01.血でも唾でも吐いておけ
今まで自分なりにマジメに生きてきたつもりだ。
しかし、さすがに今日は眠すぎる。
今にも思わずあくびが出そうだ、口が押さえるのを何度も堪えた。
あと少しの我慢だ…あと少し経てば、式は終わる。
眉間にしわを寄せつつも、ピシッと正しい姿勢で、僕は固いパイプイスに座り続けた。
と―――――
「うっ――ゲホッ!!」
!?
―――なんだ?
「ゲホっ、うぇっ――」
―――咳が止まらない!
どうでもいい式とはいえ、こんなときに風邪に!?
周りの新入生たちが、一斉に自分に振り向きだす。
ざわめくほどではなかったが、先輩たちも先生たちも、こちらを振り返る。
みんなして野次馬かよ!
「――ガハッ…!!」
これは―――――冗談だろう…。
咳の治まらない口を押さえていた手のひらに、べっとりと吹きかけられた赤い液体。
―――吐血って(笑)…結核じゃないんだから。
―――え?結核!?
手のひらを見つめたまま、途端に青くなる表情。
ただただ視界の真ん中に映る、血のついた自分の手が、
暗く霞んでどんどん見えなくなった。
そして完全に真っ暗になり、意識をなくす寸前の瞬間―――――
おそらく新入生と思われる一人の女生徒の、短い悲鳴が聞こえた。
―――こんなどうでもいい日に、こんなどうでもいい事になるなんて。
―――僕が、どうでもいい存在だからか?