「第六十九章」「集団ツーリング(1)」
日下部ドライビングスクールのツーリングのスタート時間は、それなりに早い。
集合場所は教習所で、ツーリングへの出発が8時とのことで、最低でも7時30分には着いていないと、チーム分けには間に合わない。
上級者組、一般組、初心者組、の3チームにチーム分けされ、どのチームも先頭と最後尾には教官が走ることになっている。何かあった時の為に、修理道具などを積んだ車も並走する。
前回の身内ツーリングのときは露草ライダーズが車を出してくれていたが、秋口が迫る繁盛期の日曜日に店を閉めるということは流石に出来ず、何時もどおり教習所の車が並走することになった。
その代わりと言ってはなんだが、露草花純が教習所の車に同乗することになった。
本来なら花純もここの卒業生ではあるし、バイクで参加すれば良いような気もするのだが、この炎天下にバイクで走ろうとか思うほど、花純はバイクに「乗るのが」好きとは言えなかったし、自分の体型に合った125クラスのバイクでは、自動車専用道路が走れないというのもあって、涼しいクーラーの効いた車で同伴の方を迷いもなく選んだ。
高速道路を積極的に使うツーリングプランは日下部ドライビングスクールでは計画はしないほうだが、無料のバイパスは積極的に使うので、残念ながら小型バイクでの参加は今回は無かった。
そもそもこんなツーリングに花純が参加するのは、当然、杏樹と日菜乃が参加しているからであって、そうでなければ二つ返事で断って、家でバイクを弄っているだろう。
更に、今回は父親からバイト代が出ることが決まっている。
花純には、今どうしてもほしいYAMAHAのロゴの入った新しい、ワイズギアの作業ツナギがあったので、その資金にもなると、大喜びで引き受けた。