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第26話『食材集めへGO』

 仮眠から目を覚ますとサーチバイザーの時計は昼過ぎと表示していた。


 横になってすぐに眠りについたので六時間近くはぐっすりと眠れた。特にやることが思いつかなかったので、サーチバイザー内のリンデ用アクティブアーマーの設計図を呼び出して設計の続きをする。

 今朝に見たリンデの驚異的な動きを参考に高機動型の機体へと仕上げていく。


「接近戦もできるようにして」


 あの速度で踏み込めば、相手の懐に飛び込むのも簡単だよな。


「俺は接近戦とかやりたくないけど、パイルバンカーとかにはロマンを感じるぜ」


 などと遊び心を入れながら大まかな構造を完成させ、最後は外見のデザイン、女騎士をイメージして、リンデのすばらしい胸部装甲も下品にならないようかつ美しく見栄えるように、過去に製作した多くのプラモデルのデザインらを参考に俺自身のアイディアを加えて、ベースカラーは俺の好きな銀色と青にしてみるか、胸元には軽装鎧(ライトアーマー)と同じ獅子の紋章を描けば完了だ。


「おお、自画自賛したくなるほどの出来栄えではないだろうか」


 書き上げた設計図に採寸したデータからリンデの3Dモデルを作って重ね合わせてみる。異世界人にしては日本人風の顔、だけれども日本人の平均を逸脱したプロポーションがアクティブアーマー三号機と良く似合いう。もし俺がアニメの監督だったらヒロインはリンデ一択で決まりだね。


「いやいやこの程度で満足しちゃだめだ、これはまだ青写真にすぎない、実物を作るまでは油断なくいこう」


 新たな決意をしていると、突然ノックされた。


「カズマ殿、目を覚ましたのか」


 訪問者はリンデであった。


「リ、リンデ!?」


 俺は慌ててサーチバイザーのモニターに浮かんでいた3Dモデルを消す。18歳以下禁止の動画を慌てて消す高校生のように、全身に冷たい汗が流れた。


「おきゅてるぞ」


 やべ、噛んだ。


「失礼する」


 背中と腰に昨晩に修理した剣をさげたリンデが入ってくる。


「どうかしたのか?」

「いや~なんでもないぞ~」


 笑う必要がないのに笑ってしまう。


「顔色も戻ったようだな、体調に問題がないのなら村の外へ食料の確保に行きたい、手伝ってくれないか」

「おう、俺たちが持ち込んだ食料も無限にあるわけじゃないしな、喜んで手伝うよ」


 俺の不審な行動を流してくれたことに感謝し食料確保を承諾した。

 俺は軽く柔軟体操をしてからアクティブアーマーを足から順番に装着していく。


「やはりそれを着て行くのか」

「もちろん、これを装備してないと俺は一般人以下だからな」


 船底の扉から外へ出ると、艦内で姿を見なかったシルヴィアとバァルボンさんが傾いた甲板の主砲本体を開き中を覗き込んでいた。


「バァルボンどうしたのだ!」


 ちょっと遠いが声の届かない距離ではない。


「シルヴィア殿の見立てではこの主砲の修理が可能だそうです」

「それが直せるのか」

「はい、フレームや主要各部に深刻なダメージはありませんでした。まだ推測ですが動力を繋ぐ配線がどこかで断線しているのではないかと」


 この主砲は船の動力部からエネルギーを供給されているのか、魔力で砲弾を打ち出す魔導砲、エネルギーさえもってくれば撃てるわけだ。


「手伝いはいるか」

「いえ、配線だけなら単純作業ですのでマスターは食材探しに行ってください」


 まだ伝えてないのに食材探しに誘われた事を知っていた。俺の元に来る前にリンデから聞いていたのだろう。


「わかった、それじゃちょっと行ってくれるわ」

「お気をつけて」


 ホバーブーツを起動させ浮かび上がる。


「う、浮いた!? それがその魔導甲冑の能力か」

「まあな」

「なんという、なるほどシルヴィア殿の自信も頷ける。これが自作だとは王宮専属技師にも引けはとらない」

「そんな大げさな」


 それはいくらなんでも持ち上げすぎだろ。SOネットには『変形』も『付加』も珍しいスキルだけどまったく使い手がいないわけでは無いと書かれてたし、ちょっとイメージ力が強くてスキルと相性が良かっただけの、もやし系日本人だ。


「速度も出せそうだな」

「それなりにな」

 俺自身はもやしでも作ったアクティブには自信はある。


「ならば、その能力を見せてもらおう」


 リンデが闘技法『俊足の法』を使い走りだし、俺も空気を蹴りホバーで後を追いかけた。






 村の門を出て南西、シルバーメイズとは逆方向にある森の中へ。

 リンデに先導され木々の根でデコボコになっている獣道を苦にすることのなく駆け抜ける。


「闘技法ってのはすごいんだな」


 全速ではないが、ホバーでもそれなりの速度が出ている。俺が生身で追いかけていたら数秒で後ろ姿を見失っていただろう。


「闘技法を使えるモノみながこれほど使えるわけではないぞ、自分で言うのもなんだが、私は同年代の中では使いこなしている方だ、この村に閉じ込められ実戦で鍛えられたからな」


 やっぱりリンデはそれなりに高い実力をもっているのか、SOネットで闘技法の習得年齢や熟練度表と照らし合わせたら明らかに突出している。


「もっと速度だしてもいいぞ」

「持続させるにはこれくらいが限界なのだが」

「そうなのか、今朝の模擬戦はもっと速かったよな」


 今朝はもっと速度が出ていたのでペースアップを言ってみたら、リンデに困った顔をされてしまった。汗もかいていないし息切れもしていないのにどうしてだ。


「瞬発的にはもっと出せるが、あの速度で走り続けるのは負担が大きすぎる」


 模擬戦の時のアレは瞬間的に出せるブースト技だったのか、同じ技の名前だったから勘違いしていた。


「カズマ殿はまだ速度をあげられるのか」

「ああ、可能だぜ」

「すごい魔導甲冑なのだな」

「魔導甲冑じゃなくてアクティブアーマーだ」


 先ほどまで奇妙な鎧としか思っていなかったであろうリンデの瞳に関心の色が浮かんだ。これならあの設計図を完成させれば着てくれるかもしれない。ここはダメ押しで俺はポーズコード01を起動する。


 ホバー移動しながら速度を落とすことなく決めポーズを取った。


「す、すごい鎧、いやアクティブアーマーだな」


 若干引かれてしまった。やはりこの世界の住人には決めポーズのお約束は通じないようだ。俺は咳払いをひとつして仕切り直す。


「こいつが俺の夢だからな」

「夢か、それを叶えるために大きな街に行きたいと言っていたな」

「上質な鉄材とか魔導具の媒介になる素材が欲しいからな、こいつを強化するために」

「なるほど、君は本当に職人気質なのだな」


 元はただのサラリーマンだったけどね。この世界にきたからには自由に生きると決めた。


「リンデも夢とか、街に帰ってやりたいことあるだろ」

「当然だ私にもやらなければならないことがある。もっとも私の願いは街へ帰ることではないがな」


 意味深なことを口にしたリンデ、表情がどこか固くなった。


「村から出たくないのか?」

「出たいさ、多分この村の誰よりも早く出たいと思っている」


 謎かけなのか、よく意味が理解できなかったが、雰囲気まで固くなってしまったので、それからは会話もなく森を進み食料集めの場所へ到着した。


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