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「第三十三章」「バイクと共に(4)」


誰も見ていないのに公園でゴミを拾う老人。放課後椅子を整頓する女の子。落ちているタバコを拾いゴミ箱に捨てるサラリーマン。子供の登下校に、誰に頼まれた訳でもないのに横断歩道で、交通整理をする人たち。


それらは誰に賛辞されずとも「尊い」行為なのだ。



バイクでもそうだろう。


違法な改造をしない。空ぶかしなど五月蝿い運転をしない。過剰なスピードを出さない。公道で見せかけだけの自己満足な速さの運転をしない。すり抜けをしない。停止線をオーバーしない。黄色では必ず減速を始める。自分のバイクは良い整備をしておく。プロテクターはしっかりとしたものを着ける。集団で走るときには、他に迷惑をかけない。


誰もが出来るのに、多くの人間がまるで守れない多数の行為。


これらが守れているかどうかを知っているのは自分だけだ。

自分に甘い駄目なライダーは殆どができていないことだろう。




であればこそ、それらを頑なに守っていた叶恋の走りがそうであったように、それは解っている人にとっては「尊い」ものなのだ。


自分に甘くなどいくらでもできる。多くの人間が、ぐうたらで怠け者で楽をしたい、と思っている自己中心的な人間なのだ。


そうであるが故に、そうでない人たちは、人の心を打ち、感動や尊敬を受けることが出来るし、そのように自分もなりたいと人に思わせることが出来るのだと思う。



そう・・・田村と叶恋はよく似ていた。



彼らは本当にバイクが「好き」なのだ。


それはその辺の、割り込みやすり抜けをするライダー達の語る「バイクが好き」などとは、レベルが違うものである。

日菜乃はそんな「バイクが好き」な二人を眺めるのは、大好きであった。



結局のところ、その田村の忙しさで自分の教習日が飛び飛びなのだろうと、日菜乃は思って納得していたのが、実はまるで違う理由からそうなっていた事を、日菜乃はかなり後から知ることになる。



運転に余裕ができたせいか、そんなことをぼんやりと考えながら、今日の教習を日菜乃は終えた。



「ん~~。成瀬さん。明日から二段階ね。」


「え?」

突然の言葉に日菜乃は変な声をまた出してしまい、赤くなった。


「コースを明日までにしっかりと憶えてきてね~~。あ~もう憶えてるかな。」

「殆ど憶えています。でも、今日って見極めだったんですか?」

「ん~ほんとはかなり前だったんだけど、私が引き伸ばしにしてただけだったからね~~。三時間余計にプラスしたけど、それは成瀬さんが下手ってわけじゃなくて、私の自己満足だから許してねん~。」

「は・・・はい。」




明日から第二段階。



S字やパイロンやクランク、一本橋、急制動。そして安全確認。

これらを完璧に走行できることを目指す教習が始まる。



すこし自分に余裕が出来てきた。と思っていた日菜乃は、また振り出しに戻されるような気がして、少し不安になった。







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