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第67話『光の精霊ノネ・ネオン・ノーネ』

 両手で抱えられるほどの小さな繭。サーチバイザーで見れば微かにだが魔力反応が出ていた。


「シルヴィアこれって」

「繭の広場で見張りを任され、周囲を探索している時に発見しました。反応が微弱であったため近くで確認しなければ気がつきませんでした」


 確かにこの大きさなら中身が人間のわけがないが、スキャンの結果、シルエットは人の形に近かった。大きさは先ほど俺が作った金属モデルと同じくらいか。


「魔物なのか」

「形状から、SOネットに該当する魔物はいませんでした。魔力パターンも微弱なため照合不能です」

「あけてみて、大丈夫なのか」

「魔力量からも人に脅威になるレベルとは思えません」


 魔力の乏しい俺よりも少ない、もしかしたら吸収されて減っているだけかもしれないが。


 変形を使って中を傷つけないように穴を開けてみると、出てきたのは手の平サイズの少女であった。


 姿が確認できたことにより、サーチバイザーの検索にヒットする。彼女は精霊族であるようだ。SOネットにはめったに人里には近づかない森の奥深くに住む種族で、魔力操作に関しては他の種族が追随できないほど優れているらしい。


 また精霊にもいろいろな種族があるらしいが、特徴が桃色の髪だけではどんな精霊族かまでは絞り込めなかった。


「魔力操作に長けた種族にしては魔力が低いよな、やっぱり吸収されていたのが原因か」


 繭から助け出した少女は苦しそうにうなされている。


「魔力を与えれば回復するのか」


 SOネットには温和な種族と書かれているので助けても問題ないだろう。


 俺は鉱脈の革袋から上級魔結晶を取り出し『補給』と付加して精霊少女の隣に置いてみた。すると、魔結晶の魔力がどんどんと精霊少女へと流れ込んでいく、魔結晶の魔力がカラになり只の結晶になって、ようやく、表情が和らいだ気がしたが。


「もっと、ちょうだい」


 随分と色っぽい声を出しておねだりしてくるな。


 しょうがないので、二個目も同じように置いてみたが。


「もっと、もっと」


 三個目を同じ処置をして置き、ようやく精霊少女が目を覚ました。


 それにしても上級魔結晶を三つも使ってようやく満タンだなんてどんなキャパシティーをしているんだ。サーチバイザーに表示される魔力数値がとんでもない値を示している。


「もうお腹いっぱいなのネ」


 寝ている時は色っぽい声を出してたのに、目を覚ましたら随分と子供っぽい喋り方になった。


「あれ、ここはどこなのネ、私はたしか悪魔の石像に捕まって、魔力を吸い取られて、でも魔力が満タンになっているのネ」


 精霊少女がきょろきょろとあたりを見回して、カラの魔結晶に目を止める。


「あわわ、これって魔力の結晶、魔力がすっからかんなのネ」


 それから俺へと視線を向ける。


「もしかして、私を助けてくれたのネ」

「まあ、そうなるな」

「どこのお人よし様か知らないけど助かったのネ、私は光の精霊族ノネ・ネオン・ノーネなのネ」


 お人よしで悪かったな、もし繭を見つけたのがシルヴィアじゃなくてネクロだったら確実に奴隷か見世物として売りとばされていたぞ。


「あの~、ところで聞きたいことがあるのですけど、この魔結晶で私を助けてくれたのネ」

「そうなるな」

「お腹いっぱいになってるのネ、もしかしてコレをいくつか使った?」

「ああ、三つ使ったな」

「しょえ~、三つも!?」


 オーバーなリアクションで驚くノネに魔力がカラになった魔結晶を見せた。


「やっぱり宝石級の魔結晶、あわわ」


 パンフレットには上級魔結晶と書かれていたが、こっちの世界の基準では、下級が混濁級で中級が水晶級、そして上級が宝石級だから、この世界の基準に当てはめるなら宝石級で間違いないな。


「こんな貴重なモノを、私を助けるために」


 ダラダラと大粒の汗を流す精霊ノネ、油の切れたブリキ人形のような動きで、空中に浮かび上がり土下座というとても器用なことをしてきた。


「これほどの品を使っていただいてありがとうなのネ、対価は働いて返すからどうか、皮を剥ぐのはやめて欲しいのネ」

「なぜ皮を剥がないといけない」

「え? 人族は他種族を捕まえると皮を剥いで素材にするって聞いたのネ」

「それは誤解だ、皮を剥ぐのは素材となる魔物だけで、精霊は剥がないぞ」

「ホント!?」


 まだ疑っているのかよ、俺はそんなことしないけど、あれ、もしかしてこの世界の人間には精霊の皮を剥ぐ習慣とかがあったりして。


「シルヴィア」

「マスター、この世界にも精霊の皮を剥ぐ習慣などありません」


 さすが万能メイド様、こっちが聞きたいことを訪ねる前に答えをくれた。


「あれ、もしかしてあなた魔導人形なのネ?」

「はい、プロトナンバーシリーズです。固体名はマスターに『シルヴィア』と付けていただきました」

「魔導人形を従者にしてるなんて、どこかのダンジョンを突破したの、なんか弱そうなのにすごいのネ」

「弱そうはよけいだ」


 この精霊、かわいい外見をして自然に毒を吐いてくるな。


「マスターは職人であって戦士ではありません。ノネ様が助けられたのもマスターの能力があってこそですよ」

「それなら、私と契約しない、お礼にそうね、三つ魔結晶を使ったから三年間、あなたのリードフェアリーになってあげるのネ」

「リードフェアリーってなんだ?」


 聞いたことのない単語だ。


「リードフェアリーを知らないの!?」

「マスター詳細を転送します」


 サーチバイザーにリードフェアリーの詳細が送られてきた。まいどありがとうございます。


 なになに『リードフェアリー』とは、他種族と契約を交わした精霊族の総称であり、精霊族と契約を交わした存在は精霊が持つ属性の魔法を使うことができるようになる。


「魔法が使えるようになるのか」

「そうだよ、私は光の精霊だから、あなたは光の魔法が使えるようになるのネ。本当はエルフのような妖精族と契約を交わすことがほとんどなんだけど、あなたには命を助けてもらったし、期間限定で特別なのネ」

「その契約が働いて返すって意味か」

「そうなのネ」


 でもSOネットで調べた時、光の魔法なんて基礎魔法はもちろん、上位魔法にもなかったぞ、もしかしてまだ人族には発見されていない魔法なのか。いや、精霊魔法ってのがあったな、そのジャンルの一つなのかもしれない。


「光魔法って何ができるんだ」

「いろいろなのネ、光はいろいろと便利なのネ、暗闇を照らしたり、悪者を焼きはらったり、私が悪魔の石像に掴まったのは、お昼寝をしているところを急に襲われたからなのネ、そうでなかったら、私の魔法でバラバラにしてやったのネ」


 光魔法って聞いたときは、シルヴィアの使う回復系の魔法かなと想像したけど、バリバリの戦闘系のようであった。


「あれ、まてよ、もしかして光魔法って細い線状の攻撃魔法って使える」

「使えるのネ、けっこう攻撃力が高い魔法なのよ、金属の盾だって貫通できるんだから」

「なんとッ!!」


 俺の体に電流が走り抜けた。これはとんでもない拾いモノをしたかもしれない。


「ノネ、契約しよう。よろしく頼む」

「お礼を受け取ってくれて嬉しいのネ、短い期間だけど、よろしくなのネ」


 精霊族にとっては三年は短い時間のようだが、今はそれどころではなかった。細い光の攻撃魔法、それができるなら、あれが再現できるのではないか。


 俺は先程こさえた金属モデルを拾いあげた。


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