和算の文献
三条は体の力が抜け、しばらくはうつむいていたが、佐藤の言葉を聞くとゆっくりと顔を上げた。彼女の目には強い決意が宿っていた。佐藤はその表情を見て、少しだけ安堵の息をついた。
三条「私はどうすれば…?」
彼女の声には疲労と不安が混じっていたが、佐藤は優しく答えた。
佐藤「まずは、しっかり休んで体力を取り戻すことが最優先だ。君が体調を整えたら、俺と一緒に文献を調べに行こう。」
佐藤は三条のそばに腰を下ろし、彼女の手を優しく包み込むようにして続けた。
佐藤「悠真や終末の男についての情報を集めるには、過去の文献や資料が重要になる。君の知識や洞察力が必要だ。共に調査を進めて、彼らの正体や目的を明らかにしよう。」
三条はその言葉に少しずつ力を取り戻し、疲れた表情から決意を含んだ目に変わっていった。
三条「わかりました。体調が戻ったら、一緒に調べます。私もこの問題を解決するために力を尽くしたいと思っています。」
佐藤は頷きながら、彼女の回復を見守ることに決めた。三条がしっかりと休養し、準備が整ったときには、共に調査に向かい、悠真や終末の男についての真実に迫るための計画を立てることを心に決めた。
お坊さんが古びた木の扉を開け、中から数冊の文献を取り出して差し出した。
三条の状態が良くなり、佐藤と彼女は勝幡寺へ向かうことにした。道中、三条は周囲の景色に目をやりながら、何か考え込んでいるようだった。寺に到着すると、三条は少し不安げな表情で佐藤に尋ねた。
三条「なんで、勝幡寺なんですか?」
佐藤は寺の古びた門を見つめながら、しっかりと答えた。
佐藤「ここには和算に関する貴重な文献が残っているからだ。悠真や終末の男の目的を理解する手助けになるかもしれない。」
三条はうなずきながら、寺の中へと足を踏み入れた。その際、彼女の視線は佐藤の左眼に注がれ、気になることがあったようだ。
三条「そういえば、左眼も変色していますね。」
佐藤は一瞬驚いた顔をし、すぐに思い出したかのように答えた。
佐藤「桜井の初代からもらったものだ。能力を強化するためのものらしいが、呼び名については特に決まっていないんだ。」
三条はその回答をじっくり考え、興味深そうに質問を続けた。
三条「呼び名は何かありますか?」
佐藤は考え込みながら、しばらく沈黙した後に答えた。
佐藤「そういえば、なんだろうな。初代からは具体的な名前を聞かなかった気がする。」
三条は軽くうなずきながら、寺の書庫に向かう道を進んだ。
三条「それでは、今から文献に目を通してみましょう。きっと何か手がかりが見つかるはずです。」
佐藤と三条は寺の書庫に入り、古びた文献や資料が並ぶ棚に囲まれながら、悠真や終末の男の謎を解くための調査を開始した。彼らの心には、これからの調査が持つ意味と、その先に待ち受ける真実への期待が色濃く残っていた。
お坊さん「これが文献です。長い年月を経て、少しは傷んでいますが、和算に関する貴重な資料が含まれています。」
佐藤と三条は、慎重に文献を受け取り、それぞれ手に取った。文献は厚みがあり、経年の影響で紙が黄ばみ、時折擦り切れた部分も見受けられたが、その内容には古代の知識と知恵が詰まっているに違いないと感じられた。
三条は一冊を開き、目を通し始めた。細かい文字や図が描かれたページが続き、和算の研究に必要なデータがぎっしりと詰まっている。
三条「この文献には、和算の歴史や技術に関する詳細が記されていますね。」
佐藤も同じようにページをめくりながら、和算の発展やその理論に関する解説を読み進めていった。
佐藤「これなら、悠真や終末の男が狙った目的や、その背後に潜む意図が解明できるかもしれない。」
二人は熱心に文献に目を通しながら、時折互いに見せ合い、重要な部分や気になる点を共有していった。寺の静けさの中、彼らの集中力は高まり、和算の奥深い知識に触れることで、新たな手がかりを見つけ出すことを期待していた。
三条「この文献には、どうやらツークンフトに関する記述もあるようです。」
佐藤は興味深そうに顔を上げ、三条が指摘したページに目を通した。
佐藤「ツークンフト…悠真が使った技術の元になっているかもしれない。これがヒントになるかもしれないな。」
彼らは文献の内容をさらに掘り下げ、悠真の技術や終末の男の意図に関する手がかりを探し続けた。徐々に明らかになっていく情報に対して、二人の気持ちは徐々に高まっていった。