消えた後継者
俺たちは桜井と訪れたの以来、桜井の祖父が住んでいた家を再び訪れた。あの時の記憶が鮮明に蘇るその場所は、昔のままの風貌で、時の流れを静かに受け入れていた。荒れた庭には枯れた花が残り、古びた門がどこか懐かしさを漂わせていた。
家の中に入ると、ほこりをかぶった家具と、年月を経た本が所狭しと並んでいた。静まり返った部屋は、まるで過去の出来事を見守っているかのように、私たちに対して何かを語りかけているようだった。桜井の祖父が大切にしていたであろう資料や文書が、ここに眠っていると感じた。
三条と共に家の奥へと進むと、隠された書斎が見えてきた。そこには古い地図や未開封の封筒が散乱しており、桜井の家族の秘密や過去の痕跡が眠っているに違いないと思われた。手に取った資料の中には、北緯三十度に位置する島に関する重要な手がかりが含まれているかもしれないと感じながら、調査を続ける決意を新たにした。
祖父「佐藤君、雪の面倒を見てくれてありがとう。彼女がどれほど感謝していたか、私も知っています。君の優しさが、彼女にとってどれほど大切だったかは言葉では言い尽くせません。」
その言葉を聞いた瞬間、胸に温かい感情が込み上げてきた。桜井の祖父は、長い間この家で静かに暮らしていたが、彼の言葉には深い思いやりと感謝の気持ちが込められていた。祖父の言葉は、桜井の過去と現在、そして自分の役割を再認識させるものであった。
佐藤「それで、雪さんのお兄さんのことを聞きたいのですが。」
祖父「悠真のことか。あの子がどのようになってしまったのか、私も詳しいことはわからない。彼は桜井家の後継者として、常に責任感を持っていた。しかし、彼がどこで何をしているのかは、最近ではまったく分からない。」
祖父はしばらく黙って考え込んでいたが、やがて言葉を続けた。
祖父「悠真は、ある日突然家を離れ、姿を消してしまった。その後の彼の動向については、私も知る由がない。しかし、彼がどこかで何かを成し遂げようとしているのは間違いないと思う。彼のことを調べる手助けができるかもしれないが、詳しい情報は残念ながら持っていない。」