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第52話『反撃の砲撃』

 反撃作戦。


 それは、少数精鋭による強襲作戦だ。


 俺の作成したアクティブアーマー『スィンバンカー』を装着したリンデとウルフクラウンの六人、そして参謀役となった俺の合計八人が強襲部隊となる。


 作戦内容は、悪魔像・卵二等兵級が発射される地点に飛行艦の主砲を撃ち込み、増援を止め精鋭部隊が強襲するというシンプルなモノ。


 作戦の目標はただ一つ、悪魔像の指揮官を潰すこと、シルヴィアの調べでは過去のデータから悪魔像は指揮官を失うと逃走していくケースが多いらしい。指揮官がどこにいるかはわからないが、発射地点の周囲にいることは予想できる。


 近くまで行ければ、サーチバイザーの索敵で見つけることはできるだろう。

 予想とか、できるだろうとか、シンプルなのにアバウトな部分が多い気もするが、追いつめられている状況でこれ以上の正確性をきすのは難しい。


 だが、もしもの時に備えて秘密武装をいくつかこさえておくか、こんなこともあろうかと、とか言ってみたいしな。作戦開始は明日の朝、予想されるハラスメント攻撃を退けた瞬間に開始される。






「カズマ殿、起きてくれ」

「ん?」


 いつの間にかに寝てしまっていたようだ。


 俺は散らばる工具の中で大の字で眠っていた。


 昨日はスィンバンカーを作り終えたあと、残った材料で秘密武装をこさえていた。材料が残り少なかったのでそれほど大がかりなモノは作れなかったが、俺のフゥオリジンにオプションを四つ追加できた。


「シルヴィア殿の予測では、あと一時間もしないうちに悪魔像たちが攻撃をしかけてくる。その前に朝食をすませ準備を整えてほしい」

「わかった」


 美少女に起こされる朝、悪くないな~。


「こんなものしか用意できなかったが、腹を満たしてほしい」


 リンデは朝食用にと干し肉と蒸かしたイモ、それにシルヴィアのブラパンをわざわざ持ってきてくれていた。籠城中なのだ、贅沢はいわない、その気遣いだけで涙がでるほど嬉しいです。


「こんなものなんて、とんでもない。めちゃくちゃうまそうだ」

「そこまで感謝しないでほしい、カズマ殿は、わ、私の参謀なのだから、部下を気遣うのは当たり前だ」


 ホントに涙がでた。今のセリフを元上司に聞かせたい。聞いてくださいよ、上司は部下を気遣うのは当たり前だそうですよ。


 このしょっぱい干し肉、俺が過去に食した中で最高級の2480円ステーキよりおいしく感じた。


「泣いているのか、どこか調子でも」

「いや、調子は絶好調だ、この涙は、そう、ただあくびがでただけだ」

「食事をしながらあくびとは、器用だな」


 俺もそう思います。


 リンデのおかげで気持ちの良い朝を迎えられた。新機能を搭載したフゥオリジンを装着して甲板へ出ればすでに主砲の発射準備をしているシルヴィアにバァルボンさん、スィンバンカーを装着したウルフクラウンが待っていた。


 彼らはスィンバンカーに加えて、いつも愛用している剣や魔槍などの武器もあいている場所に装備している。SF風のアクティブに剣や槍は違和感が強すぎるが、バンカーしか武装がないので他の装備はやめてくれとは言えないよな。


「いい朝だな、絶好の襲撃日和だぜ」


 ダラスさん、なんかものすごい物騒な響きの挨拶ですね。


「おはようございますマスター」

「おはようシルヴィア」

「主砲の稼働も問題ありません。作戦は予定通りに開始できます」

「そうか」

「カズマ殿、今日はよろしくお願いします。再び主砲を撃てる日がこようとは、私も年甲斐もなく興奮しているようです」

「頼もしいですよバァルボンさん」

「おまかせください」


 根っからの砲撃屋なのだろうか、バァルボンさんが若返ったようにみえる。人間やっぱり好きなことには童心にかえるよな、その気持ちよくわかります。興奮はしているが自分を完全にコントロールしていそうな雰囲気、昔取引した町工場の職人が愛用していた道具の修理が終わった時によく似ている。


「準備は整ったようだな」


 騎士へと気持ちを切り替えたリンデが最後の確認をしてくる。彼女もすでにスィンバンカーを装着しており、やっぱりと言うべきかリンデも普通に剣を腰にさげている。まあ、このミスマッチも、アクセントと考え次の設計に取りこもう。


 気持ちを切り替え、あとは悪魔像の襲撃をまつばかりとなった。


 見送りにやってきた村長がリンデに頭を下げる。カリンも見送りに来ようとしたらしいが、足を負傷しているので母親とフットにより船室に閉じ込められているらしい。見送りにくれば我慢できずに付いてきてしまう可能性があったので、閉じ込めた二人の判断は妥当だろう。


「よろしく頼む」

「必ず」


 打倒悪魔像の決意をリンデは短い言葉で伝え、それを受け取った村長はゆっくりと頷く。


「わしらの事は気にせず前だけをみつめろ、おまえたちが戦っている間くらいここを守りきってみせる」


 村長からもこれ以上犠牲はださせないという決意が返ってきた。


「マスター、リンデさん、過去のデータからまもなく悪魔像の攻撃が開始される確率は八十パーセントです」

「シルヴィア殿の分析には助けられてばかりだ、感謝する。カズマ殿」

「俺の準備も整ってる。ここまできたらもう腹くくった。アクティブの機能を見せつけてやる」


 できる限りの準備はした。あとは個々がベストを尽くすしかない。






 甲板から降りた強襲部隊はいつでもこいと待ち構える。


 時間が、三分、五分、十分と経過する。


 待っている時間はどうしてこんなにも長く思えるのだろう。


 さらに十分が経過したとき前方の茂みがゆれた。これから襲いますよと合図するように、いや、目的はいやがらせ攻撃、ようにではなくわざとゆらしている。悪魔像たちはまだこちらがハラスメント攻撃を待ち受けていることに気付いた様子はない。


「きたぜ、素材どもが」

「もう、使わないから素材じゃないんじゃないか?」

「ああそうか、だったら、もう丁寧に倒す必要はないか」

「なるべく核だけを狙うの難しかったよな」

「練習にはなった」


 ウルフクラウンのみなさん、そんなことしてたんですか、作るのに集中してあまり気にしなかったけど、そういえば後半くらいから随分ときれいな素材を持ってきてくれていたような。


 茂みから卵二等兵級が姿を現した。


「ギリギリまで引き付けろ」

「いつも通りにだろ、大丈夫わかってるって」


 リンデの指示に余裕をもった受け答えのダラスさん、ものかげに隠れ息を殺し悪魔像・卵二等兵級がやってくるのを待つ。


 追いつめた得物で遊ぶように、不快な足音をならし、恐怖を呼び起こす鳴き声をあげる。人を襲うことのみが行動原理の悪魔を模した像。


 だが、それもこれまでだ。


 こちらの反撃準備は整った。


 こんどは貴様たちが刈り取られる番だ。


「今だ!!」


 リンデの号令で七つの影が卵二等兵級を強襲する。


 繰り出されるバンカーが、悪魔像の殻を砕き内部の核を破壊する。逃げるひまを与えることなく、接近してきた三体の卵二等兵級を残骸へと変えた。






 甲板に残った主砲要員の二人も作戦を開始する。


「増援来ます。発射地点割り出し開始」


 もうお決まりの倒した数だけの卵の襲来、直撃コースが無いことを確認したシルヴィアが発射地点の割り出しに全力を注ぐ。


「割り出し完了。主砲角度調整、右7度、上方12度」


 おおよその地点は割り出していたので、主砲の角度は微調整だけですむ。バァルボンが砲塔を旋回させるハンドルをまわす。


「右7度、上方12度、了解。角度調整完了。発射します」


 バァルボンが発射レバーを引く。

 鼓膜を突き破る轟音と共に、空気を切り裂く砲弾が撃ちだされた。


 卵の発射地点が爆発、土砂がまい土煙りが舞い上がる。

 これでは肉眼で命中したのか確認できないが、魔導人形のシルヴィアなら正確に着弾を確認できる。


「初弾、至近弾。再調整、左3度、上方2度」

「左3度、上方2度了解」


 砲塔をさきほどよりもさらに細かく動かす。


「発射します」


 二発目が打ち出され、まだ土煙りがおさまらない山間が再び爆発した。


「命中、悪魔像が発射された地点を爆破しました」


 この砲撃が反撃の狼煙となり、強襲部隊が全力で山を駆け上がっていく。道中、包囲していた悪魔像・卵二等兵級を撃破するも、増援が送られてくることはなかった。

『セブンセイバーズと聖剣鍛冶師の奪還物語』よろしくお願いします。

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