失われた絆と禁断の証明【1】
証明が完了したその瞬間、桜井は静かに微笑みながら消え去った。彼女が残した温もりは、まるで風に消える煙のように儚く、俺の胸に深い虚しさを残した。
それから数日、俺は桜井のことを思い返していた。彼女が生きていた間に見せてくれた何気ない笑顔、真剣な表情、そして最後に見せたあの静かな微笑み。だが、それらの記憶を辿るたび、彼女の背後にあった影が次第に形を成していった。
ある日、桜井の部屋に残されていた古い箱を見つけた。中には彼女が大切にしていた日記や手紙、そして一枚の古びた写真があった。そこには、若い頃の桜井の祖父母らしき人物が写っていたが、どこか懐かしさと共に違和感を覚える人物もいた。
その人物――俺の師だった。何度も見たその顔が、今となっては決して戻らない過去を語っているようだった。
桜井が俺に言い残した「桜井一族とあなたの師には深い因縁がある」という言葉が脳裏をかすめる。だが、それが何を意味していたのか、俺には全く理解できていなかった。
手紙の中には、桜井一族と俺の師が共に歩んできた過去の記録が綴られていた。師がまだ若かった頃、彼は桜井一族の伝統的な研究に深く関わっていた。彼は数々の未解決問題に挑み、幾つもの成功を収めたが、そこには一つの禁忌があった。それは「人の存在そのものを証明によって消滅させる」という禁断の技術だった。
師がその技術を完成させたとき、彼は桜井一族の支配者と対立し、その結果として師は一族から追放された。師はその後、俺の師匠となり、彼が持っていた知識や技術の全てを俺に教えたが、その禁断の技術については一言も語らなかった。
しかし、その技術の存在を知った桜井は、自らの命を捧げてその技術を証明し、俺に託したのだ。彼女が消えた瞬間、俺はその証明を完成させた。だが、その代償として、彼女の存在がこの世界から消え去ったのだ。
この瞬間、俺は桜井一族と師の因縁が俺自身に深く繋がっていることを知った。そして、桜井が命を賭けて残したこの証明は、俺にとっても避けられない運命の一部であることを悟った。
過去の影が次第に俺の前に現れ、次の物語が静かに幕を開けようとしていた。