起床
朝日がゆっくりと部屋に差し込む中、
村田はぐったりとした体をベッドから起こし、まだ眠たい目をこすりながら窓の光に目を細めた。
部屋は静かで、昨日の緊張と動揺が嘘のように平和な雰囲気が漂っている。
「ん....」
村田の声は低く、疲れがにじみ出ていた。
彼はゆっくりと体を起こし、隣のベッドに眠るライトに目を向けた。
「そうか、昨日はライトを助けてそのままケラプさんのカフェに泊めてもらってたんだった」
「ライトを起こさな..いや、昨日色々あったからな」
彼はライトを起こそうと手を伸ばしたが、昨日の出来事を思い出し、そっと手を引っ込めた。
ライトが必要としているのは、何よりも静かな休息だった。
(ケイラの今後の対処についてはケラプさんに任せてしまったが、まぁ大丈夫だろう。それよりもライトの精神状態が心配だ..)
村田はライトの精神的な面で不安を抱えていた。
窓の外から人々の賑やかな声が聞こえてきた。町はどうやら何かの準備で忙しそうだ。
「なんだ?祭りでもあるのか?」
彼は窓の外を眺めながら呟いた。
外の騒がしさが少しずつこの静かな部屋にも生気を与えているようだった。
村田はふと思い立ち、
(ライトが起きたら連れて行ってみるか..いい気分転換になりそうだ)
と心に決めた。
何事もなかったかのように普通の日常に戻ることが、ライトにとって最も良い療法かもしれないと感じていた。
しばらくの沈黙の後、ベッドの方から小さなうめき声が聞こえてきた。
「うぅ..も、もう..やめて..」
ライトの寝苦しい様子が、部屋の静寂に溶け込んでいた。
(嫌な夢でも見てるのか..?まぁ無理もないか..)
村田は心配そうにライトを見守りながら、彼が苦しんでいる様子に顔を顰めた。
「....んん、あ、シュン?....シュン!!」
ライトはゆっくりと目を開け、周りを見渡し、村田の姿に気付くと一気に飛び起きた。
彼は一目で村田に飛びつき、その勢いで彼を倒してしまう。
「ぶげぇっ!!」
ライトは村田に馬乗りになったまま、安堵の表情を浮かべた。
「よかった..!無事だったんだね!」
ライトは若干涙ぐみながら、村田に抱きついた。その眼差しには、純粋な安堵と喜びが溢れていた。
「あ、あぁ。自分でもよくわかっていないんだが、なんとかな」
村田は少し呆れたように答えるが、その目は優しくライトを見つめていた。
「それで..ここはどこ?」
ライトは状況が把握できずに尋ねた。
「そうか、昨日から寝たきりだったもんな。ここはケラプさんのカフェだ、アップルパイのところな」
村田はライトに優しく説明する。
「そっか。ねぇ、昨日何があったの?」
ライトの顔には疑問が浮かんでいた。
「まぁそのあたりはご飯を食べながらするか。朝はアップルパイを用意してくれてるみたいだぞ」
村田が提案すると、ライトの顔に期待と喜びが一気に広がる。
「ほんと!?」
ライトは目を輝かせて尋ねる。
「あぁ、あとライト。そろそろどいてくれないか..」
村田は苦笑いしながら、馬乗りになっているライトに優しく言う。
「あ..ごめん、興奮してつい..」
ライトは少し申し訳なさそうに村田から離れ、そして彼に助けられながら立ち上がる。
彼の表情には、幾分かの恥じらいと感謝が見えた。