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「第十五章」「「叶恋」と「杏樹」(2)」

教習所と言えば、若いひよっこ達の集まる場所の代表格ではあるが、最近はそうでもない。



リターンライダーで練習がてら大型教習を受ける人や、最近のモトブログなどのを動画を見て、自分もまだまだイケるとか思った中年層がかなり多く、ここでも高齢化の波は凄まじい。

教習生の半分は中年のおじさんだ。


のこりの半分は、「俺今からバイク乗りになるんだぜ。」と意気がった男連中と、ごく僅かな女性ライダー志望の20~40代の女性たちである。



15歳の杏樹が、そんな連中のヘロヘロ走ったりたまにコケてる様を眺めても面白いわけもなかった。

何事もなくグルグル回るだけの車の教習よりは、ハプニングがあってマシ。というだけである。


(あら。)

ぼんやりと周回コースを走るバイクたちを眺めていたが、その中に少し異質なものを発見して、杏樹は視線で追った。


明らかに若い体型の女性が、周りとは違う乗り方でバイクを操っていた。


大抵の場合、極低速になると、初心者はハンドルがフラフラしたり、安定感がなくなって上半身がグネグネしたりするものだが、彼女にはまるでそれがなかった。

杏樹には名前はわからないが、カクカク折れ曲がった場所や眼鏡の縁の形を描くようなコースも、どっしりとした安定感でしかも軽快に走り抜けていた。


そもそも出してるスピードとバイクの傾き方が違う。

どちらかと言えば、教官のバイクに近い動きだった。


(女性でも上手い人居るんだな。)

きっと既にバイク乗りで大型教習でも受けに来た女性なのだろう。


そう結論づけた杏樹に、その女性を眺める父親と田村教官の声が聞こえてきた。


「あれで初めてバイクに乗って二時間目なんですか?」

父親が驚いたように言った。

「いや~あの子はすごいよ~。」

ニヤニヤしながら田村教官が答えた。


信じられないという感じで父親は見ている。

「どうみても経験者で大型教習の卒業間際くらいの乗り方ですよ。いや、それより上手いくらいだ。」

「俺も聞いたんだけどさ~、無免で乗ってたとかも無いそうなんだよね~。」


(へ~あの女性すごいんだ。2時間て、さっき乗り始めたばかりじゃないの。)

杏樹も再びそのバイクに目を移した。

そもそもバイク自体にさほど興味もない杏樹である。

すごいな。とは思っても、ぼんやりとした視線で眺める程度の興味だった。


「はーい。ではそろそろ全員切り上げて戻っておいで~。」

田村さんがマイクで告げた。


次々にバイクが停車場所に戻ってくる。

あの上手い女性も返ってきた。



バイクを降りて、教習生はぞろぞろと教官室に向かうために杏樹の前を通りかかった。


「うわ、えらい若いな~。あんたもバイクの免許取るんかいな。」

その女性に声を突然かけられて、目で追っていただけに杏樹はドキッとした。


「え、ええ。まーそうですわ。」

焦りのせいか、なぜか肯定してしまった。


「おっさんばっかりで話し相手おらんかったんや。助かるわ。」

そういってヘルメットを取った。


杏樹は目を見開いた。

予想以上の若さと、端正な顔立ちに。



その子は握手とばかりに、キラキラした笑顔で手を伸ばした。





「うちは西奈叶恋。15歳や。よろしゅーな。」








それは、日下部杏樹の人生を変える出会いだった。





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