表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

少女Aと少女Bは友達になった!

「はぁはぁ……」


 フィリの息が上がるったころ、ようやく屋上まで逃げ込めた。後は鍵を閉めてしまうだけで身の安息は約束される。さすがにノンストップで二回駆け上がって疲れたので、俺とフィリはベンチに腰かけた。


「ここまで逃げてくればもう大丈夫だろう。まったくお祭り好きも程々にしてほしいぜ」


「……でも、みんないい人に見えた」


「当然だ。学校一のクラスだと思ってる」


 ――俺が楽しく学校生活を遅れているのも、あいつらの明るい雰囲気のおかげだ。だから、フィリも少しずつ慣れていってほしいな。


「さて、持ってきたパンでも分けて食べるか」


「うん。もう限界……」


 ――全力で逃げてきたから、ますます空腹になってるみたいだな……なんて事を考えていたから、後ろに誰かいるのは気づいても、誰かまでは分からなかった


「私も混ぜてもらえるかしら?」

「どうぞ、茜さん」

「ありがとう、フィリスさん」


 ――はい? フィリ、今茜って言いましたか? 

 振り返ると、そこには茜が立っていた。


「な、なんでこんなところにいるんだよ!」


 茜の事だ。俺に詰問しにきたといわれてもおかしくない……鉄拳制裁の方が正しいかもしれないが。


「別に。ほら、フィリスちゃんが来たから、うちのクラスも浮き足立ってるのよ。教室がうるさいから屋上に避難してたのよ……って、なんでそんなに身構えてるのよ?」


「いや、だってお前怒ってるんだろ? 俺がフィリと同居していることについて」


 少なくとも、俺とフィリとの同居を心良く思っていないのは確かだろう。


「なんだ、そのこと。まあ、納得は言ってないわよ、……うらやましいぐらいだけど。でも小百合叔母さんとも話して、それでも一緒に過ごしてるんでしょ? だったら、私が言えることは何もないわ。」


「ふーん。それでいいのか?」


 なんか一部小声で聞き取れないかったけど、文句はないらしい。

 

「ええ。……改めて自己紹介するわね。篠宮 茜よ。茜でいいわ」


「フィリス・アルティシア・ディライト。……フィリスでいい。よろしく、茜」 


 こうして、茜とフィリが友達になった。




「それにしても、フィリスもよく聡と一緒に暮らせるわねー。聡の事だから、あんまりおもてなし出来てないんじゃない」


 お前の中の俺のイメージはなんなんだよ。


「大丈夫。充分すぎるぐらい」


「へー、家事全般でも押し付けてるのかと思ってたわ」


「俺ってそんなにイメージ悪いのかよ! これでも家事全部やってるし、出来る限りの事はやってるから!」


 ――何なんだ、この一方的に俺は悪い奴っていうイメージは?


「だって、お風呂覗いたっていうし、この前なんかR指定の――」

「それは龍平の陰謀だっ! 少なくとも、俺はそんな物は知らない!」


 ――あの野郎、勝手に俺の部屋に変な物もちこみやがったな。よし、放課後私刑!


「でも、家事はフィリスにも手伝ってもらった方がいいんじゃないの?」


「……勉強中」


「ノーコメントで」


 現在洗濯機の使い方は習得(3回に1度漂白剤と洗剤を間違える。ちなみに、予備に買っておいた弱アルカリ性系洗剤は、塩素系洗剤と混ぜられる前に撤収した)、掃除機や料理に関してはもう少し勉強の必要がある(特に料理)。


「まあ、今度私が教えてあげるっ!」


 微笑んで言う茜を見ながら、俺は頭から血の気が引いてきた。あ、あの料理を人に食べさせた場合、災害が発生する。何としてでも止める必要があるな。


「そ、その話は置いておいて、今度の土曜日に三人で出かけないか? 親睦を深めるために」


「あら、聡にしてはいい考えね。楽しみにしてるわ」


「了解。さて、昼休みが終わる前にとっとと昼飯食べようぜ」


 俺の横で盛大に腹の虫が鳴って、三人で笑った。




 ――放課後――


「さて、帰るかフィリ」


「ちょっと待ってください」


 帰ろうとする俺を東城が引き止める。


「藤原君、SHRで先生の仰っていた事を聞いていなかったんですか?」


「何か言ってたっけ?」


 俺の返答に委員長はややあきれて嘆息した。


「再来月にある文化祭の連絡があるから、委員長と副委員長は生徒会しつに来るように、と言っていまから帰らないでください」


「へーい」


 まだ帰れないのか。さっさと終わらないかなぁ。


「フィリ、鍵は?」


「持ってない。小百合が”二人で仲よく帰ってくればいいんじゃな~い?”って笑顔で言ってた」


 ――叔母さん、完全にこの状況を面白がってるんだろうな。


「役員会なんていつ終わるのか分からないから、先に帰ってくれ。あ、これ鍵な。場所はわかるか?」


「うん」


「じゃあ、また後でな……っと、そうだ、龍平」


 面白いことを思いついたので、龍平を呼び寄せる。いつものお決まりパターンでもある。


「なんだ、聡太朗?」


「龍平、お前がまだフィリにとの面識がなかったとしよう」


「ふむふむ」


「もし、フィリが道に迷っていたり、気分が悪そうにしていたら、どうする?」


 ここで普通の人なら、何も起こらない。しかし、フィリの容貌を考えると――


「当然、お持ち帰りした後、丁重なおもてなしをするっ‼」


「……とまあ、こうなる可能性があるので、道が分からなくなったら、住所をナビで探してくれ。間違ってもこんな輩に引っかかんないでくれ」


「わかった」


 さすが龍平、見事120点を叩き出してくれた。こういう時は役にたつんだよなぁ、コイツ。ざまあみろ……と思いたかったのだが、泣きはじめた龍平を見て若干反省する。今後もやっていくだろうけど。


「じゃあ、聡、バイバイ」


「おう、後でな」


 いまだに泣き崩れている龍平は無視して、俺は生徒会室に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ