「第三十七章」「そして日菜乃と叶恋(2)」
放課後の教室。
差し込む夕日。
オレンジの光。
前の席で、椅子を逆座りしてこちらを向いている制服姿の叶恋がいた。
「元気ないな~。どないしたんや。顔色むっちゃ悪いで。」
叶恋の姿を見て、たとえ幻だろうが、日菜乃の心は震えた。
「あ、貴方のせいじゃないの。叶恋が勝手に死んじゃうから、私がこんなに、、、」
「こんなに、苦労してるんじゃないの。」
思わず口から出た言葉。
教室のカーテンが風に静かに揺れた。
それは、突然命を奪われた叶恋には、ひどい言葉だった。
言った瞬間に、日菜乃は、口から出た言葉を後悔した。
「そら、なんや悪いことしてもたなー。こないなるなんて思うてへんかったんや。」
苦笑いしながら叶恋は言った。
「日菜乃にもごっつう迷惑かけたみたいで、ほんまにごめんやで・・・・。」
そんなことを言って欲しかったんじゃない。
そんなことを言わせたかった訳じゃない。
一番辛いのは叶恋に決まっている。
日菜乃は暫くの沈黙の後。一番聞きたかったことを言葉にした。
「私、頑張れてるかな。叶恋の分まで・・・・・・・・。」
呟くように漏れた言葉。
叶恋のような行動力もない。才能もない。
頑張ったところで叶恋の足元にも及ばない。
その言葉に、叶恋は、呆れたように答えた。
「なんで死んでしもうたウチなんかのために頑張らないかんねん。」
すこしの間のあと。
「日菜乃は、自分のやりたいようにやればええんや。」
優しい笑顔で叶恋は言った。




