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第115話『拠点防衛型ドグーラ初回生産ロット』

「隊長、ブラックボア接近中」

「第一分隊構え」


 ベテルドさんの指示で六機のダークブラウンカラーの機体がバズーカ型の魔導銃を構える。


「来ました!」

「撃て!!」


 一斉に放たれる六発の砲弾。二発は外れ後方の木々を破壊するが、残りの四発は命中、ブラックボアを穴だらけにした。


「すさまじい威力だな」


 南門守備隊用アクティブアーマーの注文を受けてから四日。

 ここは南門から徒歩で一時間ほど入ったナナン樹海、先行生産の六機が完成したので、テストにやってきたのだ。

 新型のアクティブが完成したらナナン樹海でテストがお決まりのパターンになりつつある。



==============================

■製造番号AW-08・機体名『ドグーラ』

◇重中量級防衛型 ◇カラー「ダークブラウン」

◇素材 魔導粘土

◇機体構成

「コア(C)」三連下級魔結晶

「ヘッド(H)」ドグーラメット

「ボディ(B)」ドグーラアーマー

「ライトアーム(AR)」ドグーラアーム

「レフトアーム(AL)」ドグーラアーム

「レッグ(L)」ドグーラブーツ

「バックパック(BP)」供給タンク

◇武装

・メインウェポン(AR)……ハイドロバズーカ

   〃    (AL)……タワーシールド

・サブウェポン(BP)……ショックスピア

◇補足

 カズマが南門守備隊長ベテルドから依頼を受けて製作した拠点防衛用量産機、コストを極限まで抑えた結果採用された素材は魔導粘土、魔力を帯びた土を固めたもので、鉄よりもやや弱い強度だが、衝撃を吸収する性質を持っており、肉厚にすることでブラックボアの突進を正面から受け止められる防御力を獲得した。

 主力武装はハイドロバズーカ、こちらもコストカットを切り詰めた結果生まれたバズーカ型魔導銃で、砲弾に使用しているのは土と水、砲身の後方に土と水を入れると銃身のなかで泥の砲弾が生成され発射される。連射はできないが、土と水があれば弾切れはない。バックパックの供給タンクの中には砲弾三十発分の土と水が入っている。

===============================


「メイン武装のハイドロバズーカの他に、電撃を纏った槍ショックスピア、この二つがドグーラの武器になります。ショックスピアには弱、中、強と三段階あり、弱は生け捕り用、強は撃退用、中がその中間ですね」


 魔導ギルドの依頼、魔槍士用の魔槍を作っているときに思いつき、一緒にまとめて作ったのでコストはかなり安くなった。


「これは雷鳴属性をもった魔槍ではないのか」

「そうですね」


 ベテルドさんが槍を凝視しながらつぶやいたから一応肯定しておくけど、これにはカラクリがある。ちゃんとコスト以内には押さえているので追加料金の請求はしないですよ。


「雷鳴魔法は上位魔法なんだか、これ一本で金貨三枚は余裕で超えるんじゃないか」

「それは無いと思いますよ、動力がドグーラからの供給なので、槍単体では電気は起こせません、なので売れば普通の槍と対して変わらないかな」

「え、あ、そうなるのか?」

「そうなるんです」


 確認はしていないけど力強く断言する。だって本当にドグーラが持たなければ普通の槍と変わらない。制作した時にシルヴィアとファーがものすごい言いたいことがるといった表情をしていたけどね。忙しかったので後回しにした。後が少しだけ怖いけど。


「こんなすごい魔導甲冑が六機も、本当に金貨三枚でおさまったのか」

「おさめました」


 まず、工房の地下に自動生産ラインを作り、アクティブパーツをプラモデルのように各部位ごとに生産、組み立てをマルセルさんたち整備班にやってもらったので、俺がやる仕事は生産ラインを作る以外だと、自動生産では作れないコアを製作してはめ込むだけだった。


 粘土は地下室を作った時に出た残土を使用したのでお金は掛かっていない。コアに使った魔結晶も守備隊の倉庫に余っていたクズ魔結晶を使い、装備しているタワーシールドも元々守備隊が使っていた物の流用、計算してみると一機の製作費は銀貨一枚以下になっている。


 生産ラインを作るのに、少し費用は掛かったけど十分予算内だ。ミスリルの情報代として金貨百枚は追加で計算してるけど。


「整備班のみんなが組立にも慣れてきたんで、これからは一日三機は作れると思います。残りの四十四機はお約束の一カ月以内には間違いなく納品しますね」

「ちょ、ちょっと待ってくれないか!」

「納期が遅すぎますか、資金集めは十分できたので俺が本気で量産に協力すれば、ギリ一週間でいけるかな」


 ダラスさんたちが採取してきてくれたヒールダケを上級回復薬に錬金したり、魔槍士用の魔槍を製作したりとドグーラの方にはほとんど携わっていなかった。しかし、オークションさえ終われば、俺も取りかかれないことはない。本当は手に入れたミスリルをいじり倒したいけど、ベテルドさんが急いでいるなら、一カ月の納期を前倒しにして速やかに完了させよう。


「そうじゃない、この六機以外にもまだ製作しているのか!?」

「はい、依頼は中隊分でしたよね、だから中隊四十八機プラス予備機二機を合わせて五十機を作っていますけど」

「たった金貨三枚で魔導甲冑を五十機もだと」


 どうやら予算内で作れるだけとの依頼だったので、六機だけだと勘違いしてしまったようだ。だが、五十機の依頼を受けたからには全機生産を目標に頑張った。そのおかげで魔導粘土なる新しい素材も発見できた。強度は鉄以下だけど弾力性があり、衝撃を吸収するのが特徴なので、守備隊用にはピッタリの素材と言える。


「ミスリルの情報を教えてくれたので、その分を上乗せして起きました。何度も言いますけど予算内なので安心してください。コストを切り詰めても、ここまでの機体ができるとは、正直自分も思いませんでした。今回はいい勉強もできましたし、守備隊には頑張ってもらわないと、それに使っていればきっと修理とか改造とかが必要になるはずなので、その時は別料金をいただきます」

「……わかった、今回は君の好意に甘えさせてもらう」


 いろいろ思うところはありそうだけど、現状を考え飲み込んだようだ。

 予算と性能には開きがあると俺も思うけど、守備隊が脆弱だとシルバーファクトリーもある都市全体が困るので本気で頑張りました。


「最後に、この機体はあくまでも魔物との戦闘を想定して製作しました。なので一般市民に向けては攻撃できないよう行動抑制しています」

「そんな機能を付けられるのか」


 付けましたとも、これはファーに言われて搭載した機能だ、守備隊を信じないわけじゃないけど、何十人もいるんだからアクティブの性能を知り悪事に走る輩もいるかもしれないと。

 なので、はめ込んだコアには識別機能を組み込んでいた。この機能さえなければ、魔結晶二つで済んだんだけど、ファーの進言はもっともだったので手間をかけて三個使用した。俺のアクティブを人殺しの道具にはしたくない、どんに対策をしても絶対はないことはわかっているけど、できることがあるんだからやっておかないと。


「事前に登録した手配犯、攻撃してきた相手や犯罪行為を行った者に対しては識別して攻撃できますので安心してください」


 後で聞いた話だけど、市民を守るための行動抑制機能が、変装して街へ潜り込もうとする手配犯を自動で識別してくれるおかげで、一度でも手配された盗賊は絶対に通過できない門となり、盗賊の激減に貢献したそうだ。


「明日が例のオークションの日だが、資金は集まったのか?」

「ええ、そちらも全力を出したので、過去最高額の倍の値がついても落としてみせます」

「……魔導ギルドが供給不足だった回復薬を大量に仕入れたと噂で聞いたが、まさかな」


 ベテルドさんが何かを呟いたけど、よく聞き取れなかった。

午後に時間が空きそうにないので、いつもより早め投稿。

評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。


配合した泥を打ち出すバズーカ、略してハイドロバズーカ

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