第84話『三色のチェイス』
「気合のバンカー!!」
気合のこもったカリンのパイルバンカーがカエルの頭部とカマキリのような体を持つ魔物ガマンティスに炸裂する。
気合で威力はかわらないけど、一撃で粉砕している。
まだ冒険者になっていない幼い少女のたった一撃で倒される討伐レベル12の虫型魔物ガマンティス。大きさは1.2メートルほどで群れる習性があるのが特徴だそうだ。
なぜカリンが魔物と戦っているのか。
はじめはこんな予定ではなかった。
カリン、フット、ミルフィ、子供用三機のアクティブアーマーが完成したからテストがてら村をちょっと外に出ただけなのに、俺にシルヴィアそして手が空いていたから付いてきたリンデもフル武装ではあったがあくまでも念のためで、魔物の出る森には入っていない村が視認できる位置でテストしてただけ、村の人たちもこの辺りはめったに魔物が出ないって言っていたのに。
それなのに森から魔物の群れが出てきた。
「魔物は出ないって聞いたのに」
「絶対出ないわけじゃないけど珍しいわね」
「討伐レベル12ガマンティス。高く飛び上がるジャンプ力からの両手の鎌と口からの毒液攻撃があります」
SOネットで検索した結果をシルヴィアが読み上げる。
「ジャンプしての鎌攻撃か、けっこう攻撃力ありそうだな」
「決まればの話だけどね」
今まさに高く飛び上がったガマンティスが両手の鎌を赤いアクティブを装備したカリンへと振り下ろしてくるが。
「もう一発、バンカー!!」
カリンのパイルバンカーが鎌砕き胴体を吹き飛ばす。
「どうよ」
「カリン、余裕があるなら倒し方も考えろ、それじゃ素材が取れないぞ」
「ガマンティスで換金できる素材は鎌と魔結晶です。カリン様その倒し方ですと換金素材が全てダメになります」
魔物を発見した時、子供たちの安全を考え素早く処理しようとしたら、守られる立場のはずのカリンが待ったをかけた。テストに来たんだから魔物相手にテストさせて欲しいと訴えてきたんだよ。
討伐レベル20以下ならそれほど危険な魔物ではないので、危なくなったら助けに入ると条件を出して許可した。いつでも助けに入れるように準備していたが、ほとんどカリンが一人でガマンティスの群れを蹴散らしている。
「素材か、そうですよね」
カリンはバンカーの杭を戻し変わりにメインウェポンである伸縮魔槍ストロングランスを構えブースターで加速すると別のガマンティスの頭部だけを突いて破壊する。
「シルヴィアさん、これならどうですか」
「完璧です」
今日初めて装備したアクティブアーマーをカリンは使いこなしているな、子供用だから使いやすさは意識したけど。
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■製造番号AW-06T-N・機体名『チェイス・レッドナイト』
◇中量級突撃型 ◇カラー「レッド」
◇素材 軽量鉄材
◇機体構成
「コア(C)」上級魔結晶
「ヘッド(H)」チェイスヘッドギア
「ボディ(B)」軽量アイアンボディ
「ライトアーム(AR)」バンカーアーム
「レフトアーム(AL)」軽量アイアンアーム
「レッグ(L)」アクセルグリープ8(最大8倍)
「バックパック(BP)」突撃ブースター
◇武装
・メインウェポン(AR)……伸縮魔槍ストロングランス
〃 (AL)……マジックバリア型シールド
・サブウェポン(AR) ……右腕部内臓パイルバンカー
〃 (L)……魔導ショートソード
〃 (BP)……魔導式連射型ボーガン
◇補足
カズマがカリン専用に制作したアクティブアーマー。チェイスのバリエーション機の一つで接近戦が得意なカリンの個性を生かすための突撃型、接近戦の邪魔にならないように固定シールドは装備せず、必要な時にだけ発生するマジックバリア型のシールドを装備している。チェスのナイトがイメージモデルのためヘッドギアを装備したカリンの髪がポニーテールになっている。
コアを上位魔結晶にしているので伝達効率があがりスィンバンカーのアクセルグリープよりも加速性能は上である。
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「あ、ごめんフット抜かれた」
素材を気にせず暴れていた時は大丈夫だったが、倒し方を気にして数匹がカリンを抜けて後方にいたフットとミルフィにせまる。
「もう姉さんは調子にのるとボロが出るんだから」
フットもカリン同様、慌てることなく青いアクティブの両腕に装備されている双盾を構えガマンティスの鎌を弾き勢いを止めると、盾から伸びる牙のようなファングブレードで頭部を切り落とした。
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■製造番号AW-06T-R・機体名『チェイス・ブルールーク』
◇中量級防御型 ◇カラー「ブルー」
◇素材 軽量鉄材
◇機体構成
「コア(C)」上級魔結晶
「ヘッド(H)」チェイスヘルメット
「ボディ(B)」強化アイアンボディ
「ライトアーム(AR)」バンカーアーム
「レフトアーム(AL)」アイアンアーム
「レッグ(L)」アクセルグリープ8(最大8倍)
「バックパック(BP)」収納コンテナ
◇武装
・メインウェポン(AR)……ファングシールド
〃 (AL)……ファングシールド
・サブウェポン(AR) ・・・…右腕部内臓パイルバンカー
〃 (R)……連射式魔導ボーガン
〃 (L)……魔導ショートソード
◇補足
カズマがフット専用に制作したアクティブアーマー。チェイスのバリエーション機の一つでミルフィを守れるような機体がいいとリクエストを受けたので防御力を特化させている。メインウェポンは両腕それぞれ装備している牙を模したブレードが付いているファングシールド、ショルダー部分にワイヤーが内臓されておりファングシールドと連結させることでグライダーナイフのように射出しコントロールできるようになっている。
イメージモデルはチェスのルーク。防御力は三機の中で一番高い。
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「すごいパワーだ、これなら僕も戦える」
カリンを迂回して迫るガマンティスに盾を突き出す。
「ワイヤー接続、いってファングシールド!」
二つの盾がグライダーナイフのように射出されヨーヨーのように回転してファングブレードでガマンティスを切り裂いていく。
「さすが姉弟、息がピッタリだな」
「開拓村に閉じ込められた経験もあるからね」
群れの中央に突撃したカリンが囲まれないようにフットが見事なサポートで死角のガマンティスから倒していく、ピンチになったら助けに入ろうとしていたが圧倒的で掠り傷一つついていない。
「あーもう数だけは多いわね」
「どこかで大量発生したのかな」
問題になるのは数の多さだが、戦っているのは前衛の二人だけではない。
「ミルフィお願い」
「わかりました」
「フット!」
「わかってる。ミルフィは僕が守る」
盾を戻し黄色いアクティブの前で双盾を構えるフット。
「ウィンドロットセット、えっと、魔力チャージ」
ミルフィの装備する黄色いアクティブ。カリンやフットの機体に比べて軽量で、二機にはない魔導杖をバックパックに三本も装備していた。
そのうちの緑色のロットを取り魔力チャージのキーワードでバックパックに内臓された魔力生成装置が動きだし、生成した魔力を緑色の魔導杖ウィンドロットに流し込んでいく。
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■製造番号AW-06T-B・機体名『チェイス・イエロービショップ』
◇軽中量級支援型 ◇カラー「イエロー」
◇素材 軽量鉄材
◇機体構成
「コア(C)」上級魔結晶
「ヘッド(H)」チェイスヘッドギア
「ボディ(B)」軽量アイアンボディ
「ライトアーム(AR)」バンカーアーム
「レフトアーム(AL)」軽量アイアンアーム
「レッグ(L)」アクセルグリープ8(最大8倍)
「バックパック(BP)」魔力生成ユニット
◇武装
・メインウェポン(AR)……ウィンドロッド
〃 (AL)……アイアンシールド
・サブウェポン(AR) ・・・…右腕部内臓パイルバンカー
〃 (BP)……フレイムロッド
〃 (BP)……ウォーターロッド
◇補足
カズマがミルフィ専用に制作したアクティブアーマー。チェイスのバリエーション機の一つで回廊魔法しか使えないミルフィのために魔力を流せば属性魔法を発動できるロッドを三種類装備している。背中には魔力生成ユニットもあるので2種類の魔法の同時使用も可能。レッドナイト、ブルールークと同時運用が前提なため防御力、接近戦闘能力は低いが魔法攻撃から回復まで広域支援能力は三機の中で断トツに高くなっている。
イメージモデルはチェスのビショップである。
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「チャージ完了、二人ともはなれて、ウィンドキャノン発射!」
ミルフィの合図で離脱するカリンとフット、安全を確認したミルフィがウィンドロッドから魔法のトリガーを引くと、周囲の空気を大量に吸い込み、強大な質量をもった風の塊が撃ちだされた。
ウィンドキャノンは群れの中心に着弾して爆発、バイザーのレーダーに映っていた魔物の反応がすべて消滅する。
この威力に一緒に観戦していたリンデも唖然とする。
「ミルフィって風魔法使えなかったのよね、それがすごい威力ね」
「あ、ああ、うまく成功したな、これでミルフィもカリンたちと一緒に冒険者になれる」
生まれつきの才能か上級魔法である回廊魔法が使えるミルフィだが、不思議なことに下位魔法である火、水、風、土の魔法は一つも使えないとのことだったので考えた装備だ。SOネットに魔力を流すだけで属性変化できる杖があると書いてあったので、付加で再現してみたのだがここまで威力がでるとは思わなかったことは黙っておこう。




