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お菓子、いる?

作者: アラタ

お見苦しい点が多いかもしれませんが、2人のちょっと勘違いなラブストーリーを楽しんでくださると嬉しいです。

「お菓子、いる?」


同じクラスの中尾くんはお昼休みになると必ず、私に向かってそう言う。

くれるお菓子はいろいろだけど、いつも甘いものばかりだ。


もともと私たちはほとんど話したことがなかったんだけど、なぜかある日から突然、「お菓子、いる?」と聞かれるように。


あまりにも毎日言ってくるので私を太らせるための陰謀か?なんて疑ったり、お菓子代は大丈夫かと心配したけれど、ずっと続いているのでもう放置だ。


というか最近はなぜか友達にも見放されたのか、中尾くんと2人きりで屋上で食べている。私がしゃべって中尾くんが頷いたり、相づちを打つというスタイルで、本当に中尾くんはいいのかって感じだけど。私はほわんと笑う無口な中尾くんに癒やされているからけっこう満足している。むしろ楽しいかな。それに私といるとみんなといるよりも笑ったり、話すことが多い気がして少し嬉しい。


そうして今日も2人で屋上へ。



けれど、なぜかいつものように「お菓子、いる?」とは聞かれない。普通だったら、屋上着いたらすぐに言うのに。もしかして、そろそろお菓子代が尽きたのかな?あっ確かに今日、中尾くんソワソワして落ち着きがなかったし、気にしてくれてたのかな?そんなの全然いいのに。



「ねぇ本田さん。」


少し緊張した声。きっとお菓子持って来てない。ごめんね。とかだろうな。そんな軽い考えで「ん?何?」と聞き返す。もちろん言いやすいように笑顔で答えたよ!


けれど。

なぜか中尾くんは話を切り出さない。どうしたんだろう?そんなに私、お菓子目当てに見える?うーん。仕方ない。ここは私から言ってあげた方がいいよね!


「大丈夫だよ。私、中尾くんの言いたいことはわかってるから。」


そう言うとなぜか顔を赤くさせ、あたふたする中尾くん。焦ってるのかな。私から言われて。怒ってないから大丈夫だよ。って伝わってないかな?よし。ここはもう少し頑張ろ。


「私、屋上に来てたのはお菓子だけのために来てたんじゃないから。」


中尾くんに笑いかけ、私はそんなに心の狭い人間じゃないアピール。すると、ようやくわかってくれたようで何かを決心したような顔に。そんなに緊張しなくてもいいのに~。顔、赤くなってるし。



「本当に?...すっごく嬉しい。」


そして中尾くんは近づいて来たかと思うと私をぎゅうっと抱きしめる。えええ!?


「なっ中尾くんっ!?」


「オレも好きだよ、本田さんのこと。いや、理沙も同じ気持ちでいてくれたなんて...」


耳元で囁かれる。っ好き!?ってことは今のは告白だったの!?


なんて軽くパニックになっていると突然、バーンと屋上へのドアが開いた。



「理沙~!おめでとう!」



「中尾、意外に大胆だよなぁ!」



「本当にハラハラさせんなよ!?」


「もうきゅんきゅんしちゃったー!」





急な展開に着いていけない。

何でクラスの人たちがここに!?ってかみんな、知ってたってこと?


訳がわからない私に友達が説明してくれた所によると中尾くんが私を好きなのは周知の事実で、みんなじれじれして見ていたらしい。

そして、中尾くんが「お菓子、いる?」と聞くようになったのは私がお菓子好きってことを知ったのと、一緒にごはんを食べるための口実だったらしい。そして友達は私たちに気を利かせて、2人きりにしてくれていたよう。


「で、つまり知らなかったのは私だけってこと?」


「うん。そうだね。」


クラスの人たちが帰った後。

私たちはいつも通り2人きりで昼食を取りながら、さっきの話をしていた。


「うわぁ恥ずかしい!」


もうなんかあー!とか大声で叫びたい気分。


私が両手で顔を覆うと中尾くんは、あははっとおかしそうに笑い、私の手を優しく外し顔を覗き込んだ。


「理沙?」


その顔はいつもよりも真剣に見えて思わず、ハッとする。


「今日は本当にありがとう。オレ、すっごく嬉しかった。」


「ううん。私も...」


嬉しかった。そう言いかけて気づいた。

私、中尾くんに好きって言われて嬉しいって思ってるんだ。


「どうしたの、理沙?」


途中で黙り込んだ私を不思議そうに見つめる中尾くん。その顔を見たら、自然と口から言葉がこぼれ出た。


「中尾くんのこと、好きだなぁって思って。」


って、自分は何言ってんだ。恥ずかしい!

けれど、真っ赤になって目をまん丸にしている中尾くんを見れたしいいかなぁなんて。


「っオレばっかり...ずるい。」


「えっ?」


何て言ったんだろう。小さくてよく聞こえなかった。

ねぇ、今、何て言ったの?

尋ねようとした。けれどその言葉が私の口から紡がれることはなかった。


「...!」


ほんの一瞬。けれど確実に中尾くんの口と私の口が触れ合った。キスだ。

思わずバッと離れると、中尾くんはふっと笑って口を開いた。


「理沙がオレのことばっかりドキドキさせるから、お返し。」


「なっ!」


顔に熱が集中していくのがわかる。きっと私は今、さっきの中尾くんよりも真っ赤になっているんだろう。

とっても恥ずかしいし、呼吸困難になりそうなくらいに心臓はバクバクしているけれど、中尾くんといるとそれさえもいとおしいと思えてくる。



「あっそうだ。」


気づいたばかりの中尾くんへの思いにいっぱいいっぱいでいると、中尾くんが急にそう言った。


「お菓子、いる?」


毎日聞いている、いつも通りの言葉。

けれど、私と一緒にいるための口実だと知った今、その言葉にもときめいてしまう。


なんとかしてこの気持ちを伝えたい。


「いる!...ありがと、智也。」


私には名前を呼ぶくらいしかできなかったけど。

でも、それを聞いて頬を緩める智也はいつになく眩しくって、言って良かったなんて思ったり。


本当は好きだよ、智也って言いたかったことは秘密だ。



最後までありがとうございました!


誤字脱字の報告、小説の感想、もらえたらとっても嬉しいです。

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