生活を続けるのは難しいだろう。だから今、工場や新聞社、各専門店への就職を打診している最中だが、学歴がないと受け入れられないという声が多い」

「成る程……つまり学歴がないと、『ただの孤児』というイメージから脱却できないんだね。そのイメージの所為で育てる価値が見込めないから、各社が突っぱねる訳だ。言い方は悪いけど、何をやらせても駄目な子、という感じ?」

「そうだな。近年益々学歴社会になりつつあるから、それも問題なんだが……」


 山ほど問題はあるとラゼルが思っていると、ルカが口を開く。


「それじゃあ試験前に孤児の子たちが興味のある分野を体験してみるのは? お互い良い刺激になると思うけど」

「体験?」

「インターンシップ……じゃ伝わらないか。ええっと、要は地元の商店なり工場で孤児の子が実際に仕事を経験してみるの。例えば一週間とか、一時的に。そこで、その店のオーナーにその子がどんな子か知ってもらう。孤児であっても優秀な子もいるだろうし、しっかりと仕事をする子だと分かれば、認識が変わるのでは?」

「一時的な雇用か……その条件なら呑んでもらえそうだな。考えておこう」

「まぁ嫌だって言う店が多そうだけど、どこかがその条件を呑んで良い結果を残せば、その制度も徐々に認められていきそうだし。もし条件を呑んでくれる店があったら、孤児院で一番に優秀な子を送るのがいいだろうね。その子をきっかけに孤児に対するマイナスイメージも消えていくかも。全部理想論なんですけど」


 そこまでルカは言うと急にぼんやりとした。さっきまでの勢いがどうしたのかと思ってラゼルが声をかける。


「どうかしたか?」

「いや……学院卒業してからパートナー探しが嫌で舞踏会から逃げて、二年も好き放題していた自分が情けない……」

「お前、2年間何してたんだ? 何故パートナー探しをしなかった?」


 そういえば知らなかった2年間の余白をラゼルが聞けば、うーん、とルカは振り返るように答える。


「後者は前話した通り、前世の苦い記憶があった所為。でもって2年間何していたかというと、読書かピアノ」

「ピアノは分かるが読書は何を読んでいたんだ? ここに来てからは薬術や語学関係ばかりだが」

「えーっと、哲学、倫理学、心理学、あと芸術史と古典文学。それから月刊誌の最新医学とか犯罪心理学。犯罪心理学なんて最近色々と分かってきたばかりだから面白いし、連続殺人が秩序型か無秩序型かにパターン分けらされるとか、犠牲者の選び方とかそういうのを色々と。だから過去から現在までの国内外の有名な殺人鬼は大体知っているし、その殺人鬼の特徴も手口も、精神状況も知っているよ」

「…………」


 思わずラゼルは閉口してしまう。黙り込んだラゼルにルカは不思議そうな顔をする。


「何か変だった?」

「いや……ただ何故お前は、俺の婚約者なんだろうなと思っただけだ」

「幻滅した? やっぱり遊び放題だったから婚約破棄したい?」

「違う。婚約破棄も却下だ。ただ……俺の女に対するイメージとはかけ離れていただけだ。お前はそんなに知識を蓄えて何になるつもりだったんだ?」


 語学にも薬術にもやたら熱心だとは知っていたが、ここまで知識に貪欲だと思わなかった。

 ルカは難しい顔をして答えた。


「何も考えていませんでした」

「……そうか」


 予想通りの回答だった。

 しかし様々な知識も身につけてきたとなると、なぜ総合学院に通ったのかと不思議になる。ラゼルの通っていた特異合学院は無理だったとしても、のめり込む癖があるルカのことだから、専門分野に特化した学院に入った可能性だってあるのに。

 総合学院は学ぶ分野は広いがその分浅い。その為学生の多くが総合学院に通うのだが、いわゆる「学院」に入るのは11才の初等部からだ。学院に入る前は「初学院」と呼ばれる学校に通う。


 11才ならある程度、自分の知識レベルも把握しているだろうし、ルカは一伯爵令嬢だ。専門学院への入学金などにも困らないだろう。それにあの卓越したピアノなら、芸術学院に入学することすら容易いことだ。


「ラゼル、何考えてるの?」

「お前が何故、総合学院を選んだのか気になった。何故だ?」

「一番気楽そうだったから」

「…………そうか」


 勿体ない、という言葉はこの為にあるのかもしれない。そんなふうにラゼルが考えているなど思いつきもしないのだろう。


「さてと、とりあえず私もこの資料は軽くだけど目を通したし、ラゼルもいい加減寝よう? 明日に備えてさ」

「そうだな。あとは現地で直接話してみるしかない」


 そう言ってお互いに部屋を出て、ラゼルは軽く指を鳴らして明かりを消して施錠した。 








 翌朝、執務室でローブを纏ったラゼルとルカは、半日だけグラムに政務を任せて外へと出た。空はどんよりと曇っていた。

 いつもはラゼルが外に出る時、きちんと礼をする兵たちはまるで気付いていないかのように立っていた。不自然に思ったのかルカがラゼルにひそひそと尋ねてくる。


「ねえラゼル。兵の人に無視されてない……?」

「無視じゃない。見えないんだ。不可視の術を施したローブだからな。ローブを着た者同士しかお互いが見えない」

「なるほど……」

「だからフードは取るなよ。魔術の効果がなくなる」

「了解です」


 朝の街を歩きながらルカはラゼルに尋ねる。

 

「孤児院って街の中心街の割と近くにあるんだよね」

「そうだ。街の端に設けてしまえば、孤児たちが危険だからな」

「私のイメージだと目立たないところにあるイメージだったけど、街の人に孤児院を意識させるためには良いかもね。どうしても物理的な距離があると、自分とは関係ない場所って印象が強くなるし。歴代の王様たちは凄いなぁ」

「その分反発も強かったと聞いたがな。……それよりお前、何故それを持っている」


 ラゼルが赤い瞳でルカの腰元にある──剣に目をやれば、ルカが嬉々として答える。


「宮廷の刀鍛冶の人にお願いして作ってもらったの。武器庫にある奴より軽いやつを。切れ味はいいけど刃こぼれしやすいから長期戦には向かないって言われたけど、問題はないでしょう。少しくらい自分の身は自分で守りたいからね」

「それは良いが……お前、剣を扱えるのか?」


 するとルカは、へへ、と照れくさそうに笑う。


「実はグラムに稽古つけてもらったから。グラムって教えるの上手だし、褒め上手だし、女の子にモテるんだろうなぁ」


 何となくルカがグラムをべた褒めしているのが気に入らず、ついラゼルは無言になってしまう。確かにグラムは男前だ。学院時代も女子生徒から人気があり、告白されるところも何度か見た。ラゼルと違ってグラムは明るく話し上手で、ありとあらゆる面で頼もしい男だ。

 だからこそラゼルは自分と比べてしまう。

 もっと愛嬌があれば、とか。

 話し上手であれば、とか。


 平たく言えばグラムが羨ましいのだ。


「ラゼル。今、グラムのこと考えてたでしょう?」


 その言葉にどきりとする。


「……何故そう思った」

「だって私がグラムを褒めた途端に不機嫌そうになったから。不機嫌……というより、嫉妬?」


 にやりとルカが言った言葉に、ラゼルは心完全に見抜かれたことに思わず閉口してしまう。すると「やっぱり」と楽しげな声が聞こえた。


「私がグラムと仲良くしていたことに嫉妬したのか、それとも明るいグラムに対して嫉妬したのかは分からないけど、私は今のラゼルが好きだなぁ。この世の誰よりも一番好き。そんな無表情を気取るくせに、内心では嫉妬しちゃうところも可愛くて好き」


 無邪気に笑うルカはまるで小さな子どもを見るような目をしていた。ラゼルはその目から目を逸らし、うるさい、と言う。


「ルカ。お前最近、俺を子ども扱いするようなっていないか?」

「だって可愛いんだもん。まあでもそれだけ私に素の姿を見せてくれていると思うと嬉しいよ。あのラゼルにこんな可愛い一面があるなんて誰も思わないからね」

「……うるさい。さっさと行くぞ」

「嫉妬の次は照れ隠しですか。ま、了解でーす」


 どんどんラゼルの心の内を当てていくルカからラゼルは顔を背けて、歩を進める。本当は早足で歩きたい所だが、そうするとルカが遅れてしまうのでルカのペースに合わせるように歩く。そうしている内に孤児院が見えてきた。



 孤児院には時刻を報せる鐘のついた青い三角屋根が設けられ、金色の国章が刻まれている。腰元ぐらいの壁の奧には広々とした緑の芝の運動場と、大きな規模の真っ白な建物が見える。渡り廊下で繋がった学舎と居住区は、とても食糧難に陥っているように見えない。実際、孤児院からの報せがなければラゼルも、孤児の急増に気付かなかった。


 ラゼルはローブのルカと共にフードを脱ぐ。門戸が開けば、その音に気付いたのだろう。すぐに孤児院の院長がやってきた。白髪を結い上げた院長は以前見たような優しい面差しはなく、逼迫したような、憂いを帯びた表情をしていた。


「ああ殿下。ご足労頂き感謝します……お知らせした通り、孤児が急増しておりまして……詳しいお話は中で致しましょう」

「すまない。案内を頼む」


 今は授業中なのか建物全体がしんとしていた。陰鬱な天気が一層、事態が芳しくないように思わせた。落ち着いた応接間に通されると、院長はラゼルとルカにお茶を出した。ルカに気付いた院長が「こちらがご婚約様の……?」と尋ねてくる。ラゼルが頷けば、ルカが挨拶した。


「ルカ・フォン・ランケです。お話を聞きたくて訪問させて頂きました」

「そうですか。ご婚約様にまで気を遣って頂いて……ありがとうございます」

「いえ、お気になさらないでください。それより、今現在の孤児院の状況を教えて下さいませんか?」


 ルカが尋ねると院長は深い溜息をついた後答えた。


「ここの子どもたちのお話は以前、殿下が派遣して下さった方のご報告通りの状況でございます。今まででしたら孤児院の経営も問題ありませんでした……けれど」

「記憶喪失の孤児か」


 ラゼルが言うと院長は重々しく頷いた。ラゼルは困窮した院長へと尋ねる。


「具体的に言うと今現在いるうち何人くらいの子どもが記憶喪失によるものだ?」

「昨日また4人増えて、もう50人を超えています」

「50人以上? 報告書には40未満とあったが」

「殆ど毎晩、数人の子どもがこの施設の前に座り込んでいるのです。どの子どもも、何を聞いてもほぼ無反応で……まるで魂を抜かれたよう……」


 ここまで増加していて、しかも孤児となると明らかに疫病ではなく人為的なものを感じる。考えたくはないが何かの実験体にされている、という可能性が高い。身寄りのない子どもや隣国からの誘拐により子どもを得て、何らかの目的を元に実験された。その実験が成功したのか失敗だったのかは分からないが、いずれにせよ実験の対象となった子どもが記憶喪失になったのだろう。

 

 実験、となると薬剤の実験だろうか。

 だが薬剤といってもドラッグから医療用薬剤もある。そう考えると犯人の層を絞り込むのは難しそうだ。それならば被害児童をよく調べるべきかもしれない。

 不意にルカが口を開いた。


「その記憶喪失の子どもたちの腕に、発見時に注射痕などはありましたか? 若しくは見付けた直後、口内や体臭から独特の匂いがした等。気になる点はありましたか?」


 どうやら同じことを考えていたらしい。ルカが尋ねれば、院長は困り顔で答えた。


「申し訳ありません……そこまでは確認できていませんでした。ですが昨晩来た子どもが1人おります」

「そうか。今すぐ会うことは可能か?」

「勿論です。授業にも参加できない状態なので、今居住棟におります。一緒に参りましょう」


 ラゼルはルカと共に院長へとついていく。掃除も行き届いており、清潔だ。ルカの友人であるシズが孤児院時代は楽しかったと言っていた通り、孤児院の運営はうまくいっているようだ。ただそれも今や揺らぎつつある。


「こちらです」


 通された部屋は多目的ホールで広々としていた。その隅に50人近くの子どもがいる。

 その中から院長が昨晩来た1人の少年を連れてくる。12才くらいだろうか。ラゼルを前にしても無表情のまま、瞳は虚ろで、本当にまるで魂を抜かれたようだった。全身は洗われているものの、痩せ細った手や腕が痛々しい。ラゼルは思わず顔をしかめる。

 ラゼルは院長に少し席を外すよう促せば、院長は恭しく礼をしてホールから出て行った。





ここまでお読み下さってありがとうございました。

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