「第七十章」「合流(6)」
ドライビングスクールのツーリンググループは、3チームに再編成されて発進しはじめた。
上級者。常連組。初心者組。に分かれて、10数人のチームを作っていた。
初心者で初参加の日菜乃は当然初心者グループで、二度目の参加で一年以上のライダー歴のある杏樹と、初参加ではあるが、とても初心者とは言えない楓は、常連組に入れられた。
杏樹と日菜乃は同じグループで走れるだろうと思っていただけにショックだったが、これを決めたのは田村指導員らしく、なにかしらの考えがあるのだろうと、その支持に従った。
グループは行動の邪魔にならないように、5分から10分の差をつけて走行するために、インカムなどでも通話は不可能になる。杏樹はかなりそのことに残念そうだった。
その横顔を見た田村指導員は、ニコニコしながらいつもの感じで杏樹に一言だけ声をかけた。
「大丈夫だよ~~。チーム編成は運転技術を見て変えるからね~~。」
そう言って、杏樹の方をポンポンと叩いた。
その言葉に、杏樹は少し明るい顔になって、ヘルメットをかぶった。
上級者チームを見送った数分後に、杏樹たちは発進した。
出ていきざまに、杏樹は軽く日菜乃に手を振った。
それに気がついた日菜乃も、小さく手を振り返した。
その視界の中に、こちらを振り返った楓の顔も見えた。
一体彼女はどうしてこのツーリングに参加したのだろう。
日菜乃は、走りだすCBR1000RRのテールランプを見ながらそう思った。
少なからず「叶恋のアールさんに乗っている成瀬日菜乃が居るから」という理由は当たらずとも遠からずだろう。
彼女がグループのメンバーたちとではなく、わざわざ日菜乃や杏樹が居る、無関係のツーリングに加わる理由は思い当たらない。
露草さんの口添えで、というのも、このドライビング・スクールとは何の関わりもないからだろう。
そこまでして関わってくるには、何かしらの目的もあるのだろう。
それが日菜乃や杏樹に、良いことであれ、悪いことであれ。
台風により避難されている方、家が大変な状況になっておられる方。非常に辛い状況だと思いますが、自分を追い詰めすぎないようにしてください。なんとかなるという鈍感力が必要な時もあるように思います。
何の助けにもお力にもなれないのですが、心が折れないように願っております。