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アイドルと未来の断片

数日が過ぎても特に大きな変化はなく、平穏な日々が続いていた。三条と一緒に過ごす時間が増え、彼女の存在が日常に溶け込んでいくように感じた。しかし、心の片隅では、右眼の異変が何を意味するのか、未来にどんな影響を及ぼすのかという不安が消え去ることはなかった。


そして、ついに帰国する日が訪れた。出発の朝、俺は部屋の窓から外を見つめ、これまでの出来事を振り返っていた。右眼の痛みは消え、眼帯をつけている限りは未来視も抑えられていたが、あの感覚は決して忘れることができないものだった。


三条もまた、静かに準備をしていた。彼女はこの数日間、俺のことを気遣い、そばにいてくれた。その優しさに感謝しつつも、彼女に余計な負担をかけたくないという思いが強くなっていた。


空港に向かうタクシーの中、俺たちはあまり多くの言葉を交わさなかった。それでも、彼女の温かい眼差しが、何よりも心強かった。日本に帰れば、また忙しい日常が待っているだろう。だが、その中でもこの数日間で得たものを忘れずに、前に進んでいく決意を固めていた。


飛行機が離陸し、窓の外に広がる景色が徐々に遠ざかるのを見つめながら、俺はこれからの自分に何が待っているのかを思い巡らせた。未来の断片を垣間見ることができる右眼が、再び動き出す日が来るのかもしれない。そしてその時、俺は何を選び、どんな未来を創り出すのか。


そんな考えに浸りながら、俺は静かに目を閉じ、フライトの時間を過ごしていった。

三条「3日後、ライブするので来てください、ほら私、前にも言ったけどアイドルやってるので、今回はその活動の一環なんです。」


彼女は少し照れくさそうに笑いながら続けた。俺は驚きながら彼女を見つめた。アイドル活動については以前に少し聞いたことがあったが、実際に彼女がステージに立つ姿を想像するのは初めてだった。


「ライブって、どんな感じの?」俺は興味津々で尋ねた。


三条は少し考え込むようにしてから、「今回はソロのライブじゃなくて、グループでのパフォーマンスです。ダンスも歌もあって、結構練習してるんですよ。だから、ぜひ見に来てほしいんです。」と答えた。彼女の目には強い決意と、ほんの少しの不安が見え隠れしていた。


「もちろん、見に行くよ。」俺は自然と笑顔になりながら答えた。彼女がどんなに一生懸命に取り組んでいるのか、その表情から伝わってきたからだ。


三条はほっとしたように微笑んで、「ありがとうございます!佐藤さんが応援してくれるなら、もっと頑張れます!」と言った。彼女のその笑顔が、これまで見た中で一番輝いて見えた瞬間だった。


ライブの日が近づくにつれて、三条はますます忙しそうにしていた。練習や打ち合わせに追われ、時々疲れた様子を見せることもあったが、それでも彼女は決して弱音を吐くことはなかった。むしろ、その姿からはアイドルとしてのプロフェッショナリズムと情熱が感じられ、俺はますます彼女を応援したいと思うようになった。


そして迎えたライブ当日、俺は約束通り会場に向かった。会場は既に多くのファンで賑わっていて、ステージの中央にはスポットライトが輝いていた。三条が登場する瞬間を待ちながら、俺は彼女の努力の成果を目にすることができるのが楽しみで仕方なかった。


三条がステージに現れると、彼女はまるで別人のように堂々としていて、その姿はまさにプロのアイドルだった。彼女のパフォーマンスは素晴らしく、観客を魅了し、会場全体が一体となって盛り上がっていた。


ライブが終わり、三条がステージを降りてきたとき、俺は彼女に心からの拍手を送った。


「本当にすごかった、三条。君があんなに輝いている姿を見ることができて、俺もすごく嬉しかったよ。」


三条は少し照れたように笑い、「ありがとうございます。佐藤さんが見に来てくれたから、もっと頑張れました。」と感謝の気持ちを込めて答えた。


その瞬間、俺は彼女の成長を感じ、彼女と共に歩んでいく未来が少しずつ形になっていくのを感じたのだった。

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