第16話 暗闇の中に
「Rock, Paper, Scissors——Shoot!」
衝撃が空気を裂く。
俺は、チョキを出した。
ゼロも、チョキ。
最初に壊れたのは、視界の端だった。
兄貴と向かい合ったまま、
世界の輪郭が、じわじわと滲んでいく。
(……やっぱりな)
斬瞳は、もう限界だった。
いや、限界なんてとっくに越えている。
それでも、止めなかったのは俺だ。
あいこ。
空気が、震えた。
衝撃が走り、
視界が一瞬、真っ白になる。
「……不知火流・斬瞳」
「……不知火流・斬瞳」
同時だった。
兄貴の殺気と、
俺の殺気が、
真正面からぶつかる。
視界が、裏返る。
世界が、歪む。
「……っ!」
目の奥が、焼ける。
刃を突き立てられたみたいな痛み。
それでも、離さない。
(……まだだ)
「Again! Shoot!」
また、チョキ。
あいこ。
衝撃が繰り返すたびに、
世界から色が抜けていく。
(……兄貴)
ゼロは、微動だにしない。
仮面の奥の瞳だけが、こちらを射抜いている。
「やめろ」
低い声が、聞こえた。
「これ以上は……」
それでも、
次の合図は落ちる。
「Shoot!」
チョキ。
チョキ。
あいこ。
次の瞬間、
視界が、完全に崩れた。
——暗い。
何も、見えない。
「……っ」
膝が、自然に折れる。
世界が傾く。
そのとき——
「ピース!」
聞こえた。
リナの声。
はっきりと。
まっすぐに。
(……リナ?)
視界は暗いのに、
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
……光、みたいだった。
いや……
光じゃない。
心だ。
(……この暖かさは……)
ゼロの殺気が、震えているのが分かる。
「……もう、目は見えまい」
声が、少しだけ震えていた。
「よくやった……ピース」
「これで……眠れ!」
手が、動く気配。
(……違う)
その瞬間、
兄貴の心が、触れてきた。
悲しそうに、震えていた。
(……兄貴……)
全部を背負うって、言った人の心だ。
誰にも見せず、
誰にも触れさせず、
一人で壊れていった心。
(……そうだ……俺は………)
息を吸う。
「……あいこで——Shoot!」
暗闇の中で、
俺は、兄を見ていた。
「不知火流……」
心は、静かだった。
「零瞳……」
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次回:第17話(最終回) 並ぶ手のひら
結末をどうかその目でご確認ください。




