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第28話『村への帰還』


 高く売れる素材がゲットできたけど売る場所が無い、上級回復薬になるんだったら調理しても食べられるよなと詳しく検索すると『食べられない事はないが、あまりの苦さに食感がマヒしてしまう。食用には向かない』と出た。


「ダメじゃん」


 上級回復薬にする以外に使い道はないようだ。今は回復薬より食糧が欲しかったんだけど、あっても困るモノじゃないし帰ったら作ってみるか、悪魔像との対決も避けられそうにないし。


「カズマ殿にはいろいろ驚かされるな、まさかそれまで調理できるのか」

「いや、さすがにコレは無理だ」

「だろうな、以前に一口だけ食べてみたが二日間は味覚がおかしくなった」

「チャレンジャーだな」


 この反応、リンデはこれが上級回復薬になることを知らないみたいだな。


「ネクロが毒は無いと保障したからな、味は食べるまでわからなかったが。これだけは例え飢えで死にそうになっても二度と食べたいとは思わない」


 味を思い出したのだろう、整った眉を歪ませる。

 商人ネクロはこれが高級素材だとわかっていたのだろう。ただ販売先が無かったから収穫はしなかった、とっても腐るだけだと。


「これは薬の素材になるんだよ、食用じゃない」

「そうか、そうだろうな流石のシルヴィア殿でもこれの調理は無理だろう」


 シルヴィアならもしかしたら調理できるかもしれないけど、一角兎(ホーンラビット)や木の実が手に入ったし無理する必要はないだろう。


「罠の仕掛け終わったよ」


 ヒールダケも取りつくした所でカリンが戻ってくる。その姿は血にまみれていた。


「おいおい」

「カリン、あなた」

「ちょっと罠を仕掛けるの失敗しちゃって血まみれになっちゃった」


 言葉だけ聞けば罠を仕掛けるのに失敗してケガをしたように聞こえるが、見た目に反して本人にはケガ一つない。


「いったいどう失敗したんだよ」

「血抜きで出た血を、罠の中や周辺にぶちまけたの、これだけやれば小物どころか匂いに誘われて大型の魔物だっておびき寄せられるわ」

「おいおい」


 小型の魔物だって八匹分となればかなりの量だ。カリンはそれをいつの間にかに集め罠に活用したらしい。


「明日にはヘンテコメガネを越える獲物を捕らえてみせるわ!!」

「カリン、明日は村の会議だ私はこちらにはこられないぞ」

「だ、大丈夫ですよ、罠にかかった魔物くらいしとめられます。明日はフットに手伝わせるので何の問題もありません」

「完全にリンデの力をあてにして罠を仕掛けたな」

「うるさいダサメガネ!」


 自分のうっかりを隠すように顔を真っ赤にして噛みついてくる。リンデと態度が違いすぎるな。


「明後日は付き合えるから、明日はやめた方がいい」

「本当に大丈夫ですよ、私ももうただの子供じゃないんです。リンデ姉に稽古してもらって、村の大人よりも強くなってるんですよ」


 すっごくフラグっぽいな、明日リンデ抜きできたら強力な魔物に襲われるんじゃないか。ちょっと過剰だけど後で回収すればいいか。


 グライダーナイフを一本取り出して『魔力吸収』の付加を『探知』に書き換え、目立たない木の影に刺しておく、こうしておけばこの場所に魔物が近づくとサーチバイザーに警告が表示されるようになる仕組みだ。『遠隔操作』はそのまま残っているので村からでも呼び戻せる。


「それじゃリンデ姉、村に帰いりましょ。言っとくけど遅れても待ってあげないからね、途中でへばったら一人で後から帰ってきてよね」

「ああ、待つ必要ないぞ」


 どうやら全力で走って俺との力の違いをみせたいようだが、あいにくだが俺の持久力はフゥオリジンに依存している。置いていくことはあっても置いて行かれることはない。俺の速さを知っているリンデは苦笑いを浮かべていた。






「ハァ、ハァ、ハァ~」


 村に辿り着けば、膝に手をつきカリン一人が荒い息をしていた。


「な、なんなのよ、その速さ」


 はじめは流して移動していたが、俺が涼しい顔で付いていったので途中からムキになったカリンが全速力をだしたのだ。カリンよりも実力があるリンデやホバー移動している俺は特に疲れることはなく村へと帰ってきていた。


「俺の自慢の作品だ」


 ポーズコード01を発動させビシっとポーズをキメてアクティブアーマーの魅力をアピールする。


「こんな、ダサい鎧男に負けるなんて」


 疲労困憊でも俺への悪態は止まらない結構な根性がある。だが、ダサいは認められない。


「こいつの魅力がわからないなんてまだまだお子様だな」

「子供扱いするなダサオトコ!」

「幼女の分際で生意気な!」

「幼女と言うな!!」


 このダークシルバーに輝く流線形ボディをダサいだと、まだまだ感性もお子様のようだ。


「二人ともじゃれあいはそれくらいでいいだろう。カリン、お迎えがきているぞ」


 額を突き合わせ、いがみ合っている俺たちをリンデが止めに入る。


「姉さーん」


 村からカリンと同い年くらいのちょっと気の弱そうな少年がやってきた。彼が今朝言っていた弟さんか。


「お帰り姉さん、やっぱり獲物は取れなかった?」


 身軽なカリンを見て少しだけ落胆したようだが、あまりショックを受けた表情はしていない、罠で獲物が取れなかったのは今日だけではないのだろう。


「フット、やっぱりってどういう意味よ」


 カリンがチラリとこちらに視線を送ってくる。確かに罠には掛からなかったが獲物は確保できているのだ。ただそれは俺の功績なので言い出し辛いらしい。


「フット安心していいぞ、今回はちゃんと獲物はとれた」

「本当ですかリンデさん、流石です。直接狩りをしたんですね」


 罠で捕獲できたとは微塵も思っていない発言だな。


「狩りをしたのは正解だが、残念だが私じゃない彼のおかげだ」

「昨日村へ来た人ですよね、はじめまして僕はカリン姉さんの弟でフットっていいます。姉さんが迷惑をかけませんでしたか?」

「迷惑はしてないぞ、ちゃんと狩りは手伝ってくれた」


 態度や言葉ではけっこう噛みついてきたけど。


「グヌヌ~」


 また噛みついてきそうな顔でこっちを睨んできているが、食材確保の貢献度から自制している。俺は背中のコンテナを下ろして中身をフットに見せた。


 密閉された取り出し口が開くと、肌寒い気温にもかかわらず冷気の白い靄が流れでて、冷却機能で冷やされた一角兎の肉がフットを驚かす。


「こんなに沢山、それにこの冷たさはいったい」

「これは食材が傷まないように冷却して保存する機能が付いているんだ」


 ようは冷蔵庫である。シルバーメイズで生活を始めたころはまだ夏で気温が高かったため製作していた。コンテナは上下に分かれた二段構造になっていて上は冷蔵庫に下は武器弾薬などを入れる収納庫になっている。


「へ~すごいですね」

「すごいだろ」

「はい、すごいです」


 なんてできた弟さんなんだ、素直に作品をほめられるのはとても嬉しい。


「カリンと違ってフットくんは正直だな、君の半分でもかわいらしさがあればいいのに」

「ちょっとそれって弟のフットの方が私よりも女らしいってこと!」

「ええっ!?」


 どうしてそうなる。かわいいとはいったが女らしいとは言ってないぞ。フットも驚きすぎだろ。


「確かに物腰のやさしい仕草は私もフットに負けているかもしれないな」


 なんでリンデまでショックを受けているの。

 ちょっとだけ場がカオスになりかけた所で村に鐘が鳴り響いた。俺とシルヴィアが昨日村へやってきた時にも鳴らされたあの鐘だ。村の外から何かが近づいてきているのだろうか。


 カカン、カン。


 二回打ってから一拍置いて一回打つ。昨日鳴らされた連打とはあきらかに打ち方と違う。


「リンデ、この鐘はどんな意味があるんだ?」

「仲間の帰還を告げる合図だ。食料を確保に向かった遠征組が帰ってきた」


 遠征組。そんなモノがあったんだ。村近隣では食料を取りつくしてしまったので、大型の獲物を狙い森の奥まで泊りがけで遠征に行っていた人たちだそうだ。

 俺たちが一角兎などの獲物を確保できたのはサーチバイザーのおかげ、バイザーがない村の衆は遠征に行かなければならないほどの状況だったのか。


「予定通りの帰還、なら会議も予定通り明日におこなえそうだな」


 リンデが食料調達よりも優先する会議、いったい何を話し合うのだろうか。

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