本音
夜が明け、薄明かりが宿の窓から差し込み始めた。
村田はベッドの端に腰掛けていた。
夜の静寂が徐々に朝のざわめきに変わり、街の喧騒が遠くから聞こえてくる。
ライトはベッドで穏やかな寝息を立てている。
彼の顔には疲れが取れたような安らかな表情が浮かんでいた。
ケイラは窓辺に立ち、外の様子を静かに見守っていた。
彼女は一晩中起きて見張っていたが、その表情には一片の疲れも見えなかった。
「さて、と。もう朝ね、そろそろ起こしましょうか」
ケイラは静かに呟いた。
その声には夜が明けた安堵感と次なる行動への決意が感じられた。
村田はケイラの言葉に頷き、ライトの枕元に歩み寄る。
そっとライトの肩を揺さぶろうとした瞬間、ライトは気配を感じて目を覚ました。
ライトはゆっくりと目を開け、ぼんやりとした表情で周囲を見渡した。
彼はまだ夢の中にいるような気分で、村田の姿を確認すると、微笑みを浮かべる。
「おはよう…」
彼の声はまだ少し眠たげだった。
ケイラは優しく微笑みながらライトに近づいた。
「おはよう、ライト君。よく眠れたみたいね」
ライトは少し寝ぼけた様子で、
「あれっ、おねえちゃん?どうしてここに?」
と問いかけた。
彼の目には疑問と安心が入り混じっていた。
「昨日は色々あったからね、見張りしてたの」
ケイラは笑顔で答えた。
村田は少し言いにくそうにしながら、
「それでライト、急なんだが..今日にはこの国を出ようと思ってるんだ」
と切り出した。
ライトは驚きながら、
「そうなの?」
と尋ねた。
彼の目にはまだ半分夢の中のような表情が残っていた。
村田は語りかけるように答えた。
「あぁ、これ以上長居するのは危険ってのと、メガラニアに行ってやらないといけないことが色々あるしな」
村田がケイラに視線を向けると、ケイラは少し咳ばらいをしてからライトに向かって話し始めた。
「ライト君..私も一緒について行ってもいい?私もね、ライト君の出生の謎を解く手伝いをしたいの」
ケイラは欲望を抑えた自分の意思を伝えた。
ライトは一瞬考え込んだ後、頷きながら答えた。
「うん、いい..けど..ねぇ、おねえちゃん。どうして僕と話すときいつも目が赤くなるの?昨日も血をとるときすごく息荒くしてたし..」
彼の声には純粋な疑問と少しの不安が含まれていた。
ケイラはその言葉に困惑し、少し言葉に詰まった。
「えっ..あぁ目、ね。えっと..」
彼女は視線をさまよわせ、言い訳を考えた。
村田はケイラの肩に手を置き、優しく促した。
「ケイラ、それについてはしっかりとライトに話すべきだ」
ケイラは深呼吸し、ライトに向き直った。
「実はね..ライト君、私は..その....あなたの血液が欲しいの。あまり詳しくは言えないけど、それが無いと生活に支障が出るくらいにね..」
ライトはその言葉を真剣に受け止め、次の言葉を待った。
「ごめんね、正直に言うと一番の目的はそれよ。..でもね、あなたの出生の謎を解く手助けをしたい..これに嘘はないわ」
ケイラは正直に、はっきりと自分の意思をぶつけた。
ライトは一瞬驚いたが、次第に微笑みを浮かべた。
「そうだったんだね。てっきり変態さんなのかと思ったよ!」
彼は疑問が解消し、笑顔でケイラを見つめた。
「へ、変態..そ、それで、私は一緒に行っても大丈夫?」
ケイラは変態発現に傷つくも、改めてライトに確認する
ライトはにやりと笑い、
「うん、もちろん大丈夫だよ!」
と元気よく答えた。
その笑顔には彼女への信頼と安心感が込められていた。
ケイラはその言葉に安堵し、笑顔を浮かべた。
「へ..へへ、それじゃあさっそく..」
ケイラは笑顔で野獣の如くライトに飛び掛かり、馬乗りになる。
彼女の動きは俊敏で、ライトが反応する間もなかった。
素早く村田から借りていた注射器を取り出す。
「え?」
ライトは何が起こったのかわからず、目を見開いた。
ケイラは興奮した様子でライトの腕を押さえ込み、採血を試みた。
彼女の目は今までにないほど赤く輝いていた。
「あ、おいやめろ!てか俺の注射器返せ!」
村田は驚き、ケイラの両肩を掴み、ライトから引きはがそうとした。
しかし、彼女の体は岩のようにびくともしなかった。
ケイラの異様な様子にライトは恐怖を感じた。
「うわぁっ!や、やめて!!」
ライトは反射的に手を振り、ウィンドを放った。
「ぶばぁっ!」
ケイラは吹き飛ばされ、壁に激突した。
村田もその勢いで転倒し、床に倒れ込んだ。
村田はゆっくりと起き上がり、ケイラに向かって歩み寄った。
「おい..今度からは俺が血を取る..」
彼の声には怒りと苛立ちが混じっていた。
ケイラは壁に寄りかかりながら、うなだれた。
「う..ご、ごめんなさい....」