いちゃこらさっさ
「かなでー、おっ昼食べよーん」
現在昼休憩。食べ物大好き!な人からすれば山となる四時間目の授業も終わり、さっそくそう声をかけてきたのはザ・ロリな楓。
「あ、私もー」
それにのっかってきたのはすんごいふわふわしてる、所謂ゆるふわ(?)の美里。見た目に反して相当な腹黒さをもっている。
「今日は私もお弁当なんだ」
最後にやってきたのは如何にも委員長やってますってオーラ出してる雅。実際は委員長じゃないけれど、凛とした雰囲気なんかはそれっぽい。でも中身は立派な乙女。どこかずれているけれど。
「おー、ちょいとまってよん」
そしてこれが私、勉強とスポーツは得意だが容姿的にはどこにでもいそうな高校生である奏。
四人で近くにあった机を寄せ合い、ついでに椅子も一緒に借りてきて座った。
そのままいただきますをして談笑しながら昼食をとっていたが、女子高生が四人も集まれば自然と話題は恋愛になるのもしれない、いや現になっているのだが私はそういうのにはあまり関心が無いのである。
関心が無いのであまり会話に参加出来ないが中心となるのはいつも美里だった。ふわっふわで女の子してるから当然男子からも人気が高くかなりモテているようなのだが如何せんこの女、かなり腹黒い。
「昨日隣のクラスの鈴木くんに告られたんだけどさ、よくあれで私に告白しようと思ったよね」
いやいや、ね、とか言われても知らんし。昨日告白されたのも今知ったし。
「えー?鈴木くんてサッカー部のでしょ?何がダメなの?」
恋愛に興味津々な楓の疑問。
サッカー部の鈴木くんと言えば全国大会経験者で県代表にも選ばれた我校サッカー部のエースストライカーってやつであり、おまけに成績優秀でかなりのイケメンさんのはずだ。
「『俺出来るヤツ』見たいな感じが嫌だ。なんかイラッと来るんだよね」
『私かわいい』の美里に言われるとは鈴木くんも気の毒だ。
「でもこの間は俺様系がいいって言ってなかった?」
身体は真面目、頭脳は乙女な雅は美里がもらす何気ない言葉もしっかりと覚えていたみたい。
「そうなんだけどなんかこう、違うんだよね。奏ならわかるでしょ?」
わかんないから。
そもそも恋愛自体に興味が無いのにそんな些細な違い、と言うか他人の恋愛脳なんてわかるわけがない。
「奏じゃわかんないでしょー。恋とか興味無いみたいだし」
「それもそうか、ごめんね奏」
謝られても困るのだが仲間外れな感じがして少し嫌だな。
「奏も私みたいに恋してみればいいのに。相手はいないけど」
あなたみたいになるのは無理です雅さん。仲間外れになるのは嫌だけど雅にはついていけない。
「そうよね、奏も私達みたいにもっと興味もてばいいのに」
「そうは言ってもねぇ。三人はモテてるけど私はそんな目立つ方じゃないし」
そう、美里は当然として楓も体型からその筋の人にモテているしそうでなくても守ってあげたくなるような可愛さがあり人気がある。
雅も頭の中は桃源郷であるがそれを知っているのはここにいるメンバーだけで、一見すると出来る女というものだ。
なんだかんだいって三人にはそれぞれ武器があり、モテる要素があるのだ。
それに比べて私は顔普通、体型も上から下まで同年代の平均値というキング・オブ・凡である。この場合はクイーンなのかもしれないが気にしない方向で。
気にしてしまうと女としての自信が完全に消滅する気がする。
「奏はモテてるよ?たぶんこの中で一番」
「は?」
このロリは何をおっしゃっているのか。
「ま、当然よねー。奏がモテない訳ないもの」
このゆるふわビッチも次いで何をおっしゃっているのでしょう。
「やっぱりそうなの?私も薄々思ってたのよね」
あなたのはおそらく妄想の中の話です桃源郷さん。
でもこの場合は桃源郷さんの妄想の中でいて欲しかった。
「いやいや、私が?」
「奏が」
「嘘でしょ?」
「本当よ」
「キング・オブ・凡である私が?」
「何を言っているのかわからないけれどそうよ」
雅に何を言っているのかわからないと言われてショックを隠しきれなかった。顔凡、身体凡。合わせてボンボンやぞボンボン。
だがそれよりも私がモテるというのがよくわからなかった。
「まだ良くわかってないみたいだけど奏ってかなりの優良物件なんだよ?」
「勉強は全国模試で常に上位にいるし、スポーツだって何をやっても上出来。部活のオファーもよく来るんでしょ?」
「それにとても話しやすい。親身になって話を聞いてくれるし、バカにしたりすることもない。誰にもできない相談とかも奏にならできる」
なんか三人の私に対する評価が高い。高すぎる。
呆然としていた私を置いて話が盛り上がりだした。
「あれ?そう考えると奏で良くない?別に男に凝る必要無いし」
と、ロリが。
「確かに。今まで何人かと付き合ってきて結局キスすらするのが嫌で別れてきたけど奏にならされてもいいかも」
と、ゆるふわビッチが。
「私の話もちゃんと聞いてくれるし、抱かれても全然問題ない?」
と、桃源郷さんが。
「「「奏が理想の恋人?」」」
耳に入ってきた三人の爆弾発言により強制的に意識を覚醒された私は何も無かったかのようにお弁当の残りを食べることにした。逃げである。
だがそれを許さないのが彼女らであり、現実をつきつけてきた。
「一度奏のこと考え出すととまらないや」
「改めて考えると前から奏のこと好きだったのかも」
「本当の私の話を聞いてくれたのは奏だけだし、ずっと奏の側にいたいな」
ちょっとお三方、顔赤いですよ。熱あるんじゃないですか?今すぐ保健室にいってらっしゃい。
とか心の中で言っていると意を決したように三人とも立ち上がった。
この流れは不味い気がする。
そそくさとお弁当を片付けトイレに逃げ込もうとするも呼び止められてしまった。
「「「奏!」」」
いますぐにでも逃げてしまいたいのだがいつの間にか近くまで来ていた美里に腕を掴まれて逃げ出せない。
てか、どっからこんな力出てきてんだよ!
「「「私と付き合って下さい!」」」
教室中に響き渡る程の声で三人が私に告白してきた。
よってクラスのみんながこの出来事を知ることとなりやがて学年全体、学校全体へと広まっていく。
その日私はキング・オブ・凡の称号を剥奪され、クイーン・オブ・レズの称号が与えられた―――――
全国の鈴木くんごめんなさい。