不安
夜が更け、部屋の中は静寂に包まれていた。
月明かりが小さな窓から差し込み、二人の寝息だけが時折その静けさを破っていた。
しかし、夜が明ける頃、状況は一変した。
村田が不自然な寝返りを打ち始め、そのたびに額に浮かんだ汗が枕を濡らしていく。
彼の眉間には、苦痛の跡が刻まれていた。
朝日が部屋を柔らかく照らし始めた頃、ライトがぼんやりと目を覚ました。
彼は隣で村田が落ち着かない様子で眠っているのを見て、何かおかしいことに気づいた。
「シュン、大丈夫?」
ライトの心配そうな声に、村田はうなされるように目を覚ました。
彼の顔は蒼白で、手を触れると明らかに熱を帯びていた。
「あーちょっと、熱っぽいかもしれない...」
村田の声はか細く、彼自身も自分の体調の変化に戸惑っているようだった。
「待ってて、冷水を持ってくるね!」
ライトは慌ててベッドから飛び起き、水を求めて部屋を飛び出した。
彼の動きには、仲間を助けたいという切実な思いが溢れていた。
戻ってきたライトは、濡れた布に冷水を染み込ませ、村田の額に優しく当てた。
冷たさに村田の苦痛が少し和らぎ、彼は深く息を吸い込んでから、ゆっくりと息を吐き出した。
「ありがとう、ライト...」
ライトは村田のそばに座り、彼の体調が改善するのをただじっと見守った。
「とりあえず俺は大丈夫だから、朝食食べてきな」
村田の言葉に、ライトは戸惑いつつも部屋を後にした。
彼の足取りは重く、心配の色が隠せなかった。
部屋に一人残された村田は、考え込むようにつぶやいた。
「念のため、病院に行った方がいいかな..」
ただの風邪ではない可能性が頭をよぎる。
この大陸特有の病気に罹っているかもしれないという不安が彼を襲った。
朝食から戻ったライトは、手に持ったゼリーを村田に向けて輝くような笑顔で差し出した。
「シュン、ほら、デザートでもらったゼリーだよ」
と、彼は村田に優しく差し出した。
「くれるのか?」
村田は感謝の気持ちを込めて言った。
ライトは優しく頷き、
「僕が体調悪いときにグレイスがこういうの食べさせてくれたんだ」
と話した。
「そうか、じゃあありがたくいただくよ」
村田はゼリーを手に取り、ライトの思いやりに感謝した。
しばらくの沈黙の後、村田は重い口を開いた。
「それで今日なんだが、念のため俺は病院で診てもらおうと思ってる」
「僕も行った方がいいかな?」
ライトの声にはわずかな不安が含まれていた。
「あー、いや..そうだな、ライトも診てもらった方がいいか..」
村田は少し考え、ライトが感染してしまっている可能性を考えると、
一緒に診てもらう方が安心だと判断した。
また、ライトを一人にするわけにはいかなかった。
村田はベッドからゆっくりと立ち上がり、ライトも彼を支えるようにして立ち上がった。
二人は、病院に向かう準備を静かに進め始めた。