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第98話『防衛のむずかしさ』

ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

「悪魔像の影響でナナン樹海に入る冒険者が減って、強い魔物が街の近くまで来てるのよ。このマーダータイガーだって本来は樹海の奥にいる魔物だもの」


 レーダーで捉えた襲われているらしき集団へ疾走する。今回はファーもアクティブを装備しているので前回よりも移動が速い。


「それにしても毎回、襲われているところに遭遇するな」

「それはマスター、レーダーの範囲が広すぎるからです。普通の冒険者でしたらこれほど離れた場所を索敵することなどできません」


 性能が良すぎるからか、別に俺は何でも助ける正義のヒーローを目指しているわけじゃないけど、見かけたら助けないほど薄情でもない。

 それにしても今回は襲われている人の数も襲っている魔物の数も多いな。


「人の反応が固まっているけど、これは馬車に乗っているのか」


 人と思われる反応は五つのグループに分かれ固まっていた。一つだいたい十人くらいで、足で走るよりも早い速度で移動している。


「でしょうね、地図と照らしたら、街道に沿って移動しているわ。やっぱり魔物が多いわね、街道でこれだけの集団を襲うなんてめったに無かったし」

「魔力パターンデータ検索、該当あり、赤目の棘虎マーダータイガー討伐レベル70」

「さっきのヤツか、今回は群れかよ」


 レーダーに映っている影は二十匹近くいる。


「おかしいわね、マーダータイガーは本来群れで行動しない魔物だけど」

「姉さんの言う通りです。SOネットにも群れる習性は無いとあります」

『カズマ、さっきの怖い虎で間違いないよ、あ、最後尾の馬車がひっくり返された、危ないのね』


 先行したノネからの連絡は集団の窮地を知らせる。


「もうすぐ付く」

「見えましたマスター、あそこです」


 移動に邪魔だった木々が無くなり、切り開かれた街道にでる。ここはミルマス街道と名付けられた城塞都市サウスナンと貴重鉱石が取れる鉱山とを結ぶ道だ。使用者の多くが商人になりそれなりの護衛を雇って通るためファーの言う通り本来なら魔物はあまり近づかないのだが現在は大量の魔物に馬車の集団が襲われている。


 先頭の馬車以外は檻になっており十人前後の若い男女が鎖で繋がれていた。

 護衛の姿が見えないのは、もうやられてしまったからなのか。

 最後尾の倒された馬車も檻で鉄柵は壊れていたが手足を鎖で繋がれているので地面を這うように逃げている。


「奴隷商の一団みたいね」


 やっぱりか、ファンタジーモノの定番だけど、リアルだと奴隷って響きにいい気持ちは抱けない。

 到着した時にはすでに犠牲になっている人もいた。

 だが、もうこれ以上の被害は出せない。


「二人とも好きに暴れていい、人命優先だ」

「了解マスター」

「任せなさい」


 アクティブを壊してもいいから人命を助けろ、俺の意図を正確に読み取った姉妹がマーダータイガーの群れに攻撃をしかける。


「六連グライダーナイフ及びスカイシールド、全発射」


 普段は防御のために残すスカイシールドも含め全てを射出するシルヴィア、グライダーナイフとは比べモノにならないほど大きな円盤となってマーダータイガーの胴体を輪切りにするスカイシールド。


 以前までなら、この二つがヴィアイギスの武器だったのだが、今回は追加武装を持っている。

 ホバーブーツにマウントされていた魔導ショットガンを引き抜き、迫るマーダータイガーに散弾をお見舞いする。これはボンズ魔導銃店で買った魔導銃の一つを五発まで装填できるように改造してヴィアイギスに追加装備させたものだ。


 ちなみに俺のフゥオリジンにもチェイス・ゴールドキングと同じMMライフルを追加武装としていた。


「そこの馬車、天井借りるよ」


 俺は倒れた馬車の上に着地をすると、サーチバイザーとロックオンアームを信じて近づくヤツから三点バーストで弾丸を叩き込む。


「カズマ右からくるのね、あ、今度は左と思ったけどやっぱり右なのね!」

「耳元で騒がないでくれ!」


 合流したノネが俺の耳元で親切に教えてくれるけど、わかってるから集中させて欲しい。


「ファー、あまり離れるなよ!」

「わかってるわ、経験者を舐めないでよね!」


 ファーは森に逃げ込んで襲われた人を助けていた。パニックになりバラバラに逃げるので、カバーする範囲が広がっている。


「こっちに来なさいよ、相手してあげるから」


 近くのは魔光刃で斬り裂き、逃げる人を襲うヤツにはMMライフルを叩き込む、そして離れた場所には遠慮なく魔導キャノンを撃ち込んでいた。MMライフルは急所にあたらないと一撃で倒せないけど、魔導キャノンは急所から多少ズレても一撃だ。


「ほら、壊れた馬車に戻って、守りにくいから、助かりたいなら言う事聞きなさいよ!」


 散らばった奴隷たちの尻を蹴って連れ戻してくる。


「ああ、そっち行くなバカ!」


 アクティブを装備した状態でケガさせないように蹴るなんて器用だな。


「マスター、逃げた馬車の一団に別の群れが接近しています」

「なんだって!」


 本当だ、戦闘のためレーダーの範囲をしぼめていたけど、拡張すると逃げる馬車の一団に大きな群れが迫っている。ここを襲っている群れより多いぞ。


「マスター、ここは私が抑えるからシルヴィアと向かって!」


 半数以上は倒した。ゴールドキングがあるからファーだけでも残りは倒しきれるだろうけど、檻に入っていた人たちの護衛までできるのか、でも、迷ってる時間も勿体ない。ここは決断しないと。


「わかった、キャリーウルフはここに残ってファーに従え、行くぞシルヴィア」

「了解ですマスター」

「わたしも行くのね」


 ノネが俺の肩に掴まった。


 ホバーブーツ全快、シルヴィアもスカイシールドに乗って付いてくる。

 新たな群れはマーダータイガーよりも移動速度が速い、別の魔物か。


「魔力パターンを二種類検知、混成のようです。魔力パターンデータ検索、該当あり大膜蜥蜴コモドバーン討伐レベル74、もう一種は四足鳥ガバドン討伐レベル72」


 マーダータイガーに続いて七十越え連発だな、ファーの言ってた通りだ、サウスナンの近くで出没していい魔物のレベルじゃないぞ。


「詳細は――」


 シルヴィアから魔物の説明を聞く前に馬車に追いつけた。だが一歩相手の方が早かった。

 先頭を走る馬車にムササビのような膜を持つ大トカゲが空から飛び付いた。馬車より大きい体に覆いかぶされた馬車は簡単に潰れる。

 先頭が潰されたため後続の馬車は急停車をよぎなくされ、止まりきれなかった二台がぶつかり横転する。


「やらせるか!」


 馬車から転がり落ちた人を食らいつこうとするコモドバーンの頭部にフルオートで魔力内包弾を御見まいしてやった。


「シルヴィア数は」


 特徴を聞いている暇は無い、数だけを把握して取りこぼしが無いように殲滅しないと。


「総数32、内訳コモドバーン21、ガバドン11です」

「カズマ、上なのね!」


 ノネが空を指差すと俺の周囲が突然暗くなる。

 見上げればそこには四本の足を持つ潰れたような顔の鳥型魔物。

 こいつがガバドン、降下してきたガバドンは俺を無視して横転した檻を掴み持ち上げようとする。まだ檻に閉じ込められている人たちが悲鳴をあげた。


「二連グライダーナイフ射出」


 二本のグライダーナイフを発射する。シルヴィアほどうまくは操れないけど、アシュラ・スミスの六腕を操作した経験が生きたのか前よりも細かくコントロールできる。

 グライダーナイフはガバドンの四足を切断、その勢いを殺さず首を斬り落とす。

 少しだけ浮かび上がっていた檻が地面に落ちた。


「すまないけど、もう少しそのままでいて、さっきみたいにバラバラに逃げられるともうカバーに入れない」


 シルヴィアがスカイシールドに乗って空中のガバドンを押さえてくれている。俺は檻に近づくコモドバーンを仕留めていくが手数が足りない。


「四連PBミサイル発射」


 PBミサイルで近場の敵を薙ぎ払い、この隙にMMライフルのマガジンを交換する。ガマンティスの時みたいに爆発の衝撃だけで倒れてくれるほどの軟な相手ではない。


「倒すだけならできるのに、防衛戦って難し過ぎる」


 俺がそう愚痴をこぼした時だった。


「ヤッホー、ヒーロー参上だぜ!!」


 戦いの場に狼を模したアクティブを装備した一団が飛び込んでくる。


「ダラスさん」

「英雄になるチャンス到来、加勢するぜ坊主!!」


 パイルバンカーでコモドバーンを吹き飛ばし、ビシッとポーズを決めるウルフクラウンリーダーのダラスさん。

 この時、俺は思った。やっぱりアクティブは最高にカッコイイと。

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