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第32話『悪食熊ヘルダーティ』

魔物の強さ表記をカテゴリーから討伐レベルに変更しました。

「おお、早いな~、もう二人と合流したよ」


 サーチバイザーでリンデの動きをトレースしていたのだが、彼女はもう双子の場所に辿りついていた。ブラックボアの反応が到着と同時に消えたので瞬殺したんだろう。


「すげー、これなら俺が急いでいく必要はないかな」


 と思ったけど、ピピピィとさらなる危険を知らせるアラームが鳴る。


「前言撤回」


 狩り場に残してきたセンサーがブラックボアよりも強力な魔力を探知した。やはりブラックボアは何某かから逃げていたのだ。


「遭遇データ無し、シルヴィア聞こえるか」


 バイザーのメモリーには魔力反応に該当するモノがなかったのでSOネットで調べないと詳細がわからない。


 俺はサーチバイザーの機能を使いシルヴィアを呼び出す。これは相手もアクティブアーマーを装備していないと受信ができないのだが、村の見張りをしているシルヴィアはアクティブを装着しているので、呼びかけにすぐ応えてくれた。


『マスターどうかしましたか、村から飛び出していきましたが、緊急事態でしょうか』


 しまった、シルヴィアに声をかけて一緒に来てもらえばよかった。飛び出した時はそうとうあわてていたようで、そんな考えはまったく浮かばなかった。今さら気がついても後の祭りだ。


 もし強い魔物だったらどうしよう。


 たぶん、フゥオリジンを装備してるから大丈夫だよな。


「未遭遇の魔物だ、詳細を調べてくれ」

『了解しました。しばらくお待ちください』


 SOネットにはきっと魔物の情報があるはず、サーチバイザーを通せば俺もアクセスできるのだが今は全力移動中なので検索をしている余裕がない。


『検索結果でました。魔力パターンに該当一件』

「さすが」

『魔物の名前は「ヘルダーティ」別名悪食熊、討伐レベル68です。詳細を送りますか?』

「読んでる暇がない、簡単に特徴を教えてくれ」


 今バイザーの画面を資料で覆われると間違いなく事故を起こす。


『悪食熊ヘルダーティ。数種類いる熊型魔物の中でもっとも脂肪の多い体格をしています。表皮はブラックボアよりも柔らかいのですが分厚い脂肪に覆われた体は剣や槍の威力を殺し致命傷をあたえさせません。外見は熊よりもふくよかな豚に近い模様』


 なにそのメタボ熊。それにレベル68だとブラックボアより上なのか。ってことはやっぱりブラックボアはヘルダーティから逃げていた。


「脂肪が多い以外に特徴はあるか?」

『肉ならなんでも食べるようです。死肉や腐った肉でも見境なしにがっつき、その食べ方があまりにも汚いことから悪食熊(ヘルダーティ)と名付けられたそうです』


 その情報は今はあまり関係なさそうだな。


「シルヴィア、そのままレーダーのチェックを頼む俺は移動に全力を注ぐ」

『了解しました。最短コースもナビゲートします』


 サーチバイザーにカーナビのような矢印が浮かび上がる。


「おお、これは助かるぜ」


 俺はホバーを吹かして全力でナビの指示に従う。

 移動速度はわずかにあがったが、リンデたちの所まではまだ少しかかりそうだ。


『ヘルダーティがリンデ様たちと接触、リンデ様と一度座標が交差しました。一撃を加えたのだと推測します』


 ブラックボアを一撃で倒した攻撃だろう。はたしてヘルダーティにも通用するか。


『ヘルダーティ、反応は健在』


 ダメだったか。


『三人の反応がヘルダーティより離れます。離脱へ切り替えた模様、ですが追跡されています。離脱速度から逃げ切れる可能性はありません』

「三人までの距離は後どのくらいだ」


 リンデだけなら逃げきるのは簡単だろうが、双子が一緒だとそうはいかない。


『進路上に三メートル大の岩、リンデ様たちはその反対側です』


 倒木などが寄り掛かっている大岩、昨日は気にもしなかったが一秒を争っている今はとても邪魔な物体だ。倒木の影響で迂回を選ぶとけっこう時間がとられそうだ。


「破壊して前進だ!!」


 サブウェポングライダーナイフを射出。高回転させドリルのように大岩を砕く、砂塵が上がるがサーチバイザーには大岩が無くなり進路がクリアになったと表示された。俺はバイザーを信じて砂塵の中へ突っ込んだ。


 小さな砂利などは装甲に当たるが傷が付くほどではない。

 視界が晴れるとそこにはふくよかなブタのような熊に襲われている三人の姿をとらえた。


「な、なんなの~!!」


 カリンが驚きの叫びをしているが、それにかまうよりもヘルダーティを先に倒してしまおう。ポーズコードをカットして素早さ優先で魔導リボルバー引き抜く。


『マスター急所は胸中央部です』

「おう」


 SOネットの情報から急所を割り出したシルヴィアがナビモードからシューティングモードへと切り替え、ロックオンマーカーをヘルダーティの体に投影してくれた。


 俺はただロックオンマーカーに銃口を会わせて引き金を引くだけの簡単な作業。

 放たれた弾丸はマーカーの中心に命中、脂肪を撃ち抜きヘルダーティは雑巾を絞ったような悲鳴をあげて倒れる。


「……うそ、たった一撃で」

「流石だなカズマ殿」


 的が大きいので飛んでる鳥より簡単に倒せた。


「リボルバーが利く相手なら数の多いゴブリンの方が手間取るな」


 これは誇張ではなく偽りない本音だ。悪食熊はこれまで遭遇してきた魔物の中で間違いなく一番魔力は大きかった。


「見た目はダサいのに持っているモノはとんでもないモノばかりね」

「まだ言うか。この洗練された芸術美がわからんとはまだまだお子様だな、今度お子様用アクティブアーマーを作っても弟君にしかあげないぞ」

「え、良いんですか」

「いらないわよ、ダサいもん!」

「え~カッコいいじゃん」


 喜ぶフットに突っぱねてくるカリン。やはりメカ物は男の方が理解できるらしい。


「助かった。しかしヘルダーティを一撃とは私の見込み以上の腕なのだな」

「まあ全部このアクティブアーマーのおかげだけどね」

「それを製作したのは君だろ、なら君自身の力だ」


 おお、なんと心地よい言葉だ。


 確実にリンデに対して好感度を稼げたんじゃないか、狙っていたわけじゃないけど良い感じだ。これならアクティブアーマーを着てくれるかもしれない。思いきってここで頼んでみるのもいいかもしれないな、ここは勇気を出して、いざ。


「なあリンデ」

「すまない」


 頼む前に断られたよ。


「い、いや、気にしなくて、いいぞ、そんなに気にしていない」

「どうしてカズマ殿が動揺しているのだ?」


 だって、頼む前から予防線を張られたら、中学時代に好きな子のアドレス聞くくらい勇気を出したのに、ああ、本当に精神年齢が若返ってる。ショックで感情がうまくコントロールができないよ。


「カズマ殿、何か勘違いをしていないか。私が謝ったのはこの剣のことなのだが」

「え? 剣?」


 差し出された剣は、根元から折れて刃が無くなっていた。


「せっかく直してもらったと言うのに、自分の未熟さが腹立たしい」


 そんなに唇噛みしめたら血が出ちゃうよ、スピード勝負で負けた時は俺の方が悔しい思いをしていたはずなのに、どうしてリンデがそこまで悔しがる。


 出会った時から感じてたけど、リンデは人には優しく接するのに自分に対してはとことん厳しい性格だな。

区切りの良い所でリンデ視点も書こうか思案中。外伝的に書いてみようかな。

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