波間の秘密
俺たちは島を去ることになった。その前に、三条と海で泳ぐことになった。青い海と白い砂浜、そして水平線が遠くまで続く美しい景色が広がっていた。三条はアイドルをしているだけあって、スタイルは抜群だった。彼女の泳ぐ姿は、まるで一枚の絵画のように映え、その美しさに一瞬、見とれてしまった。
波が穏やかに打ち寄せる中、俺たちは言葉少なに水の中を進んでいた。三条はいつもの明るい笑顔を浮かべていたが、その奥に隠された何かがあるように感じられた。これまで見せたことのない、少しだけ切なさを帯びた表情が、彼女の心に何かを秘めていることを示しているようだった。
「佐藤さん、泳ぐの得意なんですね。」三条が笑顔で言う。
「ああ、子供の頃から海にはよく来てたからな。でも、こんなにきれいな海で泳ぐのは久しぶりだ。」
「本当に美しい場所ですね。ここに来て、少し気持ちが軽くなった気がします。」
彼女の言葉に含まれた深い意味を探ろうとしたが、俺はあえてそれを聞かなかった。ただ、この瞬間を大切にしたかったからだ。桜井のこと、兵器のこと、悠真さんの謎……全てが頭の中をよぎったが、今はこの穏やかな時間に身を任せたかった。
「また来よう、いつか。」そう言って、俺は静かに海を見つめた。三条も黙って頷き、波の音だけが二人の間に響いていた。
佐藤「三条、なぜ記者とアイドルになろうと思ったんだ?」
三条は少し微笑んで、波打ち際を見つめながら答えた。「記者として真実を追い求めたいと思ったんです。それに、アイドルとして多くの人に夢を与えたいとも思いました。両方とも、私の中にある情熱が導いてくれた道です。」
佐藤はその言葉を聞きながら、三条が背負っている使命の重さを感じた。「そうか。お前の覚悟が伝わってきたよ。」
三条は佐藤の目をじっと見つめて、「佐藤さんも、桜井さんのために全力で戦ってきたんですよね。私も、できる限りのことをしたいんです」と言った。
佐藤は海に目を向け、静かに頷いた。「俺たち、それぞれの道を選んで、ここまで来たんだな。」
三条「佐藤さんは何で数学者になろうとしたんですか?」
佐藤は少し遠くを見つめながら答えた。「俺は師匠に拾われたんだ。子供の頃、俺には何の目標もなかった。数学なんて、正直興味もなかったし、得意でもなかった。でも、師匠が俺を見つけてくれたんだ。」
三条は興味深そうに顔を近づける。「それで、数学に目覚めたんですか?」
佐藤は苦笑いを浮かべた。「いや、最初は全然うまくいかなかった。何度も諦めかけたことがある。でも、師匠はいつも俺を励ましてくれた。彼は、数学を通じて世界を理解しようとしていて、その姿勢に心を動かされたんだ。」
三条は頷きながら言った。「だから今の佐藤さんがあるんですね。師匠の影響って、やっぱり大きいものなんですね。」
佐藤は静かに頷いた。「あぁ、俺がここまで来られたのは、師匠のおかげだ。そして、桜井の存在も大きかった。二人とも、俺にとって大切な人だったんだ。」