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第35話『魔導式ミキサー』

魔物の強さ表記をカテゴリーから討伐レベルに変更しました。

「それは、素材ではない。が使い道のないモノだ」

「使い道がないか」


 染みは本当の血ではないだろうけど、一体どんなモノか、好奇心に押されて箱を開けてみると、中には割れたガラスビンが大量に入れられていた。


「これって酒のビン」


 まだ割れていないモノも数本入っているが、ほとんどが割れている。底の染みはこぼれた酒が乾いたモノだったのか。


「まだ飲めそうなヤツもあるぞ」


 墜落の衝撃にも奇跡的に生き残ったビンを取り出してみる。普通のガラスとは少し違う素材でできたビン、検索してみたら飛行艇に積み込まれるモノは割れにくいように強化ガラス製で作られているそうだ。


「私はまだ酒の飲めるような歳ではない、バァルボンも一人で飲む気にはなれないそうだ」


 まあ、仲間がみんなやられてしまったのだ。本当は討伐成功後にみんなで飲む予定だったとしたら、そりゃ一人で飲む気にはなれないよな、あの老騎士さんは義理堅そうだし。


 俺はそっと酒ビンを箱に戻す。


 流石にこの酒には手を付けられないな、俺も体は未成年になってしまったから、でもこっちの空き瓶は修復したら回復薬を入れるには丁度いいのでいくつかもらっておこう。






 両手一杯に素材を抱えた俺は、すでに工房と化している自室に戻ると、さっそく回復薬作りを開始する。


「たった数日ですっかりカズマ殿の部屋になっているな」

「あはは、好きに使わせてもらってます」


 部屋を改造していいと許可ももらっていたので本当に自由に改造してしまった。壁板を剥がして大きな作業台をこさえたり、穴の開いた壁に存在しなかった収納棚を組み込んだりと、日本では絶対に敷金礼金は返ってこないどころか追加で取られるレベルだ。でもそのおかげで作業は快適そのもの。


 なので討伐隊のために全力で腕を振るわせてもらいますとも。


 サーチバイザーで回復薬のレシピを呼び出す。まずはヒールダケとオニウゴキの葉を粉末になるまですり潰す。この時の注意ポイントは均等に魔力がいきわたる様に優しく慎重に魔力を流し込みながらすり鉢ですりつぶすそうなのだが。


 それは省略させてもらう。


「カズマ殿、質問してもいいか」

「いいぞ」

「それはなんだ?」

「これは、魔導式自動ミキサーだ」


 魔導を付ければいいってもんじゃないが、アクティブアーマーのパーツでもないのにわざわざ名前を考えたりはしない。


「これを使えば、たいていの素材は30秒もかからずに粉末にできるんだ」


 実践してみよう。ヒールダケとオニウゴキの葉を一緒に魔導式自動ミキサーに入れて、スイッチオン。後は30秒ほど待つだけで二つの素材は粉末になった。レシピを見れば粉末にした後で混ぜ合わせるとなっていたが、それは同時にすり潰せないための工程であり、同時にできるなら別々にする理由はない。


「カズマ殿、私は錬金魔法はそれほど詳しくはないのだが、確か素材をすり潰す工程は熟練の技が必要で、できるようになるため八年くらいの下積みが必要と聞いたことがあるのだが」

「うん、それは事実だぞ」


 SOネットにもそう書かれていた。


 すり潰しながら魔力を均等に流し込むには相当な魔力コントロールが要求される。それもすり潰している間ずっと続けなければならないので、マスターするためには長い修行期間が必要になる。


 俺だって手でこの作業しろと言われてもそんなことはできない、だったらすり潰す魔道具を作ってしまえばいいと製作したのがこの魔導式自動ミキサーだ。俺の他にも同じ発想した錬金魔法士たちがミキサーを作ろうとしたようだが、粉末にするまでは成功しても肝心の均等に魔力を浸透させることには失敗していた。


 その失敗過程のレポートを読んだ俺はある秘策を思いつく、俺にしかできないとっておき、上級魔結晶二つに『魔力浸透』と『均等放出』を付加して組み込んだのだ。目論見は見事に成功して、この通り完璧な粉末を精製できている。


「俺もこの魔道具が完成してなかったら、錬金魔法は途中で挫折してたかもな」


 鍋でかき回すだけならいいけど、錬金魔法には他に調合などもあったからな。


「その道具も自分で作ったのか」

「おう、発想の勝利だな」

「カズマ殿はこのような状況だと言うのに、現状を楽しんでいるように見える」

「え、楽しそうに見えるか」


 やべ、つい転がり込んできた素材に浮かれすぎたか。リンデたちの切迫した現状を考えれば確かに俺一人だけ感覚が違うかもしれない。この差は悪魔像(ガーゴイル)の脅威を直接感じた者と感じていない者の違いだろう。ただでさえリンデは父親や仲間を失っているのだ。


「すまん」


 俺の謝罪にリンデは少しだけ驚いた表情をした。


「気にする必要はない、こっちこそ変な気を遣わせてしまったか。私はカズマ殿の明るさに助けられていると伝えたかったのだ」


 機嫌を損ねたのかと思ったら逆に感謝された。


「カズマ殿がこの村へやってくる前は暗い事情しかなかった、それがカズマ殿がきてからは剣が修復されたり食糧が手に入ったりと明るい話題の連続だ。本当に感謝している」


 まっすぐなリンデの言葉に背中がムズムズとかゆくなる。何をやってもどんなり頑張っても怒られていた社会人時代とは大違いだ。


「助けになっているなら、こっちもこの村にきたかいがあった」

「悪魔像に封鎖されていると知ってもその余裕。カズマ殿の自信は、その自身が製作した魔導甲冑にあるのだな」

「まあ悪魔像をなめるつもりは無いけど、殲滅じゃなく突破ならあの山を越える自信はある」


 リンデの情報では一番の強敵は悪魔像少佐レベル。討伐レベル100の力を持っているとSOネットには書かれていた。レベル100の魔物とはまだ戦闘したことは無いが、リボルバーを数発打ち込めれば倒せないこともないだろう。


「俺の装備は悪魔像に対して相性がいいからな」

「ヘルダーティを一撃で倒したそれか」


 悪魔像は魔物と違う分類の生物、いや生物のカテゴリーに入るかも怪しい存在だ。悪魔像を研究している学者は生き物よりもゴーレムなどの石像系非生物に近い存在だと学説で発表している。だからこそ悪魔の像と呼ばれているのだ。


 どうして像と呼ばれるか、それは体が岩と金属の間のような物質で構成されているからだ。悪魔像は例外なく体内に赤い玉を持っており、その赤い玉を破壊しない限り悪魔像は腕を切られようが頭を砕かれようが動き続ける。


 悪魔像の体内にある赤い玉を剣や魔法で破壊しようとすると、表面を削りむき出しにしないといけないが、貫通力のある銃弾なら一撃で倒すことも可能だろう。


「確かにカズマ殿の武器なら、あの作戦を決行することも可能かもしれない」

「あの作戦?」

「会議で話していた越冬、山越え以外に私が考えた第三の選択肢だ」


 タイミングをみて発言しようとしていた案か、カリンとフットを助けに行きうやむやになったままだった。

明日は少し連続で投稿する予定です。

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