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Scissors  作者: リコピン
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第3話 斬瞳《ざんどう》の代償

挿絵(By みてみん)


ホールの空気が、張りつめる。


山崎の目が、落ち着きなく動いていた。

まばたきの間に、視線の位置が変わる。


その目は、獲物を追う肉食獣みたいに冷たい。


ちゃんと見ているはずなのに、

どこを見ているのか、わからない。


……気持ち悪い。


そう思った瞬間だった。


「最初はグー!じゃんけんぽん!」


ピースのチョキが出る。

それを見てから、山崎の手が動いた。


「見えてるぜ。お前の“癖”も、指の動きも」


——グー。


完璧な後出し。

迷いがない。


ピースの指は、もう動かなかった。


(……負けた……?)


そう、思った。


「ピース!!」


声が、勝手に出て、

視界の端で、山崎の口元が歪んだ。


次の瞬間——


斬瞳ざんどう……」


ピースの瞳が、開いた。

黒目が広がり、赤い光が一瞬閃く


——何かが起こる。

そう直感した瞬間、山崎の手が止まった。


黒目が、限界まで広がる。

人の目じゃない何かを見ているみたいだった。


胸の奥が、ひやりと冷える。

理由は、わからない。


ただ——

見ちゃいけないものを見た。

そんな感覚。


気づいたら、私は一歩、後ずさっていた。


「……やめろ」


山崎の声が、掠れる。


次の瞬間、指がばらけた。


パー。


「……なにを、した……?」


答えは返らない。


「……勝ったと思った瞬間に、負けていた……」


山崎は、その場に崩れ落ちた。


ホール奥の部屋で、姉を見つけた。

鎖につながれ、怯えた顔。


ゴールドマンは逃げようとするが、


すぐにピースに追いつかれ、

震えながら手を出す。


パー。


ピースは、チョキ。


それだけだった。


「お姉ちゃん……!」


私は姉に駆け寄った。


「リナ……怖かった……

でも、来てくれたのね……」


肩を震わせる姉を見て、胸がぎゅっと締め付けられた。


私は鎖を解きながら、必死で言った。


「ごめん、遅くなって……!

 ピースが助けてくれたの。もう大丈夫だよ!」


姉はかすかに微笑み、私の手を握った。

その手の温かさが、胸にじんわり染みる。


このまま、ここで姉と一緒に。

そう思う自分が、確かにいた。


「……でも、

 あの人……少し、怖かった……」


姉のその一言で、胸の奥が、きゅっと縮む。


「リナ……あなた、変わったね。強くなった……」


私は、何も答えられなかった。

それが肯定なのか、否定なのか、

自分でも分からなかったから。


姉を解放して、私たちは屋敷を後にした。


でも、喜びは長く続かなかった。

翌日、街の闇医者へ。

ピースの目が、赤く腫れていた。


ライトを点けず、医者は言った。


「……網膜が、焼けてる」


私は意味がわからず、息を呑む。


「目を開きすぎたんだ。

 脳と視神経を、無理やり繋げた代償だ」


ピースは黙っている。


「使った回数は?」


「……さあな」


医者は舌打ちした。


「このまま使い続ければ、確実に光を失うぞ。

 レオンの仇を討つんだろ?ゼロを倒すんだろ?

 無駄な戦いはやめろ」


胸が、凍りついた。

レオン……ピースの兄の仇?

そして、斬瞳の代償……


自分の願いが、勝手な我儘が、

ピースの目を賭けて戦わせていたなんて……。


「なんだ……今日は随分とよく喋るな」


ピースが医者に軽く言う。

でも、医者は真剣だ。


「ピース!俺は、冗談で言ってる訳じゃない!」


胸が苦しくてたまらない。

助けてもらったのに、私のせいで……。


「ごめん……ピース、私のせいで……

 私、全然……何も知らないで……」


声が震え、指先が冷たくなる。

姉の笑顔が脳裏に浮かび、息が詰まった。


「俺がやるって決めたんだ。気にするな」


ピースは銀髪を掻きながら、

何でもないみたいに言う。


でも、銀髪の下に隠れた目が、

わずかに揺らぐのを、私は見逃さなかった。

まるで、灰色の世界で唯一の光を失う恐怖を

押し殺しているように。


その言葉で、何かが変わった。


私は、やっと気づいた。

この人は、無敵なんかじゃない。


私は強くならないといけない。

姉のため、自分のため。


「私、ピースについていきたい。

 あなたみたいに強くなりたい。」


ピースは肩をすくめ、ポケットに手を入れる。


「好きにしろ。」


二人の影が、ネオンの渦に飲み込まれていく。

私の旅が、始まる。


ピース失明まで:斬瞳、残り96回。

——網膜に刻まれた代償。



読んでいただきありがとうございます!

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「続きが少し気になるな」と思っていただけたら

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次回:第4話 切る者の目

網膜の悲鳴を押さえ、彼は前へ進む。


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