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第27話『食材ゲット』

魔物の強さ表記をカテゴリーから討伐レベルに変更しました。

 食料探しは予想よりもかなり森の奥深い場所だった。人が普通に歩けば三時間以上はかかっていただろう。ここは太い樹木が多く小さな川が流れている食材探しには適している。


「ここなら動物型の魔物も水飲み場にしていそうだ、それに」


 俺は落ち葉をはらってドングリに似た木の実を拾いあげた。


「食料もそこそこあるみたいだ」

「なに遊んでるのよあんたは」


 けっこう沢山あるなと一歩も動かずにヒョイヒョイと二コ、三コと拾っていると、頭上からトゲトゲしい少女の声が投げかけられた。顔を上げれば木の枝に早朝リンデと稽古をしていたカリンがいた。腰には軽そうな革袋がぶら下がっている。


 サーチバイザーのレーダーに映っていたのでいることは知っていたが、カリンは木の上でいったい何をしているんだ。


「遊んでないぞ食材集めだ」

「それが食べられるって言うの?」

「おう、殻を割ると白い実が入っててな、それを砕いて粉にすると固いパンの元になる。うまくはないが食えないほどじゃない」

「そうなのか、私も知らなかった」

「シルヴィアに教えてもらったんだ。彼女は食材について詳しいから」


 この世界にきてまだ三カ月の俺はこの世界の食料なんてわからない、この実もドングリに似ているだけでドングリではない。大きさもこっちの方が一回り大きい。


 シルバーメイズで食料が少なかった時は、シルヴィアがこの実を拾い集めてパンを作ってくれた。SOネットには世界中のレシピがのっていたのでこの地域では食されていない食材についても調べられた。レシピさえわかれば料理上手なシルヴィアが何でも調理してくれる。


「リンデ姉も知らないなんて、本当に食べられるの?」

「もちろん。実際に食べたことがある。それよりそっちはどうなんだ、お前も食料の確保にきてるんだろ」

「うッ」


 カリンはバツの悪そうな顔をして腰に吊るされている軽そうな皮袋を隠した。今さら隠しても中身が入っていないのが丸わかり。


「収穫なしか」

「うっさいわね、これからよ! まだ確認してない罠だってあるんだから!!」

「木の上に罠を仕掛けてるのか?」

「そうよ、飛行型の小さい魔物の止まる場所を予測して罠を仕掛けたの、もう二年以上もやってそれなりの成果を出してるんだから、そんな木の実よりも大量に美味しい食材を手に入れてみせるわ!」

「そうですか」


 サーチバイザーで周囲を探知してみた結果、該当なし。残念ながらカリンの罠にかかった獲物はいないようだ。この結果を伝えても信じないだろうな。


「カリン、私も手伝おう」

「ありがとうございますリンデさん、あっちの枝の罠の確認お願いします」

「承知した」


 鉄の鎧を着ているとは思えない身軽さで木を駆け上がるように登り仕掛けられた罠の確認をする。下から見ただけではわからないが結構な数の罠が仕掛けられているようだ。リンデが次から次へと枝を飛び移っていく。

 しかし成果はゼロ。


「あ~もう、どうして一匹も引っかかってないのよ!!」


 カリンが八つ当たりでガシガシと樹木を蹴りつける。その振動が伝わり根の間に巣穴を作り隠れていた一角兎(ホーンラビット)が地中に逃げ込む姿を発見した。一角兎は討伐レベル3の魔物の中でも下位の魔物で鋭い角にさえ気をつければ子供でも退治できる相手である。


 しかしとても臆病な性格で、額の角を掘削ドリルとして使いモグラのように地面の下を移動するのでなかなか見つけられない。魔力も低いので地中にいられるとサーチバイザーでも発見しにくいが。


 発見しにくいだけで一角兎に合わせてレーダーを周囲警戒モードから小型探知モードに切り替えれば発見はできる。俺は狩猟用ニードルガンを構えて撃つ。ロックオンアームの自動照準のおかげで狙いは外れることなく命中、空飛ぶピジョンバァストなら外す可能性もあるが、一角兎程度なら三カ月のサバイバル生活で逃がすことなくしとめられるようになっている。


「お、こっちにも出たか」


 新たな反応が地中に現れたので続けてしとめていく。二発撃って二発命中。


「ちょっとまた遊んでるの!」


 はたから見ると地面に矢を撃ち込んでいるようにしか見えないからな、俺は背中のコンテナを下ろし予備の矢を取り出し装填してすぐさま撃つ。


「遊びとは心外だな、ただ一人獲物をしとめている功労者に向かって」

「どっから見ても遊びでしょうが!」

「ちゃんとした狩りだって」


 口を動かしながらも撃つのはやめない、どんどん一角兎をしとめていく、しかし、この辺りには大量にいるな。


「これで八羽目だ」


 兎だから羽でいいんだよな、それとも魔物だから匹だろうか。


「なるほど、その道具は狩りをするためのモノなのか」


 カリンとは違い、リンデは俺がなにをしているのかわかったらしい。罠の確認が終わったのだろうカリンをいさめながら下りてくる。


「カリン、その地面に刺さっている矢を抜いてみるといい」

「どうして私がこいつのおもちゃを拾わないといけないんですか?」


 リンデにいわれたからしかたなくカリンが鉄針を地面から引き抜くと、ズボっとさつまいもが引き抜かれるように土の中から一角兎が姿を現した。鉄針は一角兎の首を射抜いている。


「え、うそ、なんで!」

「な、ちゃんと狩りしてただろ」


 俺も近くの鉄針を抜く、問題無く獲物がかかっている。


「ほれ、わけてやるから回収を手伝いたまえ」

「くぅ~」


 言い返したいけど言い返せないと、握りしめた鉄針がプルプルと震わせ、外に出せない感情をこらえている。


「カリン、相手の実力を認めることも強くなるうえで必要なことだぞ」

「リンデさん、でも、でも~、こんなヤツを認めるなんて」

「こんなヤツで悪かったな、いいから手伝えよ、分けてやらないぞ」

「わかったわよ!!」


 三人でやれば八本の回収などすぐにすむ、それから魔力気化しないよう処理と血抜きをして冷凍保存機能を備えたコンテナに収納して終わり、俺もだいぶアウトドアに慣れてきたな、約束通りカリンに手伝ってくれた報酬として一匹まるまる譲った。


「ありがたくうけとりたまえ」

「手伝ったんだから当然よ! でも……ありがと」

「ん? なんか言ったか?」

「なにも言ってないわよ」


 最後の言葉が聞き取れなかったので聞き返したら怒鳴られた。

 それからは狩りに使った鉄針に付いた血を拭って、曲がっていないかを確認、弾丸と違って再利用できるのが鉄針とニードルガンの組み合わせの利点である。


 カリンが罠を仕掛け直すそうなので俺はまた違う食料を探してみた。


「もう、小型の魔物もいない、野草もこの時期じゃとれないし、キノコでも探してみるか」


 俺自身は毒があるかないかは分からないけどサーチバイザーがあるから選別は完璧だ。


「お、さっそく発見」


 木の影で見つけたのは、いかにも毒々しい緑色のキノコだが一応検索してみると『ヒールダケ……上級回復薬の素材になり、冒険者ギルドや魔導士ギルドなどで高額買取をしている。上級回復薬を作るにはそれなりの錬金魔法の腕が必要』と表示された。


「は?」


 食料を探していたら、高級素材を見つけてしまった。


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