表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/135

第74話『冒険者ギルドで上映会』

「申し訳ありませんが、こちらでは少佐級の討伐証明にはなりません」


 受付嬢は鑑定の魔道具だろうメガネで、テルザーが証拠だとしめした紫の砂を鑑定して、少佐級とは断定できないとの結果がでた。


「なにッ!!」

「半日前の方もこちらをお持ちしました」


 テルザーが出したのとは別の袋をカウンターに置く受付嬢、こちらは拳ぐらいの小さな袋ではあるが、中身は同じ紫色の砂。


「鑑定の結果は同じモノと判明しました。悪魔像の部位だとは断定できますが階級までは判別ができませんので、二等兵級の懸賞金でしたらお支払いできますが」

「ネクロは繭の場所から外に逃げたんだよな」

「はい、盗賊ネクロは少佐級とは対面していないはずです。ですのであの砂は外で朽ちていた卵二等兵級のモノでしょう」

「おいテルザー、他に少佐級を倒したって証拠になるものはないのか!」


 それは難しいだろう。卵二等兵級は紫の砂とは別に卵の殻が残ったけど、少佐級は本当に紫の砂しか残らなかった。


 砕いた核まで砂になって崩れたからな。


「マスター、少佐級との戦闘は動画を撮っていましたがそれでは証拠になりませんか」

「は? え? 動画って?」


 とつぜん何を言っているのですかシルヴィアさん。


「マスターの活躍をSOネットにアップしようと思いまして、我々プロトナンバーシリーズには見たモノを撮影できる機能があります」


 ああ、シルヴィアの姉妹は王国の情勢からお買いモノ情報とか町角の食堂の値段までアップしていたな、それも写真付きで、シルヴィアに同じ能力が備わっていても不思議ではない。


「私には外部に動画の出力機能がありませんが、マスターの力ならどうにかできるのでは」

「そんなの、いきなり言われてもな」


 撮影した動画を第三者に見せる方法か、サーチバイザーなら見えるけど、全員に回すのは効率が悪いし、全員で同時に見れないと勘違いとか起こりそうだな。


 鏡か何かをモニターに改造するか、いや、全員が一度に見るなら映画みたいなのがいいよな、ギルドの壁は白くて広い、命をかけて少佐級を倒したリンデたちが笑いものになっているのも面白くない。


 倒した証拠が欲しいなら大画面で見せてあげましょう。


「映写機にできるようなモノは、お、アレ使えるか」


 俺はギルド内の売店に並んでいる冒険者用の武具に目を付けた。その中で一番安い魔導士使用のマジックワンドを手に取る。小さな水晶の発動体が付いているだけのシンプルなものだが、かえって加工がしやすい。


 ウルフクラウンがカウンターで粘っているうちに、マジックワンドを購入して、目立たないようにすみで作業をはじめる。


「何をしているのカズマくん?」

「ちょっと少佐級を倒した証拠を出そうと思ってね」

「そんなことできるの」


 少佐級のような上位の悪魔像討伐は大抵騎士団がおこなうので、懸賞金も騎士団に支払われることが多い、騎士団は悪魔像討伐のために出発して悪魔像がいなくなり生きて帰ってくればそれが討伐証明となる。


 冒険者が討伐するのは大抵ハグレの低級悪魔像、まさか十人以下の集団が少佐級を倒したなんてことを、ギルド側からしたら証拠も無しに信じるのは難しいだろう。俺がギルド受付でも同じ判断をしたと思う。


 だから証拠をお見せしましょう。


 俺が制作したアクティブで少佐級を撃破したリンデとウルフクラウンの雄姿を。


「ちょっと細かい作業するから二人とも悪いけど壁になってくれる」

「了解しました」

「こうでいいのかな」


 美少女二人を目隠しの壁に使えば注目を集めてしまうが、見えなければ問題はないだろう。


 マジックワンドから水晶をはずして『映写』と付加してまたワイドに戻せば魔導式映写機の完成だ。簡単な付加なので魔結晶は使わずに水晶にそのまま付加をした。


「よしできたぞ、シルヴィアいけそうか」

「お借りします」


 マジックワンド型魔導式映写機を受け取ったシルヴィアが自身の魔力を流して作動するかどうかを確認する。


「魔力伝達良好、撮影動画の映写は可能です」

「よし、じゃああの壁辺りに頼む」

「了解しました」


 突然、ギルドの白い壁に悪魔像・少佐級が映しだされギルド内から悲鳴が上がる。椅子から転がり落ちる者や逃げようとしたが腰を抜かし動けない者さえ出てしまった。


「ありゃ、刺激か強すぎたか」

「カズマくん、やるなら一声かけてからの方がよかったね」

「あれは坊主がやったのか」


 少佐級の姿に戦闘態勢をとったダラスが実体ではないと気が付き、シルヴィアが映し出していることに気が付き、こちらにやってきた。


「正確にはシルヴィアだね。少佐級を討伐した証拠が無いって言うから、討伐した時の場面を映し出す魔道具を使ったんだ」

「相変わらずとんでもないモノを持っているな、脅かすなよ」


 少佐級との戦闘経験のあるウルフクラウンは混乱するギルド内で唯一少佐級を見て戦闘態勢を取っていた。もしかしたらウルフクラウンがいまいる冒険者の中で一番強いんじゃないかと思ってしまう対応だ。


「受付嬢さん、これは映像を記録して映し出す魔道具なんだ。御覧の通り少佐級との戦闘が記録されてる。これじゃ討伐の証拠にならないかな」

「え、映像を記録する魔道具、ですか」

「映像だけではありません、効果音も再生可能です」


 え、俺、ワンドには音声機能を付けてないけどと思ったら、俺のサーチバイザーから効果音が流れ出した。映像に戦闘音が加わりより臨場感があがる。


「これが、悪魔像・少佐級」


 唖然とするギルド職員や冒険者たち、映像ですら威圧を持ち恐怖を振りまく少佐級に、果敢に挑むウルフクラウンの姿や最後にミスリルバンカーでトドメをさすリンデの雄姿が映しだされている。


 撮影は俺のサーチバイザーを通しておこなわれていたので、戦闘には俺の姿が一切映っていないことが少しだけ悲しい。


「迫力のある記録ですね、映像を記録する魔道具はごくまれにダンジョンから獲得できると聞いたことがありましたけど、まさか実物を見られるなんて」


 動画撮影機、この世界にもあるんだ。きっとショウ・オオクラさんの仲間の誰かが作った奴だろうけど。


「検討の価値があるとは思いますが、私の一存では懸賞金を出すかどうか判断できません。ギルドマスターに報告しますのでしばらくお待ちください」

「よっしゃー!」


 検討の価値有りと判断され喜ぶダラスさんたち。


「よくやった坊主、今晩は俺たちが飯をおごってやるぜ」

「ダラス、懸賞金が出なければ俺たちは所持金無し(アナブロ)だぞ」

「あ、忘れてたぜ」

「しっかりしてくれリーダー」


 どうしてテルザーさんじゃなくてダラスさんがリーダーをしているのだろう。


「時間がかかるかもしれませんが、ここでお待ちになりますか」


 審査に時間がかかりそうだな、ギルドマスターって人が受付嬢の報告だけではたして懸賞金を出すと判断してくれるかどうか。


「シルヴィア、さっきの映像、ワンドに移せるか」

「可能です。魔力を流し込めば誰でも再生可能でしょう」

「わかったじゃあ移して」


 シルヴィアに戦闘映像を移してもらって受付嬢に手渡す。


「これ持っていって審査の材料に使ってよ、魔力を流せば誰でも使えるから」

「え!?」


 あれ、受付嬢が少佐級を目撃したときと同じくらい驚愕の表情になったぞ。


「正気か坊主!」

「なにか問題あった?」


 ダラスさんに詰め寄られた。どうしてそんなに興奮してるんだ。


「あったも何も、盗まれたらどうすんだ! いくら冒険者ギルドがモラルある団体だからって全員が善人とも限らないんだぞ」

「あ~、でも、そんなたいしたもんじゃないし」


 一番安かったマジックワンドを加工しただけなので、かかった製作費は食堂の一番高いメニューと同じくらいの金額でしかない。


「映像を記録する魔道具なんてとんでもない超貴重品だぞ」

「カズマくん」


 振り返ればリンデがやってしまったと頭を抱えていた。どうやら俺はまた非常識なことをやらかしてしまったらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ