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Scissors  作者: リコピン
2/8

第1話 チョキしか出さない男

挿絵(By みてみん)


——私はまだ知らなかった。

この夜、路地裏で出会った少年が、

世界を揺るがす存在になることを。


焼け跡の新宿。

ネオンと廃墟が交錯する路地裏で、

私は地面に座り込み、震えていた。


5人のギャングに囲まれ、

青あざの頬を押さえながら。


「やめて……誰か、助けて……!」


「もう諦めろよ、お嬢ちゃん。

 おとなしくしてれば、可愛がってやるぜ?」


「へへっ、なあ、最初はじゃんけんで決めようぜ。

 負けたヤツは後回しな」


笑い声。


私は、もう期待しなかった。

生きることすら、手放しかけていた。


(……お姉ちゃん……ごめんなさい。

 こんなところで終わるなんて……)


ギャングの男の指が私の肩を掴んだ。


そのとき——

路地の入口に、影が立った。


黒いコート。

銀髪の少年。

左手はポケットの中。

右手に、黒革の手袋をはめている。


ギャングの一人が舌打ちして、

少年に近づいていく。


「なんだテメェ、邪魔すんな。

 身ぐるみ剥いでやろうか?」


(この連中はいつもこう。

ジャンケン法なんて無視して、力でねじ伏せる……)


5人が一斉に少年を囲んだ。


「この街じゃ、ジャンケン法なんて守ってるヤツは

 馬鹿だぜ。力こそ正義だ!」


「へへっ、じゃんけんぽん!」


——次の瞬間。


ドン!!!


衝撃音と共に、5人が一気に吹き飛ぶ。


空気が震えて、

目に見えない何かが爆発したみたいに。


壁に叩きつけられ、地面に転がり、

白目を剥いている。

何が起きたかわからない。


少年は一歩も動いていない。

私は呆然として、息を飲んだ。


「……え……?」


(どうして……? 何もしてないのに……

 まるで漫画みたいに……)


ギャングの一人が、うめくように漏らす。


「こ、コイツ……つ、つえー……」


私の心に、何かが灯った。


(……すごいっ……! この人なら……)


路地の奥から、

ゆっくりとギャングのボスが出てくる。

大きい体、無数の傷が刻まれた腕。


「ほう……少しはやるようだな。俺と勝負だ。」


ルールなど最初から存在しないかのように、

男は拳を鳴らした。


「負けた相手は許さねえ。

 パーだろうがチョキだろうが、最後にはグーで

 ぶん殴って勝ちにする。それが俺のルールだ。」


ボスが拳を握りしめ、ニヤリと笑う。


少年は、無言で右手を掲げる。

二本の指をチョキに立てて。


「じゃんけんぽん!」


空気が、ひび割れた気がした。


ボスは確かに、拳を握っていた。

殴る気満々の、グー。


——なのに。


開いていた。


「な……!? グーを出したはずなのに……

 き、気づいたらパーを出していた……!?」


震える声で呟き、膝をつく。

ボスの指は、意思を失ったように伸びている。


パー。


「……俺は、チョキしか出さないのさ。」


その声は、静かで、冷たかった。

まるで、灰色の世界そのものを映す鏡のように。


私の目から、涙がぽろぽろ落ちる。

でも今度は、救いの涙。


(この人……怖いけど……強い……

 私も、こんな風に……)


彼の銀髪がネオンの光に冷たく輝くのを見て、

心臓が凍りつくような恐怖と、胸の奥底で灯る

微かな希望が、絡み合うように渦巻いた。


二人の影が、崩れたビルの隙間で溶け合う。


これが私と不思議な少年ピースとの出会いだった。


読んでいただきありがとうございます!

ブクマしてくださっている皆さん、本当に感謝です。


読んでいただけるだけでも嬉しいのに、

ブクマや評価まで励みになっています。


まだの方も、

「続きが少し気になるな」と思っていただけたら

ブクマしてもらえると嬉しいです。


評価は★1からでOKです!

楽しんでいただけましたら、

ぜひ星を増やしてもらえると励みになります。


次回:第2話 姉の影

助けた少女の願いが、彼を戦いへ向かわせる。


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