次元眼の覚醒
数日が過ぎ、新たな眼の訓練と調査を重ねた結果、俺の次元眼は更なる進化を遂げた。それまでは、数秒から長くても数十秒先の未来しか視ることができなかったが、今ではその視野が約1分程度まで広がったのだ。
訓練の間、公安のチームは次元眼の精度を高めるために様々な方法を試していた。特殊な光刺激を用いたトレーニングや、心の集中を高めるメンタル強化セッションなど、あらゆる手法を駆使して俺の能力を引き出そうとした。
その成果は明らかだった。最初は、視える未来の断片が曖昧で、ぼんやりとした影のようなものだったが、次第にその映像は鮮明さを増していった。人々の動き、場所の変化、そして何より、未来に起こり得る危機的状況をより詳細に把握できるようになったのだ。
たとえば、訓練中に目の前にあるボールが転がり始める瞬間を視たとき、その後の数秒間の動きを正確に予測できるようになった。そして、1分先の未来では、さらに複雑な状況でも冷静に対応することができるようになった。
「これは大きな進歩だ」と俺は自らの成長に感慨を覚えながら、公安のチームと共に今後の戦略を練り始めた。悠真との対決に備えるためには、この力を最大限に活用しなければならない。未来を視る力が、今後の戦いにおいて鍵を握ることは明白だった。
しかし、まだこの力には限界があることも感じていた。1分という時間は決して長くはない。悠真のような強敵に対しては、さらに先を視る力が求められるかもしれない。俺はさらなる訓練と、新たな発見を目指して、次のステップに進む覚悟を固めた。
公安の男が一歩引いて、深く息をつきながら言った。「久しぶりに本気を出したが、やはりお前は並みじゃないな、佐藤。」俺はその言葉を聞いても、勝利の余韻を味わうことはできなかった。なぜなら、結果は俺の負けだったからだ。
組み手の最中、俺は男の動きを次元眼で読み取り、まるで自分の体に刻み込むように模倣していた。だが、それでも彼を打ち負かすことはできなかった。
「まるで、わしの動きをそのままコピーしているようだったな。」公安の男は、まだ息を整えながらも驚きを隠せない様子だった。
俺は頷きながら、次元眼の変化について説明した。「はい。あれ以降、次元の能力が伸びて、断片的だった未来視がより具体的に見えるようになりました。しかも、未来視とは別に、相手の動きがわかるようになって、その動きを模倣できるようになりました。」
男は一瞬目を細め、俺を見つめた後、口元に微笑を浮かべた。「そうか。それは大きな進歩だな、佐藤。だが、それが本物の力になるには、もっと鍛錬が必要だ。だが、今のお前なら、さらに強くなれる。」
俺はその言葉に決意を新たにし、次の訓練に向けて心を引き締めた。この新たな力が、俺にとってどれほどの可能性を秘めているのか、まだわからない。だが、確かなことは、これが俺の道を切り開く鍵となるだろうということだ。