涙の証明と別れ
その日の夜、桜井の家に泊まらせてもらった。俺は研究に没頭していたが、ふと縁側に立つ桜井の姿が目に入った。近づいてみると、彼女は泣いていた。
俺は桜井の涙を見て、彼女がまだ17歳という若さで、世界の命運を背負っていることに今さらながら気づいた。その重責の下で、彼女がどれほどの苦しみを抱えているのかを思い知らされた。
佐藤「正直、何を言えばいいのか分からない。でも、君がどれほど辛い思いをしているかは少しだけ理解できる気がする。」
桜井は驚いたように顔を上げ、涙を拭いた。「佐藤さん…」
佐藤「君が背負っているものがどれほど重いか、俺には完全には分からない。でも、君がそれを一人で抱えているわけではないってことは知ってほしい。俺も、君と一緒にこの道を歩んでいるから。」
桜井は静かに頷き、涙の後に見せた微笑みは少しだけ和らいでいた。「ありがとう、佐藤さん。」
その夜、俺たちは何も言わずに静かに過ごした。桜井の涙と笑顔が、彼女の抱える重荷を少しでも軽くできたらと願いながら。
翌日の昼、俺たちは島を後にすることになっていた。桜井の家で過ごした最後の朝、桜井はさわやかな笑顔で朝食を用意してくれていた。おばあさんとおじいさんも優しく見送りの準備をしてくれた。
佐藤「昨日は本当にありがとう。君の家族や島の人々にお世話になったおかげで、気持ちも少し軽くなったよ。」
桜井「どういたしまして。来てくれてありがとう、佐藤さん。」
朝食を終え、荷物をまとめて家を出ると、島の人々が見送ってくれた。船の出発時間が迫っていたので、桜井と一緒に港へ向かう。海から見る島の景色は、昨日と変わらず美しかった。
港に着くと、桜井は少し寂しそうな表情を浮かべながらも、強い決意を見せていた。彼女は言った。
桜井「また会える日を楽しみにしています。私の使命はまだ終わらないけど、これからも佐藤さんと一緒に歩んでいけることが心の支えです。」
佐藤「もちろん。また必ず会おう。」
船が近づいてきて、俺たちは一度だけ振り返り、最後の挨拶を交わした。桜井の姿が徐々に小さくなり、俺は心の中で彼女とその使命の成功を祈りながら船に乗り込んだ。