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第78話『ギルマスと対面』

 村の武器屋では全身鎧に必要な分の鉄材に少量の魔結晶を購入できた。


 魔結晶に関しては低級で小粒のものしか買えなかったけど、まあ、SOネットで調べた相場とそれほど違わないのでボッたくられてはいないだろう。


 でも、フゥオリジンを改造に取り掛かるほどの量でもないので今回は修理のみにとどめた、修理だけなら夕方からはじめて夜には終わっているので昨日は徹夜していない、でも修理しているうちにもアイディアが浮かびサウスナンにいったら改造すると心に決めた。


 リンデたちは少佐級討伐の懸賞金が無事にもらうことができたので、今日は一日使って旅支度をするらしい。


「だるいな」

「マスターが軽はずみな行動をするからです」

「気づいたなら注意してくれよ」

「いえ、私も今回は問題が起きてから気が付きました。マスターの日ごろの突飛な発明のせいでマジックワンドを映写機に改造するていどは些細なことだと判断してしまいましたが、常識に照らし合わせると非常に非常識です」


 非常に非常識ってなんだその言い回しは。


「マスターの異常レベルを表現する言葉です」

「心を読むな」

「私はメイドですので、主の心を察するのも仕事の一つです」

「ただ、からかっているだけだろ」

「肯定します」

「しないでくれ。ああ、ギルドに行くのめんどくさいな」


 リンデに旅支度の買い物に一緒にいかないかと誘われたけど、登録したばかりの冒険者ギルド、それもギルドマスター直々にお呼び出しがかかってしまった。


 熟睡して疲れは取れたはずなのに、重たく感じる足を引きずってナナン支部へとむかっている。


「あれ、カズ兄だ」

「ホントだ、カズマさんおはようございます」


 宿からギルド支部へ向かう途中でカリンとフットの姉弟と遭遇した。二人はもともとこの村で生まれたらしく、住んでいた家もまだ残っていたらしい。俺やリンデはもうすぐ都市を目指すので彼女たちとはこの村でお別れとなる。


「アクティブ直ったんですね」

「昨日の夜にな、壊れたままだと落ち着かないし」

「さすがカズマさん、仕事が早いですね」


 アクティブを装備している俺とシルヴィアのコンビは目立っているので二人も遠くからすぐに俺たちだとわかったそうだ。


「今日はリンデ姉と一緒じゃないの」

「リンデは買い物、俺は冒険者ギルドからお呼び出しがかかってな」

「それじゃ私たちと目的地同じだね」

「さっそくやらかしたんですねカズマさん」


 カリンは一緒に行こうと笑顔で俺の横に並ぶが、フットよさっそくやらかしたとはなんだ。まるで俺が最初から問題を起こすことを前提にしていたかのような挨拶だな。


「何言ってるのよフット」


 そうだカリン言ってやれ、弟のしつけはちゃんとやるんだ。


「カズ兄が初対面の人に衝撃を与えるのは当たり前よ」

「カリン様はマスターをよく理解されています」


 ちくしょう、リンデ以外に俺の味方はいないのか。


「それでカリンたちは何でギルドに向かってるんだ、冒険者じゃないよな」


 冒険者登録できるのは十二歳からだとギルド規約で決まっているはず。確か二人は十歳くらいだったはず。


「依頼を出すの、昔住んでいた家は残ってたんだけど、三年も放置されてたから傷みがひどくって」

「おじいちゃんやお母さんと相談してギルドに家の修繕の手伝いをしてくれる人を募集することにしたんです」


 冒険者は魔物の討伐だけが仕事ではない、町中の仕事、荷物の配達やカリン達が依頼を出そうとしている。建築や土木工事の手伝いなんかもあり、けっこうな重労働なのでランクの低い冒険者などは、町中の依頼を受けて体を鍛えたりもするらしい。


 カリンたちと出会った場所はギルドのそばだったので少しの雑談をしている間に到着した。


「それじゃカズ兄、私たちはあっちだから」

「おう、またな」

「マスター、私たちはあちらですね」


 カリン達は依頼を受け付ける受付カウンターに、俺は昨日ダラスさんたちが交渉していた冒険者用のカウンターに、中ではキレイな声の受付嬢さんがニコリと頬笑み待ち構えている。完全にロックオンされているな、恋愛感情とは別の感情で。


「お待ちしておりましたカズマ様、ギルドマスターがお待ちですのでこちらへどうぞ」

「おい、あいつ昨日登録したばかりの新人だぞ、あの黒くて変なメガネはまちがいない」


 バイザーで俺だと特定されたか、これは変なメガネではないサーチバイザーだ。

「ああ、今日は変な鎧を着てるけど間違いない」

「ギルマスがいきなり会うって異常だろ」

「それより二人の着ている鎧も非常識なほどに魔力が宿ってるぞ、ダンジョンの獲得品か」


 今日はよく異常だとか非常識だって言われるな、俺は村に着いてからほとんど何もしていないはずなんだけど。


 好き勝手噂されているのを背中で聞きながらギルド支部の奥の部屋へと案内された。


 そこには鍛えられ引き締まった体に短い髪を逆立たせた、ガッシリタイプのバァルボンさんと違う細身の戦士が待っていた。


 受付カウンターの周囲にいた冒険者とは一回りも二回りも違う威圧感がある。紹介されなくてもこの男性が冒険者ギルドの長であると納得させられた。


「突然の呼び出しすまんな、俺がナナン支部ギルドマスターのドルファンだ、大概の奴はギルマスと呼ぶ、カズマくんとシルヴィアくんだったか、君たちも好きに呼んでくれ」

「わかりましたギルマス」

「了解ですギルマス様」

「珍しい新人だな、呼んでくれと頼んでも大抵の新人は萎縮して呼べないものだが」


 確かにギルマスのドルファンさんは怖い雰囲気があるが、嫌な雰囲気はない、日本で務めていた頃の上司に比べたら数倍は話しやすい相手だ。


「それで、俺たちはなんで呼び出しを受けたのでしょうか」


 高位の冒険者になれば使命依頼もくるそうだが、昨日登録したばかりの俺に指名なんてくるはずもなく、間違いなく少佐級討伐に関してだろうけど、それならどうしてリンデたちにはお呼びがかからなかったんだろう。


「実はだな、君に謝らなくてはならないことがある」


 ドルファンさんは受付嬢さんに視線を合図すると、受付嬢さんが化粧箱を俺の前に差し出してきた。箱の中には昨日渡した映写機へと改造したマジックワンドが収まっている。


「三度目の再生をしたところで、核となっている水晶を割ってしまった。申し訳ない」


 え、たった三回の再生で壊れたの。


 映像が流せればいいやとしか考えていなかったから耐久値なんて想定してなかったな。そこまでもろかったんだ。


「長年冒険者をやってきたが、このような魔道具を作り出せる職人とは出会ったことが無い、いったいいくらの品なのかも恥ずかしながら、わかっていないのだ。弁済にはいくら払えばいいだろうか」


 ああ、やっぱり俺が作ったことはバレてるよね、弁済って言われても銀貨三枚で買った品、ちょっと豪華な夕食程度の金額ですよ。


「マスター、ここは金貨三枚くらいだと吹っかけますか」


 それは吹っかけすぎじゃありませんかシルヴィアさん。


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