第91話『樹海で試射』
ボンズ魔導銃専門店で大量にゲットした魔導銃を試射するためにナナン樹海へとやってきました。
ゲットした魔導銃の内訳は。
・マスケット型っぽい魔導銃1丁(弾数12発)
・バズーカ型っぽい魔導銃1丁
・リー・エンフィールド型っぽい魔導銃2丁
・スナイパーライフル型っぽい魔導銃1丁
・ショットガン型っぽい魔導銃1丁
マスケット型以外は全て弾丸は無い。だから試し打ちをするのは当然マスケット型だ、構造はシンプルな作りなのでファーの簡単な説明で装填はらくらく、大量買いした俺たちが樹海に試射しに行くと聞いたエルさんがアドバイザーとしてファーを同行させてくれた。
「撃った時の反動が大きいから注意しなさい」
「了解」
ファーは背中に自分の身長よりも長いバズーカ砲っぽい魔導銃を背負いながら細かい注意点まで丁寧に教えてくれる。
ロックオンアームとの連動は問題ないと、あとは威力と命中精度だな。
『カズマ、ブラックボアを見つけたのね、ちょっと挑発したら怒って真っすぐ突っ込んでくるよ』
バイザーの通信機能からノネの声が聞こえてくる。
「ねぇちょっと、まさかいきなり実戦で使うつもりなの」
「了解、ノネは危なくないように退避してくれ、魔導銃の試射をする」
「ちょっと声かけてるでしょ、無視しないでよ」
「姉さん、聞いた通りブラックボアが接近中なのでお静かに」
「できるなら静かにしてるわよ、いいから聞きなさい、確かにその魔導銃なら当たればブラックボアレベルも一撃で倒せるけど、魔導銃を狙った場所に当てるのはとても難しいのよ、動く的に当てるなんて不可能――」
せっかくの解説だけど、もうすぐそばまでブラックボアが近づてきたので引き金を引く。
なかなかの発射による衝撃を伝え銃口から飛び出したのは魔力の塊で実弾ではなかった。どうやら魔導銃の中で専用銃弾は魔法へと変換されたのだろう。
魔力弾はロックオンアームのサポートを受けて、狙った場所、ブラックボアの頭部を撃ち抜く。
「うん、確かに命中率はあまりよくないね、狙った場所から数センチずれてる」
「威力は通常弾のリボルバーと同程度のようですね」
「実弾じゃなくて魔法が発射されるのはリボルバーとの違いだな」
銃弾は魔法を込める器なのか、よくわからないけど銃と銃弾の魔法が合わないと発射できないのか、だから魔導銃本体を作った職人じゃないと銃弾を作ることができないと。
「なるほどなるほど」
「動いてるブラックボアを一発で当てるなんて、ジャンアーセナル、あなたもあの創造主と同じ異世界人てことね」
なんか大変不当な評価を受けている気がするけど、つっこむと藪蛇になりそうな気がするので試射を続けよう。
「ノネ、西の方に魔物の反応があるからまた誘導してくれるか」
『まかせてなのね』
ノネの元気のいい返事を聞きながら今度はリー・エンフィールド型っぽい魔導銃を手に取る。
「ちょっとちょっと、それの弾はもう無いって伝えたでしょ」
「わかってるけど何とかなるかも、実験してみる」
「なんとかなるわけないでしょ、エルだって二百年近く研究してダメだって結論を出したんだから」
マスケット型の銃弾の形を参考に、下級魔結晶を装填できる形に『変形』させてこの魔導銃の弾丸になれとイメージして『弾丸』と『付加』してみた。下級魔結晶は強力な付加をすると割れてしまうけど、今回は上手くいってくれた。
ガチャンと銃弾がちゃんと装填されたと音が鳴る。
「カズマ、連れてきたよ」
通信ではなく、姿を現したノネが直接報告してくれた。
現れたのは通常のゴブリンよりも一回り大きいゴブリン。
「対象検索、該当あり。『ホブゴブリン』ゴブリンが進化した個体で引っ掻きや噛みつきが主な攻撃手段です。遠距離攻撃は持っていません。討伐レベル41」
ホブゴブリンは手の届かない高さを飛んでいるノネを叩き落そうと腕を振り回していたが、こちらに気が付くと牙をむき出し襲い掛かってくる。
「発射」
ちょっとだけ心配だったけど制作した銃弾はちゃんと適応してくれた。
銃身のなかで魔法に変換され火の玉となって飛び出す。
「ギャー」
ホブゴブリンにはオーバーキルだった、周囲の草木ごと焼きつくす。
「まさか炎の弾が出るとは、火事にならなくてよかった」
「ちょっとちょっとちょっと、どんな効果なのかもわからないで、なんで銃弾が制作できるのよ、理不尽よ、非常識よ、とにかくあり得ないのよ!!」
マシンガンのように強烈な言葉のオンパレード、耳がキーンとするほど声量だった。
「まあ、それが俺の能力だから」
「なんて理不尽な能力」
「ですが引き換えにマスターは戦闘能力を一切もっていません。アクティブがなければ伝説の魔剣を装備してもゴブリン一体と互角レベルです」
「うるさいわ!」
「その魔導鎧、アクティブだっけ、それがあれば戦えるんだったらそれでいいじゃない」
「いいこと言う。さすが長女、よし帰ったらファーにもアクティブ作ってやる」
「はぁ? その魔導鎧ってどう見ても魔導銃よりも高額よね」
さすがシルヴィアの姉だな、アクティブの纏う魔力で上位魔結晶が使われていることを見抜いているみたいだ。購入した魔導銃は最高でも中位魔結晶までしか使われていないので、アクティブの方が高額なのは間違いない。
「マスターは気に入った女性にアクティブをプレゼントするのが趣味なので遠慮なくもらってあげてください」
「とてつもなく豪快な趣味をもっているのね、セブンのマスターって」
「私の名前はシルヴィアです。次にセブンと呼んだら姉さんのことをワンちゃんと呼び続けますよ」
「わ、悪かったわよ、次からちゃんと呼ぶわ」
「よろしくお願いします姉さん」
妹に怒られる姉なのだが、見た目だけだと姉に怒られる妹にしか見えない。
「さて、次の試射をしてみようか」
「マスター、レーダーに魔物の群れと追われている人の反応を捉えました」
レーダーの索敵範囲を広げると逃げる三つと追いかける群れが映し出された。
まだ離れているけど、徐々に群れが逃げる三人に迫りつつある。
「シルヴィア、群れの強さってどのくらい」
レーダーに映る情報は同じだけど、魔力のパターンなどをSOネットとリンクさせ解析する能力は魔導人形であるシルヴィアの方が圧倒的に高い。
「魔力パターン検索、該当あり、討伐レベル12ガマンティスの群れ、魔力数値が高い個体が数体、上位個体もいるようです」
「群れが固まり過ぎて数が正確に数えられないけど三十以上は確実、五十はいないってところか、この程度なら俺たちだけでもなんとかなる」
広げていた魔導銃をすばやくコンテナに収納してホバーブーツ全開で救援へと向かう。




