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真実の裁判の終わり

「私は、“記憶喪失”なんです。

だから私には何も過去などない、

過去に何かあったとしても・・・私自身は全く思い出せない

普通なのは当たり前ですっ・・・

でも、それが異常ってどう言う事・・・?」


私は、昔の事を何も覚えていない・・・。


気付いた時には深い森の奥、

桜の花びらを集めて作られたベットに横たわっていて・・・。

ソノカがいた。

ソノカが、私のそばに付き添ってくれた仲間だった。


彼女は私が記憶を失う前からずっと知り合っていた友人だったと

教えてくれました。


様々な思い出話を教えてくれたけれど、

私は全く思い出せませんでした・・・。

それでもソノカは記憶をなくした私と仲良くしてくれて・・・。


「うん、記憶がなさそうな感じはしてたからね

それでも魔法の知識はあるでしょう?


ちょっと、魔法について教えてくれないかしら?」


私が軽く回想したら

ラルーが変な事を言う。


「別に・・・いいんですけど・・・


魔法とは代償に身の内にある魔力や生贄を捧げる事により

通常では叶わない願いや現象を起こす力の事です。


しかし魔法にも出来ない事はあります。


例えば死者を蘇生させるとか、

記憶を復元するとか、

世界規模での攻撃など

色々・・・。


それに人の命を奪うような魔法を使うとなれば

生贄が必要となります。


だから魔法は日々の生活を豊かにするだけの手段として

用いられます・・・」


「ふむふむ・・・

丁寧な説明をありがとうね~ららみ~」


「・・・」


ラルーは私を押し倒したまま

退く気配はない・・・。

私が人質のようです・・・。

・・・?アレ・・・?異常にラルーの体重が軽い・・・?


「魔法でも出来ない事がある~ってトコに質問!」


「・・・はい、なんでしょうか」


「時間、歴史に干渉するとか

世界に干渉するとか、

空間を操るとかは理論上でもいいから出来るの?」


「・・・理論上なら、出来ますけど・・・。

でもそんな膨大で途方も無い事、

人では無理です。

それどころか悪魔や天使でも怪しいくらいです・・・」


「でも、ららみちゃんはバッチリ歴史と時間に干渉する事に

成功している・・・

そんな神の掛かった事を、

記憶喪失の少女が可能にするなんてね・・・?

本当に君は、人間?」


「間違いなく人間です」


「根拠は?」


「ソノカの嗅覚の鋭さです」


「・・・・」


豆鉄砲を食らったようにキョトンとするラルー。

確かに、天使や悪魔でも出来るか解らない事を私は・・・

でも、やっぱり異常にラルーの体重・・・軽い・・・。

それに私に密着しているラルーの身体の感触が変だ・・・


胸はとても柔らかくて圧倒的な反発力があるというのに

腕や足、胸以外の箇所が固い・・・。

まるで骨と皮しかないような・・・?


「ね、ららみさんや・・・。

そんなに私の身体をペタペタと触るの・・・止めてくれない?

くすぐったいし、気持ち悪いよ・・・?」


「はっ!!

ごめんなさい!

つい・・・!」


「つい知識の探求者としての本能を抑えられなくなったー的な?

てことは・・・私、未知の生命体認定されてるワケー?

冗談よしてよー」


呑気に自らを指差し、首をかしげラルーは笑う。

でもその笑い声は乾いている・・・。


「く・・・!

ららみを離せー!

つか密着し過ぎだー!」


「ソノカさんや、何を慌ててるのだい?

私とららみさんは女同士ですよ?」


「テメーがららみに何、しでかすか予想が付かねーから

慌ててんだよ!クソが!」


「・・・口、悪っ」


ラルーは正論を言う。

同感ですね、そこのところは・・・。


暴れそうなソノカを必死でアイキキが抑えているけれど

長く持たないだろう・・・。

いい加減、早くこの論争?に決着を付けなくては・・・!


「ラルーは真実を明かして私たちに制裁を加えたいんですよねっ・・・!?」


「んー?そうだねー。

嘘吐きは大嫌いだからねー」


「既にデルア君にアイキキ、ソノカの秘密が暴かれた・・・。

それに対して私の過去は不明な点が多すぎる・・・。

私自身がどれだけ思い出そうと努力しても思い出せなかったんです・・・!

だから私は・・・!」


「思い出すのを諦めたと・・・」


「聞こえが悪いけど、そうです・・・!

それに・・・いつまでも過去にこだわっていても過去を変えられるワケでも

なんでもない・・・!

なら、前を向いて精一杯、生きるべきなのでは?と私は考えたんです!」


「・・・ほう、つまり?」


「・・・・・・私の、大切な仲間を守りたい・・・。

だから、好きなだけ私を・・・殺して・・・!

ソノカとアイキキは見逃して!

もし、そうしてくれないのなら・・・私は・・・。


 何がなんでも貴女に殺されて、仲間を守りますっ・・・!」


「・・・アハッ!面白くなったぁ・・・ねぇ!!」


嬉しそうに狂った歪な笑みを浮かべると、

ラルーは私の上から後ろに飛び下がった。


どういうワケなのか、その瞬間

私の身体が宙に浮いた。

いや、正確には部屋にあるモノ全てが浮かんだのだ。


これは、一体どういう現象・・・!?


「これは“無重力”という現象だよ・・・ららみちゃん・・・!

この世界は宇宙については無知だって事くらいは分かってるわ?」


「・・・!?」


私も知らない事を、確実にラルーは知っていた。

・・・無重力?宇宙?

何が何なのか、全く分からない。

この事がどれだけ私には悔しくて屈辱的だった事か、


私はラルーの言う通り“知識の探求者”だから・・・

知識が相手より劣っているなんて、認めたくない・・・!

私が全身全霊であらゆる知識を洗いざらい調べ尽くした努力が

私がその知識を元に得た世界の美しい法則論が


 得体の知れない女に、否定された


そんな自身の感情を、私は否定したくても出来なかった。


「さぁ、では真実の裁判の終わりと行こうじゃない・・・!

ららみの全力で私を倒してご覧なさいッ・・・!

無論、独りで・・・ねぇ・・・!!」


私はすぐに立ち上がった。

ラルーは私の様子を見て、微かに哀しげな表情を浮かべると

大鎌を持つ右手を横に薙ぎ払った。


「ららみッ・・・!!

頼む、止めてくれッ・・・!」


当然のようにソノカは私を制止する。

その当然のように、というところがソノカの優しさなのでしょう。

アイキキは私の言葉の理由が理解出来ないのか、

私を静かに傍観していた。


「―――ごめんね・・・ソノカ、アイキキッ・・・!

でも、私ッ・・・許せないの、何も無いクセに

大切な人達を苦しめたくないの

 だから許して」


「嫌だッ!そんなのッ、許すワケねーだろッ!!

・・・ッ・・・!・・・呪うぞ・・・!?

呪っちまうぞッ・・・!!ららみ・・・!

いいのかよ、“鬼”に呪われてッ・・・いいのかよ!?」


ソノカは今にも私に飛びかかりそうだった。

しかしラルーが操る鎖がその行く手を阻む。

良かった、もしここでソノカに抱きつかれでもされたら・・・

怖くなって、殺される事が出来なくなる・・・。


「いいのー?鬼に呪われちゃうかもよー?

今ならまだ逃げられるわよ?」


「どちらにせよ、貴女が皆殺しにするんでしょう・・・?」


「ええ!当然!嘘吐きは皆殺しよ♪」


「・・・本当に狂ってますね」


「言われるまでもなく~

絶賛、狂っております~!はい!ソコ、拍手!」


ラルーは謎のテンションでアイキキとソノカを指刺すも

答えるはずもなく、ソノカは地面にひれ伏し

ずっと私に哀願を続けていた。

涙を流して、ただひたすらに・・・。

罪悪感に駆られてしまうほどに、辛い・・・


アイキキはそんなソノカの肩に手を添え

慰めの言葉を掛けているが、ソノカの良すぎる耳にはもう届かないのだろう。


「・・・虚しッ!!」


「・・・もう、サッサと終わらせましょうッ・・・!」


「ん、そだねー。

カワイソウなカワイソウな、優しいららみちゃんのお葬式は

お忘れなく~、クスッ・・・」


「・・・」


非常に異様な言葉遣いのラルーに

得体の知れない気味の悪さを感じつつも

ラルーとはそういう人物なのだと、私は必死に自分に言い聞かせた。

むしろ、そういう人物だからこそ私を殺してくれるのだから

感謝しなくては・・・・。


・・・大丈夫、計算通りに事を運べれば・・・ソノカとアイキキを

・・・救える・・・!


私は肩から下げている革の鞄を開け、

その中に入れている私の魔導書を取り出した。

ある時、一人の魔女が私の魔導書を見てとにかく驚愕した過去があるが、

それがラルーに通用するかは不明。


「・・・具現化せよ、我が祈り

ささやかなる願望を叶えんとせし存在に夢と力を

愚行なる想いに走らんとせし存在には良心と救済を

―――“希望の魔杖”・・・!」


開いた魔導書を見据え、そこに書かれた言葉を詠み上げる

私が言葉を紡ぎ、演唱を繰り返す。

その度に、真っ白な粉のような光が私の周りに集う。

そんな美しい光の中より、古めかしい星屑の光をたたえた杖が

姿を現した。これが、私の祈り・・・遠い過去の私が

現在の何も無い私に残した唯一の力。


今はこの力で大切な仲間を守れるのだから、

過去の私に感謝をしなくてはならない・・・。


何も無い私には、私を愛してくれた美しい世界の全てに

感謝をする程度の事しか出来ないけれど・・・。

それでも、出来うる限りの事をやって見せましょう・・・!


「希望、ねぇ・・・?

偶然だわぁ・・・だって、私のこの大鎌に込められた意味は

“絶望”・・・。

嗚呼、相対する二つの力が、世界すら越えて巡り合ってしまった。

これは偶然?・・・いえ!何千何万もの世界の中で私はこの世界を選んだ。

そこで出会えたこれはきっと運命!ならば私は全力を尽くすまで・・・!」


歌うように、狂った女は笑い

絶望の大鎌を振るう・・・。

彼女の言う言葉の意味には、どれだけ重たい想いが込められているのか

何が彼女をこうさせてしまったのか、私はとにかく

この狂った女を憎む反面、哀れに想い同情してしまったのでした。


「では、先手を打たせてもらいます・・・!」


「ええ、お先にどうぞ」


「・・・静かに刻まれよ、

黄金の遥かなる契約・・・。

絶対の名の元、叶えよ・・・!」


私は右手の魔杖を振るい、

左手の魔導書に書かれた魔法を詠む。


「・・・特に何も起きないようだけれど・・・?」


「いえ、ちゃんと・・・現象は起きました」


「・・・?」


ラルーは不可解そうに首をかしげた。

その仕草は可愛らしげで

大人びいた見た目には似合わない少女のようで・・・。

私は素直にビックリした。


・・・異常に痩せ細り・・・。

顔を隠すような黒い服装に身を包み・・・。

・・・優しさには良い悪しがあると断言する。

そんな人物、考えられる限りの仮説を立てるとすれば・・・。

信じられないほど残酷で哀れな生い立ち・・・という事・・・・?


・・・やっぱり・・・この人、悪い人にはどうしても見えない・・・。

私はやっと確信した。

実を言うと・・・。

デルア君を殺されて未だかつてないくらいにラルーを憎んでいるけど

何か、ラルーに違和感を感じていた・・・。


違和感の正体が何なのか、

もう予想がついた。


ラルーは確かに狂っていて、恐るべき悪人なのだけれども

今回はそうじゃない・・・。

ラルーは、何も悪くはないんだ・・・・!


「ラルー・・・!

今、私が唱えた魔法の正体が知りたいのなら・・・

右手を見てみて・・・?」


「!!」


私はラルーに優しく問いかけた。

突然、態度を変えた私にラルーは驚いて

すぐに右手を見た。


そこには黄金の光を放つ文字が右手に刻まれていた。


「ふふっ・・・!

そういう事・・・!

貴女、随分と賢いようね・・・!!」


「賢いつもりはありませんけど・・・。

私は“知識の探求者”です。

これくらいの事が出来ないとやっていけませんよ・・・」


私がラルーにかけた魔法・・・。

それは“強制契約魔法”というモノで、

相手の意思に関わらず強制的に契約を成立させる魔法です。


しかしこの魔法の欠点は絶対的に解くことが出来ない事と

契約を成立させるだけで

契約を自分の都合の良いように果たせるワケではない事。

つまり、この魔法をかけられても契約による勝負にさえ勝利出来れば

相手に契約の代償物を支払わせる事が出来るのだ。

100%で勝てるワケではない・・・。


「それで・・・?

何を契約させたのかしら・・・?」


「・・・私が貴女に勝利した場合には、

本当の事を言って・・・。

ラルー、貴女は自分が悪人になるように嘘を吐いているのでしょ!?」


「・・・バレちゃったか、残念」


「そして貴女が私に勝利した場合には、

私を好きに出来る権利を与えましょう。

殺すなり、服従させるなり、利用するなり・・・。

まぁ、どうせ貴女は迷いなく私を殺すでしょうけど・・・」


私はソノカをチラリと見てみた。

ソノカは唖然として泣きはらした顔で私を見上げている・・・。

・・・ソノカ、大丈夫だよ・・・?

やっぱり、私にはソノカを一人残す事なんて出来ないよ・・・。


「・・・。それで?

勝負内容は?」


「二択の知識問題、でいかがでしょう・・・?

普通に戦うのでは強制契約させた意味がありません・・・!」


「ふむふむ、もしかして平和主義だったりするー?

細かいルールも教えて頂戴な?」


「交互に知識問題を出題し合います。

その問題のジャンルはお好みで、先に回答を誤った方の負け。

あと、絶対に解くことが出来ない問題、又は嘘の問題を出題した場合には

問答無用で敗退です。

そして問題の回答は二択で選ぶモノとします」


「本格的な二択クイズバトルーって事かしら?

はぁ・・・退屈な平和万々歳・・・。

でも、相手の嘘を見抜いたり二択とか・・・普通は出来ないよね・・・?」


「ええ、だからその為の魔法も在るんです・・・。

人々は遊戯を愛するモノですから」


「遊戯の為の魔法・・・。

面白いわ・・・!じゃ、早速その遊戯の魔法を唱えて頂戴!」


殺し合う気満々だったから逆に怒られそう・・・

と懸念したが、その必要も無かったようだ。

ラルーもまたこういう遊戯が好きなのだろうか?


元より私はラルーと殺し合う気は無かった。

最初は、ラルーを本気で憎んで殺したいとさえ思っていた・・・。

でもラルーから逃れる為の考えを巡らせば巡らすほどに、

デルア君と皆との楽しい思い出が私を追いかけてきた。


デルア君は“戦争”という

復讐に、復讐する戦いの犠牲者なのだ。

そんなデルア君を思うのなら・・・

復讐するべきではないと、私は気が付いた。

愚かな復讐の連鎖は、断ち切らなくてはならない・・・!


例えラルーに復讐の想いから勝利したところで何の意味も無い!

ならば、平和で確かな勝利をしなくてはいけない。

じゃないと、デルア君の為にもならないし当然ラルーの為にもならない。


きっとラルーもまた復讐の連鎖の中に囚われて・・・

苦しみもがいて来た犠牲者の一人なのだから彼女も救わなくては・・・!


私はそう決意を新たに

魔杖を掲げ

再び演唱を始めた・・・。


「絶対の契約の元・・・

輝きし知恵の遊戯を行わん・・・。

光と知恵より、現われよ・・・!」


すると、私の足元より輝かしい光が溢れ出し

部屋を一瞬で包み込んだ。

次の時には部屋は光の文字で溢れていた・・・。


血まみれで首なし死体が転がる部屋で

まさか遊戯の魔法を使う事になるとは・・・

罰当たり過ぎる自分に自己嫌悪しつつも私は真っ直ぐにラルーを見据えていた。


「・・・!凄く、綺麗な魔法だねぇ・・・!

嗚呼、凄い・・・。

素晴らしい・・・!いえ、あえてファンタスティックと言わせてもらうわ!」


ラルーは子供のようにはしゃぎ、宙を舞う光の文字をつついていた。


「・・・では、始めましょう・・・。

“知恵の文字”!宣言する!


問1 魔法の演唱は長ければ長い程、より強力な効果を発する。

事実か否か?」


私が文字に宣言をすると

光の文字が一斉にラルーの前に私が出題した問題が文章として集まる。

その文章の下には二択の“事実”と“否”が四角に囲われてある。

それを見たラルーは尚の事、嬉しそうに笑うと


「ん、事実だね」


と、簡単に宣言した。

すると“否”の文字が砕け“事実”の文字が残った。


「・・・正解です」


私は大人しく正解の事実を伝えた。


「おお!

・・・なんかクイズ番組に出演してるような錯覚を覚えるなぁ・・・。

まぁいいや、これは遊戯の魔法なんだし」


「クイズ番組・・・?

何ですか、それは・・・」


「特に気にしなくてもいいよー?

さ、私の番でしょ!

うーん、何を出題しようかしらー」


「・・・話を逸らしましたね・・・?」


「気のせいに決まってるじゃーん!

ららみちゃん!」


「・・・」


どうやらラルーはこの遊戯の魔法に何か近いモノを知っているようだ。

クイズ番組・・・?

その正体が凄く気になるのですけどっ・・・!

・・・まずは落ち着こう。


「そうねー、んじゃ


問その2 大空の向こうに広がるのは星空?それとも黄昏空?」


「!?

え、空の向こう側なんてあるんですかっ・・・!?」


「あるんですよー、それが!

さ、お答えくださいなー!」


空の向こう側なんて・・・今まで一瞬でも考えた事、無かった・・・。

盲点だった・・・。


まさかの問題に慌てふためく私をよそに

光の文字はラルーの時と同様に問題文と回答の

“星空”と“黄昏空”と、私の前で形作られる。


・・・鮮やかな青さの大空の向こう側なら、色が濃くなって星空?

それとも、時間の経過によって色合いが変わり黄昏空になるのなら

向こう側は黄昏空・・・?

・・・冷静に冷静に・・・論理的に考えよう。


朝昼には無い星は何故、夜になると現れるのか?

・・・答えが空の向こう側にあるというのなら納得が出来る。

しかし、青い空が何故、夜の少し前には絶妙な赤さを放つ?

・・・あの赤さは太陽が沈んで初めて現れるモノだ。

つまり、空の向こう側にあるのは黄昏空ではおかしい・・・。

なら答えは・・・!


「ほ、星空・・・ですよね・・・?」


「随分と悩んだねー。

残念ながら正解だよ、コンチクショー」


「・・・へ?

満面の笑みで何という乱暴な言葉遣い・・・。

ギャップが有り過ぎる・・・!」


無事、正解出来て私は胸をなで下ろした。

まさか空の向こう側は星空とは・・・。

いずれは見てみたいものですね・・・?


「ちなみに先ほど私が言った“宇宙”とは

空の向こう側の空間を刺す名称で、星空の世界の事なんだよー」


「空に向こう側が有るとも分からないから

私たちは宇宙に関しては無知だと・・・」


・・・してやられました。

ギリギリセーフの難問を突きつけられる羽目になってしまった。


嘘でも無いし私には絶対、解けないというワケでもない。

本当に危うい問題だ。


「では、私の番です。


問3 魔法演唱の際、魔杖や魔導書などの“魔物(マブツ)”を使用すれば

魔法に支払う代償を大幅に激減出来るか否か?」


「出来る」


「正解です」


「ん、てか“魔物”?

モンスターの事だよね?」


「違いますよ・・・?

“魔物”とは“魔法の力が宿った特別な物”の略称です。

例えば私の使うこの魔杖や魔導書がとても良い例ですね」


「へぇ・・・そういう“魔物”はどうやって作ったり?

宿す?とかするの?」


「さぁ・・・?」


「さぁ?って・・・。

得体の知れないモノを使ってるのって怖くないの?」


「いちいち怖がっていては生きていけませんよ」


「・・・」


ラルーは魔法学を知り尽くしているようで

そうでもないようだ・・・?

思えば、確かにこの魔杖や魔導書の作られた経緯や

入手した経緯も分かっていない・・・。


「問その4 先ほど私が起こした“無重力”とは

すなわち宇宙で起きる現象ですが・・・。

宇宙全てが“無重力”で支配されているのなら、

この世界はどう言う状態で存在している?


宙を浮かんでいる状態か 線で吊るされているか」


「無重力とは私たちをこの世界に引き付けて

留める力を無くした状態の事だと考えられるので

線で吊るされているのは有り得ない。


回答はこの世界は宙に浮いている!」


「正解。

ららみちゃん、頭良いねー?

賢すぎるよー」


「そういうラルーは何故、こんな突拍子も無い事実を

知っているのですか・・・?」


「実際にこの目で見たからだよ」


「・・・」


ラルーの出す難題になんとか回答する度に

驚愕の事実が証明される・・・。


この遊戯の魔法は

偽りを暴く魔法と光文字を操る魔法を組み合わせて作ったモノで

その為、嘘を吐いてもすぐに分かってしまう。

ラルーの問題が全て事実だと証明されるのだ。


こんな突拍子もない事。

簡単には信じる事は出来ないのだが

信じざるを得ない事実だと受け入れなければならない・・・。


「・・・問5 ラルー、貴女は・・・この世界の人間じゃないのですか?」


「・・・!!

ありなのかぁ・・・!

まさか、こう来るとは思わなかったなぁ・・・!」


「・・・答えられないのですか・・・?」


「・・・はぁ、ええ、私はこの世界の人間じゃないですよー。

よく分かったねー?」


「さすがにラルーの言動で分かりますよ・・・。

明らかに別の世界から来た異世界人ですって!」


私はあっさりと自身が異世界人だと認めるラルー呆れつつ、

ソノカを見てみた。


ソノカは開いた口をそのままに呆然とラルーを睨んでいた。

凄みが強すぎる・・・!?

さすがにビックリするよね・・・?


アイキキの方はそれほど大きなリアクションは見られない。

いや、きっとアイキキもラルーが異世界人だと分かっていただろう。


ラルーがこの世界の人間ではないと分かった決め手はやはり、

その異常な言動の中、稀に見え隠れする高い知恵と思惑。

そして何よりも・・・ラルーが大鎌を召喚した際に

何故か魔力を感知出来なかった事だ。


魔法以外の力でモノを召喚するなんて、不可能なはずなのに

やってのけたラルーはこの時点で既に

人間ではない可能性と異世界人の可能性を疑っていた。


「ふふ・・・じゃあ、賢いららみちゃんにとっておきの問題をあげる。


問その6 魔法とは一体、何のために存在するか?


1 人の為に 2 ある復讐の為に」


「!!

ど、ういう・・・意味・・・?」


「そのままの意味よ

魔法って、あまりにも人々の都合に良すぎるとは思わない?

不思議よね?謎よね・・・?」


「・・・!

で、でも・・・!

復讐の為って、何ですか・・・その選択肢は・・・!」


「さぁ?正解じゃないかも知れない選択肢の理由なんて

どうでもいいでしょう?」


「・・・っ!」


魔法の存在意味・・・?

そんなの、分かるわけッ・・・!!


・・・いや、分かるのだ。

分かるから問題として成立しているんだ・・・。

・・・それにもう一つの選択肢は理由としては不自然。

イチかバチか、やるしかない・・・!


「・・・復讐のため、

認めたくはないけれど・・・」


「・・・アハッ・・・!

大ッ・・・正解~!

さすがは賢いららみ」


「嬉しくはありませんよ・・・!

何ですか、復讐のためって・・・!?

答えてください・・・!」


「そんなの、君達、人類には関係の無い事でしょう?

こんな事を聞いてどうする気?

どうも出来ないクセに」


「ッ・・・!!

じゃあ、私の番ですッ・・・!」


「ん、どうぞ~!」


私は苛立ちを隠しきれない。

何故?自分でも解らなかった。

いい加減、全部を終わらせましょう・・・。


「・・・問7

私は・・・何故、記憶を失ったのか


偶発的に失ったか 何者かの意思によって失ったか」


「な・・・!?

・・・ちょっと、待ってて」


「分かりました」


私は無茶な問題を出題した。

もはや知識問題にはなっていないが、黙認せざる得ない。


ラルーは目を瞑り、ジッとしていた。

しかし、しばらくしてラルーは目を開くと

震えていた。

・・・え、どうしたの・・・?


「ッ・・・!!

理解出来ないわっ・・・!

貴女、私以上に愚かで狂っているわ!」


「!?」


「どうしてッ・・・!

そうすれば絶対、悲しむって分かっていたでしょう!?

どうやってッ!そんな決断にたどり着くの・・・!

なんで、平気で出来てしまったの・・・!?

ねぇ・・・!!」


「どういう事・・・ですか・・・!?」


「・・・!あ、あぁ・・・!

くッ・・・!


・・・この勝負、私の負けよ

答えられない・・・その・・・ごめんなさい」


「・・・」


何がどういう事か、全く解らなかった。

ただ、理解出来たのは・・・


「私・・・勝ったんだ」


あまりにも呆気なく、私は勝利したのでした。


「それじゃ、約束は約束。

話してあげる」


・・・そして、始まったのはデルア君の身に起きた真実語りでした。


「私は、自分の部屋にいた時


一階の玄関ホールからただならぬ異変を感じて

ビックリして、駆けつけたの。


私と同じようにソノカとアイキキもその異変を感じ取ったようで

既に二人は一階に降りていた。


一階の玄関ホール中央で、デルアは倒れていて

そのデルアをアイキキが起こして

ソノカがデルアの様子を見ていたのが見えた。


ソノカとアイキキが真面目に頑張ってるところ

私だけ何もしないというのも癪に障るから

私も一階に降りた。


デルアは目を見開いて、全身が汗でびっしょりだったわ。

まるで悪夢から飛び起きた人のように・・・。

うわ言のように、デルアは同じ単語を繰り返し呟いていた。

“光に消える”

と、それで私は察した。


デルアに残された時間はもう・・・無いのだと

だから私はデルアに問いかけた。

“貴方にとって、ららみとの日々は幸せ?”

デルアは何も言わなかった。ただ哀しげな眼差しで涙を流していた。


私は、心が見える。

故にデルアの想いを理解出来た。


デルアはららみ達との日々を幸せに感じていた。

それと同時に罪悪感もあった。

自分は愛おしい人を手にかけて、その後も人を殺し続けて・・・。

報われない悔しさに押しつぶされそうになりながらも、

皆を悲しませまいと、日々を過ごした。


けれども、遂に時は来たのだ。

デルアが消滅するその日は間近。

それまでの過程がどれだけの苦痛を伴うモノなのか・・・。

想像すらつかないだろう、デルアはそんな苦痛と戦っていた。


残り少ない時間の内、どうやって恩人である

ららみ達に恩返しをするかも必死に考えて・・・。

悲しませまいと、その事実さえ伝えられず・・・。

でも、もう遅かった。


デルアは消えかかっていた。


彼は後悔していた。

唐突な別れがどれだけ辛いものか自身がよく知っていたのだから

結局、満足な恩返しも出来ぬまま

消えたくはないと

彼は心の中、叫んでいた。


私は、どうしても彼をそのまま消えさせたくはなかった。

恩返しも出来ず、ただ悲しみのみを残して

消えるなんていう後悔は・・・有ってはならないと私は考え

デルアの首を撥ねた


デルアが残した何かを信じて・・・私はデルアを消させはしなかった。

どうにか、最後の救いを残すためにも・・・」


ラルーはそう、一人

悲しげに語った。


デルア君を、救おうとした狂ったラルー。

それが正解か、間違いか

私にも解らなかった・・・。


「・・・ソノカ達は、知っていたんだよね・・・?

現場にいたんだから・・・」


「・・・その、私はデルアが消えかかっているなんて、

分かっていなくて・・・。

だから病人のデルアを一方的にラルーが殺害したように見えてな・・・?

とにかく・・・何が何だか全く分かっていない」


「あ、久しぶりに正論を聞いた気がする・・・!

マトモって、こうも神々しいモノなの・・・!?」


「はぁ!?

・・・まぁ、そうだろうな・・・。

うん、狂人の相手してるとそうなるんだろうな・・・」


「ちょいちょい、私が何~?」


「事実だろ、狂人」


「はい、事実ですねー!」


遊戯の魔法の崩壊が終わった、

悽惨な血まみれの部屋は虚しさだけを残している。


この部屋の血は全部、私の目を欺くためにわざわざ

ラルーが自身を切り裂いて作り出した光景らしい。

・・・そこまでする執念は本当、恐ろしい。


「それで、デルア様が残したモノとは

いかなるモノだったのでしょうか?」


「んー、こんな下らないモノだよー」


アイキキの問いかけにラルーは何かを私に投げつけてきた。

反射的に飛んできたモノを掴み取れたので、

良かったがなんと危ない事を・・・!


・・・そんな事は後回し。

私はラルーが見つけたデルア君が私たちに残したモノを見た。


小さな白い箱だった。

私は迷わず、箱の蓋を開けて中を見た。


「・・・」


私はただ、沈黙した。

・・・このギルドでは・・・メンバーの証として

小さな水晶を着けるようにしている。

それが私とソノカとアイキキが胸に着けている石だ。

そして、当然のように私はデルア君にも同じ石をあげたのだが・・・。


デルア君は結局、石を着ける事は無かった。

理由は解らなかった。

ただ、デルア君は・・・優しい人なのだと、私は痛感した。


箱に入っていたのは、

砕いた石の欠片で作った金の耳飾りだった。

灰色の透けた綺麗な石と、控えめな色合いの金の留め具はとても綺麗。

どういうつもりなのか・・・解らなかったけど・・・。

でも、デルア君は優しい人だったのだ

だからコレを残したのだろう。


何も言えず、私はただ静かに啜り泣いていた。

この気持ちを言葉に出来なかった。

もし、一言だけデルア君に伝えられるのなら・・・

私はこう伝えたい


 “ありがとう、そしてどうか幸せに”


そうして異常で狂った真実の裁判は・・・終わった。



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