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ゲノム~失われた大陸の秘密~  作者: Deckbrush0408
第三章【パシフィス王国編】
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恐怖

ケイラが大柄な男と対峙している間、ライトは不安と緊張で胸がいっぱいだった。

手が微かに震え、呼吸が浅くなるのを感じた。

男二人が自分に向かって迫ってくるのを見て、心臓が早鐘のように打ち始める。


「やってみるしかない..」

ライトは小さく呟き、片手を前に突き出して魔力を集中させる。

指先が温かくなり、ファイアが一人の侵入者に向かって飛んだ。


男は素早くそれをかわし、ニヤリと笑った。

「そんなものかよ、ガキが!」

その嘲笑にライトの心はさらに不安で揺れ動いた。

突撃してくる男の目には、ライトを見下す冷たい光が宿っていた。


もう一人の男はライトに向かいウィンドを放った。

ライトは何とかウィンドを相殺するが、その隙に突撃してきた男に押し倒され、地面に叩きつけられる。

衝撃が全身を駆け抜け、息が一瞬止まった。


「お前実戦経験が無いだろ?まぁ当たり前か、ガキだもんな」

男の一人が馬鹿にしながらライトの上に覆いかぶさった。

彼の手がライトの喉元にかかり、力を込めて押さえつけた。


ライトは必死にもがきながら、喉にかかる圧力に抵抗した。

視界がぼやけ、呼吸が苦しくなる。

「がぁっ....はな..して..」

彼は全力で相手の腕を引き離そうとしたが、力の差は明らかだった。


「安心しろ、殺しはしねぇからよ」

男は冷酷な笑みを浮かべ、ライトの喉をさらに強く押さえつけた。

その言葉には軽蔑と支配の意識が込められていた。


「おいそっちの女!!動くんじゃねぇぞ、動いたらこのガキがどうなるか、わかってんな?」

男はライトを人質に取り、ケイラに向かって大声で脅すように言った。


ケイラはライトが捕まっているのを見て、心の中で焦りが広がった。

(しまった..ライト君が..!)

彼女は冷静を装いながらも、内心ではどうすれば彼を助けられるかを必死に考えていた。


「武器を捨てて両手を挙げろ」

男の命令に、ケイラは深いため息をつき、剣を捨てて両手を挙げた。

彼女の動きは無駄なく、冷静だった。


「よーし、では..服を脱いでもらおうか」

男はケイラの体を見ながら、いやらしい笑みを浮かべた。

もう一人の男も薄気味悪く笑っている。


ケイラは呆れた様子で言った。

「はぁ..欲に素直ねぇ..ま、私が言えたことではないけど」

彼女は冷静にベージュのベストを脱ぎ始める。


二人の男はその様子を注視していた。

彼らの目は欲望に輝き、ライトを抑える力が徐々に弱まっていった。


ライトは心の中で叫び、残る力を振り絞って腕を突き出した。

腕を突き出し、男の顔目掛けてファイアを放つ。


「がぁっくそがっ!」

それは男の顔に直撃し、彼は驚愕と痛みに叫び声を上げた。

男は顔を押さえながら後退し、その隙にライトは自由を取り戻した。


「てってめぇ!!」

もう一人の男が怒りに燃えた目でライトに向かい、魔法を放とうとした。


ライトは反射的に体を低くし、攻撃を避けようとしたが、

次の瞬間、ケイラが落とした剣を拾い上げ、素早く男に向かって投げた。

剣は男の左胸を貫通し突き刺さった。


「ぐあっ!」

男は驚愕の表情を浮かべ、胸を押さえながら後退した。

血が噴き出し、彼の体は力なく崩れ落ちた。

ケイラの冷静かつ迅速な行動により、男は動きを止めた。


「おねえちゃん....」

ライトの声は震えていたが、その目には感謝と安心が込められていた。


次の瞬間、ライトはケイラに抱きついた。

彼の小さな体がケイラにしがみつき、震えが伝わってくる。

「ごめんね、怖かったわよね..」

ケイラはライトの頭を優しく撫でながら、申し訳なさそうに囁いた。


(そうだった、魔人である以前にこの子はまだ子どもだった..これは私の判断ミスね)

ケイラは心の中で反省し、ライトをもっと守るべきだったと自分を責めた。


その時、

「あ、いたっ!おい、大丈夫か!!」

と聞き覚えのある声が響いた。


ライトは驚いて顔を上げ、ケイラもその方向に視線を向けた。

こちらに村田が走ってくるのが見えた。


「あら、よくここってわかったわね?」

ケイラは微笑みながら村田に声をかけた。


「路地裏に入っていくのは何とか見えたからな、とりあえず無事そうでよかった..」

村田は息を切らしながらも、安堵の表情を浮かべた。

彼の顔には心配と疲れが見え隠れしていた。


「まぁ、なんとか..ね。少し怖い思いをさせてしまったけれど..」

ケイラはライトを抱きしめながら答えた。

彼女の心には罪悪感が残っていた。


村田はライトの様子を見ながら優しく言った。

「そうか、でもありがとうな。ライトを守ってくれて」

彼の声には感謝の気持ちが込められていた。


「気にしないで。あなたには返しきれないほど借りがあるんだから」

ケイラは笑みを浮かべながら答えた。


「じゃ、二人は先に戻っていて。私はそこの奴から聞きたいことがあるから..」

ケイラはライトを押さえつけていた男に目をやりながら言った。

彼女の目は冷たく鋭く、その男を逃がさないという決意が見て取れた。


村田はライトを優しく引き寄せながら頷いた。

「わかった、気をつけてな。じゃあ行くか」

彼の声には安心感が漂い、ライトは村田の腕に導かれて歩き出した。


ケイラは二人を見送り、再び男に目を向けた。

彼女の瞳には冷酷な光が宿り、その男から情報を引き出す決意が固まっていた。

「さぁて、ちょっとばかしお話を聞かせてもらおうかしら…」

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