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ゲノム~失われた大陸の秘密~  作者: Deckbrush0408
第三章【パシフィス王国編】
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本音

夜が明け、薄明かりが宿の窓から差し込み始めた。

村田はベッドの端に腰掛けていた。

夜の静寂が徐々に朝のざわめきに変わり、街の喧騒が遠くから聞こえてくる。


ライトはベッドで穏やかな寝息を立てている。

彼の顔には疲れが取れたような安らかな表情が浮かんでいた。


ケイラは窓辺に立ち、外の様子を静かに見守っていた。

彼女は一晩中起きて見張っていたが、その表情には一片の疲れも見えなかった。


「さて、と。もう朝ね、そろそろ起こしましょうか」

ケイラは静かに呟いた。

その声には夜が明けた安堵感と次なる行動への決意が感じられた。


村田はケイラの言葉に頷き、ライトの枕元に歩み寄る。

そっとライトの肩を揺さぶろうとした瞬間、ライトは気配を感じて目を覚ました。


ライトはゆっくりと目を開け、ぼんやりとした表情で周囲を見渡した。

彼はまだ夢の中にいるような気分で、村田の姿を確認すると、微笑みを浮かべる。

「おはよう…」

彼の声はまだ少し眠たげだった。


ケイラは優しく微笑みながらライトに近づいた。

「おはよう、ライト君。よく眠れたみたいね」


ライトは少し寝ぼけた様子で、

「あれっ、おねえちゃん?どうしてここに?」

と問いかけた。

彼の目には疑問と安心が入り混じっていた。


「昨日は色々あったからね、見張りしてたの」

ケイラは笑顔で答えた。


村田は少し言いにくそうにしながら、

「それでライト、急なんだが..今日にはこの国を出ようと思ってるんだ」

と切り出した。


ライトは驚きながら、

「そうなの?」

と尋ねた。

彼の目にはまだ半分夢の中のような表情が残っていた。


村田は語りかけるように答えた。

「あぁ、これ以上長居するのは危険ってのと、メガラニアに行ってやらないといけないことが色々あるしな」


村田がケイラに視線を向けると、ケイラは少し咳ばらいをしてからライトに向かって話し始めた。


「ライト君..私も一緒について行ってもいい?私もね、ライト君の出生の謎を解く手伝いをしたいの」

ケイラは欲望を抑えた自分の意思を伝えた。


ライトは一瞬考え込んだ後、頷きながら答えた。

「うん、いい..けど..ねぇ、おねえちゃん。どうして僕と話すときいつも目が赤くなるの?昨日も血をとるときすごく息荒くしてたし..」

彼の声には純粋な疑問と少しの不安が含まれていた。


ケイラはその言葉に困惑し、少し言葉に詰まった。

「えっ..あぁ目、ね。えっと..」

彼女は視線をさまよわせ、言い訳を考えた。


村田はケイラの肩に手を置き、優しく促した。

「ケイラ、それについてはしっかりとライトに話すべきだ」


ケイラは深呼吸し、ライトに向き直った。

「実はね..ライト君、私は..その....あなたの血液が欲しいの。あまり詳しくは言えないけど、それが無いと生活に支障が出るくらいにね..」


ライトはその言葉を真剣に受け止め、次の言葉を待った。


「ごめんね、正直に言うと一番の目的はそれよ。..でもね、あなたの出生の謎を解く手助けをしたい..これに嘘はないわ」

ケイラは正直に、はっきりと自分の意思をぶつけた。


ライトは一瞬驚いたが、次第に微笑みを浮かべた。

「そうだったんだね。てっきり変態さんなのかと思ったよ!」

彼は疑問が解消し、笑顔でケイラを見つめた。


「へ、変態..そ、それで、私は一緒に行っても大丈夫?」

ケイラは変態発現に傷つくも、改めてライトに確認する


ライトはにやりと笑い、

「うん、もちろん大丈夫だよ!」

と元気よく答えた。

その笑顔には彼女への信頼と安心感が込められていた。


ケイラはその言葉に安堵し、笑顔を浮かべた。

「へ..へへ、それじゃあさっそく..」

ケイラは笑顔で野獣の如くライトに飛び掛かり、馬乗りになる。

彼女の動きは俊敏で、ライトが反応する間もなかった。

素早く村田から借りていた注射器を取り出す。


「え?」

ライトは何が起こったのかわからず、目を見開いた。


ケイラは興奮した様子でライトの腕を押さえ込み、採血を試みた。

彼女の目は今までにないほど赤く輝いていた。


「あ、おいやめろ!てか俺の注射器返せ!」

村田は驚き、ケイラの両肩を掴み、ライトから引きはがそうとした。

しかし、彼女の体は岩のようにびくともしなかった。


ケイラの異様な様子にライトは恐怖を感じた。

「うわぁっ!や、やめて!!」

ライトは反射的に手を振り、ウィンドを放った。


「ぶばぁっ!」

ケイラは吹き飛ばされ、壁に激突した。

村田もその勢いで転倒し、床に倒れ込んだ。


村田はゆっくりと起き上がり、ケイラに向かって歩み寄った。


「おい..今度からは俺が血を取る..」

彼の声には怒りと苛立ちが混じっていた。


ケイラは壁に寄りかかりながら、うなだれた。

「う..ご、ごめんなさい....」

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