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第79話『ドルファンとお話』

「たったの金貨三枚でいいのか、わかったすぐに用意しよう」


 ぼったくり価格なんですが、心底ホッとしたようなドルファンさんの表情に言いづらくなる。


「やりましたねマスター」

「やったのはお前だろ」

「それで、話しは変わるのだが」


 また真面目な顔に戻ったな、今度はどんな話だろうか。


「君たちが着ている鎧もそうだが、冠の狼が装備している鎧も今まで見たことも無いモノだ。ダンジョンから獲得した物なのかね?」


 ダンジョンから発見した物と勘違いしたのか、俺が知っているダンジョンはシルバーメイズだけだけど、シルヴィアみたいな高性能魔導人形が眠っていたほどだ、少佐級を倒せる魔導甲冑を手に入れたと考えても無理ないか。


 でも実際は俺が作ったアクティブアーマーなんだよな、どうしよう正直に話すべきなんだろうか。


「ん~」

「未発見のダンジョンを独占したい気持ちはわかるが、どうだろう。そのダンジョンの情報を我々冒険者ギルドに売ってくれないか、我が冒険者ギルドは未発見のダンジョンを見つけた者にも悪魔像討伐と同じように懸賞金を出している。場所を秘密にして個人で攻略するよりも、情報を売って稼いだ方が安全だぞ」


 ダンジョンの場所ってシルバーメイズの場所を教えるってことか。道中の悪魔像が排除されたから、もう誰がたどり着いてもおかしくない。開拓村が再建されでもしたら半年もたたずに発見されてしまうかもしれない。


『マスターよろしいですか』


 シルヴィアがサーチバイザーにメッセージで通信してきた。声に出したくない内緒話しか。


 俺は視線操作で登録されている短縮キーワードを使い聞き返す。


『どうした』

『メイドの分際で差し出がましいのですが、シルバーメイズのことはできれば内密にできないでしょうか』


 まあ、あそこはシルヴィアの実家みたいなモノになるのか、そう考えると他人に踏み荒らされたくないって気持ちもわかるけど。


 でも開拓村が再建されたらじきに見つかる気もするが。


『自力で発見されたのなら仕方がありません。以前の私は訪問者を待っていた立場ですから』


 返信もしていないのに心を読んで会話が成立している。さすがだ万能メイド。


『ですが今のシルバーメイズは、特に地下はマスターがいろいろ改造してしまっています。人に見せるのはよろしくないかと、伝えるのでしたら、その前に正規の手順で攻略して所有権を確立した方が良いでしょう』


 正規の手順で攻略すると所有権ってもらえるの。


『はい、ですがその説明は長くなりますのでまたの機会に、ギルマス様が不審そうな顔になっています』


 やべ、シルヴィアのメッセージを読んでいていつの間にか黙り込んでいた。


「ギルマス、ちょっとした誤解があるようです。この魔導甲冑、アクティブアーマーと言うのですが、これはダンジョンで手に入れた物ではなく、俺が自分で作ったものですよ」

「なに?」

「マスター!?」


 おや、シルヴィアまで驚いてるな、さっきまで心を読んでメッセージでやり取りしてたのに、俺がアクティブの事を話すとは思わなかったのか。シルバーメイズのことを秘密にするなら、同じくらいのインパクトのある秘密を暴露しないと覆い隠せないだろ。


「ほう、その異常な魔力を宿した魔導甲冑を自分で作ったてっか」

「まあ信じられませんよね」

「わかってるじゃないか」

「でも本当のことなんですよね、どうしたら信じてもらえます」

「新しい魔導甲冑を作ってみせてくれ、それなら誰もが信じるだろう」


 よし、話題をダンジョンからアクティブに誘導することができたぞ、でも誘導した後はどうしようか、適当なモノを作って信用させるのがベストだけど。


「そうですね、でも、そうすると俺が魔導甲冑を作れるって知れ渡ってしまいますよね、俺にはデメリットしかない気がしますが」

「甲冑で商売するなら宣伝になると思うが」

「今のところ、不特定多数相手にアクティブを製作するつもりはありません」


 アクティブは広めたいけどまだ製作する地盤もできていないのに、欲しがる人が増えてもな、リンデの機体すらまだ作れていないのに。


 一機丸々じゃなくてパイルバンカーだけ渡してみるか、ウルフクラウンには大人気だったから、他の冒険者も好きになるかもしれない。


「横から失礼します。ギルマス様、質問よろしいでしょうか」

「なにかね」

「ギルマス様の御足ですが、もしかすると義足でしょうか」

「座っているのによく気がついたな」


 ドルファンさんが体を傾け杖を使いながら立ち上がった。


「受付ホールで噂話を耳にしましたので」


 もっともらしい情報原だけど絶対にギルマスの体をスキャンしたな。それにしても義足か、杖が無くても歩くくらいは出来そうだけど、戦闘とかは無理そうだな、せっかくの鍛えた体なのにもったいない。


「マスター」


 ああ、そういうことか、シルヴィアがドルファンさんに高性能な義足を作ってはどうかと提案してるんだな。最近はからかってくるくせに、こんな場面になると自分から提案するのではなく俺の口から言わせて、俺の価値を上げようとしてくれている。


 久しぶりに俺にはもったいないメイド様だと感じました。


「ドルファンさん、その義足よりももっといい義足を作ったら信用してくれますか」

「なんだと」

「さすがにアクティブ一機作るには時間がかかるので、義足ぐらいでしたら明日までに作ってお持ちできますよ」

「明日までだと!?」


 ありゃ、俺はまた非常識な発言をしてしまったのか。


「……マスター」


 なんでそこでシルヴィアがため息をつくんだよ、義足の提案はもともとあなた様のモノでしょ、それがどうして、そんなまたやってしまったかみたいな顔をするんですか。


「この義足は王都で三カ月もかけてようやく完成したものだぞ、それをたった一日で」


 三カ月ですか!?


「あー、えっと、アクティブの応用で作れそうだなって、イヤなら無理にとは言わないです」


 ありゃーー、めちゃくちゃ睨まれてますけど。どうしようと悩んでいたら、意外な人物が助け舟を出してくれた。


「ギルマス、いいじゃありませんか。ためしに作ってもらう分には支障はありませんよ、最近若者を鍛える時に違和感がするとおっしゃっていたじゃないですか」


 これまで俺たちの会話を黙って聞いていた受付嬢さんの助言で、ドルファンさんが眉間に寄せていた皺をとぎほぐす。


「……そうだな、作ってもらうだけなら支障はないか、もし本当にこの義足より良い物を作れるのなら、ダンジョンの件は忘れてやる」

「あはは、了解しました」


 さすがはギルドマスター、ダンジョンの件忘れていませんでした。


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