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第83話『プロトタイプ・チェイス』

 カリンたちの家を修繕した翌日の早朝、俺はシルヴィアと一緒に冒険者ギルドにやってきた。ノネは眠いというので部屋に置いてきた。一日の半分以上は寝てるんじゃないかと思うほどノネは良く寝る。早寝で遅起きそして昼寝といい身分だ。

 俺も昨夜は遅かったので寝坊したいけど仕事がある。期日は正確に決められていないが、リンデが早くこの村を出発したいことを知っているので引き受けた依頼を迅速に終わらせよう。

 受付のお姉さんは俺のことを覚えていてくれたので、ギルマスの依頼が完了したと伝えたら、すぐに奥へと通してくれた。


「本当にたった一日でできたのか、王都の技師だって制作に一ヵ月かかったんだぞ」

「あー、その技師の人が複数の仕事を抱えていたのでは」

「確かに忙しい技師殿だったが、それでもたった一日で作れるモノなのか」


 制作した義足を受け取ったギルマスが一日で作ったなど信じられないと言葉をこぼすが、正確には夕方宿に戻ってから夕食を取る前の十分くらいで制作したことは秘密にしておこう。


「これは!!」


 そして、俺の作った義足に付け替えたギルマスがさらに驚きの声を上げた。


「まるで自分の足のようだ、それにこれは魔力か、義足の中から魔力を感じるぞ、まさか魔道具なのか」


 正解。『補助』と付加した下級魔結晶を埋め込んでいるので、装着すれば歩行を補助してくれる。


「たった一日で魔道具を作るなど」

「戦いは苦手だけど、道具作りは得意なんだ」

「得意ってレベルではないぞ」


 ギルマスはその場で屈伸したり軽くジャンプしたりと感触を確かめている。


「違和感が殆どない、これなら現役復帰すらできそうだ」

「よかったですね」

「他人事のように」


 他人事だしな。


「依頼は達成ですか」

「文句なく達成だ。残りの二つの依頼も成功させ早く正式な冒険者となってくれ、冒険者ギルドはお前のような優秀な冒険者は大歓迎だ」

「ああ、残り二つも終わってるんだった、帰りに受付に報告していきます」

「な、なんだと」


 驚愕のギルマスを残して俺は受付へと戻る。これで今日から俺も冒険者だ。さっそく依頼を受けたりはしないけどね、カリンたちの機体制作があるから、一刻もはやく宿に帰って作りたいのだ。


 プロトタイプは完成している。難しい機能はつけていないのでいくつかテストをして、それから三機のバリエーション機を作る計画だ。


「そうだ、プロトタイプのテストをリンデにお願いしてみよう」

 そうと決まれば宿に戻ってリンデに頼まないと。




「おおー、かっこいいのね」


 泊まっている宿屋の裏庭、ちょっとしたスペースが空いていたので機体のテストのために使わせてもらっている。昼食の時間になってようやく目を覚ましたノネが、カリンたち用に設計した機体のプロトタイプ『チェイス』の試着をしてもらっていたリンデを見てかっこいいと連呼してリンデの回りを飛び回る。

 流石は光の精霊だ。このデザインの良さがわかるとは。


「マスター、それは知能レベルが同じだけで、光の精霊は関係ないと推測します」

「シルヴィアさん、やっぱり俺の心読めるでしょ」


 ニッコリと微笑むだけで答えてくれない。


「カズマくん、これでいいのかな」

「サイコーなのね、キレイでかっこいいのね」

「その通りだな」

「そ、そう」


 褒めたたえるノネの賞賛に少し恥ずかしそうにしている。チェイスを装備したリンデ、いつもの凛々しい騎士オーラが消え、着なれないドレスを着た少女状態になっている。これはこれでかなりカワイイと思ってしまう。


 この機体は子供たちが使うことを前提に設計したから、戦闘力よりも使い勝手の良さを追求した。プロトタイプはチェスのポーンをイメージしたシンプルさが特徴になる。


「痛いところとか、動きにくいところはないか」

「ちょっと待って」


 恥ずかしそうにしていた顔が騎士モードに戻り、その場でゆっくりと腕を伸ばし、肩を回したりして各部分を細かく確認していく。


「スィンバンカーより軽いのに力強さを感じる。肩も違和感なく動かせるな、これなら剣を思い通りに振れる」

「よし、ならこれでチェイスは完成だな」


==============================

■製造番号AW-06-P・機体名『チェイス』

◇中量級汎用型 ◇カラー「ホワイト」

◇素材 軽量鉄材

◇機体構成

「コア(C)」上級魔結晶

「ヘッド(H)」チェイスヘッドギア

「ボディ(B)」軽量アイアンボディ

「ライトアーム(AR)」バンカーアーム

「レフトアーム(AL)」軽量アイアンアーム

「レッグ(L)」アクセルグリープ8(最大8倍)

「バックパック(BP)」小型収納コンテナ

◇武装

・メインウェポン(AR)……魔導式連射型ボーガン

   〃    (AL)……アイアンシールド

・サブウェポン(L)……魔導ショートソード

   〃   (AR)……右腕部内臓パイルバンカー

◇補足

 カズマがカリンたちの機体を作るために制作したチェイスのプロトタイプ。発展性を持たせるためにシンプルな作りになっている。バンカーだけはカリンの強い要望により最初から標準装備された。

 魔導ショートソードは魔力を流すと切れ味が上がる。魔力を流さなければ普通のショートソード。

==================================


「約束したリンデの専用機ができるまで、それを代用機として使ってくれ」


 今回はコーティング剤が豊富に手に入ったので、着色してボディカラーを白にしてみた。スィンバンカーと違い、丁寧に細部の形を整えている。


「いいの、私としては助かるけど、お世話になりっぱなしだし」

「気にしないでくれ、ウルフクラウンの機体を改造してわかったんだけど、スィンバンカーの素材に使った悪魔像のパーツが限界に近かったんだ。遠慮なく使ってくれ、感想や問題が出た時に報告してもらえれば、今後制作する機体の参考にできるからさ」

「それに都市サウスナンに向かうためにも必要になるはずです。アクティブの有る無しでは到着時間が大きく変わります」

「わかったわ、この恩も含めて必ず返すね」


 遠慮気味のリンデの説得にシルヴィアも加わって無理やりに納得してもらった。シルヴィアのいう通り、アクティブの有る無しでは移動速度がかなり違うので、バァルボンさんの分も後で作っておかないとな。


 でも、その前に頼まれたカリンたち三人の機体を完成させよう。

 まずはカリンの機体を組み立ていると、通りの方からどよめきが聞こえてきた。


「なにごとなのね!」


 様子を見に行くノネの後に付いていくと、村の外から同じウルフメイルを被った六人組みが一人一匹ブラックボアを担いで帰ってきたところであった。ウルフクラウンはウルフバンカーを装備してさっそく狩りに行っていたようだ。一人で倒せれば一人前の冒険者、新人殺し、昇進の壁、といろいろと呼び名があるブラックボア。

 この村に滞在する冒険者チームでもそれなりに倒せるだろうが、一人一匹は不可能に近い。


「ようカズマ、新しいバンカーは最高に調子がいいぜ」


 先頭にいたダラスがこちらに気が付きバンカーを掲げてみせる。


「見ろよこの獲物の山、これなら三日くらいでサウスナンに行く準備ができそうだぜ」

「わかった。俺もそれに合わせて準備を終わらせるよ。リンデもそれでいいよな」

「もちろんだ、私としてもできる限り早くサウスナンに戻りたい」


 ダラスたちがいるからかリンデの口調が騎士に戻っている。

 サウスフロト王国第三都市サウスナン。このナナン村からサウスナンに向かうルートは主に二つある。一つはナナン樹海と呼ばれる森を突っ切るルート。距離だけなら徒歩で三日ほどらしいが、多くの魔物が生息して冒険者でも上位の実力がないと十日以上かかってしまうらしい。

 二つ目のルートは樹海を迂回するルート。こちらは比較的安全だけど徒歩で十日かかる。

 危険な近道か、安全な遠回りか。


 この二択どちらを選ぶか、サウスナンを目指すメンバー、俺、シルヴィア、ノネ、リンデ、バァルボンさんに冒険者チームウルフクラウンで話し合った結果、アクティブを装備して近道を行こうと全員の意見が一致した。


 すぐに出発しないのは、樹海を走破するためのアクティブ以外の食料や野営用の道具を揃えるために準備が必要だからだ。ウルフクラウンはあのブラックボアを換金すれば必要な道具を揃えられるのだろう。


「食料や道具がお金で買えるってありがたいよな」

「そうだね」


 ふとこぼれたつぶやきにリンデが同意してくる。

 小腹が空いたら24時間のコンビニなどでいつでも買えたことが、開拓村に閉じ込められて、日本にいたころの当たり前がとても有難かったと理解できた。

次回は来週の火曜日に投稿予定です。

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