第103話『合同討伐に向けて』
魔導具ギルドから魔導ギルドに名称変更しました。
「それは、大変失礼な態度をとってしまった、許すがいい」
ファーの階級を聞いた蒼天リーダーは下手な誤り方をしてから、お座りになられた。きっとまともな謝罪などしたことが無いんだろうな。
「もういいかね、先ほどファー殿から質問された魔力バリア対策だが、結界破壊の魔導具を魔導ギルドに注文している」
へぇ、そんな魔道具があるのか面白い、俺も結界破壊弾とか作ってみよう。
それからは細かいすり合わせと、少しだけ情報を求められ会議は終了、情報を求められた時にダラスさんが暴走しそうになった事以外は平穏だった、蒼天のリーダーにからまれるかとも思ったけどファーのランクを知ってからは置物のように大人しかった。
会議室を出てカウンターへ行くと、そこは冒険者でごった返していた。
「すごい人数だな」
「悪魔像が出るまではこのくらいが普通だったわよ」
集まった冒険者たちは張り出された合同討伐の依頼書を噛みつくように読んでいた。
今回の合同討伐は一ツ星の三チームがメインだけど、群れが確認されているのでサポート要員として十字線ランク以下の冒険者にも依頼が出ていた。昇進査定に大きく影響するらしく、低ランクの冒険者は我先にと参加を決めている。
シルバーファクトリーとウルフクラウンには直接参加依頼がきていて、強制ではないので俺は受けなくてもいいかなと思ったけどダラスさんの勢いに負けて参加すると言ってしまった。
まあ参加すると決めたんだから前向きに考えよう。集まる冒険者の中にアクティブの似合う女性が現れることを願って。
「カズマさん」
物思いにふけっていると、冒険者の中から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「マスターあちらです」
声の出所を探すと、シルヴィアが示した先に掲示板に夢中の男たちをかき分けて獣人族の三人娘ムギ、ミケ、クロエが這い出すようにやってきた。
「こんにちはカズマさん、カズマさんたちも合同依頼に参加されるんですか」
もみくちゃにされて大変だったのだろう三人の獣耳が少しだけ垂れている。
「成り行きで、参加することになったよ。そっちも参加するの」
「はい、悩みましたが早く冒険者ランクを上げたいので」
「大活躍は無理でも、参加するだけでポイント入るしな」
「運よく一匹でも討伐できれば、報酬が上乗せで貰えるのは良い」
三人は全員参加で意見がまとまっていた。ミケは大活躍は無理と言いながらも活躍の機会が巡ってくるのを願っているようだし、そんな性格を理解しているクロエも一匹は討伐したいと考えているみたいだ。
「参加するなら、やっぱり活躍したいよな、冒険者なんだし」
「自分たちの実力はわきまえているつもりです。ですが今回は合同討伐、協力し合えれば実力以上の戦果もあげられるはずです」
気合を入れるムギに二人が頷き同意する。聞いていて気持ちのいい決意だったんだけど、とある人物に水を差された。
「あはは、駆け出しの獣人は夢見がちだね」
話に割り込んできたのはファーにやりこめられた蒼天のリーダーの男だった。
「わかっていないな君たちは予備の予備なんだよ、依頼書をよく読みたまえ、募集している担当は南門近くの最終防衛だ。前線に我々のような優秀で上位ランクの冒険者が出る以上取りこぼしなどでないよ」
鼻息あらく見下してくる蒼天のリーダー、金髪をかき上げる姿はとても胡散臭い。データに一部の女性に人気があるとあったけど、これのどこに人気の出る要素があるんだろうか。
「まあ、もしかしたら我々の戦闘に驚いた小物が逃げてくるかもしれないけど、倒せるとしてもその程度さ、だが、我々のアドバイスを受ければ別だ、どうだい今夜一緒に食事でも一ツ星ランクの我が蒼天メンバーがアドバイスすれば活躍できるようになるさ」
うわー、めちゃくちゃ下手くそなナンパだな、目がものすごくいやらしくなってるよ、下心が隠れることもなく前面に押し出されている。もしかしたらこれでも通じるほど一ツ星ランクのネームバリューはすごいのか、昇進できなくて焦っているチームなら下心が見えていても飛びつく可能性はあるかもだけど、ムギ達は違った。
「ありがたい申し出ですが、お断りさせてください」
ムギがすかさずキッパリと断った。
「な、なんだと」
そこは驚く事なのか、断って当たり前だろ。
「見苦しいわよ、上位ランクを名乗るなら潔癖までは求めないけど余裕はもってほしいわね」
「チッ」
ファーをチラ見した蒼天リーダーは、盛大な舌打ちをすると去っていった。ここでファーが止めなかったらどうなっていたか。
「あれで主力の一角なのよね、今度の合同討伐大丈夫なのかしら」
「まったくもって同感」
蒼天リーダーが見えなくなるとムギが俺たちに頭を下げてくる。彼女たちも自分たちが危なかったことを理解しているようだ。それでも断るんだから心が強いんだな、ランクが低くてもあんなヤツより彼女たちの方が誇り高い。
「また助けられました。この恩も合わせて必ずお返しします」
「このくらいは助けたウチに入らないよ」
「断るのは立派だったけど、もう少し受け流すことを覚えないと危ないわよ」
「その時は顔面殴って逃げるだけさ」
「砂かけて逃走」
ムギが断った時にはミケとクロエは逃走手段を用意していたようだ。クロエの手には砂が詰まっているだろう皮袋がいつの間にか握られていた。
「慣れているんだな」
「若い女が三人で冒険者やっていますので、このくらいはよくあります」
俺よりも数段たくましいな。
「マスターよりも数十段は、たくましいですね」
「わかってるからシルヴィアさん、心読んで一桁上げないで」
「読んでませんよ」
嘘つけ。
「あの、カズマさん」
「どうした」
「約束の二日後のことですが、合同討伐が三日後なんです。申し訳ありませんが準備に時間がかかりそうなので約束を合同討伐後にずらしてもらうことはできませんか」
準備に二日もかけるって、やっぱり三人とも合同討伐にはかなりのやる気を出している。
「ずらすのは構わないけど、活躍したいんなら、やっぱり二日後に来て欲しいな」
あんな蒼天が活躍してムギたちが活躍しない。そんな事が合っていいはずがない。
「どういうことですか?」
「今回のことで俄然やる気が俺も出た。君達に相応しい、とっておきを用意しましょう!」
今の三人にとても魅力を感じている。彼女たちを輝かせるため俺の創作魂に火が付いた。
「設計図を修正しよう。君達に相応しい機体に仕上げるため、これから食事でも一緒にどうだ、特技や好み、そして体付きまで詳しく聞かせて欲しい」
「あんたがナンパしてどうすんのよ」
「これはナンパなどでは無い、俺の魂の叫びだ」
「全く理解できないんだけど」
「まだまだですね姉さん」
「え、えっと、あの」
「こうなったマスターは止められませんので、ご一緒に食事をしましょう。その時に体の採寸をさせていただきます」
「どうして食事で体の採寸をするの!?」
どこか不思議な事でもあったか、より良い最高のアクティブを仕上げるため、街に詳しいファーの案内で個室がある高級料理店に六人で移動した。
評価やブックマーク、誤字報告ありがとうございます。