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山脈までの道筋と情報



魔法で割り出した情報を全て、

手元の大きな水晶に“記憶”させ

それを革の袋に入れる。


袋の中で小さな嵐のような情景を映し出す黄色の水晶。


それを見たラルーは“メモリーのようなモノかしら~?”

と、勝手に解釈していた。


彼女の言動を聞けば聞くほどに知的好奇心がそそられる。



「ららみ様、準備が終わりましたか?」


「うん、準備完了したよ

早く行きましょう」



アイキキは大きな荷物を軽々と背負い

すたすたと屋敷の外へと行く。


ラルーはその後を追って屋敷の外へ


私もこれ以上、屋敷に残っていても意味は無いので

鍵を持って外に出て扉に鍵を掛ける。


戸締りはちゃんとした・・・

余った食料は回収した、泥棒除けの結界も張った。

大丈夫、大丈夫・・・。



「・・・誰かの葬式に行くの・・・?」



後ろでラルーの震えた声が聞こえる。

狂人でも震える事があるの、驚きを隠せない。


・・・もっとも、始めてソノカがあの馬車を披露した時

私も驚いたのだけれど・・・。


ソノカが所有している馬車は、黒塗りの4頭立ての4輪大型馬車。

馬車を引く馬まで美しい漆黒の毛並み。

まるで葬儀に行くような全身真っ黒な馬車。


見る人 皆、誤解してしまう

この馬車はソノカの趣味。


人の死を喰らうソノカは一昔

葬儀屋を偽って遺体を引き取って

肉も魂も共に喰らっていたと言う。


末恐ろしい話です・・・。



「ああん?

人の自慢の馬車に何、いちゃもん付けとんのじゃボケェ」


「ゲスいったらありゃしない言葉!

その黒ずくめのセンス!

やっぱり、ソノカは私とかなり気が合うと思うんだ!」


「反吐が出るような事を言うなら、馬車に乗せてやんねぇぞ」


「よっぽど私をその馬車に乗せたくないんですね・・・」


「乗せたくないね」


「・・・はぁ・・・じゃあ、空飛ぶかぁ~!」


「え、ちょ、空飛べんのかよ!?」


「うん! 小型飛行機があるからね! 余裕だよ!」


「・・・コイツ・・・!

色んな意味で手ごわいぞ・・・!」


「あはははは!!

私に嫌がらせをするなんて、一年ちょい足りないわ!」


「一年程度で良いのか・・・」


「万年を私と付き合え、なんて無理難題は突きつけられないからね

私はかぐや姫じゃないもの」


「誰?」


「さあ?」



噛み合っているんだか、噛み合っていないんだか・・・。

よくわからない会話を交わすラルーとソノカ

二人は仲が悪いようで、気が合う悪友のようでもある。


出会ってわずか、半日でこの距離。


なんだろう・・・。

私だけイマイチ仲良く出来ていないのは気のせいかな・・・?

主従関係を作ったのが間違い?


・・・いや、まだ半日だもの

これからはいくらでも一緒だから、心配する必要は無いよね・・・!



「ソノカ、ラルーを乗せてあげて?

一刻も早く事態の解決をしなくちゃいけないから・・・」


「・・・ちっ」



御者台に座り、足を組んだソノカは顎をクイっと横に振って

“さっさと乗りやがれ”と催促してくる。

それを見たラルーと共に大型コーチの車内に入った。


壁沿いに長椅子があり

黒いモケット布地が張られた座席はとても座り心地が良い。


先に車内に乗り込んでいたアイキキが奥の方に荷物を置いて

紐で固定している。

携帯食、水、魔物(マブツ)、武器、などなど・・・。

色んな物を用意しているので、一人じゃ持てない大荷物だ。


それを一人で車内に持ち込んだアイキキは

本当に人間じゃないと思い知らされます。



「ねぇねぇ?

さっきの私の話、聞いてた?

これから向かうジプレー山脈の恐ろしい~噂を教えてよー?」


「それは後回しです

移動時間にあてた方が効率的です」


「・・・そうね、確かに移動時間は絶対、退屈極まりないでしょうし」


「分かってくれてありがとう

ソノカ、じゃあ早速、出発しよう?」



ラルーは人目を気にする必要が無くなったからなのか

目隠しを取り、紅い瞳をあらわにすると

まるで、“寝る前におとぎ話をして?”とせがむ子供のように


恐ろしいジプレー山脈の噂を聞きたがる。


急ぎたい私はソノカに出発の指示を送ると

待っていたと言わんばかりにソノカは足組みを解き

鞭を振るって4頭の馬を走らせる。


いきなり、凄い勢いで走り出したものだから

立ったままの私は後ろに倒れてしまう。



「大丈夫ですか? お怪我はございませんか?

早くご着席ください」



アイキキが私を受け止めてくれたので

大した怪我をせずに済んだ。


また倒れたくはないから

アイキキの支えを受けてラルーが座っている向かいの席に座った。

その隣で心配そうな表情のアイキキが座る。


時刻は日が昇る頃

ジプレー山脈までは何日も掛かるだろう

気長に旅をするだけだ。



「ラルー

敵の正体が“無い”かも知れないワケを説明してください?」


「いんや、その前にジプレー山脈の噂を教えて頂戴」


「ジプレー山脈の噂と敵の正体の秘密に関連性が見いだせないのですが?」


「関連性はきちんとあるよ

それは後で説明するから、教えて」


「・・・分かりました、狂人さん」


「まさかのあだ名!?」



魔法で調べても判明しなかった敵の正体・・・。

その核心に迫った自信に満ちたラルーの不可解な言動・・・。


悔しいですが、ここはラルーの言う通りにした方が良さそう・・・。


カラカラと、車輪が回る音が響き

不安定に揺れる車内。


噂話には不気味な夜・・・。



「ジプレー山脈は逃げ延びた犯罪者や

人目を避ける魔女の巣窟


ゆえに、人々からは非常に恐れられてきた山々・・・


悪龍が棲むと言われていたり、

人を殺していながら罪から逃れた殺人者が

神の裁きにより悪魔と化した者がいるとか・・・」


「悪龍? 神の裁きに悪魔ー?

どうでもいいね」


「え」


「もっと他に無いの?

つまんない、ららみちゃんじゃ可愛すぎちゃうから怖くない

アイキキが話してよ? 無機質な声が怖い話とマッチしそうだわ」


「・・・好きにしたらどうなんですか」



ラルーは相変わらずの笑顔で話を聞いてくれたが

笑顔で“つまらない”と一刀両断。


・・・ラルーはどうして怖がらないのか。

不思議でたまらないです。



「・・・かの山は宝石や金が採れます」


「うん、聞いたわ」


「とても質の良い物なのですが

ジプレー山脈は恐れられているので、未だに手付かず」


「でしょうね」


「しかし・・・」


「しかし?」


「山に住まう魔女や犯罪者なら、手を付ける事が出来ます

特にお金を欲している人間の犯罪者なら見過ごすはずはありません」


「そうね、強欲な人間なら黙っていないわ」


「ゆえに、もしかしたら・・・

ジプレー山脈の呪われた宝石が市場に紛れているのやも知れません・・・

そのため、金持ちの宝石商は早死しやすいとか・・・・


宝石商の間ではもっぱら恐れられている話です」


「・・・地味にリアルなんですけど

別の意味でアイキキのセンスが怖い・・・」



アイキキはいつぞや見た幽霊話の劇を真似て

低いトーンでラルーに語りかける。


魔法の中には水晶を使ったモノもあります。

宝石商にとってたまらない話ですが、それは魔術師にとっても同じ事。

もし、悽惨な記憶が込められたジプレー山脈の呪われた石を使用したら・・・。


想像するだけでも恐ろしい。


先ほどの、探査魔法の記録を封じ込めたのだって

宝石を使った“記録魔術”なんですから・・・。

本当に勘弁です。



「で、他は?」


「まだ聞きたいんですか・・・」


「噂話が全てデタラメとは限らないからねー」


「・・・え?」


「正体の無い敵の事が噂になっている可能性が高いと思うのよ」


「な・・・世界一の大国に宣戦布告するような者が噂になっているなんて

そんな馬鹿な話が・・・!」



不意にラルーが少しだけ

その考えを教えてくれたが、理解が出来ない。


そもそも、正体の無い敵とはどういう意味なの?


疑問が頭を覆い尽くす。

それはまるで、霧深い中を彷徨っているような・・・

不安に満ちた嫌な感覚・・・。



「ほら?

探査魔法でも、敵の正体が分からなかったんでしょう?

それは魔法論的には“ありえない”のよね?」


「・・・はい、その通りです」


「なら、結論は出ているわ

要は・・・敵は“何でも無い者”・・・」


「貴女と同類、という事ですか」


「・・・ちょ、ひどい・・・私のコレとソイツのそれを一緒にしないでよー

桁が全く違う、天と地の差! 月とスッポン!

私が完全なる“無”なのと違い、ソイツは“己”が定まっていないだけ!」


「・・・?」


「ああもう! どうして分かんないのかなああああ!?」



いえ、分からないんじゃなくて。

今・・・ラルーはさりげなく、トンデモナイ発言をしていませんでした?


・・・深く考える事は止めましょう。


ええ、完全なる“無”を自称した狂人は無視するべきなのです

考えるだけで無駄なのです。

そうなんです、私じゃ到底、この人を読み解けません。



ラルーの言う仮説を論理的に考えると・・・。


“探査魔法に掛からないのは、何でも無いから

何でも無いのでは掛かりようが無い”


しかし、魔術師は己を信じる心が必要不可欠。

さもなければ、魔法を制御する事が出来ないのだ。


探査魔法は特定の魔術師の情報を読み上げるもの・・・

それを回避するとなれば、己を否定して誤魔化すしか無い。

そんな事をしてしまうと魔術師はたちどころに無力化してしまう。


だから、“己の無い魔術師”などはありえない。



ラルーの仮説は突拍子が無さすぎると

結論付けるしかない。



「ららみちゃ~ん、君は分かっていないなあ?

人間という生き物はそう言う点では、どの生き物よりも恐ろしい事を

君は全くと言っていいほどに、知っていない」


「・・・どういう意味なんですか」


「“変身欲”だよ、もしくは“憧れ”かな?」


「はい?」


「人間は“人ならざる怪物”に憧れる事がある

それは無力な自分を嫌悪するあまりに現れる“病”のようなものだ

だから、この世には“吸血鬼”なる者がいるのさ・・・?」


「つまり、私たちの敵は

人を辞めて、別の存在に成ろうとしていると?」


「ええ、そして今まさに“成り変わろう”としているところ

なんだと思うんだぁ~」


「・・・」


「だから、敵の正体が分からない

何故ならば、それは人でもなければ“まだ”怪物でもないから」


「・・・ラルー、貴女の推理力には感服します

でも、不愉快です

しばらく黙っていてください」


「ん・・・わかーった!」



ラルーは更なる推理を披露する。


ただ一つの、

“探査魔法でも敵の正体が分からなかった”という事実だけで

最も合理的な回答を導き出した。


前の世界ではラルーは探偵をしていたんですか?


どうして、そんなにスラスラと分かるんでしょう

軽く嫉妬を覚えるくらいですよ・・・。


けれど、嫌な真相でも全く躊躇せず教えてくる

デリカシーの無さは羨ましくはありません。

今回のこの推理は聞いてきて気分が悪くなってきます・・・。


人間である事を嫌がって

辞めようとするなんて・・・どうしても理解したくはない。


自ら怪物に“成り変わろう”とする敵は

どうして、ルビーヒルズを滅亡に追いやったの・・・?

どうして、戦争を起こそうとするの・・・?


考えれば考えるほどに気分が悪い。


私は長椅子に横たわり、目蓋を固く閉ざした。


どうせ長旅だ。

寝れる内に眠っておかなくては・・・。



「貴女様の仮説はよく分かりました

しかし、一つだけお聞かせ願えますか?」


「おや? なんだね、アイキキ君!」


「何故、敵の噂が流れていると断言出来るのですか?」


「あ、それー?


敵は“己”を捨て去ろうとしている

それは全て、“人間”から“ある存在”に成り変わる為・・・


でも不完全な今の状態だと、“存在感”が限界まで喪失するから

下手すれば“空”に溶け込んでしまう


だからきっと、それを阻止するべく

わざと自分の話を人間に流して、“自分”を語らせる事で

“空”に溶け込まないように、自分を固定しているはずよ」


「原理はよく分かりませんが、

ワタクシがそういう状態に関する知恵を有していないからと判断します


では、ジプレー山脈に関する噂で

ラルー様が唱える説に近い噂を検索します

少しばかり、ご辛抱ください」


「・・・!?

“いんたーねっつ”!?」


「わざと訛ってますか?」


「うん、わざとらし過ぎたか~!」



寝たい、物凄く寝たいのに

なかなか眠れない。


ラルーとアイキキのおしゃべりを黙って聞いているしかないのかな・・・?


・・・大丈夫

きっとまぶたを閉ざしておけば

いつの間にか眠っているはず。


意識が冴えないように

ぼんやりしていよう、余計な思考は凝らさないようにしよう・・・。



「・・・あまりにも、ラルー様の仮説と一致する噂を確認しました」


「まじ!?」


「ジプレー山脈は今もなお、かつての“怪物狩り”にて

生じた数多くの遺体が遺棄されたままになっており・・・

元は人間から生まれた魔女の遺体は既に朽ちているでしょう


しかし、“吸血鬼”や“呪鬼”の遺体は朽ちることなく

生前の姿を保ったまま、水々しくかつ美しく残されているとされています


ゆえに・・・ジプレー山脈にはそれらの遺体を狙う“禁術遣(ネクロマンサー)い”が

日夜、力を蓄え・・・野望を成し遂げる機会を伺っていると・・・」


「ネクロマンサー・・・“死霊術師”がこの世界にもいるとは・・・」


「ラルー様の世界にも同様の存在が居らっしゃるのですか、

どのような世界でも禁忌に触れたがる人間はいるものなのですね・・・

ワタクシ達の世界ではそういう禁術に手を染める者を

“禁術遣い”と総称して忌み嫌うものです、

ラルー様もどうかお気を付けください」


「親切にどーも?


“禁術遣い”ねえ・・・

ふ、ふふ・・・面白い・・・!」



ラルーとアイキキは互いに情報を共有し合う事で

あっという間に敵の正体を割り出してしまう。


禁術遣(ネクロマンサー)い”・・・。


死体を魔法によって操ったり

人の魂を無理やり、様々な物に宿す事でそれらを自在に操作する者・・・。


下級のアンデットを従え、更に本人も高位の魔術を駆使するため

非常に危険極まりない存在・・・。


ネクロマンサーの目的は下級のアンデットを操る事で

自分が上級のアンデットに成り変わる事・・・。

上級のアンデットとは“吸血鬼”もしくはそれを越える何か・・・。


どちらにせよ、その存在自体

私からすれば気分の良いモノではない。



問題は、そんな危険な存在に人間がなれるのか?



古来より、人の魂を操作する事

記憶に手を加える事、世界規模での悪意による攻撃、などなど・・・

道徳に反するような事は禁じられています。


しかし、その事について私はラルーに誤った情報を伝えた事を反省します。


かつての【真実の裁判】にて

ラルーが“禁じられている事は出来ないのか?”と問いかけた時

私は“悪魔でも天使でも、出来るかどうか怪しい”と答えました。

・・・実を言うと、禁じられた事は決して出来ないというワケではありません。


生贄、すなわち他者の命を捧げる事で

術者の実力をカバーする事が出来るのです。


魔法において必須条件とされるのは

術者の強い感情、生贄による魂の犠牲、魔物(マブツ)に宿る魔力の理。

これらの内、一つが劣っていても他のモノでバランスを取る事は出来る。


これこそが、魔法の三位一体論。


より多くの生贄を揃え、より強力な魔物(マブツ)で、より狂気に近い激情を持てば

魔法の三位一体論がそれらをよりバランスよく、なおかつ強固に整えるため

人でありながら、化け物じみた奇跡を起こせる。



そういう人間でありながら化け物と化す“禁術遣い”・・・。

もっとも、現在 正式に“禁術遣い”の存在を確認したのは数世紀も昔の事。

今やそんなに狂気じみた執念を持って、国家に叛逆を目論む者など存在しない

と思っていたけど・・・。


確認出来ないだけで、いるかも知れない。

闇の中に紛れて光の中で生きている私たちをジッと監視しているかも知れない。


そんな得体の知れない恐怖が、こんな噂を造り上げただけなら

どれだけ良かった事か。

もし、今回の依頼で“禁術遣い”の存在を確認すれば大変な事になる・・・。



ついでの雑談だが、



天使や悪魔は魔物(マブツ)や生贄を使用する事はない。


何故ならば、魔法の理は己の身体に埋め込まれている上

永遠の命を有しているので

魔物(マブツ)や生贄を必要としない。


だから、人とは違った意味で“脅威”なのだ。


彼らは魔法を使っても、失うモノなどを持ち合わせていない。

だから、魔法で戦えば人間は必然的に根負けする・・・

いや、根負けせざるを得ない。


しかし、そんな彼らにも欲しくて仕方のないモノがある。


それは感情。

彼らには知恵を巡らす頭脳はあるが、人ほど強い感情は無い。

ゆえに魔法をより強くする術を持たないのだ。


その点では我々、人間や魔女は非常に優れている。


強い感情を持ち、魔法の理を身体に埋め込まれ、更に永遠の命を有する

万能の生き物がこの世にはただ一種のみ存在する。


それは吸血鬼。


彼らが本気を出せば、天使も悪魔も、人間も魔女も

恐らく手も足も出ない・・・否、出したくても出せないのだろう。


が、かつての“吸血鬼狩り”で甚大な被害を受け

絶滅寸前にまで数を減らした彼らは今や“人間の奴隷”だ。

人々が寝静まる夜の間に、彼らは悪夢のような重労働をこなし

慰め程度にしかならないごくごく僅かな血液のみが報酬として支払われる・・・。


この世で最強の存在はこの世で最も最低の地位にいた。


何故、彼らはここまで追い詰められたのか。

“吸血鬼狩り”の際に、彼らが本気で抵抗すれば

こんな事にはならなかったというのに。


今の彼らの姿は憐れみと同情の対象であると同時に

“自分たちがこうならなくて良かった”という人の醜い優越感の的だった。


ある者は吸血鬼を虐めて楽しみ、

ある者はその美しい容姿を買い“人形”や“愛玩動物”のように愛でて束縛し、

ある者はそんな彼らをまるで使い捨ての駒のように怪しい輩に売り買いする。


・・・こんな話を、ラルーに聞かせたら

彼女は何と言うのだろう


ありとあらゆる知識と才能と狂気を備え

数多くの世界を巡っただろう彼女なら―――?

彼らをどうにか出来る・・・?



「ふっ・・・!

可愛いわね、寝たふりの御主人様・・・?」


「・・・こうして、考えた事を“送る”事も出来るんですね」


「テレパシー的に~?

そりゃ、余裕だわ・・・余裕過ぎて、あくびが出るわー!

でー、何だっけ、あー! そうだ、吸血鬼たちの境遇改善は可能か?

だったけ~?」


「・・・ええ、それと

こんな話をどう思うか、です」


「いい気分になる話じゃないのは、貴女にだって分かるんでしょう?

いくら“狂っている”と散々に言われてきた私でも不愉快になる話よ

でも、残念ながら・・・お手上げよ、両方の共存なんて不可能だわ」


「・・・そうですか」


「ええ、強引に共存させるとなれば

今の、この世界と同じく、一方がもう一方の奴隷になるしかない

吸血鬼のそれが“食事行動”のためなら、人間は“自分の都合”のため・・・

どちらも決して相容れないわ~! 全く、馬鹿みたい!」



ラルーは笑う

“両方の共存など、互いに対等としての協力関係などは有り得ない”

と・・・。


彼女の笑顔は狂気そのもの。


それはいつもの事だが・・・。

今回のその笑顔はどこかぎこちない。


まるで、“本当は笑いたくない”と言わんばかりに

笑顔が強引に作られている。

紅い瞳の奥では悔しそうに舌打ちをしているように見える。



―――嗚呼、彼女は完全に人としての感情を失ってはいない

例え、狂気に等しい荒々しい性質の持ち主でも・・・

彼女は完全なる悪ではない。


私はその瞬間、始めて

ラルーに対して確固たる可能性を見い出せた。

彼女のそんな悔しそうな表情に、共感を得て

私は起き上がる。


起き上がり・・・ラルーの手を強引に取ると



「―――ラルー・・・! 貴女なら・・・! 

・・・私が、貴女に魔法を教えましょう!


貴女にはきっと素質があります!」




「・・・っ・・・!!?

ふああああああえええええええ!?

な、何がどうしてこうなった!?

え、ちょ・・・ららみちゃんがバグったあああああああああ!!」




その後、馬車内でひと騒動あったのは言うまでもアリマセン・・・。


ラルーは変人で奇人で狂人です。

その価値観は理解に苦しみます。

馬車内で暴れるなんて正気じゃありません、大鎌振り回すなんて阿呆です。


私はただ、ラルーの狂気の中に埋もれている正義に希望を託して

彼女の資質を磨いてあげようと思っただけなのに・・・。







・・・・






時刻は真夜中

辺りは完全に闇に染まっている。


月灯りと、携帯している“魔灯”や“蝋燭”だけが頼りの、

それほどにまで暗い、暗い夜だ。


夜闇を纏った森は陰湿で恐ろしげ

更に、今晩はやけに霧が深く立ち込めていた。

そんな中・・・霧深い森の奥から、漆黒色に塗りつぶされた馬車が姿を現す。


4頭の美しい黒の馬が引く馬車は

漆黒色が艶やかに塗られ、施された装飾は派手すぎず

それでいて目を引く程度には素晴らしいモノだ。


・・・霊柩車だろう、どう見ても。

こんな晩で見る霊柩車は気味が悪すぎる・・・。



「そこの馬車、止まれ

誰かの葬儀か?」



私は関所の番をしている夜兵。


任務として、ここに勤めている以上

霊柩車でも見逃す事は出来ない。


手にした簡素な槍で馬車の行く手を遮り

御者台に座る御者に話しかける。

通行税と、通行手形を差し出してもらわなくては。


私は御者が真っ当な人間か

確かめるためにその顔を見つめる。



フードを深く被り

黒いコートで体型も測れない。

ただ、フードから覗く顔は真っ白で細い顎から女性に見える。


・・・女性御者とは珍しい。



「この馬車は私、個人の馬車であって

霊柩車じゃねえ・・・


こういう事だから、黙って通せ」



不審に思い、顔を覗き込もうとした時に

始めてその女性御者は声を出した。


正直に言うと驚いた。


大人びた声だが、あどけなさを残す声は

成人すらしていない少女の声。

そんな声で男勝りな口調で凄んできた。


普通は少女に凄まれたからってどうってことは無い。


だが、この子は違った。


その凄んだ声には迫力がある。

ただの不良なんかじゃない、本物の修羅場を踏んできた上司の老兵を思い出す。

幾つもの戦場を抜け・・・真に強い者にある独特の雰囲気・・・。


この子は・・・只者じゃない・・・!


私は本能的に警戒した。

少女は言い終える内に何かを私に向け、放り投げてくる。


反射的に受け取って私はそれが何かを確認する。



「なっ・・・!

国王と王女の署名入りの通行手形・・・!?


ちょっと待て、今、確認を取ってくる・・・!」


「おいおい、確認取んのか!

おい! 金属帽子! 変な兜!」



少女が軽々と投げてきたのは通行手形と通行料の入れた小包だった。

小包は通常の倍の額が入っていたが、それ以上に

私は通行手形に署名された名前を見て驚愕する。


そこにあったのは国王と王女の署名。


とんでもない事だ。

しかし、偽物の可能性がある・・・。

確認しなくては。


私は慌てて関所のそばにある小屋へと駆ける。


後ろから、少女の乱暴な怒号が聞こえるが

それどころじゃない。


ちなみに私が被っている兜は決して変ではない。


上司の老兵から頂いた

名誉な兜である。



小屋の中に飛び込み

簡易的な魔術が施された通信機を取ると、すぐさまに連絡を入れる。

・・・しばらく待つと、答えが来た。


“その者らを通せ”


短く、とても簡潔にそう返ってきた。

つまりはこの通行手形は本物という事になる。


・・・一体、何がどういう事なんだ?


私は生唾を飲み込み、慌てて馬車の方に走る。



「し、失礼しました!」


「・・・別にいいさ、早く柵をどけな」


「その前に!」


「なんだ?」



少女御者は退屈そうに足を組んで

馬に餌を放り投げていた。


彼女は恐らく、国王もしくは王女から何かの使命を帯びて

こんなに物々しくこの先にある荒れ地へと向かうのだろう

自分より崇高な任務に就いている彼女への無礼を謝罪した。


彼女は特に何も気にしていないのか

面倒そうに道を阻む柵をどけるように言う。

顎を横にクイっと振る仕草は荒くれの冒険者のそれ。


・・・本当に何者なんだ・・・気になる。



「通行料、多すぎます」


「ああ、それか

それは口止め料だ、私たちがここを通った事は黙っておけ

上司とか同僚には言ってもいいが・・・

まあ、ちょっとしたボーナスだと思って受け取れや」


「・・・分かりました」



口止め料を出されるとは。


つまりは密命を帯びているという事。

密命は緊急性を有する、危険な仕事の意。


こんなあどけない少女がそんな仕事をするとは

どんな事情が背景にあるのだろうか。

気になる、気になる・・・。


しかし、自分如きの好奇心で時間を取らせるワケにはいかない。


私は急いで道に渡された柵を畳む。

槍を振って通ってもいいと指示を送る。


少女はすぐに鞭を振るい、4頭の馬は一斉に駆け出す。


凄まじい早さで関所を通り過ぎる霊柩車のような黒塗りの馬車を見送る。

不意に、御者の少女がこちらに振り返ると

手を横に突き出し、小さな白い手を振る。


馬車の姿はあっという間に見えなくなったが

少女がこちらにかざした白い手がいつまでも目に焼き付いていた。


彼女なりのお礼。

という事で良いのだろうか、

不思議と、乱暴な言動と態度の彼女が嫌いになれなかった。


彼女の密命の任務。

絶対に失敗して欲しくない・・・成功する事を祈るばかりだ。












・・・・












出発してから約四日後。


最後の関所の抜け、私たちはいよいよジプレー山脈の全貌が見えるほどに

刻一刻と宿敵に迫っていた。


山抜けには最低でも一週間は掛かる。

万が一の非常食は近くで寄った街で買い集めまくった。


アイキキは食事を必要としないので

買い集めたのは私とソノカとラルーの3人分。

ここ4日間、ラルーと過ごしていて分かったのは

ラルーがかなりの少食家で偏食家という事。


一人分の食事の内、十分の一で満腹になり

強引に十分の二を食べさせると

“満腹死する~! 鬱だ~・・・”と唸り出します。


・・・変な生き物を飼っているように錯覚し始めたのは

出発から早2日目からです。

なんだか、楽しくなってきたのは内緒です。


ラルーの謎の生態が面白くて堪りません。


ともあれ、ラルーが少食で助かりましたが

食費は全く安くなりません。


何故なら、ソノカがラルーの少食を遥かに凌ぐ物凄い大食らいだから。


かつて人の“死”とその骸を主食に喰らってきたソノカは

今やそんな暗い過去が嘘のように、人を喰らう事は無くなり

友好的に人間と接するようになりました。

態度や言動はともかく・・・。


しかし、その反動からなのか

大食らいぶりがヒドイのです。


たった一人で十人分を容易に食べ尽くしますし

いつぞやの大食い大会ではぶっちぎりで優勝しましたし。

ソノカの食費だけでギルド運営が傾くぐらいですし。


ソノカがもし、食べた分だけ全力で働いていなければ

私は早い段階で奴隷として売り飛ばされていましたね・・・。


怖いったらありゃしないです。


もしこれでラルーも大食らいだったのなら

泣きました。


少食で本当に助かりました。

食料で困らないのは良かったです・・・。



「ふう~ん?

あれがジプレー山脈ねぇ~?」


「はい、あれこそが忌まわしいジプレー山脈です

もっとも、忌まわしさでは貴女さまのおとぎ話に出て来る

“イミゴサマ”には劣るのでしょう・・・」


「まあ、覚えておいてくれたのー?

嬉しいわねー、可愛い可愛い人形ちゃん?」


「ワタクシはアイキキでございます、人形呼ばわりとは無礼です

世界一優秀なアンドロイドがお手元にいるのですよ?」


「・・・自信たっぷりに言い切った!?

しかも、世界一優秀なのは事実だ・・・!

この世界でたった一体しかいないんだから!」



この旅の間、私たちは念入りに敵について話し合いました。

禁術遣(ネクロマンサー)い”に対する対策を練りに練り・・・

準備に準備を重ねました。


しかし、そんなモノは2日目で全て終わってしまい。


三日目からの旅は退屈極まりない地獄と化しました。

そんな私を察したラルーは親切にも様々な面白いおとぎ話をしてくれたのです。


ある時は妖怪博士に匿われた妖怪の話を。


ある時は悲しいメデューサの話を。


ある時は霊を見る力に目覚めた巫女の話を。


ある時は復讐に生き、幼くも勇敢に戦い死んでいった人間の娘の話を。


多種多様な物語に惹かれた。

どれもやけに生々しい、現実味溢れる話だが

どこか有り得ない世界を覗いているような気持ちにさせられた。


アイキキは特に、ラルーの話に強い関心を示し

おとぎ話を非常に気に入っていた。


ソノカは“聞きたくない”と言いつつ

話が終わると、ちゃっかり感想を述べるくらいだ。

ソノカはアイキキとは違い、ラルーの話があんまり好きではないようだ。


確かに、ラルーの話のほとんどは正直に言うと

ハッピーエンドになる事は無い。

それで良かったのか、悪かったのかイマイチ分からない終わり方が多い。


本人曰く“都合の良いハッピーエンドなんて、偽物でしか無いわ?”


そしてこう続ける。

“人の一生も、怪物の一生も関係なく生々しく

善も悪も存在しないエゴの中にある

だから、皆が救われるハッピーエンドなんて私は認めないわ

無償で与えられる救いは存在しない、

そのハッピーエンドは必ず誰かが犠牲になって与えられたモノなのだから”


彼女は何もかもを見透かす紅い瞳を輝かせ

邪悪に微笑む。

否、その笑顔は歪に歪めただけの、それこそ偽物の笑顔だ。


彼女が話し、語る

おとぎ話は興味深い。


ラルーの心理がよく分かるから。


おとぎ話と称するそれが事実にせよ、捏造にせよ

それを好き好んで語っている以上は彼女の好みが色濃く現れる。


少しずつ、少しずつ・・・。

彼女が私に心を開いてくれているみたいで嬉しかった。

狂気の中に埋もれた本音をもっと探りたい。


私が死ぬ、その前に。



「お前ら、何 騒いでんだ!

くっ・・・! アイキキとラルーの仲がやけに良いのは

私にとって戦況が悪くなる一方だぞ!」



ソノカは外で叫んで

愚痴をこぼす。


元々、ソノカとアイキキの仲は良くなかった。


それにラルーが加わり


ソノカ対アイキキ&ラルー


という恐ろしい構成が出来上がってしまい

ここ最近の喧嘩ではソノカはラルーに良いように遊ばれている。


ソノカはこの旅だけで

プライドをズタズタにされているのです・・・。

ラルーよりも、ソノカのフォローを優先したほうが良いですね。



「・・・ソノカ、馬車でジプレー山脈の中に入れそう?」


「いや、多分・・・無理だ

かと言って、ここは“死”が溢れ過ぎている・・・

馬共が“昔”を思い出してしまう、置いて行くのは危険だから

馬車は置いておいて、馬に乗って山登りと行こうぜ?」


「馬で山登りって出来るものだったっけ?」


「私の馬を舐めんな!」



ソノカの馬車を引く4頭の馬は実を言うと

普通の馬ではない。


ソノカが住んでいた“呪鬼”たちの村・・・

“シャブルス村”原産の、鬼に仕える“(むくろ)()

具体的にどういう存在なのか分からないけれど、とても賢いらしく

ソノカが使う意味不明(オニ)の言葉を理解出来るようだ。


この馬に関してはあまり知りたくはない。

ただ分かるのは、賢く、強く、そして恐ろしいという事だけ。



「わざわざ4頭立ての馬車にしたのは

こういう馬車が使えない時に備えてかしら?」


「ああ、そうだよ

アンタ・・・馬は乗れるよな?」


「ええ、乗れるわ

懐かしい事を思い出させるわねぇ~」


「・・・あっそ」


「ひょっとして、私の弱点に期待した?

私が馬に乗れなかったら、って望んだでしょ」


「 呪 う 」


「・・・ごめん、悪かったわ

だからそんな血走った目で睨まないで

ごめんって、ごめんなさい・・・私、謝るからぁ・・・?」



ラルーは御者台を覗ける窓から身を乗り出し、

ソノカを直接、からかう。


ソノカは怒ってラルーを睨みつけると


甘ったるい猫なで声で謝罪を繰り返すラルー


つい今朝の事、昨日の喧嘩の結果を根に持ったソノカに

ラルーは呪われたらしく

今日限定でソノカには下手に逆らえないそうです。


どんな呪いを掛けられたのでしょうか?


それにソノカが誰かを呪ったのは

始めて見ました。


“呪いは存在しない、そんなのは思い込みだ”

と、あれだけ言っていたくせに。

ソノカの嘘吐き。



「じゃ、馬で山登りと行くんでしょう!?

さ! 早く行こうよ! 時間が惜しいんだから!」



ラルーはソノカの睨みに耐え切れず

私を急かし始める。


いつもなら、ソノカに睨まれても笑っているだけのラルーが・・・。


元気なラルーはあっという間に馬車から降りていってしまう

アイキキは荷物を固定する紐を解いているので

荷物はアイキキに任せ、私はラルーのあとを追って馬車から降りた。


ジプレー山脈からは距離があるが、

それは万が一の事が起きた時に備えての距離。


馬に乗って行けば簡単に往復は出来る。


ソノカは御者台から降りて

馬たちを繋ぐ馬車の金具を外し、優しく理解不能な言語で

馬たちに語りかけていた。


これからの行動を指示しているのか・・・

優秀だが恐ろしい馬に。



「ららみ、アイキキの奴は?」


「荷物をまとめている・・・」


「山越えに無駄な荷物は要らねえ・・・!

出来る限り、荷物を少なくするよう言ってくる!」


「喧嘩になりそうだけど?」


「はっ!

今回はラルーがいる!」


「ラルーが喧嘩の要なの・・・」



ソノカは余裕に満ちた表情で馬車の中に入っていった。

・・・喧嘩だけは止めて欲しいんだけどなぁ・・・。


私はため息をついて

肩からぶら下げている革袋から、敵の情報を記憶させた

黄色の宝玉を取り出す。


ジプレー山脈に潜伏している事は分かっている。


が、山脈は広い・・・。

その全長は2つの国をまたぐほどだ。


高くそびえ、広く存在している不吉の山。


敵の正確な位置を割り出すには

魔法が絶対必須。



「らーらーみーちゃーん!」


「なんですか?」


「ここって、魔女とか犯罪者の巣窟なんでしょー?」


「はい、そうなります」


「・・・てことは、突然に襲い掛かってくる事も想定すべきよね?」


「もちろん、想定済みです

大抵の人間ならソノカ一人だけであしらえます」


「ソノカに丸投げっすか!?」


「・・・ソノカはそういうの、好きだけど?」


「・・・ソノカちゃん、どうしてそんなに血の気が多いのに

ららみちゃんみたいな大人しい子に従っているの・・・」


「さあ?」


「君たち・・・何事にも興味は持とう?

ガツガツ聞き込むぐらいの肉食っぷりは必要だよ!

ここは草食系の世界か!」


「・・・・どんな例えですか?」


「こんの、頭、お花畑の人間は何かしら!?

ちょいと荒々しくてもいいじゃん!」



ラルーは何故か私の在り方に激しく疑問を抱いているようです。


それは私も同じ。

何故、“呪鬼”たるソノカが無条件で私に従っているのか

全く分かりません。


記憶を失う前の私がソノカに何かをしたんでしょうけど・・・。

何をしたのか、皆目見当も付きません。


あと、この世界の人は皆、平和だと言いますがそんな事はありませんよ?



「ラルー様、平和ほどの価値のあるモノは無いと思いますが?」


「はっ!

所詮、人間は争いを好む生き物よ?

平和がしばらく続いても、いつか必ずそれは打ち破られる・・・

打ち破られた時は火山が噴火するようなモノ・・・恐ろしい事が起きるわ?」


「人間がそういう生き物なのか、ワタクシにはまだ分かりません」


「ええ、分かる必要は無いわ

貴女はこれからもずっと純粋でありなさい

それが一番いい事よ」



アイキキは荷物をそれぞれ小分けにした複数の革袋を抱え

ソノカと一緒に馬車から降りてきた。


ソノカから目を逸している様子から

喧嘩になる前に全面降伏したらしい・・・。

今日だけ降伏した理由なんて一つ。


まさかの、ラルーさん効果・・・!


今までラルーと結託していただけに

ラルーを敵に回す恐ろしさをよく知っているアイキキは賢明な判断をした。


喧嘩にならなくて何よりだけど・・・。

ここ最近でラルーの立ち位置がよくわからない事になってきたなあ・・・。


狂人ゆえに会話も成立しない、なんて事はなく

優れた知性を持ち、人を弄ぶ事を好むも

不思議なその人格から状況がうっかり逆転してしまったり。


だが、そんなハプニングすら楽しんでいるため

ギルド内においての立ち位置が不可解な事になる。


実権を握る事も出来るはずなのに、ハプニングを楽しむあまり

あえて曖昧な風になる・・・。

最も、このギルド内で権力云々の関係はいつの間にか有耶無耶になりやすい。


軟弱もとい、優柔不断な私がマスターを勤めているせいなのは明らか。


この空気は今のまま維持すべきなのか

それとも、他のギルドと同じように序列を作り

立場をハッキリさせた方が良いのか・・・。


・・・それすらも分からない辺り、私はまだまだ未熟者です。



「ららみ、早く馬に乗りなって

それともなんだ? まだ馬が怖いのか?」


「こ、怖くなんてありませんっ!」


「なあ~んだ、まだ怖いんだ~?」


「なんでソノカ、そんな意地悪な笑顔を浮かべるの!

その生暖かい目も止めて!?

怖くないからっ、ただ・・・ちょっと待って・・・!」



私が考え込んでいる間に

ソノカたちは馬に乗り、出発の準備を終えていた。

あとは私が馬に乗るのを待つだけ。


ソノカは私を茶化してくるが

その視線は生暖かい“見守る”眼差しである。



「ん?

ららみちゃんは馬が苦手なの?」


「若干、その気はあるが

それ以上に私のこの“骸馬”を怖がっているんだよ」


「むく、ろば・・・・?

なんじゃらほい?」


「ああ、お前は知らなかったのか

この馬共はな?」


「だあああああああああああ!!

ソノカ、説明は止めて下さい!

ラルーが面白がって馬と遊んだら恐ろしいです!」


「はっ・・・! それは確かに不味い!」


「え、どゆことなの?

この馬は何か面白い特徴でもあるの?

へぇ~!? どんな特徴なのかなぁ・・・!?」


「分かりましたから! 乗りますから! 

だから、ラルーそんな怖い笑顔でナイフを持たないで!

馬と遊ばないで!」



ラルーと骸馬の相性は悪い意味で良い。


彼女の狂気性と、馬が持つ化け物性で

何かとてつもない事が起きそうで恐ろしい・・・!


そんな事は無いように、私はラルーの興味を馬から逸らすために

馬に跨り、手綱を取った。

いよいよジプレー山脈にこの足を踏み入れる・・・!


禁術遣(ネクロマンサー)い”・・・! 待っていなさい、貴方を必ずや打ち負かしましょう!



「はっ・・・!」



私は馬を走らせ、ジプレー山脈へと向かう。


右手は手綱、左手には黄色の宝玉を。

宝玉に込められた“情報”が私に流れ込む。

かの居場所が私には事細かに掴めた。



「アイキキ~?

そんな荷物、平気ー?」


「ご心配なく、ワタクシの左手は塞がっておりますが

右手は自由です・・・右手一つあれば、たかが人間の10人100人・・・

殲滅可能でございます」


「・・・このギルドにおいてソノカちゃんばかりが注目されがちだけど

真に恐怖されるは殺戮に特化したアイキキちゃんだねぇ・・・」


「まあ、何を仰るのですかラルー様

ワタクシなど、この旅で嬉しそうに12人の盗賊・暴漢を殺した

“一応”人間の貴女さまには敵いません」


「・・・い、いやあ・・・私の出番かと思って張り切っちゃったのよ

誤解しないでよー・・・」


「の、わりには

ららみ様に殺人を慎むように注意された時・・・


“そんなー! 酷だわ、あんまりよ!

もっと首を撥ねなきゃ私が狂い死ぬわ!”


と、必死に抗議していたのはワタクシの“見間違い”ですか?」


「くっ・・・!

アンドロイドだから、そんな事は有り得ない・・・!

あああああ!

私が殺戮狂なのが見事にバレちゃったわ!」


「・・・へー、そうなのですかー」


「止めて! そんな冷めた目を向けてこないで!

人の趣味にとやかく言わないで!」


「趣味?」


「趣味というよりは・・・食事的な?」


「食事・・・殺人という行為事態が?」


「うん! まあ、そんな感じだねー!」


「・・・そうなのですかー」


「だから! その目を止めてー!」



後ろで可笑しな話をするラルーとアイキキ。


縦に列を成している私たちは

とうとう、ジプレー山脈の緩やかな坂になっている

“入り口”を通り過ぎた。


ここからは何があってもおかしくはない。


ゆえに列の順番はいざという襲撃に備えてのものになっている。

敵の居場所をリアルタイムに把握して、素早く迫るためにも

道が分かる私が先頭。


私のすぐ後ろにはソノカ。


私は今まさに魔法を使っており

道を見い出す事に集中しているため、ここを襲われたらひとたまりもない。


ので、急な襲撃を押し返す戦闘員であるソノカに私を守ってもらう。

無防備な私の代わりにソノカが辺りを警戒しているので

何か異変があっても彼女がどうにかする。


次に、ソノカに順ずるのはアイキキ。


私たちの食料や水などの荷物を全て持っている補給係なので

列の内、最も安全な配置である。


そして、列の一番 最後尾はラルー

アイキキは“右手が空いているから心配無用”と言いますが

念には念を入れてアイキキを守る役としてラルーを。


彼女の戦闘能力に関してはソノカを打ち負かした実績から

何の心配は要りません。


非戦闘員と戦闘員、の順番は4人の少数人数を的確にカバーするに

必要最低限のバランスを作っているので

よほどの強敵が襲撃に来ない限り、心配はありません。


何よりも、戦闘員を務める

ソノカとラルーは完全に怪物並みの強さを誇る上

非戦闘員の体でいる私とアイキキも戦う事になればある程度は戦えます。


・・・大丈夫。



「ららみ、敵はどうなんだ?」


「一箇所に留まって動こうとしない・・・

いる場所は山脈の頂上に近い所、ある程度

その場所から近い道を使っているけど、何日掛かるのやら・・・」


「ふーん・・・

じゃ、骸馬の本気を出すか」


「え」


「もういい加減、何日も歩き続けるのはうんざりなんだよ~

ここ4日間、私は不眠不休で馬車を走らせてきたんだぞ

1日早く帰れるに越した事は無い・・・!」



ソノカはここ4日間の日々の悽惨さを物語る涙目で

私に訴えてくる・・・!


そ、そんな目でそんな切実な事を言われたら・・・!


・・・まあ、確かにソノカの言う通り

早いに越した事は無い。

でも、骸馬の本気・・・?


お、恐ろしい・・・!


だが、私のそんな思いとは裏腹に

ソノカは私には理解出来ない言葉を叫ぶと、

一斉に4頭の馬たちはその走りを加速させる。


急な加速に、後ろで雑談を続けていたラルーが

“うわっ”と短い悲鳴を上げた。


グングンとその走りは加速してゆき・・・。


先ほどの親切な走りより何倍もの速さになっていくと

視界の奥の岩から



「な、なんじゃ ありゃあ!?!」



という悲鳴が聞こえてきた。


しかし、骸馬の走りはあまりにも早いもので・・・。

その視界の奥にあった岩は気付けばもう、通り過ぎていた。


私は慌てて背後を振り返る。


岩の後ろには剣を装備した複数人の男たちがいた。

そのボロボロの出で立ちから、

この山に住まう重犯罪を冒した盗賊という事はすぐに分かった。


もし、ソノカが骸馬に急加速を指示していなければ

見事にあの人たちに襲われていたワケですか・・・。



「あっはははははは!!

なあーんだああああ・・・!

そんなトコに隠れていたんだ、小汚いネズミ共がっ!」



しばらく、凄まじい速さで走り去る私たちを見送る盗賊たちを見ていたら

ラルーは嬉しそうな笑い声を上げ、馬から空高く飛んだ。


え、ラルーは何をしているんですか?


一瞬、彼女の目的が分からなかった。

しかし、次の瞬間 私は嫌でも彼女の目的を知らされる。


空高く飛んだラルーは空中で大きく腕を振った。


すると、どこからともなく大鎌が現れ、

それが凄い勢いで盗賊たち目掛け振り下ろされた。


かろうじて強烈な大鎌の一撃を避けた盗賊たちは

咄嗟に手にした剣でラルーを切りつけようと振りかぶるが、

ラルーが圧倒的に早かった。


剣を手にする盗賊たちの腕がボタっと地面に落ちた。


彼らの手が、腕が、ラルーの大鎌によって一瞬で切断されたのだ。

激痛からなのか、ラルーに対する恐怖心からなのか悲鳴をあげる盗賊たち。


けれども、その悲鳴はいつまでも続かなかった。


一人の首が吹き飛んだ。

次はその周囲にいた3人の首が、終いには逃げ惑う者たちの首までが。


時間にして、僅か数秒。


こうも呆気なくジプレー山脈の盗賊集団を殺すなんて・・・。



「あっ! 待ってー」



一頻り、殺人の喜びに浸るラルーは不意にハッとした顔をすると

慌てて私たちを追いかける。


ラルーは盗賊たちを殺すためにわざわざ馬から飛び降りてしまった。


ラルーが殺戮を繰り広げる間も

骸馬はその速さを殺すどころか更に早めていた。


ラルーと私たちとの間に出来た距離は

彼女の姿が米粒程度にしか見えないくらいだ。

一体、どうするんですか。


わざわざ迎えに行かなくちゃならないのですか・・・?



「・・・待たぬ、というのなら・・・」


「・・・?」



不意に、慌てて私たちを追いかけるラルーがしゃがみこんだかと思えば




「こっちが追いついてやるよ・・・! 待ってなさい!!」




ラルーも骸馬に負けない速さでこちらに飛び込んできた。


彼女は走っていない。

地面を蹴って、地面に沿って飛んでいる。


脚力だけで飛んでいるのに、あっという間に私たちに追いついてきた。


そりゃあ、そうですよ。

なんたって反動で地面が抉れるほどの脚力ですから。


追いついたラルーは狭い岩道の両側にそびえる岩肌を蹴って

もう反対側の岩肌の方に飛ぶと同じように蹴る。


ただし、2回目の壁キックで

ラルーは緩やかに上へ飛んだ。


そしてラルーはソノカが度々使う不思議な言語と良く似た言葉を叫ぶ。


するとラルーが乗っていた骸馬が急に大きくジャンプをした。

ラルーは空中で骸馬に跨ると、ラルーを乗せた骸馬は無事に着地。



・・・唖然。



この一言に尽きる。

もうヤダ、この狂人。


この人に“常識”という言葉は決して当てはまりません。



「っ・・・!!?

え、え、え・・・なんで私らの言葉を・・・!?

つか、骸馬に追いついた・・・・!? はああああ!!?」


「特定の言葉を理解して、

指示通りに動く賢い馬だっていうのは分かったから

ソノカが口にするのを、聞いて覚えたのさっ!」


「き、聞いて覚えたあああああ!!?

んな、でたらめなっ・・・!」



ええ、本当です。


言葉を聞いて覚えるなんて、出鱈目にもほどがあります。

一つの言語って・・・聞いて覚えるものでしたっけ?


骸馬に跨りながら、ラルーは楽しそうに浴びた返り血を拭う。


・・・この殺人狂。

自らの欲求を満たす為だけに、自分から面倒な方へと飛び込みましたよ?

彼女は快楽主義者なのでしょうか・・・?


どのみち、要注意です。


彼女が進んで自分の欲求を満たすために

面倒事に飛び込む危険性を確認した今。

周囲の状況をしっかり見なければ・・・。



「ソノカ・・・!

ラルーに怒鳴るのは良いけど、骸馬の方をまずどうにかして・・・!?

早すぎる・・・!」


「この速さが丁度いいだろう

どうせ、待ち伏せされているみたいだし」


「うぅ~・・・待ち伏せ・・・

それらも考えると、良いのかなあ・・・?」


「ららみちゃーん! 大丈夫よ? 

例えららみちゃんが馬に振り落とされても私が全力で受け止めてあげる!」


「それはそれで不安要素が・・・」


「え、どんな不安要素があると仰るのですか、御主人様ぁ~!」



骸馬の走る速度を落として欲しいが

速度を緩めると、相応のデメリットがあり・・・。


かと言って、速度をこのままにしておくのも怖い。


・・・もうここは腹をくくるしかありませんね。

全力で骸馬にしがみついて耐えましょう・・・。


骸馬はとっても怖いけど。



「分かりました・・・このまま全速力で突撃しましょう・・・!」


「おお! そうこなくっちゃなぁ!

普段は無い思いっきり暴れられる機会・・・!

とっぷり楽しもうじゃねぇか・・・・!」



私は決意が固まった事をソノカに伝えると

嬉しそうにソノカは骸馬に指示を送り、更に加速させる。


ソノカの言葉に切実な何かを感じる自分がいる・・・。

私は何か、ソノカに無理を強いていたのかな・・・?

彼女の本質は負であり、鬼・・・

今は平和的に振舞っているが、本心では・・・。


・・・そんな事が有り得そうで何とも言えません。


なんか・・・ごめんね? ソノカ・・・。






それから、私たちはそんな勢いで通常の予定より遥かに早く

ジプレー山脈を駆け抜け

着実に目的地へと接近していきました。


夜になれば岩陰でアイキキやラルーに守られながら睡眠を取り・・・。

日が昇れば、骸馬に跨り驚異のスピードで盗賊集団を撒きながら

山脈をどんどん登っていきました。


不思議なことにも、盗賊集団にはよく遭うものの

ここに隠れ住むという魔女には出くわす事は無く・・・。


不吉の山なのだから、何か恐ろしい怪現象でも起きるのでは?

と危惧してもそれらしい事は何も起きず・・・。


ただただ、何日も掛け無事に目的地にたどり着いてしまいました。



“特に何も起こらない”



その事実が逆に私の恐怖心を煽りました。

あまりにも、それは十分すぎる異変。


それ以上にも、おかしいと思わせたのは敵の事。


敵は一箇所に留まったまま、ちっとも動かないのです。

ここを登りながら常に私は敵の情報を確認していましたが、

一歩も身動きを取らない敵に、不安を植え付けられてしまいました。


おかしいのは明白。


私は簡素なパンと干し肉を口に運びながら

敵が居ると思われる洞窟の大きく空いた暗闇を睨む。



「・・・ランプ、用意してる?」


「してない」


「じゃあ、敵のテリトリーである真っ暗闇の洞窟に特攻する気?

余裕で死ぬけど?」


「なわけあるか!

ららみの魔法、舐めんな!」


「ららみちゃんの魔法でどうにかできるの!」



後ろでラルーとソノカは賑やかに言い合う。

ここまでラルーが仮眠を取っているところを見ていないので

私は今、ラルーの体調が心配でならない・・・。


さすがに骸馬で洞窟の中に入るわけにはいかないため

骸馬たちは私たちが野営しているこの枯れ木の下に繋いでおきます。



洞窟へと突入する準備が終わり

あとは“禁術遣(ネクロマンサー)い”を打ち倒すだけ


しかし、本当に思い通りになるのだろうか?


未だに身動き一つ取らない敵・・・

もはや存在しないとされたはずの禁術遣い・・・

姿一つ現さない魔女たち・・・


この嫌な予感は一体・・・?



「ららみ様

今こそ、仇討ちの時でございます」


「うん・・・行こう

ラルー、ソノカ? 準備は良い?」


「もちろん!」



アイキキの声に私は立ち上がり、

背後のソノカとラルーに振り返る。


目隠しメイド姿のラルーはいつもの笑みを浮かべ

ソノカは黙って先を見据える。

二人の覚悟はすでに決まっている・・・ならば私も覚悟を決めよう。



私は魔道書と魔杖を手に、

洞窟の中へと向かう。


この中には何があるのか・・・。


全くの不明の為、アイキキもソノカもラルーも警戒をしながら

ゆっくりと洞窟内に足を踏み込む。


入り口から入る光がしばらく後ろから私たちを照らしていたが

私たちが洞窟の奥へと進む度に光は弱くなり

やがて、光は無くなってしまう。


そこは暗闇。


洞窟内のじっとりとした空気と

ジリジリと焦がすような緊張が、私たちを包みます。


この状況は好ましくはありません。



「―――“希望の魔杖”よ・・・・!

我らの足元を、我らの周囲を、我らの視界の先を

その力を持って、照らせ・・・!」



私は魔杖を掲げ

この空気を打ち破るように呪文を唱えました。


すると、魔杖自体が光り輝くと

そこからほとばしるように光が散り

私の宣言通りに光は私たちの周囲を照らしていく・・・。



「っ・・・!!」



私の魔法で照らされた洞窟内は異様な光景だった。


そこらじゅうに魔力を帯びた宝石や結晶が置かれ

そして・・・



数え切れない数の死体が転がっていた。



古い鎧に身を固めた男や

動きやすい服に身を包んだ美しい女。

武器を手にしたままの多くの遺体・・・。



それだけでは無かった。

地面には幾何学模様の魔法陣が幾重にも重ねて描かれており


私たちが目指す、洞窟の奥に・・・アイツがいた。




赤に銀の糸の刺繍が施されたローブを纏い

太腿まで露出させた艶っぽい女性。


裸足の足には金属の足枷みたいな装飾品を付けており

歩く度に音がする、まるで・・・鈴のような音を立てて

金色の髪を地面に引きずるほど伸ばした青眼の女がゆっくりと歩いている!




「これはこれは・・・

ようこそ“紅眼の娘” 待っていたのよ・・・!

まさか、いきなり大物を手に入れられるなんて・・・」



女は嬉しそうに、かすれた声でそう言うと

両手を大きく上に掲げた。


すると、辺りの死体が

確かに死んでいたはずの死体が

突如、眠りから覚めたように起き上がって立ち上がる・・・!


数え切れない数の死体に、私たちは一瞬で・・・



囲まれてしまった。



慌てて私たち4人は背中合わせになり

死角を無くし、周囲の敵に警戒するが・・・。

正直に言えば無事に済む自信は無くなった。


ああ・・・神様・・・どうすればいいの・・・!?











ネクロマンサーとの死闘前夜をお送りしました。


基本的にこういう遠征で目立つのはソノカなのですが

ラルーが加わった事により

ブラックな面においても目立つようになり・・・。


妙なのに目を付けられるんじゃないかと

ヒヤヒヤを通り越して、胃がキリキリし出す

ららみちゃんでした・・・。

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