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第40話『空を穿つ』

本日5本目です。

魔物の強さ表記をカテゴリーから討伐レベルに変更しました。

 村を襲ったのが悪魔像だとわかった瞬間にリンデは鎧など着ている暇はないと二本の剣だけを掴み駆け出していく。俺もダッシュで部屋に戻るとアクティブアーマー『フゥオリジン』を装着。


 バイザーでリンデの位置を確認すると高速で火事現場を目指しているのがわかる。


 村人たちは、まとまってこのヒートレオンを目指してきているようだ。後ろからは卵二等兵(エッグ)級も追いかけてきている。


「シルヴィア、盾を飛ばしてくれ」

「了解しました」


 シルヴィアのアクティブアーマー『ヴィアイギス』の主力武器であるスカイシールドはグライダーナイフと同じように遠隔操作ができ、盾の形状からサーフボードのように人が乗せ飛ばすこともできるのだ。


「ヒートレオンの守備を頼む」


 リンデもバァルボンさんも出て行ってしまったので、シルヴィアを拠点防衛に残す。


「守備はお任せください。ではスカイシールド射出します」


 スカイシールドに飛び乗った俺は発射され空を飛んだ。


 この構造を応用してフゥオリジン自体に飛行機能を付けようとしたが、操縦が難しく墜落するは飛行酔いするはでうまくいかなかった。そもそもグライダーナイフをコントロールするのに全神経を集中しなければならなかった俺だ。飛行して姿勢を整えながらコントロールするなんてどだい無理であった。


 だからあきらめてこの形になった。飛んでるのは一緒なんだし、スカイシールドの操作は潔くシルヴィアまかせにしている。シルヴィア自身がサーチバイザーとリンクしているので視界から消えても操作はできる。


 落ちないように注意さえしていれば障害物をすべて上空からショートカットして現場を目指せる。俺は接触前に悪魔像の詳しいデータを確認した。


 村を襲っているのは悪魔像・卵二等兵。悪魔像の中で最下級の存在であり討伐レベル20。ゴブリンよりは強いが、ブラックボアよりは数段弱い相手である。しかし悪魔像には気を付けなければならないスキルを持っている。


 精神攻撃系スキル『威圧』。悪魔像の姿を目撃した者を萎縮させる効果がある。強い精神力を持っていれば影響を受けないが、悪魔像に恐怖を抱いている者はこのスキルに囚われてしまう可能性が高いそうだ。


 俺は対策として魔結晶を一つ取り出し『精神対抗』と付加しアルケミーアームの『錬金魔法』と交換してスロットにセットする。錬金魔法は使えなくなるがこれからは戦闘なのだから必要ない。後で戻すこともできるし。


『マスター、更に飛翔体が接近。形状から悪魔像・卵二等兵級と確定、村人たちの進路を塞ぐかたちで着弾します』

「まだくるのか」


 サーチバイザーにシルヴィアからの通信。データで表示された数は三つ、さっきと同数だ。もしかしたら一度に飛ばせるのは三体が限界なのか、でも続々と増援を送られるのはやっかいだぞ。


「シルヴィア、村の悪魔像は俺とリンデたちだけで倒せるから、発射位置の割り出しをしてくれ、それとヒートレオンに逃げてくる村の人たちの受け入れも頼む」

『了解しました。マスターお気をつけて』

「おう」


 リンデの背中が視界に入った。あとちょっとで追いつけるところで、合流するより早く卵二等兵級が村の人たちの前に落下した。場所は火事現場からヒートレオン号の中間地点、落下の衝撃だけで周囲の家屋に被害を与えている。望遠にしたサーチバイザーには恐怖の表情で固まる村の人たちが映しだされた。


 その中にはレベル20の魔物なら群れが相手でも余裕で倒せるはずの冒険者チームも含まれている。これが精神系スキル『威圧』の効果か、相手が格上でも恐怖を覚える相手には動きを封じることができるようだ。悪魔像に対する潜在的恐怖が『威圧』を効果的に発揮させている。


 だが動きを止めた村人の中で一人だけ威圧にあらがい動ける奴がいた。


「あいつ、あの歳でどんだけ根性がすわってんだよ」


 村長の腕を振りほどいたカリンが素手で卵二等兵級に挑みかかった。リンデが間に合う位置にいたので俺は慌てなかったが、あいつはリンデが近くにいることなど知らないはず。どんだけの勇気があればできるんだ、あんなこと。すくなくとも俺にはできないぞ。


「あいつは勇者か」


 勇者か、勇者専用機って響きもいいな、今度あいつ用に勇者仕様っぽい機体でも設計してみるか。

 そんなくだらないことを考えているうちに、カリンに噛り付こうとしていた卵二等兵級をリンデが剣を投げ足止めをし、間合いを詰めもう一つの剣で斬り倒した。


 これで道を塞ぐ障害はなくなった。俺はリボルバーを抜き、追いかけてくる三体を撃ち抜く、狙いは中心部、データで卵二等兵級の核の位置は把握している。


「一体一発でしとめてやったぜ」


 残るは二体、落下の位置がずれていたので接敵するにはわずかに余裕がある。このまま一人空を飛んでいても、リンデやカリンに卑怯と思われるかもしれない、せっかく見つけた操縦者候補にマイナスの印象を与えたくない。

 それにカリンにツッコミを入れさせれば、固まっている村人たちの恐怖も少しは和らぐかもしれない。

 どうすればカリンにツッコミをさせるか、とりあえずポーズコード01をやれば、こんな時に遊ぶなって叫ぶに違いない。

 俺はスカイシールドを飛び降り、バッチリ、カリンとリンデの視界に入るようにポーズを決める。


「ポーズコード01」

「…………」


 あれ? 予想と違い無言のカリンが顔を赤くしながらこちらを見つめてくる。

 いつもみたいに噛みついてこなかった。


「どうしたカリン、どこかケガをしたか」

「えっ、いえ、どこもケガはしていません」


 おい、このお嬢様(カリン)は偽者か、俺に対して敬語をお使いになられたぞ。


 性格が変わるほどの恐怖体験をしたのだろうか。


「まぁともかく、まだ悪魔像が残っている。急いでこの場を離れよう」


 レーダーでは残りが近づいてきているのがわかる。この場で村人たちを守りながら戦うのは不利だ。まだ敵の増援がくるかもしれないし。


『マスターさらに飛翔体を三つ確認。落下予測はマスターたちの現在地近辺です』

「くそッ後手後手だぜ、リンデさらにくるぞ!!」

「わかった。皆はヒートレオンへ、バァルボン先導を頼む」

「承知!」


 封鎖された開拓村、他の村へと続く唯一の道は悪魔像に塞がれた。助けはこない以上、自分たちで切り抜けるしかない。


 肉眼でも第三派の飛翔体をとらえた。落下前に迎撃しようとリボルバーの引き金を引く。


「当れ!!」


 先程三発撃ったので残弾は三発、装填は間に合わない、一発も外すことはできない。

 夜空に放たれる三発の弾丸。


 俺は心の中で舌打ちをした。まさか落下してくる物体を撃ち落とすのがここまで難しいなんて思わなかった。ロックオン機能を使っていたのに命中したのは二発だけ、三発中二発命中なら悪くは無いがこれはゲームではなく本物の戦闘だ、失敗は命に係わる。今回は相手が弱いので余裕があるだけ、ロックオン機能もまだまだ改良が必要だ。


「すまん、一体逃した」

「まかせろ!」


 リンデは落下してくる紫卵の下の回り込むと、天に穿つように剣を突き出した。


 剣先が闘気を纏い、まるで剣とリンデが一本の槍となったかのように、村人を恐怖させる悪魔の卵を貫いた。


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