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第55話『直撃』

 大地が噴火かと錯覚するほどの勢いで地面がいきなり割れ、太いデビルパープル色の腕が現れた。

 その腕が俺へと振り下ろされる。腕には長い爪があり、反射的に盾を突きだしていなかったら首をもがれていたかもしれない。


「カズマ殿!」


 盾に強い衝撃を感じたかと思えば、吹き飛ばされていた。


 足が地面につかず、背中から叩きつけられる。


「くっそ、なんなんだ」


 フゥオリジンの装甲のおかげで致命傷はなかった。高跳びでマットに落ちる程度のダメージですんでいる。しかしフゥオリジンの方は無傷ではなかった。


『ミサイル内蔵シールド大破消失、背部小型ブースター破損』


 シルヴィアが状態をサーチして教えてくる。幸い故障部分は機体性能には支障のないところばかりだ。ミサイルは撃ち尽くしたし、ブースターは移動用。


 だが、ブラックボアの突進を受けて無傷だったフゥオリジンがたった一撃で損傷させられた。


少佐(メジャー)級だ」


 悪魔像・少佐級。シルヴィアの調べたデータによると、卵二等兵級のような殻はなく、猿の体に蝙蝠の羽、鞭のような細長い尻尾をもち山羊のような顔のデビルパープルカラーの石像。


 砲撃のダメージか、リンデの仲間にやられた個所が治っていないのか、翼は半分以上なくなっているが、地面から出てきた悪魔像は少佐級の特徴と一致している。


「やろう、地面の下にもぐっていやがった!」


 最大の強敵を倒し切れていなかったことに、ダラスが悔しそうに叫ぶ。加速し果敢に攻撃を仕掛けるが。


「くっそう。バンカーがきかない⁉」


 叩き込んだパイルバンカーは少佐級の外層を破れなかった。逆に杭の方が欠けるありさま。


 フゥオリジンもミサイルランチャーを失い奇襲も失敗になったが、手がなくなったわけじゃない。


「足を止めてくれ!!」


 少佐級を前にしても逃げないリンデとウルフクラウンに足止めを頼む、倒してくれとは言わない、必勝の策がまだある。


「目視で居場所が確認できたんだ、追加オプションその3起動」


 追加オプションその三はサーチバイザーに仕込んでいた。眉間部分に追加した小さな赤い魔結晶から赤いポイントレーザーが発射され少佐級を捕らえる。このレーザーに攻撃力は一切ないが。


「今度こそ主砲を叩きこむ、シルヴィア!」

『サーチバイザーとデータリンク、座標確認、悪魔像・少佐級ロックオン』


 これは魔導式のレーザー誘導装置だ。


 サーチバイザーとシルヴィアの視線が繋がり、シルヴィアは自分の目で確認しているのと同様だ。予測砲撃ではない観測砲撃だ。それも先ほどの砲撃で弾道のデータも揃っている。ここまで条件がそろえば外すほうが難しいだろう。


 相手が止まってさえいてくれたら。


「倒す必要はない、動かないように押さえつけるぞ!」


 俺の狙いを理解してくれたリンデが的確な指示を飛ばす。


「足止めできる魔法はあるか」

「魔法じゃないがある。少佐級相手じゃ、数秒程度だろうけどな」


 リンデの問いに答えたのはテルザーとウルフクラウンの魔槍士の二人。彼らも冒険者、いざという時の切り札を持っている。


「合わせろ!」

「おう!!」


 ウルフクラウンの二人の魔槍士が、魔法が封じ込まれている羊皮紙を取りだす。スクロールと呼ばれる使い捨ての魔道具、異世界冒険ものなどにはたまに登場する道具だ。使い方は魔法陣が描かれている模様に魔力を流し、キーワードとなる呪文を唱えれば封じ込められた魔法が発動するとSOネットには書かれていた。


 アクティブにも取り入れられそうな技術だったので、しっかりチェックしている。もっともこの技術があるおかげで銃の発達が遅れている原因の一つでもあると俺は勝手に思ってもいる。


 ウルフクラウンのメンバーが持っていると聞いて、いくつか譲ってくれないかと交渉してみたが、所持数が少なく彼らの切り札的モノだったらしく譲ってはもらえなかった代物だが、今が正念場だと使用してくれた。


「「サンドロック」」


 拘束系の土魔法『サンドロック』。

 悪魔像・少佐級の足元の地面が隆起し、蛇のようにとぐろを巻いた砂が動きを封じるために絡み付き拘束した。少佐級のパワーならテルザーのいう通り数秒で引きちぎられそうだが、その数秒が欲しかった。


「シルヴィア!!」

『砲撃します』

「みんな、避難だ!!」


 麓から聞こえる発砲音。

 強化された脚力を使い全力でその場から離脱する一同。


 もっと遠くに避難してから砲撃指示を出したかったが、そんな余裕はなかった。アクティブの速度と防御力、それにシルヴィアたちの正確な砲撃にかけた命がけの攻撃手段。持っている攻撃手段では通用しなかったからこそ覚悟を決めることができた。


 砲弾は風を切り裂き、身動きの取れない悪魔像・少佐級へと着弾する。

 爆風を防ぐために盾を使おうとして、先ほど破壊されていたことを思い出した。


「まずッ」


 致命傷にはならないだろうが、機体はダメージを受けている。なんらかのケガはしてしまうかも、そんな予感が脳裏をよぎる。


「カズマ殿!」


 爆風と巻き上げられた砂利などが俺へ到達する直前、盾を構えたリンデが俺の前へ割り込む。


「リンデ!?」

「参謀を守るのは前衛の務めだ、礼にはおよばない」


 か、かっけーですリンデ様。


 爆風を防ぎながら、俺が倒れないようサッと腰に手をまわして体を支えてくれている。


 この女性(ヒト)、とても凛々しくて男前すぎ。


「視界がない、ヤツの死体を見るまで油断するなよ!!」


 リンデの激、完全に直撃のタイミングだったが、それでもまったく油断していない。


 漫画などでよくある「やったか」などの倒してないフラグすら立てない。魔力を帯びた砲弾爆発の影響で、サーチバイザーのレーダーもノイズが多く状況がつかめない。


 時間にしたら一分もしないで視界が回復した。レーダーのノイズも無くなりウルフクラウンたちの全員無事を確認。そして肝心の悪魔像・少佐級の反応が、無いことも確認した。


 念のためにレーダーの範囲を拡大して確認する。それでもヤツの反応はない。


「まだだ、ヤツの破片を見つけるまで緊張はとくな」


 姿が見えないことにゆるみかけた雰囲気を一喝。

 そうだ。レーダーに映るのはあくまでも魔力波の届く地上のみ、先ほどのように地面に潜られでもしたら無力化されてしまう。


「リンデ」

「なんだカズマ殿」

「もう放してもらっていいか?」


 大変シリアスな場面で申し訳ないが、そろそろ腰に回した腕をはなしてもらいたい、ここまで美少女であるリンデに密着されて嬉しくないわけではないが、アクティブを纏っている以上、胸を押し当てられていても柔らかさはまったく感じないし、流石に恥ずかしい思いはわいてくる。


「す、すまない!」


 俺を抱きしめる形になっていたことを、まったく気が付いていなかったようだ。四倍の速度で俺から離れ、つまづきそうになっている。


「ホントにすまない、別に、その、なんだ、抱きしめていたのは深い意味は無い、いや、そもそも抱きしめていたというのが誤解であってだな」


 いきなり照れ隠しの言い訳を始めるリンデ、果実のように赤く染まった頬とあいまってとてもかわいいと感じてしまう。


 そこまで慌てられると、俺の方もドキドキしてしまうではないか。


 さっきの凛々しいからかわいいのギャップコンボは卑怯だろ。そもそも、なんでリンデの方が慌てているのだ。


「おい、お二人さん、お前らこそ緊張感を持ってくれよ」


 注意したはずなのに、反対に注意されてしまった。


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