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第81話『フットの幼馴染』

ブックマーク、評価ありがとうございます。

誤字脱字報告もありがとうございました。

 どうしてこうなったんだろうか。


 俺は三つの依頼を受けた。だから一個ずつ片づけようと、最初にカリンたちの家の修理をやっていたはずなのだが、今ではウルフクラウンが修理するのを眺めながらアクティブアーマーを制作している。


 武器屋のノイマンも手伝っていたが、人手が十分だとわかると、武器屋へと帰っていった。彼はギルドで依頼を受けたわけではなく、人手が足りないと予想しての無償の助っ人だったので、抜けても誰も文句はない。


「坊主、すぐにバンカーの杭を作れないか」


 との一言で制作に入ったわけだ。


 残ったのはカリン達一家とウルフクラウンに俺とシルヴィア、開拓村の時に制作現場を見られているので、だからもう隠すのはいいかと開き直っていた。


 建築に杭など何に使うのかと思えば、庭を塞いでいた岩や枯れた木の根をバンカーで粉砕して資材置き場にしていた。


「忘れてた、バンカーの本来の使い方はこっちの方が正しいのか」


 さらに作業効率が上がって本当に俺が手伝う必要もなくなったので、その流れでカリンに頼まれたアクティブの図面を書いている。


 自衛で村近くの魔物を撃退できるくらいの攻撃力と畑仕事を手伝うらしいので、農作業に必要な機能、後は。


「パイルバンカーは絶対に欲しいです」


 子供にまで大人気のパイルバンカーを取り付けることが決定した。


「お姉ちゃん、さすがに図々しすぎるよ」


 子供用アクティブを制作しているので希望があるかと聞くと、喜び希望を出す姉と遠慮する弟に分かれた。


「気にするな、俺は気に入った奴にはどんどんアクティブを着せていきたいからフットの分も作ってやるよ」

「僕の分もですか」


 まさか自分の分まであるとは考えなかったようだ。だが甘いせっかく着てくれそうな存在がいるのに俺が見逃すはずがない。


「シルヴィアやってくれ」

「了解しましたマスター」


 ホバーブーツまで使ったシルヴィアは素早くカリンとフットの背後へと回り込む。


「それではお二人の採寸をさせてもらいます。あちらの影でよろしいですね」


 ヒョイと二人を小脇に抱え上げる。


「採寸ってなんですか」

「アクティブアーマーはそれぞれ個人専用に作られます。なのでそれぞれ身体データが必要になります」

「はいわかりました」


 元気よく返事するカリンと顔を青くするフット、物陰で採寸と聞いてどのように測るのか理解したのはフットだけのようだ。


「あ、あの僕は自分で測るから」

「ご安心ください、このシルヴィア採寸は特技の一つです。0.01ミリまで誤差なく測ってみせましょう」


 そこまで測る必要はないんだけど、食事とか運動の後では体も変わるんだし、それに二人は成長期だ。有る程度余裕を持たせておいた方がいいな。


「フットくん!? どうしたの?」


 物陰に連行され服を脱がされているところに、カリンとは別の少女の声が聞こえてきた。


「ミルフィ!?」


 ミルフィ、あの子がフットが好意を寄せている相手か、年齢は双子と同じくらいだけどカリンよりも細い体つきだ。青い瞳に長く腰まで伸びた稲穂のような金色の髪が似合う大人しそうな少女、将来はリンデ並の美少女になりそうだ。


 カリンから聞いた話しではミルフィの方もフットに好意を寄せているらしい。十歳から幼馴染と両想いとは草食系の顔してフットはかなりの肉食系だな。


「カズ兄が私たちのアクティブを作ってくれることになって、今は採寸をしてるの」

「アクティブですか?」

「昨日話したでしょ、悪魔像を倒したものすごくカッコいい魔導甲冑なの!」


 よく言ってくれたカリン。お前もついにアクティブの魅力に気が付いてくれたんだな。お子様用だから手軽に制作しようと思っていたが、そこまでアクティブの魅力を理解してくれたのなら、その期待に答えなければならない。


 それに、カリン、フット、ミルフィの三人をセットにすると、昔読んだラノベにありそうな組み合わせだな。


「よし決めた。ミルフィだったよな」

「はい、私はミルフィです」

「俺はカズマ、カリンやフットと一緒に開拓村から脱出してきたんだ」

「あなたがカズマさんなんですね。二人からお話しはお聞きしています」


 年齢の割に丁寧で大人びた喋り方をするな。


「君の分のアクティブも作るからシルヴィアから採寸を受けるように」

「わ、私の分もですか」


 フットと似た反応をする。


「いいのカズ兄」

「これからは三人で動くんだろ、だったら一人だけ仲間外れにするのはかわいそうだろ」

「どうして知ってるんですかカズマさん!」


 雰囲気でそんな気がしただけだけど、あと物語とかだと定番などと言っても通じないだろうな。


「さすがカズ兄、三人で十二歳になったら冒険者になって一緒に冒険団を作ろうって約束してるんだよ」


 まさに定番ど真ん中。


「私は戦闘が苦手なんですけど、十二歳からお金を稼げるのは冒険者が一番なんです」


 家庭の事情とかもありそうだ。


「ミルフィは回復魔法が使えるじゃないか、大丈夫だよ、前衛は僕が頑張るから一緒に冒険者になろう」

「ありがとうフット、一緒に頑張る」


 若い二人が見つめ合ってる。甘じょっぱいなー。


 普段はオドオドしてるフットがすごい男前の発言をしているぞ、よしわかった。君の願いを聞き入れガンガン行ける前衛の機体にしてあげよう。


「まったくいつもこうならどこに出しても自慢できる弟なのに」

「フットがこうなるのはミルフィの前だけなのか」

「そうなの、フットにも男の意地が一応はあるみたい」

「男なんてそんなもんだ、ミルフィは回復魔法が使えるなら支援系だよな、だんだんイメージが沸いてきた」


 三機編成のチーム運用を前提に機体の図面にイメージを書き加える。


「連携が前提なので機動力は同じ方が移動に便利だよな、それに加えて前衛には瞬発力を加えれば十分接近戦にも対応できるだろう……」

「マスターが本気の製作モードに入りました。今のうちに採寸してしまいましょう。さぁミルフィ様もお洋服をお脱ぎください」

「え!?」

「まって、まだ僕がいるんだけど」

「将来見せ合うなら少し時期が早まったと思えばよろしいではないですか」

「ちょっとシルヴィアさん、どうしてそうなるんですか、僕とシルフィはまだそんな関係じゃありませんよ」

「え、フットくん」


 なんかシルフィが泣きそうな声を出しているな。


「ちょっとフット、シルフィのことは遊びだったの」

「え、あ、違うよ、遊びじゃないよ、ただ僕は」

「ただ僕は何よ!」


 近くでカリンとフットがケンカをしているのか、相変わらず仲がいいよな。サーチバイザーで画面一杯に図面を広げているのでカリンたちの姿は全く見えなくなっている。カリンの機体はリンデとの朝練を見た時から何となくイメージはできていたので、その機体をベースに他の二人の機体も書き上げていく。


 図面と図面の間の微かな隙間からフットがカリンに頬をはたかれている様子が見えた。


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