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真実の裁判の始まり


「嗚呼、なんと愚かな事か・・・

なぜ、人は嘘に嘘を重ね、

自ら悲劇の結末に身を委ねようとするのか・・・

到底 私には理解出来ない・・・」


ラルーさんは演技のかかった口調で嘆く。

無論、嘘の嘆きなのだろう・・・。


そんな彼女の言葉と共にその顔があらわとなる・・・。

白く長い髪を払いのけ、風に広がる。


そして不気味なのか不思議なのか・・・。

彼女は白い包帯で目を覆い隠していて、

邪魔そうに彼女は包帯を取り、捨てた。


美しい真っ赤な瞳・・・目を奪われそうになる・・・。

血のように鮮やかな紅さ、

美しいと私は思ったその同時に怖いとも思った・・・。

だって、彼女は・・・私の大切な仲間の一人、

デルア君を殺した。


未だにその動機も解らないけど、

私の敵には違いはないのだ・・・!



「あら・・・?

何かしら、その敵意に満ちた目は・・・」


「何故ッ! 何故ですかッ!

デルア君は何もしていないのに・・・!!」


「いいえ!」


「!?」


「彼は・・・最悪の事をした・・・

だから殺した、ただそれだけの事に過ぎない」



笑みを浮かべたままでも、

非常に冷たい眼差しでキッと私を睨む。

怖い・・・。



「ららみッ!! 無事か!?」



不意にずっと聞きたくて仕方がなかった声が聞こえた。



「ソノカッ・・・! どうしようッ・・・

デルア君がッ・・・!!」


「分かってる! そんな事ッ!」



ソノカはラルーさんを押しのけて、

デルア君の部屋の血だまりの上に座り込んでいる私を庇う形で

覆いかぶさってくれる。



「ッ!!?」



だが、私はびっくりしてしまった。

だって・・・ソノカの腹部が血で滲んでいる・・・!



「裁判とは、一体、何を為さるおつもりで?」



そしてアイキキもまた私を庇うようにラルーさんの前に

立ちはだかる。



「・・・何って・・・ほらぁ・・・?

偽りを暴くに決まっているでしょう・・・?」



恍惚の笑みを浮かべて、

気味の悪い声で言い放つラルーさん・・・。



「偽りを暴きたいんならッ!

わざわざデルアのクソミイラを殺す理由にはなんねぇーだろ!!」



ソノカが叫んだ。

ソノカはデルア君の事が嫌いだった・・・。

けれども、仲間として認めていた。


なのに・・・!



「・・・クスクスッ・・・」



妖艶に彼女は笑う・・・。

そして・・・静かに・・・彼女の紅い瞳が・・・。

光り輝いた・・・!!



「ソノカ・・・彼を殺さずにはいられなかった・・・

そう言ったら、どうするつもり・・・?」


「・・・殺すッッ・・・!!」



ラルーさんの明らかな挑発に簡単に乗るソノカは

立ち上がり、何もない空間から2本の大剣を手にする。


この不思議な現象を私は解き明かそうとしたが、

結局解らず終いに終わった・・・。



ソノカの二つの大剣は双剣であり、

独特の剣法で彼女は戦う・・・。


対となる大剣は反りがあり、片刃の剣である・・・。

反りに沿ってその大剣の先は二又に分かれていて、

独特の形状をしており

刀身と柄を分ける鍔は非常に大きく私には読めない字が刻まれている。


その鍔から刀身の方に白い毛のようなモノが付けてあるのだが、

ソノカ曰く、複数人相手に戦う時にこの毛のようなモノに

毒を染み込ませる事によって殺傷能力が高まる、との事・・・。


そんな大剣を彼女はラルーに向けた。


それは明白な殺意の現れ・・・。

大丈夫なのだろうか・・・?



「なるほど・・・

じゃ、抵抗をしなければ・・・ねぇ・・・・?」



ラルーは余裕そうに微笑むと右手を頭上に掲げた。

・・・何をするつもり・・・?



「来たれ、我が怨み

歪み、砕け、壊せ・・・

・・・“死の大鎌”ッ・・・!!」



ラルーさんが言葉を唱える度に、

黒い“闇”がその手に集った。


そして次第に形作り・・・“死の大鎌”は完成した。


長い柄は複雑に細い鎖が絡まって、

邪魔になりそうだ・・・。


鋭く妖気満ちる刀身には僅かながら血痕が残されていた。


・・・あの大鎌で、デルア君を殺したのだ。

瞬時に私は直感した。


ラルーの大鎌は他にはないモノがあった。

長い柄の端から伸びる内側向きの刃の反対側に

外側向きの刃が伸びている・・・。



「さて、では証明を始めよう」


「・・・うっぜーんだよッッ・・・!!」



ソノカは叫ぶと同時にラルーに斬りかかった。

しかし、ラルーはそれを軽々と避ける・・・。

ソノカは二刀流の大剣で早く、重い斬撃を何度も繰り返す。


しばらくその斬撃をラルーは避け続けるだけだった、が、


不意にラルーは口角を上げ、

(いびつ)に笑うと攻撃を始めた。


ソノカが右手に握る大剣をラルーは大鎌の柄で受け止めると、

大鎌を横に滑らせる。

そうする事により、大鎌の刃がソノカの首に迫った。


咄嗟にソノカは左手に握る大剣でラルーの脇を斬りつけて、

ラルーが痛みに隙を作ってしまった瞬間にラルーから距離を取る。



一見、大鎌という武器はそれほど強い武器には見えないだろう。


刃は内側に向いている事から非常に扱いが困難。

それに加え、大きすぎるその重量は半端ではない。

だからこそ、武器としては役に立たないと思われる・・・。


が・・・しかし、もしも


それらの欠点を全て使用者の技術力と怪力でカバーした場合。

大鎌は一瞬にして最悪の武器と化すだろう・・・。


長い柄で敵の攻撃を受け止めれば、

柄を横に滑らせるだけで敵を無抵抗に殺せる。


腕力次第では片手だけで敵の首を一撃で撥ねられるだろう。


その上、長い柄のおかげで攻撃範囲は非常に広い。

これほど、殺戮に向いた武器はあるだろうか・・・?

だからこそなのか、“死神”は大鎌を手に死をもたらすのか・・・。



「ソノカ、一つ質問、いいかしら?」


「テメーに答えるような事はねぇッ!!」


「まぁまぁ、そんなに怒り任せに斬り付けたところで

貴女に勝算はないわ?」



ソノカはラルーの言葉を聞く度に怒りに口を歪ませた。

そしてソノカは再びラルーに斬りかかった。



「ららみ様、一つよろしいでしょうか?」



ソノカとラルーが戦っている間、

アイキキが私に話しかけてくる。



「何・・・?」



私はアイキキの方を向きつつ、ソノカとラルーの戦いを横目に見る。


・・・私は、ここで目を逸らせば必ず後悔しそうで・・・怖い。



「実を言うと、先ほどラルー様が“死の大鎌”と呼称する

大鎌を召喚した際、有り得ない現象が起きていました」


「・・・え?」


「推測するに、“召喚魔法”を使用したのだと思われるのですが

召喚魔法は魔力の消耗率の激しさから使用すれば

辺りの空間に使用者の魔力が散らされるはずなのです


しかし、ラルー様が召喚魔法を使用しても

魔力を一切、感知出来ませんでした」


「・・・ッ!!?」



魔力を・・・感知出来なかった・・・!?

それはおかしい・・・!

そんな事が有り得るはずなんて・・・!



「がぁッ・・・!!」


「ソノカッ!?」



だがそんな時、ソノカの苦痛に歪む声が響いた。

ソノカはいつの間にか鎖で縛り上げられて、壁に磔にされていた・・・。

それ以上に、私にとってショッキングな姿を見てしまった・・・。




   ソノカの腹には深々と鉄の杭が刺さっている、その姿を・・・。





「あ、あぁ・・・!?

そ、のか・・・?」



悲しみと憎しみが複雑に入り混じり、

涙が止まらなくなる・・・。

それと同時に強烈な吐き気が込み上げて・・・。



「ららみ様ッ・・・!

落ち着き下さいッ・・・!!」



アイキキは私の背中に手を当てて、

私を落ち着かせようとする。



「ソノカがッ・・・

なんでッ、どうしてッ・・・!

私達が何をしたというのッ!?」



口を手で覆い、私は涙を流しながら

ラルーを睨んだ。


誰かを本気で憎く想い、睨むなんて・・・初めてだった。



「君達は最低最悪の偽証をした、

だから私が制裁を加える


当然のルール、当たり前の決まり、絶対服従の理

それ以上でもなければ、それ以下でもないわ」



ラルーは相変わらず訳のわからない事を言う・・・。



「クスッ・・・

ではららみ、君に問おう

まず、私が何故、包帯まみれのデルア君を殺害したと思う?」


「・・・解らないッ・・・!」


「いんや、君は心辺りがあるはずなんだ

だって、メンバーである以上

彼の正体には気付いていたのだろう?」


「・・・ッ!!?」


「明かす気はないって事かしら?

それじゃあ、裁判にはならないから、

意地でも答えてもらうよ」



ラルーは私に歩み寄る。

だが、アイキキはそれを阻んだ。



「・・・邪魔」


「アナタ様が意地でも、ららみ様に答えてもらうように

ワタクシは意地でもここを退きません

ららみ様を、守りたいとワタクシは思うからです・・・!」


「・・・大した度胸

大した心情

大した態度

でもね、君に感情なんて無いクセにどうしてそんな事を“思える”の?」


「まさか・・・」


「御退きなさい」



ラルーがそう呟くと同時にアイキキは部屋の中央に有る

柱にあっという間に鎖で縛り上げられる。


ラルーはその間も、全く動かなかった。


何が起きているのか、一瞬、理解出来なかった。

けれども私は理解する事が出来た・・・。



鎖が突如、現れたかと思ったら

一人でに蛇のように動き、

アイキキに縛りつくと、柱にアイキキごと絡みついたのだ・・・。


そんな魔法、存在なんてしない。

そんな現象、起こるはずはない。


なのに・・・起きてしまった。


それに・・・ラルーは“私達の秘密”に感付いている・・・!

一体・・・ラルーは・・・何者・・・?



「さて、邪魔者はいなくなったわ

後は、ららみに吐いてもらうだけ・・・」


「ッ・・・・!?」



ラルーは私を見下ろすと同時に私の髪を掴み、

壁に押し付ける。



「デルア君は・・・人間じゃ、ないのでしょう?

いや、正確には“元”人間?」


「・・・!

ラルー・・・!

デルア君を・・・馬鹿にしないでッ・・・!」


「おやおや、怒った?

でも、抵抗はしない辺り私には敵わない事は分かってるようね?」


「ッ・・・!!」



そう、私はどうあってもラルーには敵わない。

だって、ソノカさえも簡単に倒せる人を、

私が勝てるはずなんてッ・・・!



「正しい、判断だ

なら、答えてくれる・・・よね?」


「・・・」


「・・・言い方を変えるわ

答えなさい、嘘吐きの人類の裏切り者」


「ッ・・・!!?」



今までにないくらい冷たい口調で、

ラルーは吐き捨てた。

怖いッ・・・嫌だ・・・!



「デルアッ・・・く、んは・・・!」


「あら? ようやく話す気になった?」


「今も昔も、人間ッ・・・!

人間ではないのはッ貴女ですッ!

ラルー!」


「・・・そうよ」


「え・・・?」


「私は人間ではない

人間ではない故に、人間など、どうでもいい

だが、不愉快なのは自分は人間だと嘘を吐いて、

人間に化ける愚か者がうじゃうじゃ、このギルドにはいるという事よ」


「!!」



開き直った・・!?

でも、確かにラルーは人間ではない可能性が高いッ・・・!



「・・・うぅ・・・!

最初にッ・・・! ラルーが私に見せたヤケドは!?

貴女が言った過去は?

魔法が使えるのは?

そういう貴女こそ、嘘吐きじゃないッ!」



ラルーは最初、顔を隠す理由は

過去に遭った火事の時のヤケドを隠す為だと語った。

その時に、ちゃんとそのヤケドの傷を見せてくれた。


間違いなく本物のヤケドの傷だったけど・・・!

今はそんな痕は・・・ない・・・!



「あぁ・・・ヤケドの事?

私は普段からこの顔を隠して生きてるのよ

だけどこのギルドに入る際、隠す理由を言わなきゃでしょ?


だから私はわざと自分の顔を焼いてヤケドの傷を作ったのよ

そうすれば自分の嘘の過去を話せるし、顔も隠せるし、一石二鳥だったわけ

確かに私も嘘吐きだけど、嘘を吐かざる得ない事情が有ったから仕方ない」


「自分の顔を焼いたッ・・・!?」


「そうさ、わざわざ焼いたのよ」


「なら、どうして今は・・・」


「私は治癒能力が吸血鬼並に高いの

だから治そうと思えば瞬時に治せるし、

治さないつもりでいれば、傷を残す事も出来るのよ」


「ッ!!」



吸血鬼並の治癒能力。

自分の顔を焼いてまでどうしてッ・・・!



「トンデモねー・・・

化け物並みの執念だな・・・」


「ん? まだ話せる気力残ってたんだぁ・・・? ソノカ」



不意にソノカは呟いた。

あッ・・・! そうだ・・・! ソノカはお腹を杭で・・・!



「そのッ・・・か!」


「ちょい、もがくんじゃないよ

ららみ」



私はソノカの元に行こうともがくが、

ラルーの拘束から逃れる事は出来ないッ・・・!


確かに、恐ろしい程の執念だ。


なら・・・どうして、そこまでしてこのギルドに入ろうとしたの・・・?



「一つ、君達に言った私の過去は嘘

二つ、ヤケドの傷は簡単に治癒可能

三つ、魔法の話も嘘

さぁ、答えてあげたから、デルアの正体を吐け」



簡潔にラルーは平然と嘘を吐いた事を認める。



「・・・」


(かたく)なね・・・

仕方ないわね、仲間を大切に思うららみの為に特別な・・・

そう、それはもう、とっても特別なサプライズを贈るわ?」


「・・・・え?」



ラルーは笑みを浮かべると、

再び鎖が突如、現れ私を縛り上げる。

そして私は壁に磔にされる・・・。


ラルーは私から手を離すと、そのままソノカに近寄る。



「なッ・・・何をする気ッ・・・!?」


「ららみが素直に言えばいい事なのよ?」



ラルーはそう言うと、ソノカの右手に触れる。

ソノカは必死に抵抗しようとするも、

磔にされているため、何も出来ない・・・。


そして・・・ふと、世界の動きがゆっくりになった気がした。


ソノカの、白くて、華奢な、右手が・・・。



   ソノカの腕から、もぎ取られた。




「ああああああぁぁぁっ・・・!!!」





ソノカの痛々しい叫びが響く


嗚呼、


なんで・・・


なんでいつも私は・・・


何も出来ないの・・・?



私は・・・



私の心臓は激しく脈打ち始める。

私の吐息を荒くなっていくのが分かった。


死にたい・・・シニタイ・・・しにたい・・・。





「止めて・・・

お願いだからッ・・・



・・・貴女は“死神”ならッ・・・

私を殺してッ・・・!

それで全部、許してッ・・・!

ソノカもアイキキもデルア君も・・・!


私は永遠に許されなくても構わないからッ・・・!」



「・・・その献身的な姿勢は一見

褒められるモノなのでしょう・・・けどね、私からすれば・・・



   最悪の優しさなんだよッ・・・!!」



私の絶叫の後、

ラルーの恐ろしい怒りの叫びが響く。


ラルーはもぎ取ったソノカの手を持ったまま、

私の元に来ると、

ソノカの手を私に突き付ける。



「ッ・・・!?」


「喰え」


「何をッ・・・!?」


「喰え。さもなければ貴様を残してソノカとアイキキを殺す」


「・・・ぅ・・・!」



ソノカの手を喰えって・・・事・・・?

そんな・・・! 正気じゃない・・・!



「もしくは、全てを吐き散らしなさい

それでソノカの手、試食は勘弁してあげる

ついでにソノカとアイキキの命は奪わない


さぁ、どうする?」


「ッ・・・!!

あぁ・・・」



私の全身は小刻みに震えて、しばらく

最悪の死神に黙って見下ろされていたが、

私は観念してゆっくりと、小さく頷いた・・・。



「そう、賢明な判断よ ららみ


じゃ、この椅子に座って

落ち着いて説明をして頂戴」



ラルーはデルア君の首なし死体を座らせている椅子を

私の前に持ってきて、デルア君の遺体を退けて

椅子に残る血を拭き取る。


私は大人しくその椅子に座った。

もはや私は無気力で、抵抗の意思さえ残っていなかった・・・・。






   『証人、ららみの証言』






「その昔、“和符(わふ)国”にはある化け物がいました

その化け物の事を人々は

“人縛りの亡者”

と呼び、大いに恐れていました


その化け物こそがデルア君・・・


地中より薄汚れた包帯が伸びて来て、

夜中、酒に酔い歩く人々を生きたまま地中に埋めたのです

その数はとうに100を越え


翌日、帰らぬ人を待つ家族が試しに

“ある場所”を掘ると、そこには

首を切断され、包帯に巻かれた帰らぬ人が・・・


そしてその“ある場所”は、今はただの何もない荒地でも、

昔は戦争時代の研究施設があった場所なのです


その研究施設はある日、施設関係者、全員が首を切断され

包帯に巻かれた状態で埋められているのが発見され、潰れたのです

その犯人はたった一人だけの青年でした


青年は研究施設が潰れた後も一人で生きて、死んだのです

それでも、生前の怨念から幸せな人々を生前やったように

首を切断し包帯を巻き、埋めるのでした・・・


そんな怪談話が流行り始めた頃に、

私とソノカとアイキキは依頼を受けました


“人縛りの亡者”を退治して欲しいという・・・


だから私達は“和符国”に行き、

デルア君と戦いました・・・


・・・その内に、デルア君の過去が明らかに・・・


デルア君は確かに既に死んで、甦った亡者でした


デルア君が生きていた時代は戦争時代

敵対国の女性とデルア君はお互いに愛し合っていました

しかし、敵対国の女性を愛していた事がデルア君の父親にバレたのです


デルア君の父は非常に暴力的な性格で、

特に敵対国に対する対抗心は異常でした

だからこそ、尚更許せなかったのでしょう・・・


デルア君は一晩中ずっと、ひどい暴力を受け続け、

日が昇った時にはもう・・・息はありませんでした

それでも父親はデルア君を許せなかったのか

父親はデルア君の遺体を包帯で巻き、

その遺体を研究施設に売ったのでした


研究施設に引き取られたデルア君は

兵士として、蘇らせられた・・・


その時にデルア君は自身の身体に巻き付けられた包帯を

操る力を手にしました

魔法でもなく、正体不明の力・・・


そんな中、デルア君は研究施設で

再び愛おしい人と再開を果たした


その女性もまた、デルア君同様に敵対国の人間と愛していた事が

身内にバレて“裏切り者の魔女”としてギロチンの刑に処され、

死んだのでした・・・


その遺体はたまたま研究施設の前に遺棄されたため、

研究施設で蘇らせられたのです・・・


二人は死んで初めて一緒に過ごせる事が許させたのでした・・・

だから本来なら、幸せな結末として終わるはず・・・

なのに・・・その事件は起きた・・・


蘇らせられた亡者達は兵士として日々、訓練をし

筋肉を増強する手術を何度も受け・・・

デルア君は包帯を操る不思議な力を持っていた為、

その能力を強化すると称された手術を人一倍に受けて・・・



 デルア君は、有り余る力に、暴走してしまった・・・



暴走して正気を失ったデルア君は、

殺戮の限りを尽くしました


そして、ついには最愛の女性を、その手で・・・


デルア君が気付いた時にはもう、その人は首を切断され

地中に埋められた後


不幸にも、デルア君は正気を失った時の記憶を持ち・・・

彼は絶望と悲しみの果てに、永久の眠りについた・・・

死因は誰にも解りません


彼自身にも、そのワケは理解出来ていません・・・


それで終われば良かったのに、

また、デルア君は蘇ってしまったのです

甦ったワケも、やはり誰にも解りません


デルア君はとにかく・・・

また生き返ってしまった事実に、再び絶望し

自暴自棄になり・・・“人縛りの亡者”となったのでした・・・




デルア君は何も悪くない・・・

彼はただ、不幸だった・・・

最初から、最後まで・・・


私はデルア君のそんな過去を知り、

助けたいと願った


だって、いくらなんでも酷すぎる・・・!


彼を救う、その為に私達は彼を“仲間”として迎え入れた・・・」





涙を流し、感情をなるべく抑える事を心掛けたが、

抑えきれずに私は何度も叫んだ・・・。




「・・・・・・――――一つの真実が、明かされた」




ラルーは静かに、そう哀しげに言った・・・。



「ラルーッ・・・!

デルア君は最近、ようやく笑うようになったんです!

楽しそうにッ・・・

出会った頃みたいに儚げに遠くを見る事もなくなったんです・・・

それなのに・・・! 貴女はッ・・・」


「ええ、そうね

私は彼の人生を、これからの未来を壊した」


「ッ・・・!!」


「でも、自分は生きていると、

嘘を吐くのは、決して許される事ではないの


彼は甦ったんじゃない・・・

死者として、現世に未練を残した為に彷徨い、

厄災をもたらした、化け物に成り果てたのよ・・・


彼はもう、人間ではない」



最初はデルア君に同情を寄せているともとれるように、

哀しげな表情をしていたのに、

すぐに彼女は冷酷な眼差しで私を見下ろした・・・。



「さて、デルアの嘘、偽りが暴かれた・・・

けれど、まだ全てではない・・・

後、三つの偽りを暴かなくては・・・・」



ラルーはそう呟くと、柱に縛り付けられたアイキキに近寄る。

アイキキはそんなラルーを無表情で見上げて、

何か言いたげにしていたが、諦めたのかラルーから目をそらす。



「一応、貴女も人間ではないのでしょう?

アイキキ」


「・・・」


「・・・黙るのね?

それとも、こういう時の対応に関するプログラムがないとか?」


「ッ・・・!?」


「最初から、貴女は生きてもいない何か、とは気付いてたけど・・・

本当に人間そっくりね・・・?

この時代のモノではないのでしょう?」



ラルーは一方的にアイキキを言葉責めにする。

アイキキは図星を決め込んでいた・・・。



「なんで・・・」


「ん? 何かしら、ららみ」


「一体、どうやって、たったの半日で、

“私達の秘密”に気付いたの・・・?」


「・・・私の目は・・・見え過ぎる

見え過ぎるし、他人からは気味悪がられるし・・・


だから、それが嫌で私は目を包帯で覆い、更には顔を隠した・・・


それでも、見えるモノは全て見えていた

見たくなくても、目を覆い隠しても、

耳を塞ぎ、“もう見たくない”ともがいても・・・見え続けた


ここ最近ではもう、見える事を諦めたわ


具体的に、何が見えるか

と問われれば困るわねぇ?

かなり、曖昧な感覚だから・・・


私は、人の流れ往く“魂”の残像を感じ取り、

その人物の“魂”を見抜けた


私は、様々な想いに揺さぶれる“心”を読み、

邪な想いも偽善の想いも無垢なる想いも、

哀しみに壊れる想いも怒りに震える想いも・・・


全てが全て

心の内も、魂の音も

死の味も、欲望の匂いも

偽りの・・・心地も、全て、私の見えるモノとして映る」


言葉巧みに、

自身の眼を語るラルーは

ふと、紅い目で私の姿を捉えると

曖昧な表情をした・・・。



喜びに酔いしれるような、

怒りに歪むような、

哀しみに昏れるような、

楽天的に座るような・・・。



よく・・・解らない・・・こんなにも表情が読みづらい人はいない。



「とにかく、私はその人物を見るだけで

どういう人物なのかが解るし、

人間でない事を見抜くのも容易いの


ようするに、君達が私の目に映った時点でこの未来は確定していたの」



見られた、見られた

ただそれだけで、私達の敗北は確定した・・・?

なんていう事・・・!


そんな単純な事で・・・・。



「だから、隠したところで何の役にも立たない

いわゆる、“隠すと為にならんぞ”ってヤツよ!」



ニッコリ、楽しげに笑うラルー・・・。


なんだか・・・もう、情緒不安定です・・・ラルーは・・・。



「・・・そうですか、

“隠すと為にならんぞ”の展開なのですね?」


「そう! わっかるねぇ!

アイキキは!」


「そうですか」



アイキキはラルーのボケ?に乗っかる。



「じゃ、話して? アイキキ?」


「・・・そうせねば、ならない展開

のようですから、話すしか・・・ありませんね・・・」



アイキキは観念して、話し始めた。





    『“現”被告者 アイキキの証言』





























「単刀直入に言います

ワタクシは人間ではなく、

女型アンドロイドなのでございます

以上」




「・・・えぇ~!? 早ッ!?

もっと、話す事あるでしょう!?」


「話す事は御座いません」


「えええええ!?

困る困るッ! ちょ、えええ!?

マジで!?」


「・・・」



なんと、アイキキはラルーを慌てさせる事に成功・・・!

もはや、ラルーを困らせる事が出来ただけに嬉しい・・・!



「・・・よし、証人ららみちゃん

詳しい事を話して?」


「まだ、続けるんですか・・・?」


「早く終わらせたいのなら、さっさと話したまえ」


「・・・

分かりました・・・」








        『証人 ららみの証言』

              







「最も最初の頃、

私の仲間はソノカしかいませんでした・・・


ソノカは私の唯一の仲間

でも、私は宿に引きこもり研究漬けの日々を過ごしました・・・


え・・・? 何の研究かって・・・?

それは、魔法の研究です・・・


私は当時、自分が手にした魔法の力がどれだけの力を秘めているのか

調べ尽くし、何が出来るかを研究していました・・・


その内、私は“未来に行く方法”を見つけ出しました・・・

だから私は早速、ソノカと共にそれを検証してみました

そして・・・


1000年後の未来に、辿り着いたのでした・・・

そこではもう、魔法なんて存在しておらず

機械が全ての世界が形作っていました・・・


そんな世界で、私は路上に晒されたアイキキを見つけたのでした


その時代ではアンドロイドが普及し初めて、

アンドロイドの違法遺棄が問題になっていました。

アイキキもまた遺棄された可哀想な子でした


だから、私はアイキキを拾ったのです・・・


アイキキを起動した時、

データが欠如していました

要するに、人間で言うのなら“記憶喪失”に陥っていました・・・


その後、私達はアイキキと共に元の時代に戻りました


だけど・・・戻ったら、アイキキが

私の書き記した未来に行く方法の書物を処分しちゃったおかげで

もう、未来には行けなくなりました・・・


何故、アイキキが記憶喪失になり、違法遺棄されたのか、

そのワケは闇になくなってしまったのです・・・」



「それだけの事が、ららみは出来るんだ? 凄いねぇ

それに真相は闇の中って・・・気になるね?

・・・そういえば電源とか、故障したらどうしてるの?」


「それは、アイキキは自動修理機能が搭載されているので、

問題はありません・・・


それに電源は様々な方法で供給出来るみたいで・・・


水で発電したり、太陽光で充電

更には食事による電力供給も出来るらしいので・・・

だから・・・」


「問題はない、と?」


「はい・・・」



ラルーはアイキキを見て


“ほぉ~、それは凄いねぇ~”


と関心していた・・・・。


何だろう・・・だんだんラルーが怖くなくなってきた・・・?


でもッ・・・!


私は決してラルーを許したワケじゃ・・・!


だが、ふとラルーは

ニタァー と笑うと次の瞬間には、アイキキに銃を突きつけ



バンッッ!!



発砲した。




「・・・へぇ~、高性能なアンドロイドだねぇ?」



ラルーの、そんな陽気な声の後

私はすぐにアイキキを見た。


アイキキは無事だった・・・。


良かった・・・。



「・・・申し遅れました

フォースフィールド 展開

レベル5に設定」


「・・・何それ、格好良い

決め台詞?」


「・・・いわゆる“決め台詞”に御座います」


「ひゅー、カッケー

てか、レベル?」


「はい、フォースフィールドの強弱を

レベルの数値で表現しました

弾丸程度ならレベル5程度で十分です」


「・・・なるほど・・・

高性能過ぎやしない?」


「アイキキは最良を尽くしているだけで御座います」



アイキキはラルーと当たり前のように話す。

・・・アイキキは・・・デルア君の死を、理解しているんだよね・・・?


の、わりには・・・普通過ぎる・・・?




「まぁ、いい

―――――二つ目の真実が、明かされた」




ラルーはどうやら私達から真実を聞き出せたら

明かされた事を宣言するようだ。


・・・どうにか、

どうにか、この状況を打破しなくては・・・。


私は思考をグルグル猛回転させて、

必死に考える・・・。


最悪の悪人、ラルーから逃れる手は・・・?



「・・・次は、ソノカの秘密ね?」


「ッ・・・!」



ラルーはソノカに振り向くと、

ソノカの顔に近づく・・・。



「デルア、殺害時の出来事を話そう・・・」



ラルーは不敵に微笑むと、

両手を広げ、ゆっくり回りながら話し始めた・・・。



「ららみが買い出しに出掛けた、

その5分後に、事は起きたのだ・・・


私はなんとなく

玄関ホールのテーブルの一つに座って、

綺麗な天井を眺めていた


そこに、デルアがやって来た


デルアは私の調子を聞いてきた

“調子はどう?”ってね


私は調子も何もないから、

“そう言う貴方はどうなの?”と

質問に質問を返したわ


そして、彼は言った・・・

最近、妙な夢を見るようになったと

自分が“光”に、


透けて、溶けて、導かれて、

惹かれ、引かれ、退かれ、

消失する夢を、

消えてしまう夢を、


だから私は悟った

彼には、もう・・・

時間など残されていないと、

彼が“この世”に居残れるまで間もないと、



だから だから だから ・ ・ ・



私は彼を殺した


だって、


どうせこの世に居れる時間はもうないのだから、

私の殺戮衝動を満たす役に立って死ぬ方が、

誰かの役に立って死ねるなんて、


どれだけ、素晴らしい事か・・・!

どれほど、栄光的な事か・・・!


デルアの犠牲によって、罪もない人間が死なずに済むのだから!」



その思考は、

価値観は、

酷く歪み、壊れていた・・・


もう、救いようがない程に・・・!


狂っている・・・!



「・・・だけれど、デルアを殺した後、

ソノカとアイキキが異変に気付いて、

すぐに駆けつけた・・・


で、バトルになった

アイキキとソノカは一人の私相手に本気で殺しにかかったんだから、

笑えないわー

全く・・・


でも私は二人に勝利

ソノカの腹部をナイフで一刺し、

アイキキはなんか・・・電池切れ?

に陥った


その後にららみが来て、

件は始まる・・・」



ラルーは回るのを止めると、

私をチラリと目やる。



「ワタクシは電池切れしたワケではなく、

強制的にショートされたのです

訂正を求めます」


「あ、そうだったの?」


「無自覚とは言わせません

だって、わざと電撃を繰り出したでしょう?」


「そだったねー!」



アイキキと非常に息の合った会話を交わすラルー

え、アイキキはなんでラルーと仲良く出来るの・・・?



「こほん!

えー、話しを戻します!


デルア殺害後に私はソノカとアイキキのダブルコンビと

死闘を繰り広げた末に、

私はソノカとアイキキを倒し、勝利した!


というのは分かったねー? 諸君!」



なんだか妙なテンションで私に振り返って

必死にアイコンタクトをしてくるラルー


なんで私に反応を期待するの・・・?



「その時、私はアイキキをショートさせ」


「やはり、わざとでしたか」


「ごめん、アイキキ悪かったって


・・・そしてソノカの腹部を一刺しした


あれー? おかしいねー?


だって、普通ならほんの一刺しだけでも

動けなくなるモノだ

なのに、ソノカはその後もすーぐにららみのトコに駆けつけて

私とまた戦ったりもしていた

でも、腹部は血が滲んでいたから一刺しした事実は確かだ


て、事はー?


ららみちゃん、解るでしょう?

あ! 証言はいらないから!

実際の現象で今度は証明するわ!」



私が反論を言いかけたが、

ラルーはそれを制し再びソノカを見た。


今もお腹に杭が深々と刺さり、

右手はなくなったまま・・・

目も覆うほどの悽惨な状態でも、ソノカはまだ生きていた。



散々、ラルーを睨んでいたが

そんな余裕はなくなったのか、

うつむいて、顔色も非常に悪い・・・。


きっと、ソノカは痛みのあまり意識が朦朧としているのだろう・・・!



「・・・一見、重症のようでも・・・!」



ラルーはそう言うと、ソノカの腹に突き刺さっている杭を

力ずくで引き抜き、

ソノカを縛り上げる鎖を解く。


すると、ソノカはそのまま床に倒れた。



「ソノカッ・・・!」


「動かないで、ららみ

約束したのに殺すハメにはなりたくないわ」


「ッ・・・!」



私はソノカに駆け寄ろうとしても、

ラルーは大鎌の刃を私に向け、それさえも許さない・・・。



「嘘吐き、平気なクセに」



ラルーはソノカを容赦なく踏みつけた。

それを黙ってソノカは耐える・・・。



「もう、ソノカを虐めないで・・・!!」


「いじめる・・・?

人聞きが悪いわ、私はただの拷問をしているだけ」


「尚更、良くないよッ・・・!

ソノカが・・・!」


「いい加減、大切な人を不必要に心配を掛けさせるのは・・・

悪いんじゃなくて?」



私の叫びも聞かずにラルーはクスクス笑っていたのに、

ソノカを見下ろすと同時に冷たい表情になる。



「ッッ・・・! ら、らみ・・・!」



ソノカはラルーの言葉を聞き、

ハッとしたように私を見上げた。

そして、私の名を呟いた。


救いを求めるワケでもなく、

ソノカは純粋に・・・私を心配して、

私の身を案じて、ずっと耐えているのが分かった・・・。



「ソノカ・・・・・・

もう、いいの・・・

どうせ・・・この死神には・・・勝てないから・・・」



私は・・・首を横に振り、

ソノカに耐える事を止めさせる・・・。


そして・・・ソノカの秘密も、暴かれた。





 ソノカの深い傷から、漆黒の闇のような黒い炎が吹き上がった。

  そして、ソノカの傷は見る見るうちに癒えていく・・・。





「ソノカは・・・“鬼”

・・・“死の呪いの鬼”だから・・・

人々は“呪鬼”と呼ぶ・・・・」


「もういい、ららみ・・・

私が、全部話すから・・・

大丈夫だ・・・なぁ・・・?」



私が説明をしようとするも、

涙が再び火が着いたように流れ始める・・・。


ソノカの秘密だけは・・・・知られたくなかった・・・!


それでもソノカは私に優しく不器用な笑みを浮かべると、

スっと立ち上がり、ラルーを睨みつけた。



「“呪鬼”ね・・・

随分な大物の登場だこと・・・」


「テメーは“呪鬼”をどこまで知っている?」


「せいぜい、人の怨み、憎しみ、怒り、愛憎、悲しみなどの

感情から生まれた“呪”に命が宿り、

鬼と化した存在で、これまでもこの世界を幾度となく

戦火に巻き込んだ厄災をもたらす化け物


という程度の知識しかないわ」


「・・・その通り、

私の先祖は人間を憎み何度も殺そうとしたらしい・・・


でも・・・“ルビーヒルズ”“和符国”“現魔力王国”の連合軍

“魔術封印部隊”に封印、“鬼狩り”による虐殺により

私達の数は吸血鬼の数よりも少なくなって、

もうほとんど絶滅状態に陥っているんだ・・・


今、世界は私達“呪鬼”は絶滅して、いないと思っている

そんな所に私の存在が明かされたら・・・」


「殺されて、今度こそ本当に絶滅してしまうと?」


「・・・ああ、そうだ」


「・・・他に仲間は?」


「数える程度の人数だが、

小さな村を形成するだけの仲間がいる」


「・・・それ以外には?」


「・・・いると言う話だが・・・

一度もこの目で見た事もないな」


「・・・そう」



ソノカは淡々と、ラルーの質問に答えて

ジッと、ラルーを見ていた・・・。


ソノカは・・・何を・・・?



「隙を伺ってるの?

私を生かしておくワケには行かないのかしら?」


「ッ!?」


「クスッ・・・

何故、私は殺されるの?」


「・・・お前みたいなヤツはどうせ、

どっかの国に私の情報を売って至福を肥やそうとする

・・・そんな事、させないぞ」


「え、私、そんなゲスなヤツに見えるの?」


「見える」


「否定して欲しかったけど、まぁいいわ

私はそんな事はしないわ、まずお金には困ってないし」


「はぁぁあ!?」


「ところで、貴女は“呪鬼”なのでしょう?

まず、私を邪魔に思ったのなら呪われるんだと思ったのだけど・・・」


「・・・私にはお前を呪えない理由がある


一つは私はもう二度と誰かを呪わないと決めているから


二つは呪うには相手の“魂”の断片・・・又は記録

要するに髪とか爪が必要だから出来なかった


三つ、例えテメーの髪か爪を入手出来た所で

呪えるかどうか解らん


以上」



「うわーい! 簡潔な説明、わっかりやすーい!

って・・・なんでこうも、アイキキといいソノカといい

冷たく突き離すのかしら・・・?」


「テメーがデルアのクソミイラをぶっ殺したからだろうがッ!!」


「え、もうデルアの死に慣れたように思ったけど

まだ根に持ってたワケ?」


「・・・最低だな、お前

一生、根に持つだろうがッ!!」



ソノカはラルーと言い合いを始める。

・・・ラルーの言う通り、アイキキもソノカも、

デルア君の死を受け入れた。


いくらなんでも・・・早すぎる立ち直り方だ・・・。



なんで・・・そんなに・・・二人は強いの・・・?




「・・・―――――3つ目の真実が、

・・・・・・メンドくさいな・・・」


「え、メンドくさい・・・!?」



もはやもう・・・疲れた・・・。

コロコロコロコロ・・・ラルーは表情を変え、

突然、怒るわ

突然、笑うわ

突然、悲しそうにするわ

もう・・・! 情緒不安定過ぎる・・・!

度を過ぎてます・・・!



「えー、こほん!

あとは・・・ららみの真実だけ・・・ね?」


「・・・!?」 



ラルーは私の元へ、

ゆっくり近付く・・・

それに私は椅子から立ち上がり、

後ずさる・・・・。



だって・・・怖すぎる・・・・!



けれども、ラルーはそんな恐れに震えている私の手を掴み

私の顎に手を添え、私の顔を持ち上げさせる。


ジッと残酷に美しい紅い瞳に私の顔が映る。

澄んでいるようで、瞳の奥に闇があるような・・・。

不思議な・・・瞳。



でも、言わなくては

絶対に許せないけれど、

騙すワケにはいかない・・・!




「あの・・・!

私は・・・!」


「め」


「だから!」


「しッ!」


「その・・・!」


「め、めめ!」


「私ッ」


「シィ!!」


「私のッ・・・!」


「だぁッ!!」




私が言いかけるとラルーがすかさず言葉を挟んだ。

それでも諦めずに言いかけてもやはりラルーに言葉を挟まれる。

なので最終手段として私は暴れようとするも

ラルーにあっという間に押し倒されてしまう・・・。



「ららみから離れろ疫病神ッ! 死神!

狂人ッ!」


「馬鹿ですか? 阿呆なのですか?

そのまま斬りおろしたら、ららみ様も巻き込まれます!」



ソノカが大剣を手にラルーに襲いかかろうとするも、

アイキキが次に起こるだろう展開を推測して止める。


そんな中、私は・・・・。





「ソノカやアイキキ、デルア君には秘密があっても・・・


 私にはないんですってばぁ・・・!!」




全力で、私は絶叫した。



「うん、奇遇だね

私も特に君に異常なモノが見えない・・・

ごく普通の魔法が使えるだけの子供に見える


でも・・・逆にそれがおかしい

だって、ほらぁ?

“人縛りの亡者”やら“未来の女アンドロイド”

更には世にも恐ろしい“呪鬼”を

ただの魔法が使える少女が従わせてるなんて・・・


異常どころの問題じゃないわ?

この世の理が乱れる程の大問題だ


しかも、その少女は未来へ自力で行き、

未来のアンドロイドを元の時代にお持ち帰りーって・・・

ヤバすぎやしない・・・?」



ラルーは血のような紅い瞳で、

私を舐めるようにジッと見る。


何でも見通す目をもってしても、私の異常が解らない・・・?

そもそも・・・私は異常・・・?



“真実の裁判”は、まだ続く・・・。

ラルーの眼には

このめちゃくちゃなメンツの中。

最も奇妙で異常で不可解だったのが、ららみ。


普通過ぎな故に、逆におかしいという皮肉・・・。

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